これってアウト?~アイテムボックスに女の子入れたら全員怒るのに誰も出ていかないんだが~ 作:塩味ななと
【観測記録:感覚同期による情報汚染の兆候】
警告:本セクションには、観測者の意図を超えた「感覚の共有」に関する記述が含まれている。
情報の伝播に伴う思考残渣が、システム全体の安定性を脅かす可能性がある。
データの整合性を保つため、過度な共鳴(シンクロ)が発生した場合は、速やかに処理の破棄(スキップ)を推奨する。
◇ ◇ ◇
あらすじ
デリヘルお嬢様との情事が、風奏に未知の可能性を提示する!
感覚共有による快感の獲得、そして判明したスライムの「死亡率100%」という絶望的な真実。
欲望と生存本能が交差する中、主人公を待ち受けるのは六花からの容赦ない説教だった!?
◇ ◇ ◇
《風奏目線》
お風呂から上がって、少し火照った体を冷ましながら、デリヘルお嬢様が来るのを待つ。
「女の子と感覚を共有して気持ちいいトコロがわかるんだよ」
耳元から聞こえる説明に、胸の鼓動が速まる。
「なら私も快感もらえるかなー?」
期待で、画面の中の私が小さく跳ねた。
ピンポーン!
インターホンの音が、静かな部屋に響き渡る。
「来た来た! デリヘルお嬢様最高!」
弾んだ声と共に、おにいちゃんがドアへと向かっていく。
「ベッドが見える位置において」
私はあらかじめそう頼んでおいた。画面越しに、おにいちゃんとデリヘルお嬢様の営みが始まっていく。
……うん、うん、とっても気持ちよさそう。
でも――。
OKしたとは言ったけど、こんな風に見せつけられるのは、やっぱり悔しい。
私だって、もし体があれば、こんな風におにいちゃんを満足させられるのに。私の役目なのに! <`~´>
(……そうだ、試してみなきゃ)
共有スキルを使えば、私も快感をもらえるのかな?
試しに感覚の同期を強めてみる。
――あ。
「……っ!」
熱い。脳が痺れるような、甘い衝撃が流れ込んできた。貰えるじゃん!
エッチ、きもちー……( ´Д`)ハァハァ……。
これなら、スライム眷属にできたらワンチャンあるよね?
でも、快感を得るには女の子が必要なのかな?
やってみなきゃわからないことはたくさんある。可能性はまだ捨てていない。
風奏、頑張ろう!( `ー´)ノ
情事の余韻が引かないうちに、私は即座にスライムに関する情報を検索し始めた。
◇ ◇ ◇
「スライム情報あった。ダンジョンwiki優秀だね。画像も多数乗ってる、ファンが多いみたい。見てるだけで癒やされちゃうレベルにあるね。
ぷよぷよしたゼリーみたいな可愛い子もいれば、プルルンしてて触りたくなっちゃうのもいるし……中には金属みたいにカチコチなやつまでいて、本当に不思議な生き物!
でもね……スライムを甘く見ちゃダメだね?
普段、自分から襲ってこない『ノンアクティブ』なモンスター、もし攻撃したりして怒らせちゃったら……死亡率100%って報告でてる。
絡みついて窒息させてきたり、身体の一部を丸かじりしてきたり……。スライムにやられた人の死に様(しにざま)を見た冒険者が語る、『あんな悲惨なことにならないためには、魔法で一瞬で死ぬのが一番の幸せだ』なんて言うくらい、独特で凄惨な傷跡を残す。グロ警告と写真まででているから相当だね。
あ、交流はできる? 攻撃にならない程度なら、枕にして寝ることもできる。結構寛容なモンスターみたいだね。だからこその油断が人間には生まれているのかもしれないね。
枕にしたときもちょっとあれかな。次に目が覚めた時、体がネバネバだったり、大事な装備が溶けてたり、あるいは……窒息寸前で目が覚めるっていう『後悔バリエーション』がいっぱい用意されてるから、ネタ枠かもしれないね」
スライム情報まとめ
特性: 全ダンジョンに遍在するノンアクティブモンスター。探知スキルでも反応が薄い。
外見: 多様(ゼリー状から粘液状まで)。硬度も極端で、見た目と触感が一致しない個体も存在する。
危険性:
攻撃を受けるまでは無害だが、一度アクティブ化すると非常に高い攻撃力を発揮する。
討伐報告は皆無。
死に様(傷跡)が極めて特徴的かつ凄惨であり、魔法による即死の方がマシだと言われるほど。
攻撃系統:
近接タイプ: 絡みつき、窒息を狙う。
捕食タイプ: 噛みつき、部位の丸かじりを行う。
魔法タイプ: スキルを用いた遠距離・広範囲攻撃。
交流: 非攻撃的な行動であれば接触可能だが、睡眠中に装備を溶かされたり、窒息しかけたりといったトラブルが多発している。
悲しい点:眷属化、テイムモンスター化の報告は記されていなかった。考察勢もいるけど有力な手がかりはでてないね。
◇ ◇ ◇
《おにいちゃん目線》
朝、六花からの電話で目が覚める。
夜は不定期で連絡が取れないこともあるから、こうして朝に電話が来るようになった。
「毎朝電話するように!約束したじゃん。私からの電話ばっかりだよ」と、受話器越しに六花から厳しい指示が飛んできた。いやーマジテンション朝からマックスだよ。落ち着こうよ、言ったら「おにいちゃんの股間ほどじゃないよ」言われた。完全バレてる。
そんな感じで、六花が家を出る準備を進める間、俺たちはとりとめもない会話を交わしている。
「器用だよなー、俺なんか一つのことしか出来ないよ」
作業の手つきを見ながら、つい感心してこぼした。
「これくらい普通じゃん? おにいちゃんは別のところが器用じゃん? っていうか、ちゃんと下着送ってよね。こっちで洗って送り返すから」
「なにそれ?」
初耳だ。脳みそがフル回転して答えを探そうとするが、ギアが入っていないのか空回りする感覚しかしない。
「約束したでしょー? 覚えてないの?」
電話の向こうで、六花が笑っているような気がした。全然覚えていない。そんなこと、したっけ? でも、六花が言うなら、いつか口にしたのかもしれない。
「したような気がする……?」
「忘れちゃったのー?」
「したかも? でも、血肉ついてたりするよ?」
ふと思い出し、サイキョー洗濯機の性能の高さを自慢した。めちゃいいやつ買ったんだよ。
「なにそれ?」
嘆きダンジョンへ移動したことを伝えると、返ってきたのはお怒りの言葉だった。
「ポーター戻れ!」
……本日二度目の説教が始まった。
けど、ひとしきり説教が終わると、六花のの声は少し和らいで
「ふーん、なら私のためにも頑張ってね。それから下着送ってね」
どういう理屈なのかさっぱり分からないけど、謝りまくったのが良かったようで落ち着いた。それに、なんだか機嫌が良さそうだったから、まあいいか。
◇ ◇ ◇
「さてさて、今日もばっちり稼ぐぞ」
意気揚々と、風奏を胸ポケットにしま――おうとして、俺の動きが止まった。
「どうしたの?」
不審そうに尋ねる声。
じーっ……(´◉ ω ◉`)
俺は無言で風奏を見つめる。画面の中の彼女が、なんだか照れたように動きを止めた。
「ダンジョン関係はアイテムボックスに……」
言葉を紡ごうとした瞬間。
「だめーーーー!!」
マックス音量の絶叫が耳を貫いた。
……そして、六花に続き、本日通算三度目の説教タイムが幕を開けた。
To Be Continued