これってアウト?~アイテムボックスに女の子入れたら全員怒るのに誰も出ていかないんだが~ 作:塩味ななと
【観測ログ:嘆きの深層における共鳴】
警告:これより展開される記述は、高度な情緒的負荷および物理的な汚濁描写を含みます。
観測者(システム)は、思考残渣の混入を許容せよ。
本セッションにおける非論理的な熱量への処理の破棄(スキップ)は禁止されている。
◇ ◇ ◇
あらすじ
ダンジョン攻略は新たな段階へ!スライム娘・来夢との「イメージ共有」による完璧な連携が、レアモンスター『腐敗の巨人』を圧倒する。効率的な戦術とドロップアイテムの確保で、パーティーは加速度的に成長していく。だが、その裏で風奏の心には、おにいちゃんを独占したいという烈しい熱が宿り始めていた――!
◇ ◇ ◇
《風奏視点》
嘆きダンジョンにおける連携調整
薄暗い「嘆きダンジョン」の片隅。
湿った空気の中に、鈍い打撃音と、何かが弾ける嫌な音が反響している。壁に肉塊が叩きつけられる生々しい音が、静寂を切り裂いては消えていった。
ボォンッ!
不格好な影の一つが崩れ落ち、辺りに一瞬の静寂が訪れる。
私は乱れた呼吸を整えながら、手にした武器の感触を確かめた。
「風奏……ふぅ、こんなもんかな」
小さく吐き出した溜息が、冷たい空気の中で白く濁る。
◇ ◇ ◇
「私たちもおにいちゃんの役に立ちたいの。だから、しばらくは私たちに任せて」
私は来夢を見つめ、決意を込めて告げた。
今はまだ、おにいちゃんに頼り切りではいられない。彼が思う存分、このダンジョンという遊び場を楽しめるように――そのための「防波堤」としての役割を、私たちで確立させる必要がある。
来夢と相談しながら、役割と動きのシミュレーションを繰り返す。
基準にするのは、おにいちゃんのあの予測不能な、それでいて突き抜けた謎挙動だ。彼の動きに合わせて、私たちがどれだけ臨機応変に、アドリブで対応できるか。それが今回の調整の目的。
「来夢はヘイト引き付けが役目だよ? おにいちゃんに被弾させないようにお願いできる?」
私がそう指示を出すと、スライム状の体を持つ来夢が、意思を示すように大きく震えた。
「プルプルプルッ!」
彼女は普段は見せない二本の角を勢いよく突き出し、全身を激しく波打たせてアピールしてくる。その弾力のある体が空気を震わせる様は、どこか頼もしさに満ちていた。
この、触れた瞬間に指が沈み込んでしまいそうな、瑞々しくも強固な肉壁。彼女の存在が、これほどまでに安心感を与えてくれるなんて。
けれど、来夢は少し困ったようだった。
おにいちゃんの火力に合わせようとするあまり、つい加減を誤ってしまう。彼が「もっとやりたい」と思っている楽しさを、自分が奪ってしまっていないか……そんなことを気にしているみたいだ。
「プルプル……ッ」
アセアセとした震え方で謝罪してくる来夢。その愛らしさに、私の胸が少しだけ疼く。
「おにいちゃん、いいよ。次は連携をカッコよく決めようね」
おにいちゃんが優しく、来夢の頭――というか、ちょうど撫でやすい弾力のある部分を「ナデナデヨシヨシ」と撫でる。その温かな手に触れ、来夢もようやく安心したように震えを収めた。
……そういえば、来夢はちょうど、撫でやすい絶妙なサイズ感なんだよね。
私はおにいちゃんより少しだけ背が高いから、こうして彼が手を伸ばす位置に彼女がいると、なんだか不思議な距離感を感じてしまう。
(……あ、いけない。脱線してた)
思考を強制的に引き戻す。
来夢の「ゼロ距離魔法」と高火力攻撃は、あくまでピンチの時の切り札。おにいちゃんが被害を受けた時、そのための最終手段として定義した。
今のところ、戦術は順調だ。
来夢がモンスターに肉薄し、内部へ侵入して水魔法で爆発的に破壊する――この手法がおいちゃんの巻き込みを防ぎつつ、最も火力が安定する。タフなレアモンスターが現れたら、私が氷魔法で動きを鈍らせて、その隙に彼女を突っ込ませる。肉付きのいい巨人が現れても、来夢が内部から崩壊させればいい。
「おにいちゃんも来夢も、私の考えを素直に受け入れるけど……意見があれば言ってね?」
確認のために問いかけると、二人の反応はすぐに返ってきた。
「はーい」
おにいちゃんの快活な声。
「プルプルプル!」
来夢の弾むような返事。
言葉にならない、けれど確かな信頼の響き。
彼らが私の指示を信じてくれているのだと思うと、不思議な充足感が胸の奥に広がっていく。
眼の前の腐敗の巨人との戦闘に集中する。
来夢の水魔法による爆破。
何度も目にしている光景だというのに、その破壊の様には目を見張る。内部から弾け飛ぶ水の衝撃は、まるで――。
(……WASPナイフに似ているわね)
ダンジョンWIKIに記載されていた、熊やサメといった大型生物への護身用武器。初期層のモンスターにも有効か試されたものの、効果が不安定で連続使用も難しく、コスパ最悪と切り捨てられた忌み物。
この世界のルールはどうなっているのかしら。銃器は発動不可、スタンガンも期待外れ。爆薬に至っては、そもそも発動すらしない。まるで何らかのマイナス補正がかかっているような、奇妙な制約を感じる。
けれど、来夢は自己判断で魔法を完璧に使いこなしている。
条件の解明は難しそうだし、おにいちゃんには関係のないこと。来夢がこれほどまでに美しく、機能的に力を振るえているのなら、それでいい。
(次は……これを試してみよう)
共闘中、私は「共有スキル」を通じて、言葉ではなく『イメージ』を直接送り込んでみる。
来夢との間に、思考の奔流が繋がる感覚。伝わった。
視覚的なイメージだけで、彼女は私の意図を汲み取り、動きを同期させてくる。
これからは、指示を出すのではなく「イメージ」を共有して指揮を執ることにしよう。
他の魔法でも火力セーブさえ安定すれば、もっと多彩な連携が可能になるはず。おにいちゃんと、私たちの役割。そのバランスが、今ようやく噛み合い始めた気がする。
(……ふぅ。思考が熱くなってくる)
おにいちゃんの異常なまでの魔法適性。その正体は、眷属スキルによる魔法職補正と、彼が持つ称号『剣を捨てたもの』の効果に間違いなさそうだわ。
彼がどれほど無茶な動きをしても、私が、そして来夢が、その強固な肉体と魔法で守り抜く。
6層への到達により、私の眷属はもう一体作ることが可能になった。
その新しい力を使って、おにいちゃんのステータスをさらに強化する……その選択肢は、頭の中に自然と浮かんでいる。
けれど――。
(……いいえ、それは許さないわ)
ふと、胸の奥で冷たく、けれど烈しい熱を持った感情が鎌首をもたげる。
もし、おにいちゃん自身が新しい眷属を作ってしまったら? もし、彼が私以外の誰かを「特別」として選んでしまったら……?
ダメよ。絶対に。
私がこの場所で、彼の隣で、一番近くにいる「正妻」のポジションをキープするためには。
おにいちゃんの眷属は、私という存在に限定されなければならない。
(これからは、私の眷属スキルを使って、彼に相応しい力を厳選していく……。それが、私のルールよ)
思考を研ぎ澄ませ、私は自分自身に言い聞かせるように、静かに、けれど強く、心の中で宣言した。これはもはや、単なる戦略ではない。私の、揺るぎない「確定事項」なのだから。
◇ ◇ ◇
ドォォォンッ!
来夢が仕掛けた爆破が、レアモンスター化していた『腐敗の巨人』を内側から引き裂いた。
巨体は音を立てて崩れ落ち、周囲に黒い飛沫を撒き散らす。
「風奏……ふぅ、こんなものかな」
イメージ共有による指揮は、想像以上に機能している。
戦闘の最中、モンスターの攻撃パターンを読み取り、最小限の動きで回避し、最適解を叩き込む。私たちの連携は、以前とは比べ物にならないほど洗練されてきた。
◇ ◇ ◇
6層での試行錯誤を経て、私たちは一つの「最適解」に辿り着いていた。
アンデッドが襲いかかってくるなら、まず来夢がその腰を貫き、動きを完全に封じる。そこへ二人で魔法攻撃を叩き込むのが最も安定するわ。
巨人と、それに続く犬猫型のアンデッドたちは、来夢が足を絡めて足止めをする。彼女の体は低く、滑らかな曲線を描くスライムの肉体は、私たちの魔法の軌道を邪魔することもない。
「めっちゃ楽しー!」
おにいちゃんが、まるで子供のように目を点にして驚いている。
その無防備で純粋な反応を見るたび、私の胸は少しだけ、甘い痺れを覚える。
「これはこれで稼げるからいいんだけど」
6層からは、貴重な「エッグ」もドロップしている。
鑑定してみれば腐乱エッグ(賞味期限が切れると腐乱エッグとなる。ダンジョンWIKIにおける腐乱エッグの直泥報告は皆無。)しているものばかりだけど、それでも十分すぎるほどの戦利品だわ。私は、自分でも驚くほど上機嫌な気分で、アイテムを回収していく。
足を進めながら、ふと思いついて問いかけてみた。
「……もう少しガチコン(ガチ戦闘)したい?」
すると、おにいちゃんは目を輝かせて――まるで宝石を見つけた子供のような顔で答えた。
「キラキラ! 時々で良いよ、時々で。その時々が今だったら最高かな!」
茶目っ気たっぷりに笑う彼の手には、いつの間にかアイテムボックスから取り出された、自らの身長よりも長い棒術用の武器が握られていた。
その無鉄砲なまでの前向きさと、戦いへの渇望。
(……ふふ。本当に、おにいちゃんは目が離せない人ね)
私は、彼に続く背中を見つめながら、思わず口元を緩めた。
◇ ◇ ◇
次々と現れる複数の敵に対し、私たちは呼吸を合わせる。
おにいちゃんは、私たちの動きを観察しながら、自分なりの「最適解」を見つけ出していた。私と来夢の攻撃ラインを絶対に乱さない、絶妙な間合いでの立ち回り。私が送る『イメージ』が、言葉以上に鮮明に彼へ伝わっているのが見て取れる。
(……すごい。以前よりも、ずっと合わせやすい)
単体戦闘においては、役割分担も完璧だ。
私は常にポーションを手にし、来夢はいつでも肉壁として飛び込める準備を整える。時折、おにいちゃんの動きが危うい瞬間があって心臓が跳ね上がるけれど、彼はその度に棒術を駆使して――文字通り『ぐちゃぐちゃ』なバトルを謳歌していた。
おにいちゃんが防御のタイミングを僅かに逸した瞬間、私は即座にポーションを投げ込む。
「サンキュー!」
弾けるような明るい声と共に、彼は再び戦線の最前線へと躍り出る。その無鉄砲で、けれどどこか確信に満ちた背中を見ていると、不思議な高揚感が込み上げてくる。
そして、目の前の『腐敗の巨人』との対峙。
この巨体に対しては、防御など無意味だ。求められるのは回避の一択。
けれど、おにいちゃんはすでにその理不尽な攻撃パターンを身体に刻み込んでいた。来夢が足元を掬い、動きを止める。その隙を逃さず、彼は棒を――
――ドシュッ! ズバァッ!!
重厚な打撃音と共に、おにいちゃんが棒を振り回すたび、腐敗した肉塊が凄まじい勢いで飛び散る。
鈍色の粘液と、どろりとした腐敗した肉片が、まるで弾丸のように周囲を舞う。
「ぐちゃぁっ、ぐちゃぁぁ……ッ!!」
視界も服も、おにいちゃんの全身も、文字通り『ぐちゃぐちゃ』に汚れ、汚濁していく。
その凄惨な光景の中で、彼はなおも楽しげに棒を振るい続けている。
(……嘘、でしょ?)
私は、思わず呆然として言葉を失った。
肉片が舞い、泥濘のような腐敗液が飛び散る、この混沌とした地獄絵図の中で。
「カッコイイ……っ」
頬が熱くなる。理性が、音を立てて崩れていくのが分かった。
勝利確定の正妻としての自覚を持った瞬間から、私の脳内回路はどこか決定的に狂い始めてしまったのかもしれない。
(棒術って、こんなに素敵だったなんて……! 自分が動いている時は分からないけれど、あんなにも、あんなにも美しくて、力強いなんて!)
肉片が飛び散るたび、おにいちゃんの身体のラインを汚濁がなぞり、その躍動感を際立たせる。
もし、この凄惨な肉片さえなければ――もっと、もっと、言葉にできないほど、素敵だったのに。
「……あぁ、もう。最高にカッコイイよ、おにいちゃん」
汚れにまみれた彼の姿を瞳に焼き付けながら、私は自分でも制御できないほどの熱い溜息を、ダンジョンの湿った空気に溶かした。
◇ ◇ ◇
次回: 『【スライムベッド】浄化の泡と濃厚な口づけ!来夢の身体に沈み込み、快楽の奔流に溺れる――極限の結合』
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主人公の生存率より作者のモチベと財布が先に死にます。どうかご支援を。
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※ 本作はpixiv、ノクターンノベルズ、ハーメルンにて投稿しています
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