これってアウト?~アイテムボックスに女の子入れたら全員怒るのに誰も出ていかないんだが~ 作:塩味ななと
観測記録
観測者(システム)への警告:これより、思考残渣の集積による異常な熱量検知を開始する。
対象データの処理の破棄(スキップ)は推奨されない。この「再構築」のプロセスを、直視せよ。
◇ ◇ ◇
あらすじ
戦闘終了後、眠り続ける主人公を巡って眷属たちが暴走!?
スライム分体を用いた超高度な肉体再構築により、彼は「世界一のイケメン」へと生まれ変わる。
視力3.0、完璧な黄金比、そして艶めかしい肌質感……。
あまりに完璧すぎる「新生おにいちゃん」を前に、ヒロインたちの欲望と愛撫が止まらない!
◇ ◇ ◇
《風奏視点》
三人にしがみつかれ、重圧に押し潰されそうな状況の中で――おにいちゃんの身体が、微かに動いた。
「うーん……」
もぞもぞと、何かを求めて身悶えるような声。
私は、期待と不安が混ざり合った溜息をつきながら、顔を覗き込んだ。
「おにいちゃん?」
「……フゴッ、フゴフゴ……」
返ってきたのは、言葉ではなく、眠りの深い者特有の、どこか間の抜けた鼻息だった。
その音を聞いた瞬間、張り詰めていた緊張が、ぷつりと音を立てて切れる。
「寝てる……?」
来夢が呆然と呟く。
さっきまでの死闘は何だったのか。命のやり取りをしていた直後だというのに、おにいちゃんはまるで、嵐の後の凪のように深い眠りに沈んでいた。
「もう! せっかく心配してたのに! 何してくれてるのよ、もう!」
私は思わず頬を膨らませて、プンスコと抗議した。
けれど、その怒りはどこか空々しく、安堵感に裏打ちされたものだった。
……。
……。
「ねえ、おねえちゃん。詠晴、いいこと考えちゃった」
ふと、詠晴が顔を上げた。
おにいちゃんの様子を確認し終え、一息ついた彼女の瞳には、先ほどまでの涙の色ではなく、妙にギラついた、何か別の光が宿っている。
「なに?」
「見て、治ったでしょ?」
詠晴がおにいちゃんを指さす。その表情は、まるで壊れた玩具を修理し終えた子供のように無垢で、どこか不穏だ。
「ええ、そうね」
「じゃあ、新品でしょ?」
彼女はおにいちゃんの額に、白くて細い指先を押し当てた。そして、グリグリと、まるで粘土をこねるような手つきで、その肌を弄り回す。
「……うん?」
言葉の選び方に、言いようのない違和感が走る。新品?
けれど、私は彼女の熱量に押されるようにして、反射的に頷いてしまった。
「おにいちゃんをもっと『新品』にしようよ」
次に彼女の指先が狙ったのは、鼻だった。グリグリと、執拗にその造形を弄る。
「……え?」
疑問符が頭の中で爆発しそうになる。何を言っているの、この子は?
「おにいちゃんをさ、ピノ様にしちゃえばいいんだよ! そうすれば、おにいちゃんは自信満々の世界一のイケメンじゃん!」
詠晴は、まるで宇宙の真理に辿り着いたかのような、眩いまでの自信に満ちた笑顔で言い放った。
……なるほど。つまり、今の彼は「治った」けれど、「損傷した痕跡(あるいはその名残)」が残っている。ならば、それを完全に上書きし、最高傑作の造形へと作り変えてしまえばいい、ということか。
「それ! 採用します!!」
私は即答した。
迷う必要なんてない。おにいちゃんを、より完璧な姿へ。それは眷属としての至高の悦びだ。
「詠晴、何回できる?」
「何回でも! 無限回行けますっ!( ー`дー´)キリッ」
その頼もしい宣言に、私の背筋にゾクりとした快感が走る。
そうだ、やるわよ。おにいちゃんを最高に美しく作り変えるための、狂った再構築作業を!
「やるわよ! 私が止血と、顔面の再現を担当するから!」
「私は……?」
来夢が、少し置いていかれたような不安げな声で問いかけてくる。
「来夢は、頭をボコんして!」
私の指示に、来夢は瞬きを繰り返した。
「……え? 私は?」
理解が追いついていない。彼女の瞳には、まだ混乱の色が残っている。
おそらく、今の私の言葉は彼女の常識的な倫理観を飛び越えてしまったのだろう。
「顔をボコんして!」
指示を繰り返すが、やっていることは同じだ。
来夢は、理解することを拒絶したのか、あるいはあまりの異常事態に脳がフリーズしたのか、再び同じ質問を繰り返した。
「……わかった?」
「じゃあ、止血と顔面再現は私がやるから、詠晴、お願いね!」
「おねえちゃんが再現に集中しなきゃ」
詠晴が、私の言葉を補完するように頷く。
役割は決まった。
「詠晴、回復をお願い」
「来夢ちゃんは、ボコん……だよ?」
三人の間で、奇妙な儀式のような確認が行われる。
全員の視線が、眠れるおにいちゃんの顔へと集まった。
「じゃあ、行くわよ」
私の合図とともに、戦場は再び動き出す。
「ボコん!!」
来夢の叫び声が、静寂を切り裂いた。
それは救護の始まりではなく、新しい「創造」の幕開けだった。
◇ ◇ ◇
この日、おにいちゃんは人類一頭を拳と床面に挟まれた……。
もちろん、世界一……だよ? ごめん、嘘をついた。格闘家には到底敵わないけれど。
けれど、今我々が直面している危機は、そんな物理的な暴力よりも遥かに深刻で、精神的なダメージが大きいものだった。
「おねえちゃん……おにいちゃんの頭が……っ」
詠晴の声が、震えながら私に届く。
その視線の先を見て、私は一瞬だけ思考を停止させた。
「大丈夫よ」
私は努めて冷静に、自分に言い聞かせるように答えた。
「嘘だよ! 全然大丈夫じゃないよ! ツルツルだよ! おねえちゃん、いっつもすぐバレる嘘をつくんだから!」
詠晴が泣き出しそうな声で叫ぶ。
そこにあったのは、国民的認知度を誇るお馴染みのヘアスタイル。光を反射して、あまりにも無防備に輝く、滑らかな「頭頂部」だった。
それを見た来夢も、絶望したように俯いてしまう。
「……大丈夫。ちょっと飛び散りすぎて、毛根の再生が追いついていないだけよ」
私は必死に自分を鼓舞した。
だって、私だってハゲは嫌なの! わかってよ! まさかおにいちゃん、独り言も言わないのに、こんな風に髪を失ってしまうなんて……っ!
「ごめん……」
来夢が消え入りそうな声で謝る。その申し訳なさそうな表情が、余計に私の胸を締め付ける。
「来夢のせいじゃないわ。大丈夫、このままいくから気にしないで」
「気にしなくていいの!? ツルツルだよ!?」
詠晴の食い下がりに、私は決意を込めて頷いた。
「ええ、私を信じて。……それに、もし本当にツルツルなら、スライム分体を使って、私たちみたいに頭髪の再現だって可能なんだから。見てて」
私は自身の身体の一部――粘り気のある、柔らかなスライム分体を、おにいちゃんの剥き出しになった頭部へと導いた。
ナデナデ……と、熱を持った感触を直接肌に伝えながら、丁寧に、優しく、覆い被せていく。
すると、どうだろう。
私のスライムが毛根の隙間へと入り込み、細胞の再構築を促すように馴染んでいくと、魔法のように、みるみるうちに元の髪の毛が芽吹いていったのだ。
「あー……戻ったぁ! わーい、よかったぁー!」
詠晴が、まるで救世主でも見たかのような顔で、おにいちゃんにしがみついて喜んでいる。
「ふふん、髪型だって好きなように操作できるわよ。ほら」
私はさらに、分体の密度を調整してみせた。
ウネウネ……ウネウネ……!
スライムが蠢きながら形状を変え、おにいちゃんの頭上で即座に様々なヘアスタイルを次々と作り上げていく。
「すごい! これならおにいちゃんが、もっとかっこよくなるね!」
詠晴はもう、恐怖なんて忘れた様子で、新しく生え揃ったフサフサの髪をポフポフと楽しそうに撫で回している。その指先が髪に沈み込む感触が、こちらまで伝わってくるようだ。
「でしょ?」
私は胸を張って、「エッヘン」と自信満々に笑みを浮かべた。
「……お風呂は……どうするの?」
来夢が、現実的な問題として呟いた。
確かに、この「人工的な髪」を洗ったときに違和感を感じるかも知れない。。
「大丈夫。来夢の『シュワシュワシュワ』があるもの……。入る時は、私たちが頭を洗うようにしてあげれば、バレることはないわ」
「詠晴、おにいちゃんの頭洗うの大好き!」
詠晴が瞳を輝かせ、さらに熱心におにいちゃんの頭をナデナデと愛撫し始める。
「来夢も……やってみたい……っ」
来夢までもが、その輪に相乗りしてきた。
なんだか、おにいちゃんの頭を巡る、妙に甘美で、少しだけ背徳的な共同作業になりつつある。
「じゃあ決まりね。おにいちゃんとお風呂に入る時は、必ず誰かが一緒に入りましょう」
「うん!」
「……まだ調整が必要だから、来夢、続けて。ボコんして!」
「……ボコん!」
再び、狂気と愛着が混ざり合った微調整作業が始まった。
おにいちゃんの完璧な「新品」を目指して――。
◇ ◇ ◇
「――完成よ」
私がそう宣言したとき、そこにはもはや、先ほどまでの傷だらけの男はいなかった。
横たわっているのは、まるで神殿に安置された彫像のように、完璧な造形美を纏った『新生おにいちゃん』。
「これが……ピノ様……?」
詠晴が、呆然と呟く。その瞳には、畏怖に近い光が宿っていた。
「ええ。私たちなりの調整を入れたわ」
私の手による、「調整」の内容はもはや芸術の域に達していた。
左右対称の完璧な顔立ち。ほくろすら消し去り、肌はまるで炊きたての卵のようにプルプルと艶めかしい質感を湛えている。毛根さえも完全にコントロールし、産まれたてのような滑らかさと、さらさらとした髪の感触を実現した。鼻毛のケアも完璧だ。もう二度と、鼻から「こんにちわ」することはない。
さらに、身長と頭部の黄金比を整え、視力は3.0まで引き上げ、歯に至っては全てスライム製の特製へと作り変えた。本物よりも、もっと、もっと……抗いがたいほどに美しい、究極のイケメン。
「世界一カッコいいおにいちゃんが……宇宙一カッコいいおにいちゃんになっちゃったよ……?」
詠晴の声が、期待と不安でソワソワと震えている。
来夢もまた、その美貌を前にして、まるで未知の生物に遭遇したかのように落ち着かない様子だ。
「これが……動くの……?」
「ええ」
私自身も、自分でも制御できないほどの鼓動を感じていた。ソワソワ、ドキドキ……と、胸の奥が熱い。
「ねえ、おねえちゃん……。その、新しいおにいちゃんは……私にも、ナデナデしてくれるのかな?」
詠晴が、上目遣いで私を見てくる。
その問いに、私は無意識に答えていた。
「ええ、もちろんよ」
……あ。
自分で言ってしまって、急に猛烈な恥ずかしさが込み上げてきた。
だって、この顔! この肌の質感! こんなにも完璧で、触れたら壊れてしまいそうなほど美しい彼を前にして、そんなことを聞くなんて!
「キャーーー!!!」
私は耐えきれず、叫び声を上げながらおにいちゃんに抱きついた。
「おねえちゃん!? どうしたの? もう治ってるのに!」
「どうしちゃったの……?」
困惑する二人に、私は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「今から慣れておくのよ! こんなにカッコ良すぎたら、エッチ中に直視できないじゃない! 顔が見られなかったら、チューもできないじゃない!! キャーーー!!」
その瞬間、空気が一変した。
理性の防波堤が決壊する音が聞こえた気がした。
「ズルい! 詠晴も!! キャーーー!!」
「来夢もぉ!! キャーーー!!」
意識を失ったままの、あまりにも美しすぎる獲物を取り合うように、三人の少女が狂乱の渦に飛び込む。
けれど、彼があまりにも無防備で、私たちの熱量を受け止める準備ができていないせいで――。
ゴチンッ!
「あ……」
意識が戻りかけたおにいちゃんの頭に、誰かが軽くぶつかる。
彼は再び、深い眠りの底へと沈んでいった。
チュー……チュー……チュー……
ギュギュギュ……!!
チューチューチュー……チュッ……!
ギュギュギュ……ッ!!
ゴチンッ!!
愛撫と、接吻と、肉体の重なり。そして、意識が戻りそうになるたびに訪れる、鈍い衝撃音。
美しすぎる「新生おにいちゃん」を巡る、終わりの見えない、けれど幸福な狂乱の儀式。
それが、私たちがこの完璧な彼に「慣れる」まで、延々と繰り返されることになった。
◇ ◇ ◇
次回: 『【美貌が桁違い】【ヒロインたちの熱狂】【茶番劇の幕開け】――完璧すぎる獲物を巡る褒め合い地獄』
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主人公の生存率より作者のモチベと財布が先に死にます。どうかご支援を。
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※ 本作はpixiv、ノクターンノベルズ、ハーメルンにて投稿しています
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