俺の性癖のせいで淫魔が支配する貞操逆転異世界で、自分をボコボコにした強い女たちが奴隷になるチートスキルでハーレムができてた 作:ショムカオルコ
ペンキの入った一斗缶が崩れてきた瞬間、俺は自分が死ぬんだと理解した。
俺は零細の不動産屋に勤める特に何の特徴もないアラサーだ。
職場と家の往復、趣味のジム通い、あとは付き合いで行く飲み以外には何もない生活を送る日々だった。
彼女もいない。
この日も俺は仕事をしていた。
銀行から回ってきた案件で、塗装業を営んでいる爺さんの自宅兼作業場の任意売却の仲介をすることになった。
買い手はすでに銀行が見つけていた。
問題は物件の中にあった。
室内にはペンキが入った一斗缶が山積みになっていた。軽く見積もっても千個はある。
これを片付けないことには引き渡しはできない。
売主は年齢のせいもあってか、まともに動ける状態じゃなく、処分を業者に頼む金もない。
つまり、俺がやるしかなかった。
1週間はかかる作業だ。
手数料が50万程度しかもらえないことを考えると、はっきり言って割に合わない仕事だった。
しかし、得意先から引き受けた仕事を今更断ることもできない。
金にならないのに労力は無駄にかかる仕事には慣れっこだった。
俺は必死こいて作業に明け暮れた。
そして、その日も俺は一人で作業をしていた。
その時、積み上がっていた缶が大量に崩れてきたのだ。
俺が下敷きになってることに気づいてくれる人間は誰もいなかった。
その後のことはよく覚えていない。
ただ、薄れゆく意識の中でぼんやりと思ったことがある。
お母さん、孫の顔を見せてやれなくてごめんな、と。
俺の唯一の同居人、飼い猫のミー子のことも気がかりだった。
まさか結婚どころか、こんな早く死ぬとは
次の人生があるならせめてもう少しだけでもモテたいな。
あぁ……死にたくない。
そう思いながら俺はまぶたを閉じた。
◆
「……じゃあここは天国か?」
「いいえ、天国ではありません。生と死の狭間です」
「……はあ、そうですか。というかあなたは誰?」
声がした方を振り返ると、宙に浮いた美しい女性が目の前にいた。
青い髪に、透けるような白い肌。
人間離れした美貌をしていたが、表情が妙に気まずそうだった。
「私はミリル。世界の創造に携わる女神が一人です」
「それはまたどうも、お疲れ様です」
「ご自分が今どういう状況か理解されてますか?」
「いや、まったく」
ぼんやりした頭で俺が首を振ると、女神がいきなり土下座してきた。
「……申し訳ございませんでした! 私のミスでアキトさんを死なせてしまいました!」
今なんて言った?
「でも、俺って大量の缶に押しつぶされたんじゃ……」
「その現象が起きたことが私のミスなんです!」
「あらら、そりゃ大変だ」
「あの、こちらのミスで多大な迷惑をかけておいてなんですが、もう少し真剣に話を聞いて頂けませんか?」
「ちゃんと聞いてるって」
我ながらアホな夢見てんなと思う俺だった。
俺は死後の世界や幽霊といったものは信じてないわけではないが、自分には縁がないものだと思っている。
「とりあえず死なせちゃったって言うならさっさと生き返らせてくれよ」
「そうしたいのは山々ですが、残念ながらもとの世界での蘇りは不可能です」
「じゃあどこなら復活できんだよ?」
「異世界です」
ベタすぎて俺は笑ってしまった。
「異世界とか勘弁してほしいわ」
「……なぜです?」
「いや、だってスマホもエアコンも車もない、不便極まりない世界なんだろ?」
「で、でもアキトさんの世界にはない魔術も使えるんですよ。あと魔物もいますよ!」
「魔物がいることをアピールポイントみたいに言われてもね。どうせアレだろ? 死なせちゃったお詫びにチート能力満載で異世界転生させてくれるって展開なんだろ?」
そんなに詳しいわけではないが、俺もいくつかの異世界転生ものは見たことがある。
「私、チートスキルは専門じゃないので精々一つぐらいが限界です」
「一個とはまたケチだな」
「でもそのかわり、アキトさんの要望する世界を構築しますよ? 世界の理も捻じ曲げちゃいますよ?」
女神が得意げに胸を張る。
世界の理を捻じ曲げるほうがすごくないか?
「じゃあたとえば俺が死ぬほどモテる世界とかもできんの?」
「おおっ! 今まさにそういう提案をしようと思ってました!」
「じゃあ超がつくほどエロい女にモテたいな。めちゃくちゃ強い女とかな」
「強い女? それはなぜ?」
「強い女が嫌がっているんだけど、快楽にはめっぽう弱い、みたいなのが好きなんだよ。で、しっかり感じまくって涙と涎で顔ベタベタにするみたいなのが癖なんだわ、俺」
普段、酔っていたってこんなことは言わないし、初対面の相手と何喋ってんだって感じだが、夢ならいいだろう。
「じゃあ女性の皆さんはアキトさんより強い方がよさげですね」
「おう。もうみんな俺より強くていいわ」
勢いで喋る俺に女神が「ふむふむ」と顎に手を当てる。
「あとはモテたいならライバルは少ない方がいいのでは?」
「女神様は頭いいな。うん、俺以外の男は極力いなくていい」
「それならアキトさんの要望とも一致するし……あ、言語は弄った方がいいかな? あとステータスも見られるようにしとこ」
女神が俺の言葉を聞きながら、タブレットを操作するかのように虚空を指でなぞる。
「ていうか結局チート能力は?」
「それが一番難しいんですよね。アキトさんはどんな能力がいいんですか?」
「チートはチートだって」
「具体性がないんですけど。もう少し意見がほしいです」
「じゃあその世界で俺だけが使えるスゴイ能力だな」
我ながらめちゃくちゃなことを言ってるなと思う。
まあ夢の中なのだ。何を言おうが自由だ。
「アキトさんより強くて、女性を快楽堕ちさせられて、世界唯一の能力……なるほど、これならスキルを形にできるかもしれません」
「へえ、どんな能力になりそうなんだよ?」
「せっかくなのでそれは転生先で確認してみてください」
女神がウインクする。
「では今お話した内容でよろしいですね、アキトさん?」
「んー、いいんじゃない?」
「それではこれで『契約成立』とさせて頂きます」
不意にまぶたが重くなって、視界が真っ暗になる。
「いってらっしゃいませ」
世界が暗くなっていった。
これから朝が来て、夢から覚めるのだろう。
缶に押しつぶされたのも、夢だったのだ。
またいつものように退屈でしんどい現実が始まる。
少なくとも俺はそう思っていた。
そして俺は、本当に異世界に転生した。
転生後、実に二十年近く経過して、唐突に前世の記憶を取り戻した。
「がはっ……!」
そして俺は記憶を取り戻して間もなく、赤い瞳を輝かせた淫魔に腹を剣で貫かれた。
腹に痛みと熱さを感じながら、脳裏をよぎったのは女神との対話だった。
たしかにあの女神は俺の要望にしっかりと応えてくれていた。
ただし俺が望んだそれとはまったく別の形で。
口に広がる血の味を感じながら心底後悔した。
もっとしっかり考えればよかった、と。
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