※この作品はR-18です。

俺の性癖のせいで淫魔が支配する貞操逆転異世界で、自分をボコボコにした強い女たちが奴隷になるチートスキルでハーレムができてた   作:ショムカオルコ

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投稿ミスしてましたので再投稿します


2話 俺の性癖のせいで歪んだ世界とチートスキル発動条件

 

 

 俺が前世の記憶を取り戻したのは、異世界転生してから実に20年が経過してからだった。

 

 

 俺は異世界に転生してから四年後、魔物の集団に襲撃され、故郷を滅ぼされた

 この世界での家族も失った。

 

 命からがらなんとか逃げた末、森でドワーフ族のオヤジに拾われ、特殊な結界で覆われた集落で16年間過ごし、今日まで平和な生活を送ってきた。

 

 俺は集落で地道に剣の鍛錬を積んできた。

 

 俺の全てを奪った魔物たちに復讐するため、というわけではない。

 

 俺は根がのんびり屋なのか、あるいはただ単に薄情なだけなのか、復讐に燃えるなんてことはなかった。

 ひらすら修行と筋トレに明け暮れ、剣術を磨いたのも集落ではやれることが限られていたという部分が大きい。

 

 このままのんびりとここで生きていこうと思っていた俺だったが、何の前触れもなく急に前世の記憶が蘇った。

 しかも20年以上前のことのはずなのに、昨日のことのようにくっきりと思い出せる。

 あの女神との会話も含めて。

 

 

 ガチで転生してんじゃん、俺……!

 

 

 しかしすでに転生から20年近く経過するというのに、外界に行ったことがないせいでこの世界のことが全く分からなかった俺は、まずは一番近くの街に行こうと思った。

 記憶が戻ったら急に外の世界を見たくなったのだ。

 

 思い立ったら吉日。善は急げ。

 俺は、ドワーフたちと感動の別離を果たして早々に冒険に出ることにした。

 

 とりあえず俺はこの世界のことを本当に全く知らなかったので、まずは集落から一番近い街、ミストラリアへ行って情報を集めることにした。

 その道中で魔物と交戦していて、ふと俺は思った。

 

 ……なんか俺、そんなに強くないのでは?

 

 15年にも及ぶ修行で俺は確かに強くなったが、それは堅実な強さであって、いわゆるチートスキルで無双するみたいなものではなかった。

 そもそも根本的な話として俺は魔術の類が使えなかった。

 

 剣とその他の小道具で泥臭く戦う、といった感じだ。

 

「待てよ、そういえばステータスって見られるんだっけ?」

 

 女神ミリルとの会話を思い出す。

 

 「ステータスオープン」

 

 そう宣言すると、手が光って青白い画面が浮かび上がる。

 

 

 

『アキト

 体力 Lv.30 100/100

 知力 Lv.20

 腕力 Lv.35

 魔力 Lv.1  100/100

 耐久 Lv.70

 

 特殊スキル

 

 ボコボコ Lv.100

 THE MEN Lv.0  』

 

 

 

 画面に浮かび上がった文字と数値を見るが、よく分からなかった。

 

 基礎的な能力に関しては……どうなんだこれ?

 基準となるレベルが分からないせいでピンと来ない。

 耐久だけやたら高いな、というぐらいしか言うことがない。

 

 そして、もっとも気になるスキル。

 

 こっちもスキル名が記載されていて、肝心の説明が『ボコボコにしよう!』としか書かれていない。

 

 なんだよ、ボコボコって?

 あれか? いざというときに敵をボコボコにするって感じのチートスキルか?

 ていうか『THE MEN』ってやつに関しちゃレベル0だし、説明もないから見当も付かない。

 

 色々雑にもほどがある。

 

「これじゃ何も分かんねえじゃねえか」

 

 これ以上は時間の無駄と判断して画面を消した。

 

 その直後。

 

 

「動かないで」

 

 

 背後から若い女の声がした。

 首筋にひんやりとした感触。おそらく刃物を突きつけられている。

 

 俺は慌てて両手を上げた。

 

 クソっ、ステータス画面に夢中になっていたせいで気づけなかった……!

 

「なんで男がこんなとこにいるわけ?」

 

 今度は正面から声がした。

 少し遅れて正面の木々の群れから、赤い髪をツインテールにした少女が姿を現した。

 どうやら俺は挟み撃ちにされたらしい。

 

「ここから一番近い街に向かうところだったんだ。ていうか男がここにいたらおかしいのか?」

 

 赤い髪の少女が目を丸くした。

 

「当たり前でしょ。男がこんなとこをほっつき歩くなんてありえない」

 

「そうなの? なんで?」

 

「はあ? なんでって、そんなの言うまでもないでしょ?」

 

 赤髪の少女が片眉を上げて訝しむ。

 ここは異世界だ。もしかすると根本的に常識が違うのかもしれない。

 俺は自分の身の上を打ち明けることにした。

 

「あー、俺、実は生まれてこの方、育った集落から出たことがないんだ。外の世界のことは全く分からない」

 

「故郷から出たことがない? ララ、どう思う?」

 

 赤髪が俺の背後へ視線を向ける。

 

「敵意はなさそうだしとりあえず話を聞いてみましょう、マオ」

 

 背後にいた女が俺の正面に移動した。

 

 俺は改めて目の前の二人を観察しながら、さっきとは違う理由で心臓がドキドキしていた。

 

 よくよく考えたら20年近く人間の異性と接してなかったんだよな。

 いや、こんな状況で下心全開なのもどうかと思うけどさ。

 

 しかも赤髪に関してはめちゃくちゃ可愛かった。

 年齢は俺より少し下ぐらいだろうか? 

 活発そうな顔立ちに、ツンとした青い瞳が印象的だ。

 胸元が大きく開いた黒のレザーチューブトップから深い谷間が見えて、ドキッとした。短めのホットパンツから覗く太腿がやけに眩しい。

 

 

「あたしはマオ・オーマ。こっちはララ・リルラ」

 

 赤髪ツインテールが隣の黒いローブを紹介する。

 

 もう一人は深くローブを被っているせいで鼻から下しか見えない。

 透き通るような真っ白な肌とキュッと結ばれた薄い唇。

 身長はマオより高め。

 右手には俺の首に突きつけていたと思われる仕込み杖が握られていた。

 

「俺はアキト。さっきも言ったように世間知らずだ」

 

 俺の自虐に対して二人は特に反応を示さなかった。

 

「じゃあここ100年で世界が淫魔に支配されかけてるってことも知らないわけ?」

 

「まったく」

 

 マオが呆れたような表情を浮かべながら、俺のことをジロジロと観察してくる。

 

「でも淫魔が支配してるからって、なんで男がここにいたらおかしいんだ?」

 

「当然でしょ。淫魔は男の精気を喰らう存在。世界中の男が淫魔の餌食になってるか廃人同然になってんの」

 

「廃人って……じゃあその廃人になった男たちはどうなってんだよ?」

 

「一昔前は病院が面倒を見てたらしいけど、今はよく分かんない。実験体として保護区に隔離されて非人道的な扱いをされてる、なんて噂は流れてくるけど」

 

「ええ……そんな悲惨な状態なの、この世界?」

 

 この20年間、外の世界のことなどつゆ知らず、ひたすら修行と筋トレに明け暮れていた俺はずいぶんな幸せ者だったのかもしれない。

 

「じゃあまさかこの世界に男はいないってのか?」

 

 「いないことはない」とララがポツリとつぶやく。

 

「無事な男たちはお偉いさんたちに手厚く管理されてるらしいわ。詳しいことはあたしらみたいな一般人には分かんないけど」

 

「いちおう大事にはされるってことか。いや、でもどうなんだそれ」

 

「あとは貴族たちに跡継ぎを産むためだったり、戯れのために買われてるとか。逆に男が自分からそういう連中に身売りするとかね」

 

 マオから話を聞けば聞くほど俺は眉間にしわが寄ってしまった。

 

 そこまでマオから話を聞いてから、俺はふと気になることができて質問した。

 

「でも、男にも強いヤツならいくらでもいただろ? なんで人間側が一方的にやられてんだ? そもそもこの世界ってそんなに大量に淫魔がいるのか?」

 

「……アンタ、本当に質問多いわね」

 

 俺の言葉にマオが露骨にうんざりした顔をする。

 

「じゃあ逆にこっちから質問。なんでだと思う?」

 

「んー、そうだな。男ってやっぱバカだからさ、淫魔の色仕掛けにやられた、みたいな?」

 

「あたし、まともに話したこともないから知らないけど、男って知能が低いの?」

 

 マオが首をかしげる。

 ちょっとしたリアクションがカワイイな、この子。

 

「いや、バカってそういう意味じゃないけど。まあいいや。ていうか淫魔ってどんな姿してんだ?」

 

「パッと見は人間と変わんない。でも翼としっぽが生えてるから区別は簡単につく。あとみんな目が赤い」

 

 マオの言葉を聞いて、俺は視線をローブで全身を覆ったララに向けた。

 

「だけど、それさえ隠せれば人間社会に溶け込めるってわけか」

 

 

 なんか割とヤバい世界に転生したんじゃないか、俺?

 

 あの女神、ミスとはいえこの俺を勝手に殺した挙句、こっちの要望にも全然応えられてねえじゃねえか。

 

 ……いや、考えようによってはあの女神は俺の要望にはしっかり応えてんのか?

 

 

 

『できれば超がつくほどエロい女にモテたいね』

 

 

 まだ分からないが、この世界ならこんな俺でも確かにモテるかもしれない。

 

 

『俺以外の男は極力少なくていいな』

『もう男女比なんて1:99ぐらいでいいんじゃね』

 

 

 この世界では男はほとんどいない。

 詳しい比率は知らないが、女の方が圧倒的に多い。

 

 たしかに俺の要望はしっかり通っている。

 

 ——ただし、淫魔が蔓延って男の大半がエサになったというとんでもない理由で。

 

 

「……ねえ」

 

 

 いつのまにかマオが顔を紅潮させていた。

 

「どうしたんだ? 体調でも悪いのか?」

 

 マオが青い瞳を潤ませて俺を見上げてくる。

 

「……あたしの中の男ってモヤシみたいなイメージだから、アンタみたいにがっしりしたのってなんか新鮮」

 

 マオは質問に答えなければ、なぜか俯いて俺の胸を愛撫するように撫でまわしてくる。

 

 な、なんだ? なんで俺の胸を触ってくるんだ? 

 ていうか急に色っぽくなったような?

 や、やばい……普通にドキドキしてきた。

 

「……マオ?」

 

 俺だけじゃなく、ララも雰囲気が変わってしまったマオに戸惑っているように見えた。

 

「さっきの話の続きだけど、人間側が一方的に支配された理由ってもう一つあるのよ」

 

 イヤな予感がした。

 マオが顔を上げた。唇が裂けそうな笑みを浮かべて。 

 

 

「シンプルに男より淫魔の方が強かった——ってことっ!」

 

 

 気づいた時には身体が宙を浮いていた。

 衝撃。腹に激痛が走って息が詰まる。

 ようやく自分がマオに腹を蹴られて吹っ飛んだことを認識した時には、背中から地面に叩きつけられていた。

 

 

「……お前、淫魔だったのか」

 

 痛みをこらえ、顔を上げてマオをにらみつける。

 

 マオの背中には鮮やかな赤い翼が広がっていた。

 よく見ると、翼の陰から黒いケーブルのようなしっぽが見えた。 

 

「そっ。だからわざわざアンタに近づいたのよ」

 

 

 そして、青い瞳は、血のような赤に染まっていた。

 

 

 

「で? わざわざ追いかけてきたのか? 俺に気があるなら最初からそう言えよ」

 

 軽口を叩く声が痛みでみっともなく震えていた。

 なんとか身体を起こして剣を構える。

 

「まさか。そもそもアンタの存在に先に気づいたのはララだったし」

 

 マオの視線が別の方向へ向けられる。

 ララもいつのまにか地面に伏していた。今の一瞬でララも気絶させたらしい。

 

「あと言い忘れてたけど、淫魔って翼やしっぽは隠せるの。こんなふうにね」

 

 マオの翼としっぽが手品のように一瞬で消える。

 念のため、ローブを着ていたララを警戒していたが、とんだ見当違いだったようだ。

 

 マオがゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。

 

 俺は地面を蹴ってマオに飛びかかった。

 だが、あまりに戦闘能力に違いがありすぎて勝負にならなかった。

 単純な運動能力でも開きがある上、俺の剣は空中を自由自在に飛ぶマオには届かなかった。

 

 それでもなんとか作り出したスキをついて、隠していたナイフで切りつけようとしたが、それも翼で弾かれてしまった。

 

「む・だ」

 

 何もできずに今度は顔面を殴られて地面に転がる。

 

 

 

 どうやらあの女神様はしっかり俺の要望に応えてくれたようだ。

 

『じゃあ超がつくほどエロい女にモテたいな。めちゃくちゃ強い女とかな』

 

『じゃあ女性の皆さんはアキトさんより強い方がよさげですね』

 

『おう。もうみんな俺より強くていいわ』

 

 

 クソっ!

 なんで俺はこんなことを言ったんだ!?

 要望が通ったせいで見事に俺より強いじゃねえか!

 

 

「んっ……♡ これが男の匂いなんだ。いい匂いとは違うけど、クセになりそう……」

 

 マオが俺の腹に跨り、鼻先を首元に近づける。

 こんな時でも俺は無意識にマオの谷間を見てしまっていた。

 

「せっかくだから味見してあげる」

 

 とっさに抵抗しようとしたものの、なぜかマオの赤い目に見つめられると全く動けなくなった。

 

 これは淫魔の能力なのか?

 

 マオは俺の上半身に自分の胸を押し付けるように密着してくる。

 むにゅっとした感触が伝わって、俺はビクッとしてしまった。

 

「んっ——!?」

 

 マオがキスしてきた。

 柔らかい唇が密着して、甘い吐息とともにねっとりと舌が割って入ってくる。

 

「んっ♡ んちゅっ……♡」

 

 マオが舌を俺のそれに蛇のように絡ませる。

 脳に直接快感を叩きこまれるような気持ちよさに、俺は無我夢中で舌を動かした。

 

「んっ♡ ぁっ♡ キスってこんなに気持ちいいんだ……♡」

 

 マオがうっとりと呟くと、再び俺の唇を奪う。

 

 しかしキスが続けば続くほど手足の力が抜け、腹の底が冷えるような恐怖に襲われた。

 命そのものを吸われているような感覚。

 全身の血液が凍り付いて目の前が暗くなっていく。

 

 ヤバいぞこれは……!

 こんなのが5分も続いたら間違いなく俺は正気を失う。

 

 

「ぷはっ……アンタも気持ちよさそうね。あはっ、どうしよう、もうこの場でしちゃおうかな……♡」

 

 濡れた唇をぺろりと舐めたマオがホットパンツに手をかける。

 しかし、そこで動きを止めた。

 

 俺の全身が青い光に包まれた。

 自分の身体の内側で何か強い力が生まれるのを感じた。

 

 ようやくここに来て俺のスキルが発動するのか!?

 

 

 —— 契約条件未達 ・ 契約不履行 ——

 

 

 脳内に無機質な音声が流れる。

 それ以上は何も起きない。

 

 まさかあの女神……スキルの設定をミスったのか……?

 

 このクソがつくほどピンチな状況でスキルが不発に終わったことに絶望的な気分になる。

 

「はやく逃げて……! ララを連れて……!」

 

 マオが俺を見下ろして苦悶の表情を浮かべていた。

 よく見ると、真っ赤に染まっていた赤い瞳にわずかに青が混じっている。

 

 さっきまでの余裕ぶった笑みは消えていた。

 俺を見下ろすマオの顔には、何かに必死で抗っているような苦しさが滲んでいた。

 

「早く……! あたしがあたしである、うちに……!」

 

 マオが俺の腹からどいて、ふらふらと近くにあった木にもたれかかる。

 

 マオの言動は支離滅裂だった。

 まるで誰かに操られているのに必死に抵抗しているようにも見えた。

 

 

 ……もし本当にそうだったとしたら?

 

 

 今のマオの状態は誰かに操られている、もしくはそれに近い状態だとしたら?

 じゃあなぜマオは一瞬、正気に戻った?

 

 俺は必死に頭を回転させた。

 どうすればこの状況を切り抜けられる?

 

 ここまで歪で俺が想像していた形と違うとはいえ、女神は確かに俺の要望を叶えてくれている。

 

 

 もしチートスキルの発動条件もとんでもないものが設定がされてるとしたら? 

 

 女神との会話。

 ——そう、俺は確かに女神にチートスキルを望んだ。

 

 マオが正気に戻った瞬間の俺の状況。

 あの瞬間、俺は間違いなく生命の危機に直面していた。

 

 

 脳内に響いた無機質な音声の内容。

 ——あの声は契約条件未達と言った。では契約条件を満たすには何が必要だ?

 

 

 ステータスの耐久レベルだけがやたら高かった理由。

 スキルの名前——『ボコボコ』。

 

 

 説明は『ボコボコにしよう!』。

 

 

「……一か八かだな」

 

 俺は答えを出した。

 自分が出した答えに手が震えて、変な笑いがこみ上げてきた。

 なにせ、これからやろうとすることは仮説が間違ってたらまず間違いなく死ぬからだ。

 

 俺は立ち上がった。

 地面に転がっていた剣を拾い、苦悶の表情を浮かべているマオに握らせる。

 

「なにやってんのよ!?  早く逃げろって言ってるでしょ……!」

 

「頼みがある。これで俺を斬ってくれ」

 

「……は?」

 

 マオが理解できないという顔をする。

 俺もマオの立場だったら同じ顔をしただろう。

 

「それでこの状況を好転させることができる、たぶん」

 

「たぶんって」

 

「じゃあ絶対だ」

 

「で、でもそんなこと言われても……!」 

 

「うるせえ、さっさとやれ!」

 

 気づいた時には怒鳴っていた。

 少なくとも今の俺が思いつく手段はこれしかなかった。

 

「お前はエロいことしか能がないのか、この色ボケ淫魔!」

 

「……バカな男。だったらアンタの望みどおりにしてやるわよ」

 

 俺の怒声に文字どおり、マオの目の色が変わった。

 血の色に染まった目に明確な殺意が灯る。

 マオが俺の腹目がけて剣を繰り出す。

 

 剣先の動きがやけに遅く見えた。

 

 そして。

 

「がはっ……!」

 

 赤い瞳を輝かせた淫魔に腹を剣で貫かれた。

 

 あまりの激痛に視界が赤と黒に明滅する。

 マオが追い打ちと言わんばかりに腕を捻って傷口をえぐってくる。容赦なく剣を腹から引き抜く。

 地面が迫ってくる。もう立っていることもできなかった。

 腹から夥しい量の血が流れ、手足の先が冷えていく。 

 

 

 あれ? 何も起きない?

 うそだろ? もしかして俺の推測は完全に外れたのか?

 あ、これ、冗談抜きで死ぬ。

 

 まさか死ぬ? 

 前世では缶に押しつぶされて死んで、転生したら自分から剣で刺されてまた死ぬ?

 

 冗談じゃない。ふざけんな。

 こんなところで死ぬなんて絶対に許せない。

 

 その時、脳内であの無機質な音声が響いた。

 

 

 

 —— 契約条件達成 ・ 契約履行 ——

 

 

 

 腹に痛みと熱さを感じながら、脳裏をよぎったのは女神との対話だった。

 口に広がる血の味を感じながら心底後悔した。

 

 もっとしっかり考えればよかった、と。

 

 たしかにあの女神は俺の要望にしっかりと応えてくれていた。

 ただし俺が望んだそれとは全く別の形で。

 

 

 ——世界の片隅で女神から授かった力が青い光となって輝いた。

 

 

 暖かい光に包まれると同時に、傷が急速に癒えていくのが分かる。

 

 同時にマオも俺と同じように光に包まれていた。

 

 

 ——スキル『ボコボコ』発動。

 ——マオ・オーマとの主従契約成立。

 ——契約成立インセンティブ『完全治癒』発動。

 ——マオ・オーマにサブスキル『絶対命令』『ステータス開示』が使用可能になりました。

 ——新スキル『タッチ&ドレイン』が使用可能になりました。

 ——『タッチ&ドレイン』にオプション効果『快楽付与』が追加されました。

 

 

 無機質な声が矢継ぎ早に喋ってくる。

 いや、そんなに一度に覚えられるかっ!

 

「アンタ、何したっていうの? なんであの傷で平気でいられるっていうの!?」

 

 マオの瞳は相変わらず赤いままだった。だが、目に見えて大きな変化があった。

 

 身体を覆うほどの大きさだった翼が手のひら程度のサイズにまで萎んでいた。

 

「言ったろ、俺を斬ってくれれば状況が好転するって」

 

「答えになっていない……!」

 

 マオが剣を俺に向かって構える。

 やっぱり今のマオと、さっきまでのマオはまるで別人だ。

 

 ステータスオープン、と呟いて素早く自分のステータス画面から追加されたスキルを確認する。

 

 サブスキルとは、スキル『ボコボコ』で主従契約が成立した相手にだけ発動できるスキル、らしい。

 そして『絶対命令』の仕様を読む。一行しか説明はなかったがこのスキルに関してはこれで十分だった。

 

 怒りに任せてマオが俺に向かって突撃してくる。

 だがその剣が俺に届くことはなかった。

 

「マオ、動くなっ!」

 

 マオがまるで時が止まったかのように、剣を振り上げた体勢で固まってしまった。

 

「からだがっ……!? アンタ、何をして……!?」

 

 今度のスキルはあっさり発動した。

 『絶対命令』のスキルだ。

 

「さあ? 俺は命令しただけだからなんとも。お前が勝手に固まってんだろ?」

 

「さっさと解放しなさいよっ……! 精気を吸い尽くしてやるから……!」

 

「あ、そういうこと言うんだ? じゃあマオ、おすわり」

 

 怒りの形相でにらんでくるくせに、マオは俺の言葉に従って体育座りした。

 

「んもぅっ! なんなのよさっきから!? なんでアンタの言葉に従っちゃうわけ?」

 

 だんだん楽しくなってきた俺だった。

 だけど、このままではいつまで経ってもマオを元に戻せない。

 

 俺のことを体育座りで罵倒しているマオを無視して、顎に手を当てて考える。

 

「そういえば……マオのステータスオープン」

 

 もしかしたらと思ったが、やはりマオのステータスを見ることに成功する。

 身長、体重から身体能力やら色々と表示される。

 ていうか、俺本人のデータより妙に細かく表示されてるんだが? いや、とりあえずそれはいい。

 

 そして、スクロールして俺は目当ての項目を見つけた。

 

 『状態異常:淫魔化』

 

 淫魔になっているのは状態異常扱い。

 この表示が真実なら、おそらくマオは人間だ。

 

 再び俺はステータス画面をスクロールして最初の項目に戻る。

 

 『魔力Lv.20 320/100』

 

 明らかに魔力の項目だけおかしくなっていた。

 現在の魔力値が最高値を大きく上回っている。

 

「ってことは……」

 

 いまだに律儀に俺の指示に従っているマオを見た。

 今、俺が使える最後のスキルは『タッチ&ドレイン』。

 ここから導き出せる結論は一つしかなかった。

 

「いつまでこうしてるつもり? いいかげん飽きてきたんだけど?」

 

「安心しろ、マオ。ここから先、お前が退屈することはない」

 

 そう、お前は退屈することはない。

 なぜならここから俺は、お前の身体をひたすら触りまくるからだ。

   

 

 




ここまで読んでくださってる方、ありがとうございます!
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