俺の性癖のせいで淫魔が支配する貞操逆転異世界で、自分をボコボコにした強い女たちが奴隷になるチートスキルでハーレムができてた 作:ショムカオルコ
「冒険者ギルドが存在しない?」
俺は驚きのあまり、持っていた木製のコップを落としそうになってしまった。
「うん。あたしは聞いたことない。ララ、知ってる?」
マオは皿に盛った大量のパンに大量のシロップをかけつつ、ララに話題を振った。
「……私も」
ララは朝がよほど苦手なのか、寝ぼけ眼で喋りながら船を漕ぐ始末だった。
「で、結局その冒険者ギルドってなんなのよ?」
よくよく考えると俺自身も冒険者ギルドがなんなのかよく分かってなかった。
ただ異世界転生モノにはたいていあるので、この世界にも間違いなくあるだろう、ぐらいの認識だった。
「仕事を斡旋してくれる仲介所みたいなところ、かな? そこに所属してりゃどこの街でも仕事が引き受けられるっていう」
「仕事って、どんな仕事があるわけ?」
「魔物の討伐とか護衛任務とか?」
マオがかじったパンをしっかり咀嚼してから質問してきた。
「なんか曖昧ね。だいたいその冒険者ギルドがあったとして、誰でもなれるわけじゃないんでしょ?」
「いや、たぶん個人情報を登録して登録料みたいなもんを払えば所属できると思う」
「冒険者の身元の保証はどうやってやるわけ?」
「それは自己申告なんじゃないか?」
「登録があればどの街でも働けるってことは、国家規模の組織ってことでしょ? それでそんな杜撰なことある? 冒険者なんて渡り鳥で構成された組織、まともに管理できるとは思えないけど」
「……言われてみりゃ、たしかにそうだな」
マオの鋭いツッコミが不動産屋時代の上司の詰め方に似ていて、たじろいでしまう俺だった。
「まあどっちにしても、このご時世に見知らぬ人間をホイホイ受け入れてくれる組織なんてなかなかないわ。一歩間違えれば、淫魔の巣窟になったっておかしくないし」
「ああ、そうか、その気になりゃ人間と全く同じ姿になれるんだもんな」
俺は巨大なパンに噛り付くマオを見て、ふと2日前の情事の最中にした会話を思い出した。
◆
マオとの行為が一段落つき、俺はマオが淫魔になった経緯を尋ねた。
『分からない。気づいたら翼としっぽが生えてた』
そう答えるマオの顔には色々な葛藤が見え隠れしていたので、俺はあえて軽い調子で励ました。
『今はなんともないんだろ。それに、いざとなりゃ俺ならお前を止められるし、ムラムラしたらそれも俺が解消してやるって』
『……アンタって気づかいが下手よね。まっ、セックスが気持ちよかったのは認める』
『ほほう? 案外素直だな?』
『勘違いしないで。男の割には、ってことよ』
『男の割には、か。淫魔が蔓延るこの世界で生き残るために、ほとんどの男が精気や性欲を失った。すごい話だよな』
前世の記憶がある俺としては正直信じられなかった。
もっとも、よくよく考えれば俺も記憶が戻るまでは、いわゆるムラムラするという状態になったことはただの一度もなかった。
『でも、あたしのお婆ちゃんが言ってたけど、それもおかしな話だって』
『そうか? ようは今の世界に適応したってことだろ?』
『だって淫魔が台頭したのはここ100年ぐらいの話よ? たかだか100年で生物としての根幹を揺るがすような変化が起きるって、生物学的に考えておかしいでしょ?』
マオの言うとおりだった。
密着しているマオから伝わるぬくもりとは真逆の悪寒が、背筋を流れていく。
窓を叩く風の音がやけに耳についた。
今まで俺はまだこの世界のことを、どこか他人事のように考えていた。
この異世界がこんなふうになったのも、全ては女神・ミリルが理を捻じ曲げたせいだから、だと。
しかし、原因をたどっていけば、この世界がこうなったのは他でもない、俺の願望のせいだ。
俺は唇を噛んだ。
——ありがとう、アキト
マオの言葉は今も俺の胸を満たしてくれている。
同時に、俺が今いるこの場所が、俺の生きている世界なのだと胸に訴えてくる。
じゃあこの世界で生きる人間として、この世界を歪めてしまった俺は、いったい何ができるだろうか?
この世界のことをもっと知ること。
そして、そのためには情報と金の両方が必要になってくる。
俺は頭の中で思考をまとめながら、マオの背中に腕を回して目を閉じた。
◆
俺は昨日、改めて自分の状況を整理した。
そのためには生活の基盤と信用を築いていく必要がある。
もちろん、金も必要だ。
本当は昨日から動きだしたかったが、マオは仕事で一日中宿を空けていたし、ララもまだ先日のダメージが残っているのか、ただ単に昼夜逆転してるのか、部屋からほとんど出てこなかった。
一人で街に出れば、男である俺は無駄に悪目立ちした。
街行く人に色んなお誘いを受けたり、質問攻めにあったり。
男の社会的立場や価値観を改めて知ることはできたが、目立った収穫は無し、といったところだった。
そして、朝食で三人揃うのは今日が初めてだった。
「冒険者ギルドの話は忘れてくれ。ていうか、二人って何の仕事してんだ?」
「あたしはカーペンター。最近の仕事は専ら家屋や建物の修繕ね」
「へえ。マオは職人なのか。すごいな」
ついつい俺はもといた世界の常識でそう言ってしまった。
「一昔前はカーペンターの女なんていなかったらしいけど、それこそ今じゃ考えられない話ね」
俺も仕事柄、職人とは一緒に仕事をしてきたせいか、ついマオに親近感を覚えた。
「じゃあララは?」
「……はふひひ」
「とりあえずパンを食ったまま寝るな」
ララはパンをかじったまま眠ってしまっていた。
逆に器用だな、コイツ。
「あれ、言わなかったっけ? ララは魔具技師。魔術に関する武器や装飾を作ってる」
「じゃあララも職人と言えば職人なんだな。ていうか魔具ってのはどういうのなんだ?」
興味本位で聞いただけだったが、それまで夢うつつだったララの目が突然かっぴらいた。
「興味があるなら教えてあげるわ」
「急に元気になったな。まあ実際興味あるから教えてくれよ」
「簡単に言えば、魔力を流しさえすれば、あらかじめ組み込んだ魔術が使える道具ね。たとえば、こんなふうにね」
ララがローブの袖から一本の木の枝を取り出して、それを俺の前で軽く振って見せた。
「……これは?」
木の枝が青く光ると、長さ三十センチほどのモクモクとした煙が現れた。。
ララはその煙の両端を掴んで円を作ると、俺の口に押しつけた。
「……なんだよこれ?」
「煙の髭よ」
俺の口周りにまとわりつく白い煙は、見ようによっては確かにサンタの髭のように見えなくもない。
「いや、そうじゃなくて」
「それは質量を持った煙。で、これがその煙を出すことができる杖」
「……へえ」
俺が何とも言えないリアクションをすると、マオが俺の髭をつついてきた。
「ララの魔具は実戦では使えないタイプのが多いけど、熱心なファンはいるのよね」
「ただ殺傷性が高いだけの魔具なら、私が作る意味なんてないわ」
ララが物造りの職人としてはけっこう面倒くさいタイプであると、俺の直感が言っていた。
「まあ実体のある煙っていうのはすごい気がするけどさ。杖っていうよりそこらへんに転がってそうな木の枝じゃね、これ?」
「あえてデザイン性を削ぎ落としてることが、この杖のデザイン性なのよ」
口調も表情も大きな変化はないが、無駄にこだわりが強い職人特有の雰囲気がララの全身から立ち上っていた。
俺がなんとも言えない表情をしていると、マオがおかしそうに笑った。
「ララの感性は独特だから。まっ、あたしも職人の端くれとして、分からなくもないけどね」
「……俺には分からない世界かもな。でも、最初はただの木の枝にしか見えなかったけど、特殊な魔術が使えるアイテムだって考えたら、逆にオリエンタルな気がしてありかもって気がしてきた」
半分は本音で半分はおべっかだった。
ただ一般的な魔術が使えない俺にとって、魔具が魅力的に映ったのは事実だった。
「もしかして私の作品に興味があるの?」
ララが少しだけ前のめりになった。
「俺は魔術が使えないからさ、そりゃ魔術が使えるようなる道具ってなりゃ気になるよ」
ついつい不動産屋時代のクセで、会話を広げようとしている自分に内心で苦笑いしてしまった。
さっきまでパンをくわえたまま眠っていたとは思えない機敏な動作で、ララが新しい木の枝、もとい杖を取り出して俺に手渡してきた。
「これに魔力を流してみて。魔力の流し方は分かる?」
「なんとなくな」
淫魔化したマオから『タッチ&ドレイン』で魔力を吸収した時の感覚を思い出す。
アレの逆を意識してみることにした。
その結果。
「ぐへぇ!?」
杖が爆発した。
「だ、大丈夫!?」
「ごほっごほっ! な、なにが起きたんだ?」
爆発と言っても俺の顔が煤まみれになる程度の威力だったが、それでも被害があったことには変わりなかった。
マオがそこらへんに置いてあったバケツの中の布で俺の顔を拭いてくれた。
「……おい、これ雑巾じゃねえのか?」
「ふきんで拭いたら使えなくなって宿に迷惑でしょ。ほら、こっち向いて」
「おい」
「ていうかララ、杖に何か施してたでしょ?」
マオが俺の顔を拭きながら、ララに質問する。
「盗難対策に私以外の魔力が流れたら爆発するように設定しておいたの」
「お前なあ!」
「……ごめんなさい」
ララが申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
「重ね重ねごめんなさい。普段はこんなミスは絶対にしないのだけど」
「ララがこの手のやらかしをするのはよくあることで、悪気はなかったの。許してやってくれる?」
「よくはないわ。3回に1回程度の割合よ」
じゃあこの手のミスはしょっちゅうしてんじゃねえか、と思ったがとりあえずそれは言わないことにした。
「……顔も髪も洗えばたぶん大丈夫だからいいよ。それにララには金も借りてるしな」
まだシュンとしているララに気をつかい、俺は質問した。
「……ちなみに今の杖、本当ならどんなふうになってたんだ?」
ララは得意げに胸を張ってみせた。
「魔力を流すと爆発するのよ」
「結局爆発じゃねえかよ」
そんなやりとりをしながら、俺たちの朝の時間は平和(?)に過ぎていくのであった。
◆
「で、結局何の話をしてたんだっけ?」
マオが仕切り直しといった感じで質問を振ってきた。
「俺、仕事を探してんだよ。なんか俺みたいなヤツでもできそうな仕事ってないか?」
「そもそもアンタって何ができんの?」
「戦う、剣を振る、筋トレかな」
「……アンタ、今までどうやって生きてきたのよ」
マオが呆れた表情になる。
ドワーフの集落にいる分にはこれで生きてこれたのだ。
「武器の手入れや料理、狩猟もできなくはないけど、仕事にできるレベルではないだろうな」
「難しいわね。あたしみたいにアソシアから仕事を斡旋してもらうってのも、たぶん無理だろうし……」
「アソシアってなんだ?」
「簡単に言うと、専門家の集いね。さっきアンタが言ってた冒険者ギルドとは逆で、身元がしっかり保証された人間だけが入れる組合のようなものよ」
「じゃあどっちにしても俺は入れないじゃん」
「所属してる構成員の紹介があれば、面談ぐらいはしてくれるって聞いたことがあるけど、違ったかしら?」
コーヒーにミルクと大量の角砂糖を投入しているララが質問する。
「結局は組合によるからなんとも言えないのよね。それに紹介はする方もされる方も、案外しんどいしね」
マオの言うことはごもっともだった。
紹介した人材の人間性や仕事のデキが、そのまま自分への評価にもなるからだ。
俺は天井を仰いだ。
べつに俺は異世界に来てまで労働に全力を注ぎたいわけではない。
しかし今みたいにララとマオから金を借りないと生活ができないような状況からは抜け出したい。
俺が、こうなったらしらみつぶしに仕事を探して街を練り歩くか、と考えていると、
「……さっきのお詫びってわけじゃないけど、私の客をあなたに紹介する、っていうのはどうかしら?」
ララがそんな提案をしてくれた。
「明日の午後から会う約束をしてる方がいるの。もしかしたら仕事にありつけるかも」
「それはありがたい。ぜひ」
「じゃあ私は一眠りするから。あと、これ」
「……これは?」
「お詫びの杖」
「いや、杖はもういいよ」
「遠慮しないで」
遠慮してねえよ、と俺が言うより先に無理やり杖を押し付けたララは、部屋に戻って行った。
「アキト」
「ん?」
二人きりになると、マオが少し頬を赤くして上目づかいで俺を見た。
「仕事、見つかるといいわね」
「そうだな」
「あと、さっきはキツく言いすぎたかも」
「なんの話だよ?」
「冒険者ギルドの話。あたしが喋ってる時、アンタがけっこうイヤそうな顔してたから」
「気にしなくていいって。昔のイヤな思い出がチラついただけだ」
マオが意外とよく見てることに感心する俺だった。
「……あたし、仕事は午後からだし、アキトも今日は時間があるってことよね?」
「そうなるな」
対面に座っているマオがテーブルの下で、俺の足に自分の足を絡めてきた。
「じゃあ、部屋でこの間の続き。いいでしょ?」
ぶっきらぼうにマオが短くそれだけ言ってきた。
もちろん、大歓迎だった。
もちろん、この日も俺はたっぷりとマオを気持ちよくさせて、俺も気持ちよくさせてもらうのだった。