あずきちと風真は結婚した
みんなにも盛大に祝福して貰って
本当に幸せだった
風真達に赤ちゃんが授かれなかった頃までは
「今日もダメだったでござるか…」
「…ごめんね、いろはちゃん。」
「そんな!あずきちが謝る事じゃないでござる!」
夜の性活に不満は無かった
初めての頃程激しくはないけれど、それでも一日に何度もする程度にはまだ二人の情熱は衰えていなかった
不安になって病院に行って伝えられたのは、残酷な診断結果だった。
AZKiの精液では子どもが作りにくいというのだ
不妊治療をしても効果は無かった
根気よく続けていればと医者は言っていたが、先の見えない行為に焦燥感が二人を責める。
そうして悩みに悩んだ末に苦肉の策を選んだ
風真の、なんやかんや言いながらも頼っている総帥を呼んだ。
喫茶店にて
「いろはを抱いて欲しぃ〜?」
「うん」
「あずきち先輩、エイプリルフールはまだまだ先ですよ?」
「ラプちゃん、お願い。」
真剣な顔で話すAZKiに腹を括ったのか向き直る
一通りの事情を説明されるもラプラスの答えはNOだった
「我輩はあいつの上司だ、軽率にそんな関係になる事はできない。」
そもそもholoxは社内恋愛禁止って言ってるしなとコーヒーを啜る
その後アッツ!苦っ!と言って慌てて角砂糖とミルクを追加した事は偉大なる総帥の名誉の為消しておく
「断る理由はそれだけ?」
どこか煽る様に、核心をつく様に鋭い響きを持ったその言葉は。
正確に逆鱗を突いた
力強く拳が叩きつけられる
「我輩が…我輩がどんな思いで身を引いたかわかってるのか…?」
「あずきち先輩…あなたになら任せて良いって…そう思って…」
「我輩の…この気持ちは…やっと諦められたのに…!」
重い沈黙が店内を包む
「…お願い」
「あなただから、頼んだの。」
へにゃりと、どうしようもなく諦めてしまった顔で微笑み同意書を出す。
ほんの少しの逡巡の後
「…わかった」
ラプ殿はその書類に判子を押して。
そうして、風真はラプ殿に抱かれた。
ラプ殿との初めては、優しかった。
その手つきはあずきちの様に、風真を慈しんでいた。
お願いしてるのは風真達の方だ、ラプ殿が望めば膣中に出してくれれば好きな行為もさせられるし好きな言葉を囁かせる事も出来るだろうに。
つぅと頬を流れたのは
風真の涙かラプ殿の涙か、汗かどうかもわからないほどに深く混ざり合って。
何度も、何度も、膣に出された。
そうして風真の初めての公認浮気は終わった
その後も、何日か会った。
昼はあずきちといっぱいイチャイチャして
そうして夜に、ラプ殿と出会う。
そして種を付けて貰った
ある時は甘やかす様に、ある時は少しだけ乱暴に。
乱暴にして欲しかったのは風真が望んだのだ、ラプ殿は優しいから傷は付かなかったけど。
ここにはいないあずきちへのあなた以外の人で感じてしまっている後ろめたさと狂おしいほどの愛を感じるのにそれを返す事が出来ない目の前のラプ殿への罪悪感で潰れてしまいそうで
自傷するかのように行為への快楽にのめり込んで
悲しげな顔をするラプ殿に、そんな顔をして欲しくなくて。
一度だけ、
一瞬目を見開いたラプ殿はそのまま顔を近づけて、深く、深く、一度きりの口付けを味わった。
その後はただ、獣のように貪りあった。
二人とも言葉はなかった
そんな生活を暫くして
効果は直ぐに出た、残酷な程に早く。
「…あ!」
検査薬の示す反応は陽性だった
それは同時に、ラプ殿の役割も終わる事を意味していた。
「ありがとう、ラプちゃん。」
スッと懐から封筒を差し出すが
「だけど、これは受け取れないです。」
封筒を返す
「我輩が、我慢出来ずにいろはを襲った。」
「それだけの事です」
目を見開くAZKiに
逆にラプラスが封筒を出す
中に入っていたのは、人を一人育てるには十分な量の大金が入った通帳といろはのクビを伝える書類一式だった。
「これ…!」
「holoxで社内恋愛は御法度」
「ましてや総帥が部下を襲ったなんて事、バレるわけにはいかないだろう?」
「我輩は悪い総帥だからな、証拠隠滅させてもらう。」
「違う!」
「違うよ…!ラプちゃんには、私達が頼んで…!」
「いいえ」
「これで良いんです、我輩の気持ちは区切りがついていたから。」
「だからこれはケジメなんです」
「お幸せに、いろはをどうかお願いします。」
「待って…!」
追いかけて扉から出る時には、魔法でも使ったのだろうか痕跡もなく消えていた。
数日後、holoxは新たな星を目指して立ち去ったという事が流れて来た。
いろはの子どもは無事に産まれて、母子共に健康だ。
全部が終わった後にいろはちゃんに諸々の書類と共に同封されていた用心棒へと書かれた手紙を渡した
手紙を読んだいろはちゃんが「…そっかぁ」と一言呟いてふるふるとか弱く啜り泣いているのを私はただ背中を摩って慰めた
手紙の内容は見ていない
それはきっと、二人だけの物だから。
一人目の子が順調に育って暫くした後、根気よくいろはちゃんを抱き続けてとうとう二人目が出来た。
すくすくと育つ一人目の子にはいつか真実を話す時が来るのだろうか
未来は誰にもわからない
だけど今は
「あずきち」
「なぁに?」
少しずつ大きくなってきたお腹を抱えたいろはがふっと遠くを見た
「…幸せでござるな」
「…そうだね」
この幸せを、噛み締めていよう。