―――合奏練習が続く中、ある日滝先生に問われた。
滝「前にも話したはずですよ。この部分は何を表現しているんですか? 中世古くん。」
珂織「……煌めく星々の光をかき消すかのように、より激しく美しく光り輝き夜空に浮かぶ三日月の如し…と言ったところです。後は…ひたすら情熱を以て吹くことを心掛けています。」
滝「……良い表現ですね。彼の言うように自由奔放で恥ずかしげもなく、ここの音は軽やかにそして勇ましく…そして情熱的に…わかりますね?」
「「「「「はい‼」」」」」
休憩に入る。
「驚きました。先輩って詩人の才能あるかもしれませんね。」
聞き覚えのある声。
珂織「思ったことを口に出しただけですよ。褒められることでもありません高坂さん。」
麗奈「でも情熱っていうのはよくわかりました。先輩の演奏は聴く者を熱くさせるものがあります。」
珂織「恐縮です。」
一礼した。
麗奈「……相変わらず謙虚ですね。もっと自信を持ってください。」
珂織「自信、ですか…。難しいですね。善処します。」
麗奈「もう…! 前途多難ですね。失礼しました。」
香織「……。」
呆れられてしまったのだろうか、でも難しいものは難しい。彼女の助言も俺のためにはならなかった。何だか申し訳ない気がした。部活が終わる。昇降口に人影。香織だった。
香織「高坂さんに褒められて られてるところ見ちゃった。」
珂織「我ながら情けない先輩だと思うよ本当に。」
麗奈「それだけ期待されてるってことだよ。演奏の時はまるで別人だもん。」
珂織「そうなの?」
香織「そうだよ。あ、6月5日って用事ある?」
珂織「ないよ。」
香織「あがた祭りって知ってる?」
珂織「名前だけは、行ったことはない。」
香織「一緒に行かない?」
珂織「あすかとか晴香はいいの? 後、後輩の子とか。」
香織「いいの。珂織とデートしたことないなぁって思って…どう?」
珂織「いいよ。お祭りなんて初めてだからワクワクしてきた。たまには別のもの食べるのもいいね。」
香織「普段何食べてるの?」
珂織「丼に炊き立てご飯を盛って常温のレトルトものと納豆かけて食べてる。」
香織「それだけ?」
珂織「うん。」
香織「栄養のバランス的にどうなの?」
珂織「病院で年に1回血液検査と尿検査やってるけど異常ないから大丈夫だと思うよ。」
香織「そう…ならいいけど…。じゃあお祭りの日は食べたいもの何でも言って! 私が奢る!」
珂織「こういうの普通逆じゃない?」
香織「独りで慎ましい生活してる男子学生相手のサービスだと思って! 遠慮は禁止!」
珂織「……わかった。お言葉に甘えさせていただきます。」
香織「うん、そうして!」
香織と分かれた。お祭りか…どんなものだろうと期待に胸が弾んだ。走って帰った。
6月5日、あがた祭り当日。北宇治高校最寄り駅。香織との待ち合わせ場所。早く来すぎたのでひたすら待っている。香織には申し訳ないがお洒落とは無縁の生活をしてきたので俺の恰好は緑色のノースリーブのシャツに黒のハーフパンツという飾り気の欠片もない服装だ。内心で香織に詫びた。視界に見慣れた顔が映る。
香織「ごめん⁉ 待った⁉」
珂織「俺が早く来すぎただけだから気にしないで。」
香織「それにしても…こうして見ると凄い体だよね。ナンパされてもついて行かないでね。」
珂織「こうすればついて行かないよ。」
手を繋いだ。香織が笑顔になる。美しい。
香織「ふふっ嬉しい! じゃあ行こっか!」
電車に乗って現地へと向かった。食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。
香織「食べたいもの決まった?」
珂織「焼きそばとたこ焼きが食べたい、本当にいいの?」
香織「気にしないで! 行ってくる!」
「「あ、かっちゃん先輩‼」」
珂織「傘木さん、鎧塚さん、と…ええと吉川さんでしたよね。お疲れ様です。」
希美「凄い体ですね…! ひとりですか?」
珂織「香織…トランペットパートの中世古香織と一緒に来てます。今、焼きそばとたこ焼き買いに行っています。」
優子「え⁉ ふたりって付き合ってるんですか⁉」
珂織「うーん…そうなような…そうでもないような…付かず離れずな関係と言いますか…でも今はデート中です。」
優子「……先輩も色々あるんですね。それではまた!」
希美「失礼します!」
去って行く3人を手を振って見送った。足音が近づいてくる。
香織「お待たせ!」
珂織「大して待ってないから気にしないで。」
ひと気のない道端に腰掛けて食べる。
珂織「美味しい⁉ 美味しい⁉」
香織「良かった! 本当に美味しそうに食べるね!」
珂織「食べる?」
香織「いただきます!」
容器と箸を渡す。香織が食べる。見慣れたはずだが唇が妙に色っぽかった。その後焼きそばを完食した。たこ焼きに移った。
珂織「美味しい⁉ 美味しい⁉」
香織「ふふっ良かった!」
珂織「食べる?」
香織「いただきます!」
たこ焼きも完食した。
珂織「はーやっぱりプロが作ったのものは美味しいね。」
香織「でしょ? 実は珂織にやってもらいたいものがあるんだけど…付いてきてもらっていい?」
珂織「いいよ。」
ついて行った。ここは…射的だ。
香織「珂織がやると絶対サマになると思うの⁉ やってみて⁉」
珂織「わかった。」
「兄さん凄いガタイしてるねぇ。マジモンの軍人さんかい?」
珂織「ただの高校生ですよ。」
ポカーンとしているおやじさんに料金を払い玩具の銃を受け取る。人形の上部に狙いを定める。撃った。グラグラと揺れて落ちる。
香織「おお⁉」
また人形を狙う。落とす。
香織「おおお⁉」
玩具を狙う。落とす。
香織「おおおお⁉」
玩具を狙う。落とす。
香織「おおおおお⁉」
最後の1発、玩具を狙う。落とす。
香織「おおおおおお⁉」
落とした景品をビニール袋に入れてもらう。
「兄さん凄いねぇ。スポーツ系の部で大活躍なんじゃないの?」
珂織「ただの吹奏楽部員ですよ。」
またポカーンとするおやじさんから景品を受け取る。
珂織「これ…良かったらプレゼント。」
香織「いいの⁉ 嬉しい⁉ 大切に飾るね⁉」
その後、りんご飴なるものを分け合って食べた。美味しかった。ふたりで一緒に帰った。ふたりで一緒に部屋に入った。舌を絡める。甘い味がした。味わうようにじっくりと絡めた。服を脱がせる。荒い息遣い、胸を揉みしだき乳首をつねる。乳首を舌で転がし歯を立てる。快感の声を上げる。仰向けに寝かせる。香織自ら両脚を開く。あそこを指で広げる。舌を這わせる。喘ぎ声を上げて腰を浮かせる。綺麗に舐め回した。お尻を持ち上げる。お尻の穴も舐め回した。
珂織「俺のもう欲しい?」
香織「うん…⁉ 珂織のちんぽでまんこ突いて…⁉ 奥まで可愛がって…⁉」
あすかと姿が重なる。すぐに消えた。入口にあてがい一気に奥まで突き入れた。体をのけ反らせる。乳首とあそこの突起物をいじりながら腰を動かした。喘ぎ声が部屋に響く。次第に喘ぎ声が甲高くなる。絶叫を上げ全身を痙攣させる。構わず続けた。甲高い喘ぎ声を上げ続ける。叫ぶような声を上げて荒い息遣いを繰り返す。それでも続けた。歯を食いしばって快感に抗う。無駄だった。呻き声が喘ぎ声に、喘ぎ声が甲高い声になり絶頂に達した。四つん這いにさせる。ローターをお尻の穴に入れる。ビクンと反応する。腰を掴んで突き入れる。体をのけ反らせる。ローターを飲み込んだお尻の穴がひくひくと痙攣している。2本の指を出し入れした。腰を動かす。喘ぎ声が始まる。俺の股間と香織のお尻がぶつかる音が響き渡る。興奮した。激しくする。音が小刻みに大きくなる。増々興奮した。香織の喘ぎ声と音が交互に聞こえる。やがて喘ぎ声の方が大きくなる。ひと際甲高い声を上げて全身を痙攣させる。あそこが締め付けられる感覚。構わず動いた。繋がっている部分を見る。あそこから溢れた体液が香織の両脚を伝い床を濡らしていた。とてもいやらしかった。喘ぎ声とお尻がぶつかる音が響く。香織を抱きしめて仰向けになる。後ろ向きに香織が跨る体位になる。
珂織「好きに動いていいよ。」
香織が腰を前後に動かす。汗まみれの背中とお尻を眺める。美しかった。興奮した。俺の両脚に手をついて腰を上下に動かす。俺の股間にぶつかる度にお尻が揺れる。とてもいやらしかった。起き上がって両胸を揉みしだき乳首をつねる。喘ぎ声が激しくなる。うなじと耳の裏に舌を這わせる。ビクンと反応する。
珂織「耳の裏気持ちいい?」
香織「うん…⁉ 何だかゾクゾクする…?」
またあすかの姿と重なった。すぐに消えた。腕を回してあそこの突起物をいじった。身をよじらせる。腰の動きが止まる。すぐに再開する。一段と喘ぎ声が激しくなる。
香織「はあぁっ⁉ はあぁっ⁉ もう…駄目…⁉ また…⁉ イクッ⁉ イッちゃう⁉ ああ⁉」
天井を仰ぎ俺にもたれかかる。優しく抱きしめて引き抜く。ローターも抜いて丁寧に洗う。荒い息遣いから静かな寝息に変わり香織は眠っている。後始末をして香織の両脚を開きあそこに2本の指を出し入れする。段々速度を上げて激しくする。香織の体が反応する。目を覚ます。滅茶苦茶にかき回した。
香織「あ…⁉ ああ…⁉ ああんっ⁉ ううんっ⁉ はあぁん⁉ イクッ⁉ イクッ ううっ⁉」
体をのけ反らせ全身を痙攣させる。荒い息遣い、じっと眺めた。香織の呼吸が整う。
香織「いつもとは違うパターンだね。どうしたの?」
珂織「香織の裸眺めてたら何となくもっといやらしい姿見たいなって思ってやってみた。」
香織「それじゃお礼しないとね。寝て。」
俺の股間に顔をうずめて卑猥な音を立ててしゃぶりつく。手も頭も動く速度が速くて俺は限界に達した。放った。
香織「口でされるの好きなの? すぐイクよね?」
珂織「香織がいやらしいことしてるって雰囲気に物凄く興奮する。その影響かな。」
香織「ま、そのおかげで濃いのが飲めるからいいけどね。」
萎えるまでしてもらった。全部飲んでもらった。最高に気持ちよかった。すっかり夜になったので家の近くまで送っていった。そのまま運動しまくった。後始末諸々を終えて薬飲んで寝た。香織との行為を思い浮かべた。すぐに眠れた。
オーディション当日、音楽室に滝先生と松本先生が入って来た。舌打ちした。松本先生が俺を睨む。睨み返した。部員全員に目を向けた。
滝「ではこれよりオーディションを始めます。私たちが参加するA編成でのコンクールは1チームにつき最大55名までしか参加することが出来ません。つまりここにいる何名かは必ず落選することになってしまいます。皆さん、緊張していますか?」
「してま~す⁉」
滝「ですよね。ですがここにいる全員コンクールに出場するに恥じない努力をしてきたと私は思っています。胸を張って皆さんの努力の成果を見せてください。では、始めます。」
「「「「「よろしくお願いします‼」」」」」
珂織「滝先生。」
挙手をした。黙っていられなかった。
滝「何ですか?」
珂織「そこにいる無能副顧問さんはオーディションに何か関係あるのですか?」
滝「私と松本先生で皆さんの演奏を聴いて合否の判断をします。」
珂織「てめえそれだけの能力があんなら何で一昨年も去年も何もしなかったんだよ⁉ ふざけんじゃねえぞ馬鹿野郎⁉ 舐めんじゃねえぞ馬鹿野郎⁉ 俺たちの時間返せ馬鹿野郎⁉」
松本先生に向かって怒りをぶちまけた。周囲がどよめく。
滝「落ち着いてください、中世古くん。」
珂織「落ち着いてますよ。そうでなけりゃあ身内でも身元の判明が出来ないくらいに顔面グチャグチャにして殴り殺してますよ。」
滝「なるほど、わかりました。貴方の審査には特別に配慮します。それでよろしいですか?」
珂織「……よろしくお願いします。」
サックスパートの待合室にて。
晴香「かっちゃん…気持ちはわかるけど今はオーディションに集中して。かっちゃんが落ちたらみんな落ち込むよ。」
珂織「申し訳ございません、部長。」
頭を下げた。
葵「そうだよ! みんなかっちゃんのこと認めてるんだよ!」
珂織「……今までの2年間を思い出したら悔しいやら虚しいやら悲しいやらで黙っていられませんでした。改めて…申し訳ございませんでした。」
また頭を下げた。
珂織「せめてものお詫びに…1曲吹きます。」
そして『LOVE PHANTOM』を吹いた。教室が静まり返る。
晴香「え⁉ え⁉ 今のってボーカルの他にバイオリンとかエレキギターとかバックコーラスとかある曲だよね⁉ 全部吹いたの⁉」
珂織「ひとりで表現できる限りのことはしたつもりです。」
「「「「「凄い…⁉」」」」」
珂織「お騒がせして申し訳ございませんでした。」
「アンコール。」
「「アンコール!」」
「「「アンコール‼」」」
「「「「アンコール‼」」」」
「「「「「アンコール‼」」」」」
珂織「ありがとうございます。それではもう1曲、吹かせていただきます。」
もう1曲吹く、大音量で吹きまくった。
「「「「「おー⁉」」」」」
晴香「何ていう曲なの⁉ 凄い⁉」
珂織「『LOVE IS DEAD』という曲です。2年生の頃練習しまくりました。」
葵「もっと聴きたいよ⁉ いいかな⁉」
珂織「いいですよ、次の曲は…『夢見が丘』という曲です。」
遠慮せずに吹きまくった。
「「「「「おー⁉」」」」」
ちかお「良い曲っすね⁉ かっちゃん先輩⁉」
珂織「俺も大好きです。原曲を聴くのをおススメします。」
サックスパートが呼ばれた。
晴香「みんな! せーの!」
「「「「「ありがとうございました‼」」」」」
珂織「どういたしまして。緊張が解れたなら何よりです。」
廊下にズラリと並べられた椅子に座る。晴香や葵が次々に呼ばれていく。教室から出る度に
「かっちゃん頑張って‼」
珂織「ありがとうございます。お疲れ様でした。」
といったやり取りが行われた。3年生の最後、俺の番になった。
珂織「失礼します。」
松本「では私はこれで。」
睨み合った。
松本「そんなに私が憎いか。」
珂織「くだらねえこと聞くな馬鹿野郎。当たりめえだ馬鹿野郎。殺すぞ馬鹿野郎。」
松本先生が退室するまで背中を睨み続けた。深呼吸した。何度も。
滝「落ち着きましたか?」
珂織「はい、たぶんは。お手間をお掛けして申し訳ございませんでした。」
頭を下げる。椅子に座る。
滝「謝る必要はありませんよ。松本先生から事情は聞いています。鬱病と不眠症を患っていることも聞きました。体調は大丈夫ですか?」
珂織「部活も充実していますし薬が効いているので大丈夫です。」
滝「わかりました。それではオーディションを始めます。」
指定された箇所を吹く。また指定された箇所を吹く。
滝「はい結構です。無理はなさらないでくださいね。お疲れさまでした。」
珂織「お気遣いいただきありがとうございます。失礼します。」
一礼して退室する。
「ご苦労だったな。」
松本先生が廊下で待機していた。すれ違いざまに小声で
珂織「大きなお世話だ馬鹿野郎。」
とだけ囁いておいた。待機中の後輩の皆さんに
「「「「「お疲れさまでした! かっちゃん先輩!」」」」」
と声を掛けられた。皆さんへ
珂織「頑張ってください! 皆さん!」
と伝えて去って行った。ひとりで帰ろうとしたところに昇降口に人影。誰だろうと思っていると
「お疲れさまでした。珂織先輩。」
珂織「そちらこそお疲れさまでした。高坂さん。」
麗奈「一緒に帰っていいですか?」
珂織「いいですよ。」
麗奈「トランペットパートの待機中に珂織先輩の吹いていた曲、聞こえてましたよ。みんな『いい曲だしいい音だね! 流石かっちゃん!』『そうそう! おかげで緊張も吹っ飛んじゃった!』って大盛り上がりでしたよ。私も緊張が解れました。ありがとうございました。」
珂織「元々は音楽室でお騒がせしたお詫びにサックスパートの皆さんに向けて吹いたのですが…聞こえていたとはお恥ずかしいです…。」
麗奈「恥ずかしいことなんてないですよ。先輩の演奏にはそれだけの力があります。正直に言うと憧れています。」
珂織「俺なんて憧れられる資格はないですよ。元々は暴力しか取り柄がないくだらない男です。」
麗奈「でも今は他人の感情を震わせる演奏の出来る奏者です。違いますか?」
珂織「……勿体ないお言葉です。」
麗奈「今更ですけど部長に推薦されなかったんですか?」
珂織「夏休みはアルバイト生活送っていたので3年引退後のミーティングも欠席しましたが晴香やあすか曰く2年生と1年生の満場一致で俺が推薦されたそうです。」
麗奈「辞退したんですか?」
珂織「はい。」
麗奈「どうしてですか?」
珂織「引退したとはいえ3年は学校に来るわけで、その時に俺や吹部の皆さんに嫌がらせするとも限りませんしそうなったら片っ端から3年共障害者にするつもりだったので、そんな奴部長にしたら廃部になるかもしれないでしょう?ですので安全のために辞退しました。それに代わりに選ばれたのが晴香と聞いて彼女のようなどこまでも優しい人こそ部長になるべきだと思いました。」
麗奈「そういう事情があったんですか…。でも先輩だって優しいですよ。」
珂織「優しい人間はオーディション直前に揉め事起こしませんよ。」
麗奈「でも当事者としては黙っていられなかったんでしょう?先輩は正しいですよ。」
珂織「正しさなんて人によって、時と場合によってコロコロ変わりますよ。俺に出来る数少ない助言です。受け取ってください。」
麗奈「はい、実際に辛い体験をしてきた先輩の貴重な助言として受け取らせていただきます。」
そして高坂さんとは分かれた。走って帰った。何も考えずに運動しまくった。薬飲んで寝た。高坂さんの姿が思い浮かんだ。すぐに眠れた。