―――翌日、音楽室にて。オーディション合否の発表がされるそうだ。待った。松本先生が入って来た。舌打ちした。睨み合う。書類に目を向ける。合格者の名が呼ばれ返事をしていく。
松本「中世古珂織!」
珂織「……ぁぃ。」
松本「どうした! 返事をしろ!」
珂織「……あい。」
松本「しっかり返事をしろ!」
珂織「聞こえてんだろ馬鹿野郎⁉ 耳がねえのか馬鹿野郎⁉ 千切られてえのか馬鹿野郎⁉」
俺の怒声が音楽室に響き渡る。周囲がどよめく。はあぁーと松本先生がため息をつく。ようやく次の者が名を呼ばれた。松本先生とのイザコザで落とされると思ったが心配は杞憂に終わった。最後にトランペットパートが呼ばれる。
松本「ソロパートは高坂麗奈に担当してもらう。」
麗奈「……はい。」
周囲に動揺が広がる。どうやら香織がソロを吹くことが既定路線だったようだ。『そんなに上手くいくか馬鹿野郎』と一喝したかったが更に動揺を招きそうなので止めておいた。
数日後、滝先生が余った毛布を貸してほしいと仰った。俺の部屋にそんなものはないが代わりに香織の家にはあるというので早朝に待ち合わせをして中世古邸を訪れた。お母様が応対してくださった。香織がそのまま年齢を経たような…中年と呼ぶのも恐れ多い程の美しい女性だった。
珂織「初めまして中世古珂織と申します。香織のお母様らしい美しい女性で安心しま―――。」
香織「ちょ⁉ ちょっと⁉ 何言ってるのよ⁉ さっさと布団運んで⁉」
香織母「まあ…お上手ね…⁉」
香織に背中を押されて玄関に積んである布団を運んだ。お母様に一礼して中世古邸を去った。
珂織「あーびっくりした。香織ってお母様似なんだね。年齢は知らないけどとても高校生の娘を持つ母親とは思えない若々しさと美人で本当に驚いた。」
香織「驚いたのはこっちよ⁉ 人の母親に変なこと言わないでよ⁉」
珂織「感動のあまり事実が勝手に口から出ただけだよ。」
香織「熱弁してるけど開き直らないで⁉」
こんなことがありながら音楽室手前に布団を置いた。部活の時間になり布団を丁寧に床に敷き詰め壁に貼っていく。さっきから視界の隅に映り続ける女子。確か…吉川さんだったか。香織を慕っている後輩の女子。滝先生を睨み続けている。意を決したように先生に話しかける。早歩きで割って入った。
優子「先生!質問が―――。」
珂織「そこまでです。尊敬する香織がソロから外れたショックは俺にはわかりませんが結果は結果です。上手い人が吹く。問題ないでしょう。去年貴女も年功序列の苦しみを体験したはずです。同じ苦しみを1年生にも体験させようって気ですか?それともオーディションもう1度やり直せと仰るのですか?」
優子「でも⁉ 聞いたんです⁉ 滝先生が高坂さんと以前から知り合いだったって⁉」
珂織「つまり……北宇治吹部の練度を高めてくださった滝先生がこの土壇場で私情を挟んだと……こう仰りたいのですか? 聞き逃せませんね。滝先生を侮辱しているのですか?恩を仇で返すのは止めてください。」
吉川さんを睨む。睨み返すがすぐに目を逸らして音楽室から出ていく。
珂織「香織、すまない。この件ではお前の味方にはなれない。」
香織「いいの、こっちこそごめん。」
珂織「出しゃばったことをして申し訳ございませんでした。」
高坂さんの方へ向いて頭を下げる。
麗奈「いえ、こちらこそ。助かりました。ありがとうございます。」
滝「手を止めている暇はありませんよ。練習を始めましょう。」
事なきを得た、今の時点では。
「やっぱりさぁ、贔屓するつもりなくても知ってる知らないじゃ違うと思うんだよねぇ。」
「結局、高坂さんをソロにするためのオーディションだったって話もあるらしいよ。」
「高坂さんのお父さんって結構有名なトランペット奏者なんでしょ?」
「じゃあ先生嫌とは言えないね。」
「かっちゃん先輩って鬱病と不眠症を患っているんだって。精神状態大丈夫なのかな?」
くだらない噂が飛び交った。心底くだらなかった。今度ミーティングがあったらひと言もの申そうと思った。その日は早く来た。
ミーティングになり挙手しようとしたが晴香と目があった。無言で頷いた。晴香曰くオーディションに不満がある人は挙手をしてその意見を滝先生に伝えるということだった。そこに滝先生が現れた。来週にホールを借りて練習することは伝えられていたがそこで再オーディションを希望する者は手を挙げるようにと告げられた。香織が手を挙げた。俺は甘いと思った。挙手した。名前を呼ばれ立ち上がる。
珂織「幹部でもない一部員の身で生意気を承知で申し上げますが、せっかく部室に毛布が敷き詰められていることですし今ここで再オーディションしませんか? 俺個人の意見としては今すぐこのクソくだらない一件にカタをつけてこのジメジメ湿気た空気を一掃して合奏練習に励むべきだと思います。来週まで引っ張るのは時間の無駄だと申し上げます。」
滝「なるほど…中世古くんはこう言っていますがおふたりはどうですか?」
麗奈「私は賛成です。」
香織「私も賛成です。」
滝「それでは再オーディションを始めます。おふたりは準備に取り掛かってください。」
ふたりが音楽室を出る。高坂さんを追いかけた。
珂織「いきなりこんなことになって申し訳ございません。心の準備は出来ていますか?」
麗奈「いつでも大丈夫です。先輩の期待に応えるために全力で吹きます。先輩は正しいことをしたんです。謝らないでください。むしろ感謝します。この機会を作っていただいたことに。」
珂織「……わかりました。それに…高坂さんは精神的に強いですね。羨ましいです。」
麗奈「もっと強い人が先輩にいてずっと見てきましたから見習おうと思いました。」
珂織「……俺の事ですか?」
麗奈「ふふっ他に誰がいるんですか! 前に言いましたよね。憧れているって。」
珂織「高坂さんにそう言っていただけると嬉しいです。誇りに思います。」
麗奈「私こそ先輩に応援していただいて嬉しいです。誇りに思います。もう戻っていただいて大丈夫ですよ。」
珂織「頑張ってください! 最後まで応援しています!」
そう言い残して音楽室へ戻った。視線が俺に集中する。無視した。椅子に座った。ふたりが音楽室へ入ってくる。先に香織が吹いた。目を閉じて集中して聴く。完成度は高い…と思う。だが物足りない気がした。次に高坂さんが吹く。また目を閉じて聴く。感覚的だが香織に足りないものを高坂さんは補って吹き切ったと思う。1年生にしてこの強心臓。彼女しかいないと思った。思わず立ち上がって拍手した。
滝「中世古さん、貴女がソロを吹きますか?」
滝先生が尋ねる。
香織「吹かないです、吹けません。ソロは高坂さんが吹くべきだと思います。」
滝「高坂さん、貴女がソロです。中世古さんではなく貴女がソロを吹く。いいですか?」
麗奈「は い!」
自信に満ちた美しい表情で確かに高坂さんはそう返事をした。こうしてクソ面倒なトランペットソロの一件はカタがついた。ホッとした。部活の時間は終わったが居残り練習することにした。とはいってもB'zの楽曲を吹きまくるだけだが。俺の中に燻ぶるストレスを解消したかった。1曲吹く。
「いい曲ですね。先輩が吹くからいい曲に聴こえるかもしれません。」
珂織「原曲はもっともっといい曲ですよ。1度聴いてみるのをおススメします。高坂さん。」
麗奈「何ていう曲ですか?」
珂織「『声明』という曲です。」
麗奈「『声明』…っと。あ、そういえば元々は珂織先輩がひとりで吹いてたっていう楽譜集のコピーをもらったんですけど、この中の曲を吹いていただいてもいいですか?」
珂織「いいですよ。何がいいですか?」
麗奈「それでは…『love me, I love you』というのをお願いします。」
珂織「わかりました。」
言われた通りに吹いた。
麗奈「…凄いです。間奏もボーカルも少しも外さず、少しの間も置かずに再現しちゃいました。肺活量も凄まじいです。滝先生の前での初めての合奏練習の時に『この曲がコンクール曲で今のが本番だったら全国金も夢ではない』っていうのを実感しました。今年の課題曲、自由曲にアルトサックスのソロパートがないのが悔やまれますね。」
珂織「……恐縮です。」
麗奈「誉めてるんですよ! 少しは嬉しそうにしてくださいよ!」
珂織「高坂さんの方が凄いですよ。俺だったらあんなに堂々とソロパート吹けませんね、たぶん。」
麗奈「……褒められてます?」
珂織「もちろんですよ。技術だけじゃなくて心臓も強く出来てるんだなぁって思いました。」
麗奈「まぁ…トランペットに関しては自信がありますから。でも先輩と同じ楽器じゃなくて良かったですよ。高校から始めた奏者にあんなに上手く吹かれたら私のプライドはボロボロですよ。」
珂織「高坂さんには敵いませんよ。」
麗奈「もう…! 褒めてるんですから自信を持ってください! 悪い癖ですよ!」
珂織「……善処します。」
その後も高坂さんがリクエストする曲を吹いては褒められるの繰り返しだった。照れ臭かった。暗くなってきたのでお開きにした。一緒に帰って分かれ際まで褒められまくっては気のない返事をして叱られるの繰り返しだった気がする。こういうのも悪くはなかった。走って帰った。玄関前に見慣れた人影。
あすか「遅い⁉」
珂織「ごめん、ストレス解消のつもりで少しだけ吹くつもりだったんだけど、高坂さんにリクエストされて暗くなるまで吹いちゃった。今からするの? 御家族は心配しない?」
あすか「母子家庭で母親は帰りが遅いから大丈夫よ。それにしても高坂さんねぇ…。珂織のこと好きなのかしら。」
珂織「そういうのじゃないと思うよ。」
あすか「根拠は?」
珂織「異性に伝える好意みたいなの全然されてないから。」
あすか「ふーん…まぁ珂織がそう言うなら信じるわ。早く部屋に入りましょう。」
一緒に部屋に入った。抱き合う。舌を絡める。じっくりと。荒い息遣い、パンスト越しにあそこを指で擦る。ビクンと反応する。スカートをめくり下着の中に指を突っ込む。あそこを撫でる。濡れていた。
珂織「もう俺の欲しい?」
あすか「うん…⁉ 珂織のちんぽ欲しい⁉ まんこに突っ込んで⁉ 突きまくって⁉」
敢えて制服は脱がさず下着とパンストだけ脱がせた。あすか自ら両脚を開き指であそこを広げる。とてもいやらしかった。一気に突き入れて激しく腰を動かした。あすかの喘ぎ声だけが部屋に響く。突起物をいじった。ビクンと反応する。香織の姿が重なった。すぐに消えた。声が甲高くなる。あそこが締め付けられる感覚。絶頂に達した。動き続けた。歯を食いしばって快感に抗う。無駄だった。喘ぎ声が漏れてより激しくなる。興奮した。俺も激しくする。甲高い声を上げて全身を痙攣させる。あすかを抱きかかえて対面座位の体位になる。下から突き上げる。舌を絡める。腰を動かす度に舌の動きが止まる。もどかしそうに制服を脱ぐ。あすかの美しい裸体が露わになる。胸を揉みしだき乳首をつねる。体をのけ反らせ快感の声を上げる。乳首を舐めて舌で転がす。歯を立てる。ビクンと反応する。突き上げ舌を絡めながら乳首をいじり続けた。また絶頂に達した。あすかが腰を前後に動かす。股間から湿った音を立てて行為は続く。悲鳴のような嬌声を上げてまた絶頂に達した。四つん這いにさせる。お尻の穴にローターを入れる。ビクンと反応する。それでもひくひくと痙攣している。2本の指を出し入れする。入口にあてがい突き入れる。激しく腰を動かす。股間とお尻がぶつかる音が部屋に響く。汗まみれの美しい背中、豊満なお尻、ずっと眺めていたかった。あすかがひと際甲高い声を上げてうつ伏せになる。全身の汗を拭く。仰向けに寝かせて改めてローターをあそこの奥に突っ込む。振動のレベルを上げる。あすかが反応する。2本の指を出し入れする。そのままかき回す。あすかが目を覚ます。激しく喘ぐ。続けた。
あすか「ああんっ⁉ ああっ⁉ 駄目…⁉ 駄目⁉ また⁉ イクッ⁉ イッちゃう⁉ イク⁉」
全身を痙攣させる。ローターを抜く。荒い息遣い、やがて呼吸が落ち着く。
あすか「いつもと違うね…。どうしたの…?」
珂織「香織にも同じことしたんだけど、そういえば指でイカせたことあったかなぁって思って…やってみた。それにあすかの裸見て興奮したのもある。」
あすか「そうなんだ…。香織はどうだったの…?」
珂織「うーん…あすかと同じ反応だったと思う。あ、下着の匂い嗅いでいい?」
あすか「いいよ…。」
股間の湿った部分の匂いを嗅ぐ。思考が麻痺しそうな感覚になる。
あすか「どう…?」
珂織「物凄くいやらしい匂いがする。」
あすか「そうみたいね…。珂織のちんぽ凄いことになってるよ…。気持ちよくしてあげる…。」
仰向けになり俺の股間に顔をうずめてしゃぶりつく。手も頭の動きも速く唇の吸い付きも強い。香織の姿と重なった。すぐに消えた。あっという間に放った。喉を鳴らして飲み込む。
珂織「あすか、上手くなったよね。本当に気持ちいいよ。」
あすか「ふふっ嬉しい。もっと気持ちよくしてあげる。」
妖艶な笑みを浮かべてしゃぶりついた。
珂織「俺ももっとあすかを気持ちよくしたいよ。俺に跨ってお尻向けて。」
69の体位になる。身長差があるので舌で可愛がれないのが残念だが物欲しそうに痙攣しているあそことお尻の穴を指で攻めることにした。片手で2本の指をお尻の穴に出し入れする。もう片手で2本の指をあそこに突っ込む。滅茶苦茶にかき回した。呻き声を上げてあすかの動きが止まる。あすかが動き始めては指の動きを再開した。また動きが止まる。埒が明かないので痙攣するあそことお尻の穴と上下するあすかの頭を眺めることに決めた。とてもいやらしかった。
結局萎えるまでしてもらった。たっぷり搾り取られた。最高に気持ちよかった。夜になったので家の近くまで送っていって運動しまくった。後始末諸々を終えて薬飲んで寝た。高坂さんの姿が思い浮かんだがすぐに消えてあすかとの行為が頭から離れなかった。すぐに眠れた。
それから朝練と部活はコンクール曲に集中して練習して居残り練習は高坂さんのリクエストに応えてB'zの楽曲を吹く日々が続いた。時にはかつて俺が持っていた楽譜集以外に気に入った曲を披露した。気づけば府大会前日まで迫っていた。
麗奈「はぁ…。」
珂織「どうしましたか、高坂さん?」
麗奈「先輩は以前、進路はいずれプロスポーツ選手になりたいと仰ってましたよね。これ程の逸材が全国へ行ったとしてもう2ヶ月少し程で失われてしまうと思うと勿体ないなと思いまして…。音楽の道へは進まないんですか?」
珂織「音楽の道というと、プロになったり音大へ進学するということですか?」
麗奈「はい…。」
珂織「うーん…音大は金銭面で話にならないですしプロを目指したとしても興味のない曲を吹くことにモチベーションが保たないと思いますよ。高坂さんの前で演奏した曲は全て元々は俺が好きで練習しまくった結果ですから。」
麗奈「金銭面って…御両親は進路について何て言ってるんですか?」
珂織「連絡取ってないのでわからないですね。家を追い出されたも同然ですから。」
麗奈「ということは…⁉ この2年半くらい一切連絡してないんですか⁉」
珂織「はい。血縁者が死んでも葬式関連に出るつもりはないですよ。俺が死のうがどうでもいいんじゃないですかね。俺もクソ両親が死のうがどうでもいいです。お互い様ですね。」
麗奈「……寂しくないですか?」
珂織「全然。俺に構ってくださる可愛い後輩もいますし。」
麗奈「でも卒業したらまた独りですよ。」
珂織「1年生の時と違って夢に向かって生活する分、張りがあるというものです。」
麗奈「やっぱり先輩は強いです、精神的にですよ。人間って孤独に弱いと思ってましたけど、こんなに独りでいることに耐えられる強さを持っている人は初めて見ました。」
珂織「高坂さんはそうじゃないんですか? 理由もなく群れるの嫌いでしょう?」
麗奈「そうですけど…私には両親がいます。先輩は独りぼっちじゃないですか⁉ どうしてそんなに平気でいられるんですか⁉」
珂織「俺、物心ついた時から泣いたことないんですよね。だから涙腺が無いかとんでもない薄情者のどちらかじゃないかと思ってます。でも不思議と怒りは湧くんですよね。」
麗奈「とんでもない薄情者が部活が終わっても後輩のために演奏なんかしませんよ。」
珂織「好きな曲を演奏するのは好きでやってるだけです。それに…今は俺を頼ってくれている同級生がふたりほどいますので。あ、でも1年生の時に『俺より魅力的な男子が現れたら俺の事なんて忘れてそっちへ行っていいんですよ。』とは言っておきました。」
麗奈「そのふたりも先輩から離れていったらどうするんですか?」
珂織「いつも通りに生活するだけです。中学3年の時に傷害事件起こして友人を名乗る連中がひとり残らず消えても何も思わなかったのでその時と同じようにするだけです。基本的に『去る者は追わず』精神なので。」
麗奈「……わかりました。もう何も言いません。せめて先輩が笑って終われるようにまずは全国へ行けるように全身全霊を尽くします。」
珂織「……そういえばそうでしたね。春に『全国大会出場』って目標決めたんでしたね。」
麗奈「もう…! しっかりしてください先輩!」
と、まあこんな感じで一緒に帰っても他愛のない会話をして分かれた。この時になって明日が府大会だということに気づいた。