※この作品はR-18です。

中世古香織にひと目惚れした同級生の話   作:日向陰陽

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第26話 「熱き鼓動の果て」

―――来る日も来る日も合奏練習に励みついに全国大会前日を迎えた。今日は会場の近くの施設を貸し切ってそこで練習して寝泊まりするらしい。張り切って楽器運搬をして点呼を取ってバスに乗り込む。いざ出発…と思いきや晴香にスマホとご丁寧にマイクを渡される。

 

晴香「かっちゃんの熱い歌をみんなにも聴いてもらおうと思って…いいかな?」

 

断るわけがなかった。喜んで応じた。スマホのボリュームを最大にしてもらってからB'zの『RUN』を入力する。以前、カラオケで歌ったかは覚えていない。でも俺たちにふさわしい曲として選んだ。苦楽を共にした同級生、松本先生、2年生たちのことを想いながら熱唱した。皆さんの反応は…晴香は嗚咽を漏らしておりあすかは無表情で外を眺めているが目に涙を溜めている。滝先生は眼鏡を外し涙を拭う仕草を見せる。他の皆さんも晴香と同じようだった。次第に

 

「アンコール!」

 

「「アンコール‼」」

 

「「「アンコール‼」」」

 

「「「「アンコール‼」」」」

 

「「「「「アンコール‼」」」」」

 

の声援がバス内に響き渡る。

 

珂織「ありがとうございます。滝先生、もう1曲よろしいでしょうか?」

 

滝「1曲と言わず好きなだけ歌ってください。私も聴きたいです。」

 

珂織「ええ…それでは、次はこの曲を皆さんに捧げます。行ってみましょう!」

 

お言葉に甘えて選曲した。恋心 (KOI-GOKORO)にした。かつて俺に好意を伝えてくれた可愛い後輩…傘木さんへのお詫びも込めて歌った。こんな感じで会場に着くまでB'zメドレーは続いた。バスを降りる。2年生と1年生が押し寄せてくる。

 

「私⁉ 感動しました⁉ 演奏だけでなく歌も上手で…⁉ とにかく感動しました⁉」

 

「私も⁉ 人の歌を聴いて初めて涙が出ました⁉ 泣きまくってスッキリしました⁉」

 

「私⁉ 先輩の事忘れません⁉ 演奏でも歌でも感動させられる先輩がいたことを自慢に思います⁉」

 

珂織「お役に立てたなら何よりです。ご清聴ありがとうございました。」

 

一礼する。

 

「みんな! せーの!」

 

「「「「「ありがとうございました‼」」」」」

 

珂織「こちらこそ、改めて…ありがとうございました。」

 

皆さんが上機嫌で施設へ入っていく。前日とはいえ緊張が解れたようでホッとした。こんな俺でも役に立てたようで安心した。楽器運搬をした後、練習場所のホールへ移動する。良く出来た舞台だった。これなら本番を想定した練習ができるだろう。

 

香織「ねえ…珂織が歌ったのって私たちに向けたものなの?」

 

珂織「うん。」

 

顔が赤く染まる。この勢いで抱きしめたかったが人目もあるのでやめた。舞台に上がり椅子に座ってから周囲を見渡す。府大会や関西大会の時と同じような感覚になった。観客がいるかいないかの差だけだった。深呼吸する。気合いは入った。これがみんなとの最後の練習だと思うと寂しくなる。せめてみんなが笑って帰れるように全力を尽くすつもりだ。滝先生が壇上に立つ。最後の練習が始まった。

 

いつ、誰が言ったかも忘れたがTVで観たアスリートが『本番より練習の方が良い成績が出る』と言っていたのを思い出した。今、俺たちがやった合奏が正にそれではないかと思った。これを再現出来れば金賞だって夢じゃない。そう思った。練習が終わる。先生にお願いして居残り練習をさせていただいた。吹いたのは『Still Alive』だが。人の気配がする。無視した。声が聞こえた気がする。無視した。俺の正面に制服を着た女子が現れる。晴香だった。申し訳ないことをしたと思い、謝った。

 

晴香「その曲よっぽど好きなんだね。」

 

珂織「うん、大っっっ好き!」

 

晴香「もうかっちゃんのその曲聴けないと思うとちょっと寂しいかな…。」

 

珂織「俺も晴香の『北宇治ファイト~!』が聞けないと思うと寂しいよ。今まで部長をやってきてお疲れ様。本来なら推薦された俺がやるべきだったけどあの頃は暴力しか取り柄がなかったし代わりに推薦されたのが晴香だって知って、あのどこまでも優しくて人を和ませる雰囲気を持つ晴香なら立派な部長になれると思った。ごめんね、苦労したでしょ?」

 

晴香「まあ…少しね。でもかっちゃんに推薦されて本当に嬉しかった。『優しさ』だけしか取り柄が無いと思ってた自分をあんなに高く評価してもらって自信がついた。ありがとう。それに…『暴力しか取り柄がなかった』なんて言わないで。そんな人が満場一致で部長に推薦されるわけないでしょう?みんなかっちゃんの努力や向上心や勇気に惹かれたんだから。理不尽な先輩たちに怯まず抵抗し続けたあの姿は忘れないよ。病気に苦しみながらここって時にみんなの士気を高めてくれてここまで来れた。本当にありがとう。今ではどこの高校にも自慢できる立派な奏者になったよ。」

 

珂織「そう?」

 

晴香「そうだよ! もう…! 1年生の頃から変わってないね! でも…そんなかっちゃんだから惹かれたのかな。 今までお疲れ様。」

 

珂織「こちらこそ今までお疲れ様でした。」

 

晴香「……もう練習も終わったし戻ろっか。明日が本番なんだからきちんと休まないと。」

 

珂織「うん。」

 

名残惜しいが男子部屋に戻った。早めの晩飯を吐き気を我慢しながら必死に食べて薬を飲んで入浴も済ませた。今は廊下で寝る前の柔軟体操をしている。

 

「「珂織。」」

 

聞き慣れたふたりの声、香織とあすかだった。

 

あすか「もう消灯時間よ。部屋に戻ったら?」

 

珂織「うーん…もうすぐ終わるから気にしないで電気消しちゃっていいよ。」

 

香織「……わかった。それじゃあおやすみ。」

 

珂織「うん。おやすみ。」

 

上半身のストレッチも終えて部屋に戻る。皆さん静かに眠っていた。俺も倣って布団に入って目を瞑った。晴香との会話を思い出した。意識が遠くなっていく気がした。

 

早朝、目が覚める。皆さんはまだ眠っている。静かに布団を畳んで飲む物飲んで部屋を出た。廊下で柔軟体操する。男子部屋の扉が開く。勢いよくふたりの男子が出てくる。

 

珂織「おはようございます。塚本くん、瀧川くん。」

 

秀一「先輩…⁉ 良かった。そこにいたんですね。」

 

ちかお「きちんと眠れました?」

 

珂織「はい、実に清々しい朝を迎えられました。」

 

ちかお「はあぁ…良かった!」

 

珂織「御心配をおかけして申し訳ございません。」

 

秀一「少しは俺たちの事頼ってくださいよ。」

 

珂織「将来有望で既に実力のある後輩の邪魔をしてはいけないと思いまして。」

 

ちかお「買いかぶり過ぎですよ。」

 

珂織「そんなことないですよ。おふたりとも1年生でコンクールメンバーに選ばれたじゃないですか。立派ですよ。」

 

秀一「先輩の代の苦労話は聞きましたけど、まともに選出されたら先輩だって1年の時に選ばれてますよ!」

 

珂織「そうですか?」

 

ちかお「そうです!」

 

秀一「3年生の先輩から聞きましたよ! 『物凄い成長速度で入部翌日から毎日朝練やりまくって昼休みは筋トレもやって部活も個人錬やりまくっていつの間にか誰よりも上手くなっておまけに当時3年の先輩に因縁つけられてもビビらず頭に膝蹴りブチ込みまくって泣かしてパイルドライバーかました勇者だ』って!」

 

珂織「お恥ずかしい話です…。」

 

ちかお「恥ずかしくないですよ! 当時の状況考えたらかっちゃん先輩は物凄く頼りになったと思います!」

 

珂織「そうだといいのですが…。俺は教えるのも下手でロクに後輩の皆さんに教えることも出来ませんでしたし…。」

 

秀一「それでも先輩の演奏には感動しました! オーディションの時に先輩の演奏が聞こえて先輩たちも「かっちゃんらしいね!」って喜んで、俺も聞き惚れて緊張も吹っ飛びました! ありがとうございました!」

 

珂織「聞こえていたんですか…。でも…お役に立てたなら嬉しいです。」

 

ちかお「俺はあの時その場にいたからわかります!『この人は演奏で惹きつける人だ』って! プロボクサーになるんですよね! 今度は試合で魅せてください!」

 

珂織「はい、ご期待にそうように頑張ります。」

 

男子の皆さんが部屋から出てくる。

 

珂織「もう朝食の時間のようですね。俺に構わず行ってきてください。」

 

秀一「……本当に1日1食で大丈夫なんですか?」

 

珂織「正確にはサプリメントなど少々飲んでますので大丈夫です。」

 

ちかお「わかりました。では行ってきます!」

 

珂織「はい、いってらっしゃい。」

 

ふたりが立ち去っていく。朝食の時間の間、首でブリッジしたりして時間を潰した。

 

全国大会への準備は着々と進んでいった。会場内のリハーサル室へ移動する。念入りにチューニングする。滝先生の合図で音が止む。

 

滝「いよいよ本番です。私たちは春に全国大会出場という目標を掲げここまでやってきました。結果を気にするなとは言いません。ですがここまで来たらまず大切なのは悔いのない演奏をすることです。特に3年生、今日は最後の本番です。この晴れ舞台で悔いのない演奏をしてください。

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

「先生。ひと言いいですか。」と部長が挙手をした。「もちろんです、どうぞ。」と返事をし部長が立ち上がる。

 

晴香「ついに本番だよ。私、今日だけはネガティブなこと絶対に言わない。私ね、心の底からワクワクしてる。良い演奏して金獲って帰ろう!」

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

次に副部長である田中先輩が指名される。

 

あすか「えーっと…全国に関して皆に色々迷惑をかけてしまいました。こうやってこの場にいられるのは本当にみんなのお陰だね。ありがとう。今日はここにいる北宇治の皆全員で最高の音楽を作ろう!それで笑って終われるようにしよう!」

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

あすか「ご清聴ありがとうございました! それでは晴香!」

 

晴香「よぉーし! では皆さん御唱和願います! 北宇治ファイト~~!」

 

「「「「「おー‼」」」」」

 

俺は晴香の綺麗な声から発せられる独特なイントネーションの掛け声が本当に大好きだった。これも今回が最後だと思うと寂しい。地元で暮らしていた時は感じたことのない感覚。あの時は誰かと離れ離れになることなど何とも思わなかった。むしろ清々した。でも今はこんなにも辛い。涙は出ないが泣きたい気分だった。前にも思ったが、せめてみんなが笑って帰れるように全力を尽くすつもりだ。

 

現在舞台裏で待機中。視界に鎧塚さんが映り歩み寄ってくる。だがその表情は沈んでいる。

 

珂織「どうしましたか、鎧塚さん?」

 

みぞれ「私、寂しいです…。先輩は私が1年生の時からとっても上手で練習熱心で先輩たちにも立ち向かって…まるでとっても頼りがいのあるお兄さんが出来たみたいで嬉しかったです…。その先輩がもうすぐいなくなると思うと…怖いです…⁉」

 

珂織「俺も鎧塚さんのことは可愛い妹が出来たみたいで張り切って朝練してましたよ。貴女は元々上手でしたが立派に成長しました。兄として誇りに思います。お願いがあります。これからの北宇治吹奏楽部をよろしくお願いいたします。」

 

優子「私もみぞれと同じような感じです。香織先輩から聞きました。まだ北宇治に入学する前、刃物を持った不良6人に襲われそうになった時に先輩が駆け付けて刃物で刺されながらあっという間に6人をやっつけたって。お礼も見返りも求めず名前も名乗らず立ち去ろうとした姿に見惚れたって。そんな先輩を持てて私たちは恵まれてると思いました。この1年半の間、とても頼もしかったです。私も…寂しいです⁉」

 

希美「私もです!やる気のない先輩たちに頭下げてお願いしたら物凄い迫力で割って入って『どうか頭を上げてください。こんなくだらん存在のために頭を下げるほど貴女の誇りは安くないはずです。』って言ってくださって嬉しかったです。それに…土下座までして私たちを引き留めてくださったのは本当に嬉しかったですし、『この人は本当に優しい人なんだ』って思いました。あの時先輩がいなかったら辞めていたかもしれません。私、本当に感謝しているんです!」

 

夏紀「私も…始めはやる気が無かった方ですけど、朝練で先輩の演奏聴いてすぐにやる気が出ました!いつか先輩と一緒に演奏したいと思って練習してきましたがコンクールではその目標は叶いませんでした。でも! サンフェスや駅ビルコンサートは本当に楽しかったです! 間近であんなに素晴らしい演奏を聴けて最高でした! もう聴けないと思うと…寂しいです…⁉」

 

皆さんが涙を流している。まとめて抱きしめた。

 

珂織「ありがとうございます。良く出来た後輩に恵まれて俺は幸せです。でも今泣くのは勿体ないですよ。結果発表になってからにしましょう。出来ますか?」

 

「「「「はい‼」」」」

 

珂織「いい返事です。それでは…行きましょう。」

 

晴香に呼ばれ舞台へ向かう。椅子に座る。周囲を見渡す。なんてことはない。今までと変わらない光景。やることも変わらない。滝先生が壇上に立つ。深呼吸する。滝先生が構える。最後の演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の状況は…『光陰矢の如し』『楽しい時の時間は早く過ぎる』といったところか。演奏に夢中になっていたらいつの間にか終わっていた。悔いはなかった。あの時ああすれば良かったとか何故あんなミスをしてしまったのかとかいう余地のない、文字通り練習通りの全てをやり切った。平常心で退場する。そのまま外に出る。

 

「あ、あの⁉ 中世古珂織さんでよろしいでしょうか⁉」

 

晴香とは違う、綺麗で澄んだ女性の声に呼び止められる。声の発生元に顔を向ける。

 

珂織「俺…でしょうか?」

 

「は、はい⁉ 私は…清良女子の黒江真由と申します⁉ 実は駅ビルコンサートの時に演奏に感激しまして一緒に写真撮影をお願いしたかったのですが、立華高校の方々で手一杯のようで機会を逃してしまいまして…でも本日またお会いできたので、お願いします⁉ 一緒に写真を撮らせてください⁉」

 

珂織「えっ⁉ 清良女子といえば全国金賞常連の超強豪校ですよね⁉ 俺なんかでよろしいのですか⁉」

 

真由「はい⁉ ぜひ⁉」

 

顔立ちに幼さは残るが一方で大人っぽい印象も受ける美人な女子にお願いされてしまった。時間は余りまくってるので快諾した。

 

珂織「あの清良女子の方と写真撮影できるなんて光栄です。喜んでお付き合いいたします。」

 

真由「ありがとうございます⁉ ではこちらへどうぞ!」

 

清良女子の皆さんが待機していた。俺を真ん中にした全体写真とツーショット写真を撮りまくられた。あっという間に待ち時間が無くなりつつあった。

 

「みんな! せーの!」

 

「「「「「ありがとうございました‼」」」」」

 

珂織「こちらこそあの高名な清良女子の皆さんとの写真撮影という貴重な体験をさせていただき誠にありがとうございました。それでは…失礼します。」

 

会場に戻る。観客席を見渡し北宇治のみんなを見つける。香織と高坂さんが席を空けておいてくれたのでそこに座った。まずは指揮者賞授与というのが行われる。賞を受け取った指揮者…顧問に該当学校の皆さんが感謝の声援を送る。こういうのは考えてなかったが俺が気合いを入れて滝先生にお礼の言葉を叫ぼうとしたところに

 

麗奈「滝先生! 好きです!」

 

の叫びが響いた。先を越されてしまったがこれはこれでいいだろう。顔を赤らめて両手で覆うが声を掛けるのも無粋だと思ったので放っておいた。そして表彰式に移った。

 

「3番、北宇治高等学校―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――銀賞。」

 

目を瞑る。涙は出なかった。

 

終わった…これで何もかも…もう思い残すことはない…やれるだけのことはやった…そう思った。

 

松本「何だそのショボくれた顔は! しっかり笑え!」

 

俺は清良女子の皆さんと写真を撮った時のような作り笑顔を浮かべた。一方、皆さんはどんよりしていた。あと一歩、いや…三歩も四歩も足りなかったかもしれないが金賞まで届かなかった無念さが窺える。その後、色々な人と会話を交わした。

 

あすか「惜しかったね珂織。」

 

珂織「でもまあ、万年府大会銅賞から全国銀賞ってのもいいんじゃない?」

 

香織「でも…珂織には…報われてほしかった…⁉」

 

あすか「そうだね…⁉」

 

ふたりが涙を流す。両腕でまとめて抱きしめる。俺の胸に顔をうずめて泣き続ける。人生とはそう簡単にいくものではないと改めて思った。

 

みぞれ&希美&優子「「「すみませんでした…先輩…。」」」

 

珂織「謝る必要はないですよ。皆さんよくやっていただきました。」

 

みぞれ「でも…⁉」

 

希美「先輩には…⁉」

 

優子「笑って帰ってほしかったです…⁉」

 

3人が涙を流す。抱きしめる。

 

珂織「本当に…先輩想いの後輩を持てて俺は幸せです。」

 

本音だった。

 

麗奈「悔しくないんですか? 先輩。」

 

珂織「まあ…勲章とは無縁の人生でしたから初めての勲章が全国銀賞なら上出来だと思います。」

 

麗奈「どうして…⁉ 先輩は…⁉ 平気な顔で…⁉ いられるんですか…⁉ 笑顔が…⁉ 見たかったです…⁉」

 

珂織「あれ? 笑えてませんか? 清良女子の皆さんと写真撮った時と同じつもりなんですけど?」

 

麗奈「いつもと…⁉ 同じですよ…⁉ 無理しないで…⁉ ください…⁉」

 

珂織「そうですか…。申し訳ございません。」

 

麗奈「謝らないで…⁉ ください…⁉」

 

高坂さんは幼い子どものように泣きじゃくっていた。そっと抱きしめる他なかった。

 

松本「中世古…⁉ 済まなかった…⁉ もっと早くにお前たちと向き合っていれば…⁉」

 

珂織「教師には教師の苦労がお有りだと思います。松本先生も今までお疲れさまでした。」

 

新山「惜しかったわね…。貴方ほどの奏者がいて銀賞で終わるなんて…。」

 

珂織「それが団体競技ってものだと思います。上手くはいかないですね。」

 

橋本「よくやったよ! 感動した!」 

 

珂織「後輩の皆さんの事をよろしくお願いいたします。」

 

橋本「うん! 任せて!」

 

滝「約2年半、お疲れさまでした。中世古くん。」

 

珂織「滝先生がいらしてからの部活は俺にとって夢のような時間でした。ありがとうございました、滝先生。」

 

晴香から集合の声が届く。整列する。

 

晴香「私たち3年はこれで引退です。最後になりますが、今までこんな不甲斐ない部長についてきてくれてありがとう。この1年は嫌な事もいっぱいあったけど…不安なことばかりで辛かったけど…⁉ ううぅぅぇぇぇん…⁉」

 

あすか「では泣き虫部長に代わってひと言。正直、今日の演奏で言いたいことは何もありません。北宇治の音は全国に響いた!私たちは全力を出し切った。本当にみんなお疲れ様。そして3年生はこれで引退、後は2年生の天下です。もう不安しかありません。私は皆さんの知っての通り回りくどい話は苦手なのでハッキリ言います。今回の結果は私は滅茶苦茶悔しい。でも3年に雪辱に機会はない。こんな思いは私たちだけで充分。だから来年は必ず金賞を獲って。これは最後の副部長命令です、わかった?」

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

あすか「それでは…影の部長、珂織! 後はよろしく!」

 

俺の方へ向いて後を任される。正面に移動する。

 

珂織「ええと…俺は明日から夢に向かって突っ走ります。皆さんなら俺たちに出来なかった事を成し遂げられると信じています。応援しています。頑張ってください!」

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

これにて俺たちの全国大会は終了した。

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