※この作品はR-18です。

エロゲ退魔モノな世界観で。退魔の家系に生まれ追放された後に術式を覚醒した主人公は化物を調伏する力で現代を謳歌する、現代ファンタジー   作:三流木青二斎

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第15話

 

 

長峡仁衛と銀鏡小綿は訓練場で早速特訓を開始する事にする。

木箱に封じられた畏霊を式神に喰わせようとしていた時だった。

 

「……?」

 

この、広い岩石の多い訓練場では、薄暗い場所でも訓練がしやすい様に外灯が設置されている。

なので、其処に立っている人間は、影がくっきり出来る程に、人の姿を認識する事が出来た。

 

「……ぁ」

 

か細く声を漏らして、長峡仁衛は大きく目を見開き、その男性の姿を認識した。

 

相手も同様に、彼が長峡仁衛であると確信した後に、両手を重ね合わせて犬の影絵を作り出すと体内から膨大な神胤を生成し、自らの影の領域内から一体の獣を顕し出した。

 

「狗神檻籠(いりがみつき)・狗(わん)」

 

技の名前を口に出した途端、大柄な狼が飛び跳ねるかの様に接近し、長峡仁衛に牙を向ける。

その大柄な狼が近付く様を、銀鏡小綿は長狭仁衛を守る様に前衛に出るのだが……長狭仁衛は彼女の肩を掴むと前に出て大きく腕を伸ばした。

 

「ばうっ」

 

その言葉と共に、大柄の狗の姿が変化する。

遠くの位置で待機をしていた男性と入れ替わりが行ったのだ。

 

絹の様に細長く黒真珠の様に輝く黒髪を靡かせながら、ゴシックアンドロリータ調のフリフリドレスを着込んでいて、童顔で可愛らしい顔付きをした男の子は、大きく口を開けて小さく尖る八重歯がちらりと見える。

 

そして……その大きく広げた腕の中に飛び込むと、二人は世界の中心で喜びを分かち合うかの様にその場を何度も何度も繰り返し、ダンスを踊るかの様に回り続けた。

 

「じんちゃんっ!!」

「シャロっ!!」

 

二人の声が共鳴する、どれ程大きな感情を抱いているのかが伺えるだろう。

銀鏡小綿の元には、先程の大柄の狗がゆっくりと近付き、その場にお座りをして待機していた。

 

「こんにちは、弥士郎(やしろう)さん」

 

お久しぶりですね、と。

銀鏡小綿は長狭仁衛に頬擦りをする少女の様に可愛らしい彼女の事を見詰めながらそう言った。

 

「弥士郎って呼び方止めてよ、ボクはね、シャロって呼び方が気に入ってんのっ!!」

 

本名で呼ばれる事を嫌う男の娘である、シャロの言葉に対して、やはり本物だと、間違いないと確信した長狭仁衛は心の底から歓喜の感情で満ち溢れていた。

 

「久し振りだなっ、シャロ、ああ、お前にずっと会いたかったんだッ」

 

涙目を浮かべる長狭仁衛の顔を見て、同じ様にシャロも感極まるかの様に涙を浮かべる。

 

「ボクだって同じだよ、ずっとじんちゃんのニオイを辿ってここまで来たんだからっ、他の奴の言う事なんて知るもんか、ボクの大親友との仲は、絶対に切り裂く事なんて出来ないんだからっ」

 

気分が高揚したのか、シャロの表情は次第に赤く火照り始める、見た目だけで言えば美少女に違いない程の可憐さではあるが……それでも、永犬丸弥士郎と言うれっきとした男性であった。

 

それでも、長狭仁衛は彼を恋人の様に、夫婦の様に、愛する人の様に、強く激しく抱擁をした。

 

「シャロッ!!」

「じんちゃんっ!!」

 

その掛け声に返す様に、シャロも強く長狭仁衛を抱き締める。

これが二人の何時ものやり取りであった、事情を知る者からすれば、男同士が何をイチャコラしているのだろう、と言う感情を発露させる。

 

「それで、何をしに来たんですか?」

 

そう、銀鏡小綿は永犬丸弥士郎が術式で生成した犬の頭を撫でながら疑問に思っていた事を聞くと、思い出したかの様にシャロは大きく目を見開いた。

 

「あっ!!じんちゃん、霊山家から狙われてるって本当っ!?」

 

霊山家と言う名前を聞いて長狭仁衛の表情はこれまでの凄惨な過去を思い出した事で歪み始めた。

 

「霊山家が俺を狙ってるのか?……まあ有り得ん話では無いけど」

 

長からの電話の内容を思い出す長狭仁衛、どの様な手を使ってでも彼の人生に妨害する様に行動している、そう言われても不思議では無かっただろうし、十中八九その様な手筈で動いていると思った。

 

「じんちゃんが狙われてるから、ボク、来たんだよ、じんちゃんは能力無しだと強いけど、そうじゃなかったら弱っちいからっ、しろみちゃんが付いていても、それでも心配だし……」

 

銀鏡小綿を苗字で呼ぶのは単純に語感が良かった為だ、何処かのマスコットキャラクターの様な響きが可愛らしいから、そうシャロは呼んでいた。

 

「だからボク、じんちゃんが心配だから来たんだよ……この街にも、咒ヰ師が来てるかも」

 

それは流石に早計では……と、長狭仁衛は言い掛けたが、口を閉ざす。

脳内には不安が過り、辰喰ロロの言動に何か違和感を覚えた。

まさか、そう思った長狭仁衛は訓練場から走り出した。

「狗神檻籠・狗」

 

シャロの影の奥からどろりと黒い毛並みの狼が出現すると、長狭仁衛の方へ疾走し彼を背中に乗せた。

 

「何処に行くか知らないけど、そっちの方が早いから、じんちゃんッ!!」

 

狼の上に跨る長狭仁衛は首根っこの部分の弛んだ肉を掴んで背後を振り向いた。

 

「じんさん、お気を付けて、すぐに母も行きます」

 

「悪いシャロ、小綿と一緒に居てくれッ!!」

 

そう叫んだと同時、長狭仁衛は狼と共に街の方へと戻っていく。

 

 

街へ到着したと同時、長狭仁衛は体内の臨核を稼働させて神胤を生成。

 

封緘祓術・咒呑によって滞留させた大量の『荒魂』を放出させると彼らに命令を下す。

 

「辰喰か、クイン、どっちでも良い、姿を見つけたら教えてくれ!」

 

「け、きけけ」

 

 

四方八方へと飛び散る荒魂が暫く周辺を探すと、一体が長狭仁衛の方へ戻って来る。

一度、周囲に飛ばした荒魂が戻って来ると言う事は、黄金ヶ丘クインを発見した、と言う事だろう。

長峡仁衛は屋根を蹴って移動する。

 

丁度、十字路の位置に、人影が見えた。

其処には、地面に横たわる、黄金ヶ丘クインの姿も見当たる。

 

長峡仁衛が黄金ヶ丘クインの傍に落下する。

 

「『山姥(やまんば)』ッ」

 

長峡仁衛の言葉と共に臨核から神胤が放出され形成する。

老いた髪を伸ばす襤褸の衣服に身を包み、鉈を握り締める老婆が出現する。

満面の笑みを浮かべて、皺を刻む老婆の姿をする式神は、鉈を握り締めては走り出す。

 

「(酷い怪我だ…あの男がやったのかッ)」

 

外灯から伺える、茶色のベストを羽織る金髪の男。

頭部には山高帽を被っていて、キザにツバの部分を指先で摘まむとベストを翻す。

 

「銀髪の男性……そうか、お前が霊山家の仁衛か?」

 

そう言いながら、帽子を掴んで外すと、長峡仁衛の方に向ける。

 

「幸先が良い、餌を用意しておびき寄せようと思った所に僥倖とはっ!!」

 

べらべらと喋る男に、長峡仁衛は、近くに待機していた山姥に視線を向ける。

それと同時に、長峡仁衛は周囲に展開していた人魂を、自身の周囲に浮遊させる。

相手が攻撃しない様に警戒しながら、長峡仁衛は黄金ヶ丘クインの体を持ち上げる。

 

「クイン、大丈夫か?」

 

「ぁ…」

 

酷い怪我だった。

左手は折れている。

体中には擦り傷が出来ていた。

一体何をすればこの様な傷が出来るのか。

何よりも、どの様な心を持てば、これ程までに傷つける事が出来るのか。

黄金ヶ丘クインは、薄れゆく視線を長峡仁衛に向けて、安堵したのか、気絶した。

長峡仁衛は、男の方を睨んだ。

 

「金の縁とは言え、俺を引き取ってくれた人だ…礼儀は尽くす、恩義は報う、大義は此方だ、異議はあるか?」

 

長峡仁衛の殺意が漏れる言葉に、男は鼻で笑った。

 

「ふッ、逃げないのか?大した義理だ、素敵な話だ。忠義を背負って圧死するんだな」

 

長峡仁衛が山姥に男を攻撃する様に命令。

それと同時に、男が山高帽を投げる。

ふぁんふぁんと音を鳴らしながら風を切る山高帽が長峡仁衛へと直進する。

 

「(神胤が纏う、士柄武物、いや、これは奴の術式か?)」

 

長峡仁衛はそんな事を考えながら人魂を盾の様に整列させ、山高帽が攻撃を防御しようとするが。

山高帽はジグザクに、人魂の隙間を通り、不規則に長峡仁衛に接近する。

 

「(帽子を操る術式ッ、こんな能力でクインがやられたのか?)」

 

そう思った長峡仁衛。

この帽子に何かがあると思った最中。

山高帽の裏地が長峡仁衛に向けられる、そして光り輝き、長峡仁衛の瞳を照らしたかと思えば。

一瞬。

瞬きの間。

長峡仁衛は、遥か上空へと立っていた。

 

「は?」

 

いや違う。

立っているのではない。

長峡仁衛は、星に届き得る場所から、落下していた。

 

「あ、あぁあああ?!」

 

叫び声が響き出す。

 

上空からの落下。

長峡仁衛の脳裏には死の文字が浮かび出す。

 

「(ま、て、まだ、っし、んで、死んで、たまる、かッあッ!!)」

 

長峡仁衛は荒魂を呼ぶ。

地上から上空へと長峡仁衛の元へと寄って来る荒魂に長峡仁衛は手を伸ばす。

肉体を神胤で強化して、荒魂に向けて落ちると現状の落下分の衝撃を接触と同時に受ける。

 

「ぐッ」

 

荒魂が長峡仁衛の腹部に突く。

傷みを感じながらも、長峡仁衛はなんとか荒魂にぶら下がる事が出来た。

そのまま、荒魂を呼んで彼の靴底に合わせる。

長峡仁衛は荒魂を踏み付けて、更に踏み付けた人魂よりも低い位置に他の人魂を呼ぶ。

そうする事で人魂を使い、長峡仁衛は階段の様に地上へと駆ける。

上空十五メートル程の位置にまで来ると、長峡仁衛はジャンプして着地をする。

 

「ひゅぅ」

 

男は、長峡仁衛の生還に脱帽していた。

 

「(落下死は不可能か、だったら、別のやり方で倒すか)」

 

男はベストの裏地に縫い付けた鞘から複数のナイフを取り出した。

医療で使われるようなメスを取り出すと、それを男は長峡仁衛に向けて投げつける。

 

「効くかよッ!」

 

長峡仁衛は人魂を使いナイフの投擲を防御しようとする。

背後からふぁんふぁんふぁんと音が聞こえだす。

長峡仁衛は振り向く。

山高帽が迫って来ると共に、長峡仁衛の上空へと立つ。

そして光が放たれ、目を細めると共に、長峡仁衛は、彼を守っていた筈の荒魂が消えていた。

それが、一瞬の事である。

投擲されたナイフが人魂に触れる事無く、長峡仁衛の体に突き刺さろうとする。

神胤を発生させて長峡仁衛は防御体勢を取るが、神胤を貫いて、ナイフが彼の肉体に突き刺さる。

 

「ッ(神胤による防御無視、このナイフ、全部が士柄武物かッ)」

 

神胤による防御無視。

これは恐らく士柄武物の特性だろう。

 

「(それよりも、ッ、俺の使役する人魂はッ)」

 

「(〈游放蕩籟(ゆうほうとうらい)・幻舟(はこぶね)〉、指定した対象を保管、別の場所に移動させる)」

 

男の術式によって長狭仁衛は一瞬にして天上へと移動させられたのだ。

 

「(俺が上空へ送られたのも…荒魂が何処かへ消えたのも…これが奴の能力だからか?移動させる能力?…だとすれば、その発動条件は、あの帽子かッ)」

 

「(恐らくは俺の能力とその原因を察しただろうが…移動させる能力だけが、俺の術式の真骨頂じゃねぇよ)」

 

周囲に浮かぶ帽子を、男は近くに戻して、不敵な笑みを浮かべる男。

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