※この作品はR-18です。

エロゲ退魔モノな世界観で。退魔の家系に生まれ追放された後に術式を覚醒した主人公は化物を調伏する力で現代を謳歌する、現代ファンタジー   作:三流木青二斎

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第八話

 

 

「……まさか、仁衛さんが」

 

到底あり得ない、と言った様子の黄金ヶ丘クイン。

辰喰ロロも、術式が開花した事に対して驚きを隠せない様子であるらしい。

 

「そう、か……まあ、良かったじゃないか」

 

と、辰喰ロロが賞賛した時、辰喰ロロの横腹を肘で突く黄金ヶ丘クイン。

 

「何が良かった、ですか……兄様が、このまま霊山家に戻るかも知れないんですのよ?」

 

「いや……まあ、その可能性もありますが……」

 

そうして会話をしていた時。

医療室に、また別の人間が部屋の中に入って来た。

 

長峡仁衛の元にやって来るのは、長峡仁衛の治療を促した霊山一族の回復系統を操る術師だった。

その男は、長峡仁衛の方を見て鼻で笑う。

 

「そうか、今頃開花したのか」

 

そう言って、彼は長峡仁衛を蔑んだ。

彼を蔑むと言う事は、少なからず、霊山一族の霊山蘭派閥の男なのだろう。

長峡仁衛の封印して調伏した落ち武者を見ている。

 

「随分とレベルの低い、低級の畏霊な事だ。やはり、穢れた血はこの程度と言う事か」

 

長峡仁衛を侮辱し続ける。

銀鏡小綿が何か言おうとした時、長峡仁衛が遮って言う。

 

「それでも俺は術式を開花させました。此方もあまり言いたくはないが……、まがりなりにも霊山一族の血筋ですから」

 

長峡仁衛の言葉に、嘲笑する笑みを止めて口の中を噛み締める。

 

「確かに……では、この話は、一応は長に通すぞ?」

 

そう言って携帯電話を使って直接、霊山蘭に連絡をする。

当然の処置だろう。

長峡仁衛は術式が発揮されないと思われていた。

確定していたからこそ、長峡仁衛は黄金ヶ丘クインの元へ売られたのだ。

長峡仁衛が、術式を使用していたのだとすれば……それはそれで、話が違って来る。

 

「……おい、仁衛、長からだ」

 

連絡を入れた男は、長峡仁衛に携帯電話を渡す。

それを受け取った長峡仁衛は、霊山蘭と会話を始める。

 

「もしもし」

 

『よもや、術式を会得するとはなぁ?穢れた血の分際で、霊山一族の術式を盗んだか』

 

散々な言われようである。

だが、長峡仁衛は答えない。

 

『まあ、良い、一度戻って来るが良い、一応は、術式を会得したと言う事で、霊山一族の門を潜らせてやろう、光栄に思え』

 

「……光栄にって、そうとは思えませんがね」

 

長峡仁衛は、歯軋りをしながら言う。

また、霊山一族の元へ戻らなければならないのか。

長峡仁衛は、嫌そうな表情を浮かべていた。

其処には嫌な思い出しかないのだろう。

 

『なんだ?戻りたくはないのか?援助が必要だろう?それとも……まさか貴様は、霊山一族の力を儂に一言も無く使うつもりか?』

 

そう言われる。

長峡仁衛は、喉を鳴らす。

もしも断れば、黄金ヶ丘家ですら関係なく、霊山一族総出で長峡仁衛を処分しに来る可能性があった。

 

一応は、長峡仁衛は、霊山の血筋を持つのだ。

その権力は並大抵のものではない。

 

「……」

 

危険な目に遭うかも知れない。

そう思うだけで、長峡仁衛は気分が悪くなる。

霊山一族の長は、身震いする程の恐怖を覚えていた。

 

『どうした、何故黙る?さっさと答えろ、儂は別にどちらでも良いが?』

 

受話器の奥から、卑下た声が聞こえて来る。

 

「俺、は」

 

長峡仁衛は溜め込み、そして、声を漏らした。

 

押し黙る長峡仁衛の電話を強引に取る銀鏡小綿。

 

「じんさんに代わりました。母です」

 

銀鏡小綿はそう言って、長峡仁衛の代わりに出る。

 

『銀鏡、小綿……どうした?』

 

急に銀鏡小綿と喋るので、霊山蘭は息を呑んだ。

 

「じんさんが嫌がっていましたので母が代わりに出ます。……じんさんはそちらには戻りません、こちらで母と共に過ごします」

 

長峡仁衛は銀鏡小綿を見る。

あの情け容赦の無い霊山蘭に、強く出ている。

 

「既にじんさんは霊山一族の者ではありません。でなければ、貴方方はじんさんに霊山の名を与えた筈です、けれど、完全に厄介払いとして別の名を名乗らせて来ました、それなのに、今更じんさんが術式を会得したから、戻って来いと言うのは都合の良い話ではありませんか」

 

芯から声を発して、銀鏡小綿はまっすぐとした声色で言う。

 

「私はじんさんには幸せな人生を送って欲しいと思います。貴方がたが今更保護者の面をして欲しくはありません……じんさんは今、自分の手で自分の道を探る段階なのです。母も、じんさんの道を尊重します、母も、貴方も……じんさんの道を遮ってはなりません」

 

だから、長峡仁衛には放っておけと、銀鏡小綿が言う。

 

『では、援助は要らぬのか?』

 

その言葉に、銀鏡小綿の電話を無理矢理奪い取る。

黄金ヶ丘クインが代わりに電話に出る。

 

「その心配はありません。既に彼の身柄は私が買いました、従って、彼の援助は私がする責任があります」

 

長峡仁衛を高値で売った霊山一族。

それを買った黄金ヶ丘クイン。

既に、その権利は黄金ヶ丘クインであり、長峡仁衛の意志が無い限りは、彼の権利は彼女のものとなっている。

 

「(今更、こんな所で、兄様を手放す気はありません……ッ)」

 

黄金ヶ丘クインも必死だった。

それを聞いた霊山蘭は、怒りを抱いていた。

 

『後悔しても知らんぞ?』

 

その言葉に。

黄金ヶ丘クインが、長峡仁衛に電話を渡す。

最後は、長峡仁衛に決めろと、言っている様だった。

それを受け取る、長峡仁衛。

受け取った以上は、覚悟を決めなければならない。

 

「そう言えば……あの時、ちゃんと言えて無かったですね」

 

長峡仁衛は、霊山蘭に言う。

 

「今までお世話になりました……この力は、俺が誰かを守る為に使います、俺は、俺の手で、祓ヰ師になります、だから……」

 

『そうか、そうか……では、遠慮はせんぞ』

 

怒りの様なものが見える。

霊山蘭は私怨を抱き、長峡仁衛に言う。

 

『良かろう、残る余生を過ごして居れば良い……短い、とても短い人生だったな』

 

その言葉を最後に、連絡が途絶える。

長峡仁衛と、霊山蘭の会話は其処で途絶えた。

 

霊山の関係者に携帯電話を渡す。

それを受け取る霊山一族の関係者は溜息を吐いた。

 

「この様な事になるのなら、治すんじゃなかった」

 

その捨て台詞を置いて、霊山一族の関係者はその場から立ち去る。

長峡仁衛と銀鏡小綿、そして黄金ヶ丘クインは、医療室で今後どうするかを話す。

 

「……私は、基本的に、貴方を縛るつもりはありません」

 

黄金ヶ丘クインの言葉。

それはつまり、長峡仁衛がどの様な生き方をしても構わない、と言う事だ。

 

「最終的には、私と結婚する……これを守って下されば、後はなんでも良いです」

 

そう言った。

長峡仁衛は頷く。

 

「分かった……それが、お前と俺の、昔にした約束なら、それを守る」

 

頷いて、長峡仁衛は銀鏡小綿の方を向く。

 

「じんさんが祓ヰ師になると決めたのならば、母も、最早何も言う事はありません、じんさんが傷つく、修羅の道ではありますが……それでも、我慢します」

 

銀鏡小綿は、長峡仁衛の手を軽く掴んで、言う。

 

「……もしも、じんさんが死んでしまえば、母も後を追いましょう。死んでも、輪廻の渦に飲まれても、母は、じんさんの元に行きますので」

 

……彼女の言葉はとにかく重みがあった。

それを成し遂げてしまいそうな、凄みを感じる。

 

「ありがとう……けど、大丈夫、俺は、死なない、悲しませる様な真似はしないさ」

 

そう言って、長峡仁衛は自らの拳を強く握り締める。

此処から始まる。

長峡仁衛の、祓ヰ師としての物語が。

 

「そうと決まったら……早速入学手続きだ、祓ヰ師の学園、八十枉津(やそまがつ)学園に転入しないと」

 

八十枉津学園。

祓ヰ師たちが教育する場所。

とは名ばかりであり、実際は、祓ヰ師としての仕事を斡旋され、依頼を受ける仲介所の様なものだった。

 

長峡仁衛は、久々に、友達に会えるとウキウキしていた。

しかし、黄金ヶ丘クインは、首を左右に振る。

 

「それは恐らく無理だと思われます」

 

無理。

そう言われた為に、長峡仁衛は反発しようとしたが、即座に察する。

 

「無理……って、まあ、……そうか、そうだよな……霊山一族が学園側に圧を掛けるに決まってるか……」

 

「そうですね、学園の生徒となれば、様々なサポートが受けられますが……、学園に入学出来ない以上は、それらのサポートは受けられない」

 

学園の生徒になれば、便宜上は学生を保護する役目を持つ。

任務によって遠征する際の送迎や、結界師の幽世対策など、様々な利点を受ける事が出来るが……学生で無いと、それらは受ける事が出来ないでいた。

 

「つまりは……霊山一族の圧力を跳ね除けてでも、俺の力が欲しい存在になれば良いって事だろ?」

 

だったら。

長峡仁衛は、成果を挙げる他ならなかった。

 

「頑張るさ」

 

なんの確信も無い根拠の無い自信を口にしながら、長峡仁衛は奮起する。

 

長峡仁衛は一先ず、自分の術式を解明する事にする。

 

「この土地は黄金ヶ丘家の所有地です。人は滅多に来ませんので、術式の試用には十分過ぎるでしょう」

 

黄金ヶ丘クインは、黄金ヶ丘邸の所有地である山林地帯の一帯を長峡仁衛に紹介した。

森林伐採が行われ、土や山が抉れて土色が露わとなった土地。

此処で、長峡仁衛は自らの『封緘祓術』の試用を行う。

 

「先ずは、式神を召喚するか」

 

長峡仁衛は臨核を起動して神胤を放出。洞孔を巡らせて術式を発動状態にする。

片目を瞑る、すると、長峡仁衛がこれまで『封印した』ものが思い浮かぶ。

 

「(隻眼状態にすると情報が見える様になる……)」

 

其処から、『落ち武者の畏霊』の項目が脳裏に浮かんでくる為に、それを選択して召喚する。

 

「(ただ召喚するだけじゃ駄目だな……式神を召喚する場所……座標を設置する必要があるらしい)」

 

改めて座標を設置する事で、初めて長峡仁衛の神胤が消耗されて、『落ち武者の畏霊』が出現した。

 

「さて……」

 

長峡仁衛は目を細める。

この、髑髏の顔を持つ『落ち武者』を、長峡仁衛は見詰める事で情報を盗み見る事が出来る。

 

「(……人間の恐怖から生まれた畏霊、『赫雨』から恐怖を受信して出現……この畏霊を産んだ人物は、テレビ特番で放送されていた怪談話で、落ち武者の怪談を聞いた為に恐怖として具現化された……か)」

 

何とも俗な畏霊であった。

長峡仁衛は、そんな畏霊に、殺されかけたのだった。

 

「(総量……は一、技能は力任せに対象を叩き切る『斬撃』、か……こうしてみると、なんと言うか)」

 

長峡仁衛の脳裏に過るのは、友人が遊んでいたゲーム機器。

勇者が魔物を倒してレベルを上げる……いわば、RPGの様な感覚に似ていた。

 

「(昔やったゲームに似てるんだよなぁ……)」

 

長峡仁衛はそんな事を考えていた。

長峡仁衛の考えている様を見ている、女性が二人いる。

一人は、銀鏡小綿。

車の座席に座って、全開にした扉から長峡仁衛を見ている。

 

もう一人は辰喰ロロだ。

彼女も、長峡仁衛の術式の試用を見ていて、口に煙草を銜えて一服していた。

 

「なあ、長峡……そろそろ良いか?」

 

辰喰ロロはそう言って、懐からペンケース程の大きさをする木箱を取り出す。

それを長峡仁衛に投げようとしていて、長峡仁衛は手を挙げて止める。

 

「ちょっと待ってくれ、まだ心の準備が出来てないんだ」

 

そう言って深呼吸をする。

その木箱は、この土地に出現した畏霊を封印したものだ。

辰喰ロロは、封印した畏霊の一つを、黄金ヶ丘クインの許可を得て所持していた。

この封印した畏霊の用途は試用である。

長峡仁衛が、封印する術式を所持するのであれば、その真骨頂は封印である。

なので、この木箱に封じられた畏霊を封印する事が、今回の長峡仁衛の試用であった。

 

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