※この作品はR-18です。

豊蘆原のデビルサマナー   作:古井京魚堂

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学生時代の制服翠先生がつよつよショタっ子後輩にチン負け隷属させられる話

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

――第『壱』階層、『既知』領域――

 

 

 墳墓の玄室に擬せられる迷宮の一室で、その少女は犯されていた。

 ミドルティーンの未だ大人に成り切らない、ほっそりとした少女の肢体に、男たちが代わる代わる覆いかぶさる。

 強姦魔の貧相な陰茎を無理矢理に捻じ込まれた彼女は、冷たい石床の上で絶望と恥辱に体を震わせる。災厄が自分の体の上から過ぎ去るのを心を閉ざしてじっと待つ。せめてもの抵抗に、快楽苦痛のどちらも表に出してやるものかと決意したのが、遥かに昔の事に思われた。

 彼我のレベルの差、生物としての位階の違いに起因する、上流から下流への精気(オド)の急激な流入。それが齎す暴力的な快楽の波が、酷く悍ましかった。

 

「おらっ下級生! 今から先輩様のザーメンを恵んでやるからな、ありがたく受け止めるんだぞぉ! げははっ! うっ! あー。たまんねー」

 

 身勝手な腰振りを続けていた小太りの二年生が、尊大で気色の悪い言葉を投げつけるや、背中をぶるぶる震わせながら、下級生の膣内に汚らしい精液を塗りたくる。

 とっくに許容量を超えた複数人混合の汚濁の汁が、卑猥な音を立てて溢れ出る。

 事を終え、気怠い余韻に浸る男の背中に、仲間からのヤジが飛ぶ。

 

「出したんなら替われ替われ。後がつかえてんだから」

「おう。めんごめんご。しっかし。今日は不漁だな。いつもならもう一匹か二匹は拉致ってこれるんだが」

 

 吐精したばかりの男性器を引き抜いた男は、その辺に落ちていたレイプ被害者の制服のスカートで雑に肉棒を拭いながら、周囲の見張り役を兼ねた順番待ちの仲間に半笑いでボヤいた。

 女にはすぐに使える穴が三つある。せめて二人いれば、五人全員待ち時間なしで遊べるのだが。

 今日はオモチャが一つきりしか拾えなかった。

 その結果、五人分の獣欲を一身に浴びせられる事となった哀れな犠牲者は、口と女陰、時々菊門を同時に貫かれ、左右の手にも一本ずつ、男たちがおどけて言うところのジョイスティックを握らされていた。

 

「腹にナイフで穴を開けて、そこに突っ込む奴もいるんだ。それを考えたら俺たち善良だよなあ」

「だなあ。……お! 散々お前らにパコられてたから、ガバマンになってるかと思ったが、悪くない締りじゃん……つっても、もう二学期だからなあ」

 

 小太りと入れ替わりにチンポを突っ込んだ筋肉質が、ちょっとした小さな幸運に相好を崩す。

 

「あん? それなんか関係あんの?」

「ばーか。よっぽどの落ちこぼれでもなければ、一年連中もとっくに二層より先に進んでるってことだよ」

「おー! そっかあ。なぁるほどなあ。てことは、こいつらは、そのよっぽどの落ちこぼれってことかあ」

 

 得心がいった様子でゲラゲラと笑う。

 確かに今日の獲物は男三人に女一人。第一学年も半ばが過ぎた10月のこの時期に、一人も転職者がいない初心者(ノービス)の群れだった。

 

「かわいそー。折角セコセコ稼いだ経験値、俺らのおかげで消えちったー」

「ぴえんっだな」

 

 艶やかな黒髪で肉棒を扱いていたチャラい雰囲気のプリン頭と、女子の脇に執拗に亀頭を擦り付けていた仏頂面の剃髪したノッポが、さきほど遊びで嬲り殺した一年男子を小馬鹿にする。

 当の自分たちが、深層に進む勇気を持たないエンジョイ勢であるという自嘲も幾分か混ざっていたかもしれない。

 迷宮の浅層で、鬱憤晴らしに下級生を襲っては、嬲って、殺して、強姦して、前途を断たれた彼らが、やがて自身と同じ場所まで落ちてくることに暗い喜びを覚える、揃ってゴブリンにも劣る品性の持ち主が彼らの正体である。

 

 そんな下級生狩りのクズどもの前に、新たに一年生男子がふらりと迷い込む。

 

「おお! 新しいオモチャくんのエントリーーぃ?」

「なんでこんなところに子供が」

「かわいい」

「親とはぐれでもしたのか?」

「なわけあるか」

 

 歓喜の声は間もなく困惑に変わった。

 それも当然だろう。彼らが通う『学園』は外の世界だと高等専門学校に相当する組織だ。義務教育を終えた男女が五年間通うことになる。畢竟、年齢の下限は15歳である。

 実際には、多少、鯖を読んだ生徒がいるのは公然の秘密だが、それだって13歳を15歳としたりする程度だ。

 ところが、この闖入者と来たら。

 

「10歳にもなってないんじゃないか」

 

 一目見て明らかであるが、縦にも横にもとにかく小さい。

 背丈を言えば、目算、レイパー集団の一人が持つ四尺六寸の大太刀より低い。つまり140cm未満ということだ。事によっては130cmないかもしれない。

 それも単に背が低いだけではなく、瑞々しい頬は前思春期を迎えているかも怪しい。どう見ても小学生だ。それも中学年くらいの。

 

「心外だなあ。ほらこの学年章を見てくださいよ。ちゃんと1年生の物になってるでしょう」

 

 声も変声期前のそれ。そんな推定10歳前後の愛らしい男の子が、いけしゃあしゃあと学園の一年生を自称する。

 

「無理があんだろ」

「けど制服は本物っぽいぜ」

「あんなちっこい男子の制服あったんだな。特注か?」

「どうすんだよ。さすがにガキをバラすのはちょい気が咎めんだけど」

「だなあ。どうすっかね。メスガキだったらまだ穴として使えたんだが、どう見てもオスガキだからなあ」

 

 常識外の存在に男たちは戸惑い、少女に対する暴行も一時的に止まっていた。

 

「俺、この子相手なら、ホモセやれっかもしんない」

「マジかよ。同性愛は校則違反だぜ?」

「俺らの中にショタコンのホモ野郎が混ざってた件」

「引くわー」

 

 一人が新しい扉を開きはじめる中、集団の中で唯一の三年生で、同時に遊び人系の二段階職にまで進めているリーダー格の男子が、冴えたアイデアを思いつく。

 

「そのガキにこの女パコらせようぜ。リアルおねショタショーだ。外の世界どころか、学園の中でもそうそう見られない激熱のエンタメじゃね?」

「天才!」

 

 そういうことになった。取り巻きが囃し立てる。勘違いした陽キャ気取りの陰湿さ。

 勝手に処遇を決められた美少年は困り顔となる。

 

「うーん。今ならお互いに見なかったことにして穏便に別れるって選択肢もあると思うんですけど、それはナシな感じですか?」

「ナシだな」

 

 苦笑しいしい確認する美少年に、レイパーリーダーはニヤニヤ笑いながら却下する。

 その問答の合間に、仲間たちが男の子を囲むような位置を取る。手慣れた動き。無駄に連携が取れている。

 ちなみに、全員、社会の窓からチンポを剥き出しのままで冗談みたいな光景だった。

 その中に一人だけ、ギンギンに勃起状態を維持した男が混じっていたのは、本人の自己申告通り、少年に対して欲情していたという事だろう。

 

「そうですかー。じゃあ。仕方がないですね。【マハザン】」

 

 一言。それで終わりだった。術者を中心とした八方に衝撃波が放たれ、打ち据えられた陽気で不愉快なレイパー集団は全滅した。

 四人が即死し、ギリギリで即死を免れてしまったリーダーも、内臓に甚大なダメージを負ったことで、立っていられない有様だった。

 

「よわっ」

 

 少年が目を丸くする。

 牽制のつもりで放った初歩の魔法スキル一つでクズの群れが壊滅した。

 揶揄挑発する意図すらなく、思わず漏れた素の言葉だった。

 

「どうする。もし必要なら介錯してあげるけど」

 

 少年が尋ねる。

 一人、生き残ったリーダーだが、これも穴という穴から流血していて、放っておけば遠からず死ぬだろう。

 それに対して、男は怯えと恨みの混ぜこぜになった視線を送ると、もごもごと何かをつぶやいて、その場から掻き消えた。

 

「【トラエスト】じゃなかった。『脱出(エクソダス)』だっけ」

 

 先生から教えられた授業内容を思い起こす。たしか『遊び人(ニート)』系のクラスが保持するダンジョンから脱出するスキルだ。ほんの少し見直した。

 

「顔覚えられたよね。恨み買っちゃったかな。ま。どうでもいいか。それよりも今はこっちだよね」

 

 四人の死体をどうするかではない。それらは既に煙の様に消え去っている。

 彼の視線の先には、息も絶え絶えに、心ここにあらず、ぼうっと虚空を眺める性的暴行の被害者の姿がある。

 幸か不幸か命に別状は無さそうだった。

 ただし、身動きの利かない状態だ。

 運が()ければタイムリミットが来て地上に帰還できるかもしれないが、実際にありそうな未来は、迷宮を徘徊するモンスターに襲われて死ぬか、今度は好色な怪物に捕まって、飽きるまで犯される辺りだろう。

 

「この『学園』では日常茶飯事の光景なんだろうけど、それでも見捨てて行くのは気が咎めるかな。今はまだ」

 

 倒れ伏す少女に近づくと、少年は片膝を地に付ける形でしゃがんだ。

 

「こんにちはお姉さん。あなたには二つの選択肢があります」

 

 少年は彼女に問いかける。反応はない。気にせず続ける。

 

「一つは死に戻って、ここであったことは全部ダンジョンに捨てていく道」

 

 ダンジョンの中で死ぬと、その中で起きた出来事をすべて忘却した状態で、ダンジョンの外へと放り出される。

 

「もう一つは、辛い選択かもしれません。記憶を抱えて生きて戻って、今回の経験を次回に活かす道です。どうしますか」

 

 つまり、前者を選べば、今回、彼女を襲った屈辱的な体験は、彼女の主観的にはすべて無かったことになるということだ。ただし。今回の迷宮潜行の中で得られた経験値もすべて同時に失われる。

 逆に後者を選べば、レイプの記憶が残される代わりに、戦闘による経験値と、なにより上級生に襲われたという警戒するべき体験を地上に持って帰れる。

 

 彼女が答えたのは――。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「豊葦原学園ねえ」

 

 知らない学校だ。幸翔がアーカイブと気取って呼んでいる前世の記憶にもヒットする物は存在しなかった。

 正称を『豊葦原千五百秋水穂学園』。読み方はトヨアシハラノチイホアキノミズホノクニガクエン。長い。紹介者の説明によると、公には秘匿されている特別な高等専門学校であると言う。

 

 数奇な成り行きで手許に転がり込んできた学校案内のパンフレット。一読して、青天の霹靂、世界観がグルっとひっくり返った。

 

「うっそでしょ。メガテンの世界じゃなかったの……!」

 

 先月9歳の誕生日を迎えたばかりの美少年。折原幸翔(おりはらゆきと)は転生者である。

 春。三年生に進級してすぐのゴールデンウィーク。スイミングスクールに通いだしたのを契機に、ママからキッズスマホを買い与えられた。

 喜んだのも束の間。姉たちの持っている本物のスマホと違って、動画も見れないしゲームもできないしで「なんだよこれ! つまんなーい!」と上がったテンションはすぐに冷めた。

 それでも何か抜け道はないかと、ためつすがめつ弄っていると、フィルターを貫通して不明なアプリがインストールされているのを見つけた。

 すぐに親に相談したが、不思議なことに親も姉も他の誰にも見えていない様子で、ごっこ遊びと思われるのに終わった。

 

 そのアプリの名称は【デビオク】と【邪教の館.exe】と言った。

 

 既に述べたように幸翔には前世の記憶がちょっとある。

 ただし、時折、デジャヴュのように知らないはずの物語や外国語、ずっと先に習う中高レベルの知識が断片的に思い出されるくらいで、あまりはっきりとは覚えていない。

 前世からの連続性はそんなにないと本人は思っているし、客観的に見てもちょっとマセている子に落ち着いていた。

 

 その虫食い状態の知識の中に『邪教の館』とそれが登場するとある創作物の事が含まれていた。悪魔を使役し悪魔と戦うダークな世界観のRPG『女神転生』いわゆるメガテンである。

 最初はもちろん名前を借りたジョークアプリだと考えた。けれど、自分以外に見えていないのが知れると、ぞっとした。恐ろしかったが、放置するのはもっと怖かった。

 

 おっかなびっくり【デビオク】を起動すると、デビルオークションを介して、本当に悪魔を召喚できてしまった。

 それが半年前の事だ。

 それで、自分はそのメガテンの世界に生まれたのだと考えて過ごして来たのだが、ところが、ここへ来て、どうもそうではなかった可能性が急浮上してきた。

 

「豊葦原学園では、クラスに就いた生徒が、学園の地下に広がるダンジョンを攻略する」

 

 モンスターを倒してレベルアップした生徒は『聖堂』――カテドラルと呼ばれる転職施設でクラスを獲得できる。

 基本クラス(アーキタイプ)は『戦士』、『盗賊』、『術士』、『職人』、『文官』、『遊び人』の六職。そこからさらに経験値を貯めてレベルを上げると、より上級の職業にクラスチェンジできる。

 

「うん。すごくゲームっぽい。ぽいんだけど。同じゲームでも、メガテンやペルソナとは明らかにルールが違ってるなあ」

 

 そして紹介者の説明する学園の風紀は乱れに乱れている。むちゃくちゃドスケベだった。

 

「パートナーという名の性奴隷制度に、輪姦、乱交、スワッピング、なんでもありの性的倫理感がグチャグチャに崩壊した学園生活」

 

 本人が学園OGでもあるという紹介者は、レベルが上がると男女ともに体力と精力が人間離れした物になっていくので、やむをえないのだと弁護していたが。

 

「頭の悪い18禁アダルトゲームの世界だったりする?」

 

 だが、思い返せば心当たりは確かにあった。

 性欲の異常な昂進と精力の増大とは幸翔の身に起こった現象である。レベルアップに応じて、おこちゃまおちんちんだった幸翔の男性器は急速に成熟を迎え、女体を激しく求め始めた。

 その場に契約した仲魔のピクシーがいなければ、肉欲のまま手当たり次第に女性を襲っていたかもしれない。

 身を挺したオナホ妖精プレイでスッキリさせてくれた仲魔には、感謝してもし足りない。まあ、実際にはそれにも限界はあったのだが。

 

「あれ。でも。そこを除けばメガテンよりもだいぶイージーというか安全な世界だったりする?」

 

 ダンジョンの最奥に魔王的なサムシングが封印されていたりする可能性はあるが、市井の一般人が悪魔に食い殺され、しばしば世界自体がカジュアルに滅びたりするメガテンと比べると、だいたいの世界が安全である。

 

 そうと知ってさえいれば無理なレベリングなどせず、そうすればあのやらかしも回避できたのではないかと、後知恵と承知で考えてしまう幸翔なのだった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「次の議題ですが」

 

 豊葦原学園特別会議室。学校施設の中であるとは思えない、虚栄に満ちた絢爛豪奢な設備内装が調えられた広間にて、学園長を始めとする上級教職員と特級科の生徒会メンバーからなる会議の中の一幕である。

 司会進行の職員が議題を進める。応じてプロジェクターに人物写真が投影される。

 

「子供?」

 

 困惑の混じった声があがる。十になるかならぬかの紺ランドセルを背負った男子児童が、満面の笑みでピースサインを作っている。

 

「折原幸翔。年齢は9歳とのことです。過日、天然ダンジョンの奥地で、ポップした概念化物(モンスター)を倒しているところを現地管理者が目撃し、その場で接触しました」

「ほう。学園の外で見つかった野良の覚醒者か」

 

 配布された資料を軽く流し読んだ教師の一人が感嘆の声をあげる。ないことはないが、非常に珍しい存在だ。

 国の管理下にある人払いがされた天然ダンジョンに人が迷い込むのは稀な事だし、化け物と遭遇して生き残れる者は更に稀である。

 

「資料によると。当該ダンジョンは学園の基準だと一層にも満たない瘴気濃度のようですが、それでも化生した化け物を9歳児が倒してのけるとは大した偉業ですね」

 

 揶揄と賞賛が半ばする口調で生徒会役員の女子が笑う。次いで、それを受ける形で、教師の一人が確認する。

 

「いずれかのダンジョン名家の隠し子というわけではないのかね」

「遺伝子検査はシロです。系図上も過去7代まで遡っての身辺調査を行いましたが、父方母方共にダンジョン関係者は一人も含まれていませんでした」

 

 議題を持ち込んだ学園職員が断言する。

 

「少年の能力に関してですが、翅の生えた小妖精と犬頭の小鬼、当人はピクシーとコボルトと呼称していますが、それらを使役している事から当初は文官かと思われましたが、念動力もしくは衝撃波を打ち出す魔法的能力を併せ持つ為、使い魔を召喚使役する術士系レア職である可能性が高い物と考えられます」

「それはすごい。野生の天才児か」

 

 先ほどの女子生徒が、今度こそ本心から感心した様子で少年をそう形容する。

 ある意味では単純に身体能力と五感が拡張されるだけな戦士、盗賊、職人と異なり、新しい感覚器官を駆使する事となる術士の難易度は前者の比ではない。

 教導してくれる先達のいない独学で魔法を行使し、あまつさえ使い魔すら使役する。文句のつけようがない才覚だった。

 

「すごいがまずいな」

「ああ。まずいぞ」

 

 まずいまずいと参加者が口々に言い交わす。

 なぜならば、ダンジョンの外で異能(スキル)が使えるのは、選ばれた血統の人間だけなのだから。真実はそうではないが、そういうことになっている。

 名家の庶流であってくれれば、問題なく建前を守れたのだが。

 

「魔法まで使えるとなると、早急に俗界から隔離する必要があるな」

「消してしまった方が後腐れがないのではないか?」

「それは惜しいだろう」

 

 喧々囂々。侃々諤々。それから更に喧々諤々。ピーヒョロロ。当人の与り知らぬところで、天才少年の処遇が話し合われる。

 

「一日も早く学園に編入させるべきだ」

「だがね。我が校は建付けとしては高等専門学校なのだよ。一つや二つ年齢を誤魔化すことはよくあるが、流石に9歳児を15歳とするのは無理がないかね?」

「ですが。ただの超人どまりならば誤魔化しも利きますが、既に何らかの一次以上の職を得て、スキルを発現している人間を、外の世界に置いておくわけにはいかないでしょう」

 

 その言葉が決め手となった。

 少年に関する話はそれで終わり。こうして、ちょっとだけ成長がゆっくりで、小学生に見える男子生徒が、編入生として豊葦原学園に迎え入れられることになったのだった。

 次の議題に話が移り変わる中で、生徒会役員の女は身上書の最後に備考として記された少年の家庭の現況を、口の中だけの小さな声で呆れた調子に読み上げた。

 

「母子家庭で、男の影がない母親と高校生と中学生の姉二人がほぼ同時に懐妊か」

 

 さらに少年の通う小学校で女子生徒の集団妊娠事件が起きているとなれば、答えは一つしかない。既に相当レベルが上がって性獣と化していると見て間違いない。そういう意味でも少年の一般社会からの隔離は急務だった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 トントン拍子に話は進んで、10月の第1月曜日から幸翔の『学園』生活は始まった。

 

 学園のOGである天然ダンジョンの管理人に付き添われて、ローカル鉄道を何本も乗り継ぎ、立山連峰の麓に所在する学園の門前町に辿り着いた。

 陸の孤島と言うのがピッタリな山間の小盆地に、不釣り合いなくらい充実した商店街が整備されている。

 移動して思ったのは、意図的に複数の鉄道とバスを乗り継がせることで、学園と人里の位置関係を分からないようにしているなと言うことだったが、この商店街も同じ設計思想の下、生徒が学園の外に脱走しようと考えないように築かれている。

 

 厳密に言えば学園入り自体は前日の日曜日に行われた。

 14時に編入先のクラスの担任教師と面談し、その後、幸翔がこれから暮らすことになる寮の責任者と挨拶をする取り決めだったからだ。

 

「こんにちは。はじめましてユキトくん。豊葦原学園へようこそ。今日からキミの先生になる壱年丙組の担任、アカネです」

 

 学園の職員室で幸翔を出迎えたのは、小学校で一番新人だった先生よりも、さらに若く見える女性教諭だった。

 胸元の空いたトップスからこぼれ落ちそうな爆乳につい目が引き寄せられる。腰はキュっと括れて、お尻も大きい。絵に描いたようなボンッ、キュッ、ボンッ。

 タイトスカートから覗く太腿もムッチリと肉が詰まっていて、豊葦原学園では、絶世の美貌とドスケベな肢体を併せ持つ、性の権化が教師をやっている。

 年齢は20歳だと言う。聞いてないのに教えてくれた。永遠の二十歳という手合いの冗談ではなく、実際に去年まで学園に在籍していた本物の20歳。

 

「それで、こちらは教育実習のミドリちゃ……ミドリ先生。学園の5年生で、ユキトくんの先輩になります。今は先生になるためのお勉強中なんだけど、明日からしばらく、幸翔くんが学園に慣れるまで、お世話係になってくれます」

「翠です。幸翔くん、はじめましてだね。お互いに慣れないことばっかりだろうけど、一緒にがんばろうね」

 

 アカネ先生から紹介された、翠という名前の制服姿の最上級生が笑顔で挨拶する。

 こちらもアカネ先生に負けず劣らぬ、ナイスバディの素晴らしい美女である。溌剌とした前者に対して、しっとりとしている。

 

「はい! ボクは折原幸翔です。よろしくお願いします、アカネ先生! 翠先生!」

 

 浮かれ気分の幸翔が、幼い子供らしい天真爛漫さで全名を名乗ると、アカネ先生は慌てて「シー!」と口の前で人差し指を立てるジェスチャーをする。

 

「あっ。ダメダメ! あのね、ユキトくん。この学園ではね、本当の苗字を名乗っちゃダメなの。分かった? お口にチャックして、シーっだよ」

「そうだった! 付き添ってくれたOGの人からも教えられてたのに、つい忘れちゃってた。でも、やっぱり、変なの!」

「変だよね。先生もそう思う。でも大切なことなの。覚えておいてね。人間同士ならまだギリギリで大丈夫なんだけど、ダンジョンの中のお化けたちには、絶対に知られちゃいけないからね」

 

 切々と説いて聞かせる。最初から知らなければ、うっかりミスして漏らしてしまう事もない。自分の為にも他人の為にも守って欲しい。

 言われて幸翔も思い出した。たしか呪術的な意味で『真名』をみだりに知られてはいけないのだった。学園のパンフレットにも注意書きされていた。

 

「はい! わかりました!」

 

 元気よく了承する。

 実の所、幸翔の真名は今世の物だけではなく前世の名前も混みで成り立っているので、片方が漏洩したところで痛くないのだが、それを知るのは本人も含めて存在しなかった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「失礼しましたー」

 

 打ち合わせが終わり、少年が立ち去った後の職員室。

 表面上は終始和やかに進んだ面談の時とは一変して、翠は暗い顔を隠さなかった。

 

「あんな小さな子を」

 

 親元から引き離して、地下迷宮に放り込む。

 自身が所属する豊蘆原学園という組織が、人面獣心悪逆無道の人非人の群れであることは重々承知しているつもりだったが、この度の仕儀は一等に惨い事に思われた。

 

「そうね。けれど、だからこそ外の世界には置いておけない。賢いアナタにはわかるでしょう。ミドリちゃん」

 

 十にも満たない年齢の覚醒者など、導火線に火のついた爆弾に等しい。今はまだ素直な子だったが、あのまま他のジョブホルダーの存在を知らずに、増長して唯我独尊に育てば、肥大した自我を慰める為に、国家を転覆せんと目論んだやもしれない。

 

「先輩。でも、それは!」

「かもしれない。それだけでお歴々には許容できないのよ」

 

 企んだ時点で学園の卒業生の手で始末されるだろう。その上で、この国の支配者たちは、自分たちが敷く秩序が僅かにでも動揺する可能性があるのが許せないのだ。

 

「上の思惑がどうでも、これがあの子を守る最適解には違いないわ」

「……はい」

 

 渋々と。本当に渋々と翠は頷いた。感情的には認めがたいが、頭ではその通りだと認める他なかった。

 

「よろしい。それじゃあ。明日から、あの子のお世話をお願いね」

 

 お世話。この学園において、その言葉には濃厚な性の色が纏わりついている。端的に換言すると「抱かれろ」という意味である。

 

「もちろん。アタシも担任として協力は惜しまないつもりよ。でも、先生として、受け持ちの子たちには平等に接しないとだから、ユキトくんだけの相手はしてあげられない」

 

 学園の女教師、特に学級を受け持つ担任と言うのは、クラスの男子共通の性処理用の肉便器である。求められれば、等しく体を開く責務がある。

 幸翔が求めるなら、アカネは先生として喜んで彼のおチンポ様に御奉仕するが、同じ重さで、他の生徒のおチンポ様にも御奉仕しないとならない。

 

 畢竟、学園の女教師に求められているのは、閨の技が全てである。教養、学識、授業の手腕、他は皆悉く虚しい。

 

「そっちはそっちで気が咎めるのですが」

 

 翠自身、学園で5年を過ごした自分にこんな真っ当な倫理観が残っているのは意外だったが、9歳の男の子と褥を共にするのは、流石にマズいのではないかと思われてならなかった。

 そんな後輩の感傷を、アカネは笑い飛ばす。

 

「幼くっても雄は雄。アナタも資料は読んだでしょう。すでにレベルアップの影響は出ているの。御家族から同級生まで散々に食い散らかしてきた立派なセックスモンスターよ」

 

 その夜、翠はアカネの忠告を身をもって思い知ることになる。

 

 

***

 

 

「わっ。ひろーい!」

「散らかっていて恥ずかしいわ」

 

 青龍荘。学園に四つあるミドルクラスの寮である。

 幸翔のお世話係に任じられた学園の五年生、翠が入居しているのがこれで、幸翔は今日から彼女の部屋に同居させてもらう事になる。

 

 物珍し気に部屋の中を見回す幸翔に、翠は気恥ずかし気な照れ顔で応じた。

 青龍荘の翠の部屋は、幸翔の実家、四人暮らしの分譲マンションよりも広くて設備が整っていた。また翠本人は謙遜しているが、室内の整理整頓掃除も行き届いている。

 

 通例、普通科の新入生は一段階グレードの低いエントリークラスの学生寮に入寮するのだが、学期途中からの急な編入と言うことで、エントリークラスの男子寮に空きがなかった。

 また書類上は15歳だが実年齢が9歳である事も鑑みて、大人と一緒に暮らすのが妥当だとの判断が下った。そうして白羽の矢が立ったのが、翌年からの学園への就職が内定している翠だった。

 と言うのは建前で、学園の息がかかった翠が同居する事で、イレギュラーである幸翔を監視し、その体で篭絡する事が期待されていた。

 

「これで散らかってる? まさか! 僕の家なんてこんなもんじゃないですよ。特にお姉ちゃんたちの部屋なんて……」

 

 笑っている途中で幸翔はしょんぼり顔になった。自分の家と家族を冗談の種にした事で、いよいよ自分が家族から離れた事を事実として理解してしまった。

 これまでは環境の急変に現実味が追い付かず、どこか他人事のようなふわふわとした心地だったが、卒然として我が事としての実感が湧いて来た。

 最短であと4年半。9歳になったばかりの幸翔にとって、物心ついてからの全期間とさほど変わらない膨大な時間である。

 

「うっ。ぐすっ。ママ、お姉ちゃんたち……」

 

 そう思うと急に涙が込み上げてきた。

 えぐえぐとしゃくりあげる幼子を、翠はそっと抱きしめるのだった。

 

「……ごめんなさい」

「いいの。泣けるだけ泣きなさい」

「でも」

「いいのよ。この学園に来る人間はみんなそう。やむにやまれず流れてくるの。無理に気を張って耐えようとしては、幸せだった思い出が、心の傷になってしまう。泣いて、泣いて、全部吐き出して、それから一緒に笑いましょう」

「うん」

 

 翠の豊満な胸に包まれて幸翔は泣いた。

 不安、怒り、悲しみ、覚醒の日から溜まっていたアレコレも併せて、この機に全て吐き出さんと全力で泣き叫んだ。

 超人の強化された肺活量から漏れ出る本気の鳴き声は、遮音性能に優れる学園の寮の壁を貫通するほどで、間近で浴びせられた翠は、内心ちょっとだけ早まったかなと後悔した。

 

 さて。ここで終わっていれば感動的な一幕であったろう。

 だが、ここは豊葦原学園であり、いたのは一組の雄と雌であった。かてて加えて雌の方は肉便姫(オルギニアン)の職を得た女である。

 すなわち性職の極致。

 その肉体は持ち主の意思をいつも裏切る。

 

 眼前の若い雄の激情に、翠の身体は感応した。声高に訴え出す。悲しみ、苦しむ男がいる。その憤りを我が身で受け止めずしてどうするのか。

 翠の秘所はひとりでに湿り気を帯び、吐息は甘やぎ、瞳は淫欲の熱でキラキラと輝き始め、所作に男に媚びる艶が乗り始める。

 

 ほどなく幸翔も異変に気づいた。

 あっけにとられる男児の面前で、聖女の慈愛は痴女の卑猥に転変した。その姿は艶美にして蠱惑。男の性を啜る淫魔さながら。

 

 鼻を擽る汗の薫香(かおり)、耳を惹きつける衣擦れの音。

 女の情を煮詰めたような凄絶な色気に、幸翔は涙も引っ込んで、かわりに止め処なく唾が湧き出てくる。

 

 半ば無意識だった。幸翔の右手が翠の尻を撫でる。

 

「あんっ♥」

 

 実に、実に艶やかな声色であった。男を誘う毒婦の声だ。耳から流し込まれる媚薬に等しい。 

 

「あぁ。すごい、なにこれ、張りがあって、弾力もあって、だって言うのにやわらかい、指が沈み込む……!」

 

 辛抱たまらず気づけば両手で揉みしだいていた。同時に股間を相手の太腿に擦り付けるのも止められない。

 

「あっ♥ あぁ♥ あはぁ♥」

 

 面白いように嬌声があがる。

 幸翔は己が掌中に納まる楽器の演奏をひとしきり楽しんだ。

 

 翠は跪くと少年の股間に顔を近づける。

 布の上からでも明らかに判然とするほど、硬く盛り上がっていた。

 それから上目遣いに幸翔と目線を交わし合い、そのまま器用にも口を使って、少年の制服のズボンのファスナーを下ろすと、ガチガチに勃起したチンポを出迎える。

 

「あはぁ♥ なんて素敵なのかしら♥ ちゅっ♥」

 

 鈴口から先走りの汁を垂らす亀頭に接吻を捧げる。

 一瞬、それだけで幸翔はイクかと思った。それでは余りにも情けないとの一心で、ギリギリで踏みとどまる。

 いじましい様子に、翠はクスッと笑った。愛おしさがこみ上げてくる。

 ちゅっちゅっと満遍なく、幸翔の若く生命力に満ちた持ち物に、翠は印を付けるように、竿と亀頭の各所にキスを繰り返す。

 頬ズリして、流し目で雄の期待を煽りながら、大きいね、元気だね、立派だねと底の底からの真心を籠めて、これから奉仕するおチンポ様を褒め讃える。

 覚醒以来の半年で、二桁の女を貫いた自負のある相棒だ。褒められて嬉しくない筈がない。

 自尊心に訴えかける手管に、幸翔は気を良くすると、なんとなく手を動かして、年上の美女の頭を優しく撫でる。

 

 それで、翠は一度、軽くだが気をやってしまった。いつの間にか下着を脱ぎ捨てた剥き出しの下の口から、ビシャビシャと愛液を撒き散らす。すると、たちどころに水溜りができた。

 

 その光景に、幸翔の年齢にそぐわぬ巨大な逸物は、ますますいきりたった。

 翠はその威容をうっとりと眺めると、三つ指を突いて一礼し、それから、上体を起こすと、口を開いてエーっと長い舌を見せびらかしながら、上下左右に縦横に動かしてみせる。

 

 長虫にも似た、なにがしかの独立した生き物のような活動。

 

 再び、ゴクリと幸翔はたまらず唾を飲んだ。

 

 今から、このよく動く舌で、貴方の大事な所を舐め上げるのよ。そういう予告である。いやが上にも期待の心は跳ね上がる。

 

 フェラチオの経験はある。外で作った女たちに数人がかりで舐めてもらった事もあった。

 だからこそ分かる、これまで経験して来た物とは何かが異なっている。それが何かは分からないが、とてつもない物が出現する予感があった。

 

 翠の形の良い唇が、亀頭を飲み込む。最初は啄むような動き。はむはむとエラの部分までを焦らすように甘噛みする。

 竿には触れない。時折、口を離しては、ふーっと息を吹きかけて遊びを見せる。

 その母が子を甘やかすような優しい動きと刺激に幸翔が慣れた所で、翠は一気呵成に喉奥まで肉の竿を飲み込んでしまった。

 裏筋に舌を巻き付けるように舐め回す。

 緩から急へ。

 加えて、頭を小刻みに前後させて、不規則な刺激を間断なく与え続ける。

 

「うわぁっ……!」

 

 初めて味わう、熟練の風俗嬢でも裸足で逃げ出す、SSR職の口淫奉仕に、幸翔はまるで耐えられなかった。予告なく、間欠泉のように、盛大にザーメンを吐き出した。

 その際、発射の瞬間に、咄嗟に翠の頭を掴んで招き寄せ、喉の奥の奥まで陰茎を捩じ込んでしまった。

 期せずして、最後はイラマチオの様相を呈してしまった。

 

「ごっごめんなさい。翠先生。苦しくなかった。大丈夫だった」

「けほっ。あーむっ♥ うふふ、全然! とっても格好良かったよ♥」

 

 おろおろと謝罪する幸翔に、翠は婀娜っぽい笑みを浮かべて、顔に飛び散った精液を拭った指の先をしゃぶる。

 それがあんまりにエロい物だから、たちまち幸翔のおちんちんは元気になって、もっとこのスケベな女を味わいたいと涎をだらだら垂らし始める。

 

「くすくす。幸翔君も全然満足できてないみたいだね。先生もそうなんだ♥ だから、今度は、こっちで……ね♥」

 

 そう言うと、翠は左右の手の人差し指と中指を使って、自らの秘所を割り開いて見せて、眼前の雄を花園へと誘った。

 

 ひくひくと開閉する秘唇にむしゃぶりつくと、幸翔は汲めども尽きぬ蜜を無心で舐め回した。愛液を啜り、陰核を甘噛みし、膣口から中に舌を差し込んで、翠の性感帯を直に探る。

 

「おっ♥ あっあっ♥ そ、ん、な……無理しなくて良いのよ♥」

 

 翠は目を白黒させて訴える。

 肉棒でなく舌が来るとは考えていなかった。

 性交と奉仕の経験は豊富な彼女だが、クンニリングスをされた経験はほとんど無かった。これは彼女に限らない。この学園の男たちは概ね身勝手で独り善がりなオナニーのようなセックスしかしないので、花のように扱われる経験に欠けているのか実情である。

 それは学園の女たちが、前戯など何もせずとも、尻を叩き肉棒を突っ込むだけで勝手に濡れる、お手軽肉便器体質に作り替えられていると言うのも大きい。

 自然、手間の掛かる男からの愛撫などは、よほどの奇特な男しか行わないし、それも手指で女性器を弄るくらいが精々であった。

 

 だから、今の翠の心を占めているのは「女性器を舐められるだなんて、アブノーマルで恥ずかしい……!」となる。

 

 フェラチオに熟達し、イラマチオにも余裕綽々な彼女が、途端に未通女(おぼこ)い生娘の様な初心な反応を示す。

 この非対称性は、翠の重ねた性経験が全て学園内と言う偏った環境で積まれた物だから生まれた歪みである。

 対する幸翔の方は、外の世界で、非覚醒者の女たちを相手に性交の経験を積んだので、クンニを含む種々の前戯で十分に慣らさないと、女性への負担が大きいと教え込まれている。

 あと単純に、自分の愛撫で女を善がらせるのは楽しくて好きだった。

 

 そんなこんなで両者の間にすれ違いが発生していた。

 翠先生はよく濡れる人だなあと幸翔が呑気に考えていたのに対し、翠の方は幸翔の底抜けの優しさ(学園比)と、生まれて初めて体験する愛のあるセックスに感動し、確かな愛情を抱き始めていた。

 

 同時に、浮かれた頭の片隅で、最後の最後で乗り切れない、どこまでも冷めた自分も居て、籠絡する為に送り込まれた自分の方が、自身の半分も生きていない男の子に籠絡されかけているのが滑稽だなと嘲っていた。

 

 なお。その冷笑的な翠は直後、一撃で粉砕される事となる。

 

「もう。十分かな」

「え? ええ、そうね、いつでも大丈夫よ♥」

「挿入れるね。翠先生」

 

 幸翔は齢に合わぬ手慣れた動きで男性器の先端を、女性器の入り口にピタリと密着させる。

 ほんの少し名残惜しくはあったが、翠は前戯の終わりを受け容れた。そして幸翔の猛る肉茎を鷹揚に受け容れる。

 見た目としてはありふれた正常位。

 刹那。

 幾重にも折り返され鍛錬された鋼の如き強靭な精気(オド)が翠の肉体を蹂躙する。

 

「うそっ♥ うそでしょ♥ こんな♥ こんなの、私、知らない♥ あ♥ あぁぁぁぁ……! 堕ちるっ♥ 堕ちてしまうっ♥ ありへ♥ なーい♥ えしゅえしゅはーるひょくのあらしが♥ たった一度、それもおチンポしゃまをただ挿し込まれただへで♥ 堕ちてしまうなんて♥ そんな常識はふれのこと♥ あっへぁぁぁぇぁ♥」

 

 一突き。それが肉便姫(オルギニアン)たる翠を隷属させるのに要した分限である。

 

 胎内に精を放たれれば、たとえそれがどれほど低級の男の子種であったとしても、否応なしにイク。あらゆる雄に平等に隷属しているから、誰をも迎え入れる分、誰かに傾倒する事が叶わない最弱の肉壷。

 それが肉便姫のクラス特性である。

 

 でも、これは違った。

 

 三段階、四段階の職を得た攻略倶楽部の精鋭や学園の教職員、果ては羅城門の鬼神に犯されても寸毫とも動かなかった天秤が、たちどころに傾く。

 

 圧倒的なレベルの差! 生物としての存在の格の違いを分からされる。

 

 いつもの浅く、薄っぺらい、皮相的な絶頂とは根本から違っていた。イクたびに、体の内側から自分という存在が書き換えられてイク。

 翠の肉体はたちまちに自らの所有権を喜んで手放し、ご主人様への絶対の愛と忠誠を誓った。

 

 そんな事を露ほども知らぬまま、幸翔は幸翔で、これまでに味わった三十超の肉壷の中で、文句無しで一番の名器が齎す快楽に酔いしれていた。

 

「なにこれ。すごい……! 気持ちよすぎる……!」

 

 ある種、二回目の脱童貞に等しい衝撃だった。

 一瞬の忘我の後、翠の腰をがっしり掴むと、ゆっくりと、もう一突き、また一突きと彼女の中を全て完璧に味わい尽くそうと企図した丹念な腰使いで翠のマンコを耕して行く。

 

 その度に、都度都度、翠は深みへと堕ち堕ちて行く。

 

 一突き、二突き、三突きと半ば、早々と限界が到来したのを幸翔は察した。駄目だ。もう一擦りで暴発する。

 

「翠先生。ううん翠ちゃん! おねがい! 僕の物になって!」

「だめです♥」

「なんで!」

「もうなってるから♥ さっきからとっくに翠は幸翔さまの物です♥」

 

 射精の瞬間、幸翔は翠に告白した。

 幸翔の要求は、結局のところは、愛ではなく性欲に由来する幼稚な所有欲求でしかなく、それは小さな暴君が懇願に見せ掛けた命令を下したに過ぎなかったが、それこそが隷属させられた者にとっての至上の喜びだった。

 

 翠のすらりとした長い足が、幸翔の腰の後ろで交差する。積極的な種乞いの体位。

 

 どちらのものともしれぬ絶叫が部屋の中を木霊する。肉体がグズグズに溶けて混ざると二人して錯誤した。

 

 幸翔は外の世界で多くの女たちと関係を持った。仲魔、母親、姉二人。レベルが上がるにつれて、それでも足りずに担任教師に同級生、上級生、下級生およびにそれらの母親たちへと魔の手は伸びた。

 十人以上が幸翔の子供を妊娠している。

 

 それくらい好き勝手に女を食い散らかして来た幸翔だが、その実は一度として満足の行った試しはなかった。

 もちろん、気持ちは良かったし、楽しくもあった。

 けれども、外の世界では幸翔の相手をした女たちは全員一回か二回で戦闘不能になってしまうので、常に不完全燃焼の状態だったのは否めない。

 学園OGのダンジョン管理者でさえ五回もたなかった。

 

 そこに現れたのが翠だった。破れ鍋に綴じ蓋。底のないSSR職の女は無限とも思える幸翔の精力を受け入れる事が叶った。少年は夢中になって彼女の肉体を貪った。そして、それが彼女の器を満たしてくれる。

 

 かくして、二匹の獣の箍は外れた。

 幸翔と翠はそれから三日三晩、時を忘れてまぐわい続けた。

 

 十回目、二十回目、三十回目までは数えていたが、それから後は止めてしまった。

 

 離れがたさが高じて繋がりながら飲食し、寝る間が惜しいので眠らなかった。お風呂ではお互いの体を洗いっこしながら、気分が高まればその場で繋がって、また体を汚して洗っての無限ループに陥った。

 

 幸翔の全開の欲望を翠は全て受け止めてくれた。

 こうして、幸翔は覚醒の日からの半年分の積もり積もったモヤモヤを、ようやく完全に解消できたのだった。

 

 結局、予定されていた月曜日の初登校はできなかった。

 

 

 

 後日談が一つある。

 幸翔を転職のカテドラルに案内した時、翠に転職可能をしらせる合図が出た。

 




元々はこの第1話こと短編『ハイハク2次 学生時代の翠先生がつよつよショタっ子後輩にチン負け隷属させられる話』として投稿した物でした。この話だけ文字数が多いのはその名残。
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