※この作品はR-18です。

豊蘆原のデビルサマナー   作:古井京魚堂

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続きました
第2話は2万字ほどになったので分割して投稿します


第2話 前編

「はー! それで三日三晩ぶっ続けのやりっぱなし」

 

 全然登校してこないと思ったら。よもや、そんなことになっていたとは。後輩が語る破天荒な閨事(ねやごと)に、なんてことなのとアカネは詠歎した。

 

 金曜日の放課後の出来事である。

 場所は学生街の個室カフェ。アカネは翠とお茶をしていた。

 暗黙の了解として、学園の敷地外では女教師を見かけても、性交を無理強いてはならない事になっているので、闖入者を懸念せず落ち着いて密談する事が出来た。

 

 本来予定されていた編入生の初登校日。ひいては間近で幸翔を監視して、どう見たか報告が行われる予定だった日から既に四日が過ぎていた。

 

 五日ぶりに出会う後輩はまるで人が変わっていた。

 常に薄幸の未亡人めいた笑みを浮かべていた彼女の姿はどこにもなく、今では幸せいっぱいの新婚さんスマイルを浮かべている。

 

「真面目なミドリちゃんが、そこまでドハマりするなんてね」

 

 すっぽかしてしまった事を恐縮して謝る翠を宥めながら、アカネは呆れ半分羨み半分に笑った。

 けしかけたのは自分だが、まさか同居初日からフルスロットルでケダモノじみた交尾に耽溺して、それ以外をすっかり忘れ切るとは思わなかった。

 

 学園の女教師は口に手を当てて、驚きましたよという仕草をする。

 アカネも在学中に男子寮や倶楽部ハウスに連れ込まれて、昼夜を問わぬ監禁まがいの輪姦を受けた事は何度かあるが、流石に一人の生徒に三日三晩貫徹で犯され抜いた経験はない。

 

 そんなに気持ち良かったのかしら。じわりと密やかに股布を湿らす。学園で長らく過ごし、習い性と成り、淫蕩に歪んだ魂を持つ彼女をして未知の領域だ。

 

「はい。ご主人さま……幸翔くんはそれはもう逞しくて、えへへ」

「なにさ。かわいらしく笑っちゃって。そんなにそのゴシュ……え?」

 

 童女を思わす無垢な笑顔に、アカネもつられて笑った後で、おかしな部分にはたと気づいた。

 

「まって! アナタまさか隷属状態になってる? 堕とされたの?」

 

 血相を変えて問い質す。

 それに対して翠は、ニコニコ笑顔で「はいっ!」と幸せそうに返すのだった。

 

「信じらんない。『娼婦(ニンフ)』が隷属させられたって話も滅多に聞かないのに、アタシやアナタみたいな『肉便姫(オルギニアン)』がそうなるなんて前代未聞じゃない?」

 

 これが例えば、同じSSR職でも主人を定め仕える『奉仕姫(メイドプリンセス)』なら理解できる。彼女たちは本能的に隷属先を求めている。

 他方、宗教的乱交儀礼(オルギア)の名を冠せられた自分たちは乱交(オルギー)こそが本質である。不特定多数の男たちに酔って、酔われて、消費されるのに特定の男への隷属など邪魔でしかない。

 

「だって言うのに、ミドリちゃんは隷属を経験できたんだ。妬けちゃうなあ。隷属ックスは途轍もない気持ち良さだって話だけど、これが『肉便姫(オルギニアン)』の特性と併されば、どうなっちゃうんだろう。想像もできないや」

 

 その本心が那辺にあるのかは定かではないが、アカネは冗談めかして総括した。

 

 翠の報告という名の惚気は続く。

 強いて真面目な顔を作ろうと努めていたが、徹しきれずに口角が上がり気味であった。

 

 日曜日の夕方から始まった激しい目合(まぐあい)は翌月曜、翌々火曜、翌々翌の水曜日まで昼夜を忘れて続けられ、更に翌日の木曜日も一日、クールダウンを兼ねた性行為にまで至らないイチャイチャに充てる事が決まった。

 

 朝起きて、寝巻きのまま横に並んで歯を磨いた後、幸翔にお手伝いされながら翠が作った朝御飯を二人で食べた事。おしゃべりをしながら一緒に部屋の掃除をした事。思いがけなく手と手が触れてドキドキした事。

 

 幸せそうに翠は語る。

 他愛もない、ままごとの様な、けれども学園の女にはそうそう望むべくもない幸せ。

 

 掃除に際して髪を後ろで一本に纏めたのを見て、幸翔は「かわいい。かわいい」とべた褒めし、翠を赤面させた。学園に染まっていない少年の無邪気な賛美は学園の女には劇毒だった。

 

 語られるエピソードに、折々、相槌を打ちながら、アカネは眩しいものを見るように目を細めた。

 

「二人でやれば、ぐっちゃぐちゃになった部屋の惨状も、楽しいイベントのアクセントで……」

 

 と、そこで翠はふいにトーンを落とす。

 

「すみません。ちょっと話を盛りました。やっぱり大変でした」

「あ、そう」

 

 どーでもいいなとアカネは思った。

 

「でも。一緒に掃除かあ。いいなあ。他の男連中にも見習って欲しいわね」

 

 実感のこもった言葉だった。

 過去に忍んで来た男子は誰一人掃除なんてしなかった。揃って犯るだけ犯ると満足して、呑気に鼻歌など歌いながら、アホ面を晒して帰って行ったものだ。

 酷い時には意図的に物を壊して、上下関係を教え込んできたりする。泥酔して室内でひり出した大便を食べるよう強制された時は本当に最悪だった。

 

 学園に流れ着く男子生徒は、その大半が女子と縁のなかった陰キャか(やから)の手合いである。少数の元は女あしらいに長けたカースト上位の一軍男子も、学園に適応する過程で面倒くさい女子の御機嫌取りをする必要がない事を学習してしまう。

 結果、性欲と女性嫌悪の入り混じった男尊女卑思考の怪物が生まれる。

 

 女をどれだけ虐げ搾取できるかが男の価値だと思い込んでいる。

 

 それに女性の髪型や服装なんて気にもしない。せいぜいがエロ下着に脂下(やにさ)がり、ストリップショーを指笛を鳴らして観賞するのが関の山。

 アカネのクローゼットの中の半分は、男たちに押し付けられたバニースーツやチャイナドレス(旗袍)、カウガールやブルマなどの卑猥なコスプレ衣裳で占められている。

 

「ミドリちゃんもそうでしょ」

「はい。でも。全部捨てちゃいました。幸翔くん以外の汚い物がこびりついた服なんて気持ち悪くて仕方がないから」

 

 真顔で言い放つ。虚無の表情にアカネは気圧された。

 

 スケベ衣装群の処分については、幸翔に上書きしてもらうのも、ちょっとだけ惹かれる心はあったが、勘案した結果、やっぱり嫌だなというのが勝った。

 

「それと下着もほぼ全滅です。お互いの体液でドロドロのビチャビチャで、濡れてるところ、乾いてるところ、湿ってるところと様々で、洗濯こそしましたけど、あれは買い直しですね」

 

 次いで、いきなりニヘラっと相好を崩して。

 

「それに。どうせなら幸翔くんの好きな柄を選んでもらいたいですし」

 

 などと言い出すものだからアカネは相手の正気を疑った。

 

「バ、バカップル……バカップルがおる! アナタさては偽物ね! 本物のミドリちゃんをどこへやったの!」

 

 やりまくった弊害の『幸せホルモン』の過剰分泌で脳をやられでもしたんではないか、そんなデタラメな心配をする。

 もちろんそれは友人間の他愛もないじゃれあいであったが、浮かれ過ぎてやしないかと心配になったのは本当である。

 

 SSR職の女とは思えないくらい貞操観念が強く、群がる男たちの獣欲を心ならずも受け入れてきた彼女が、幸翔との体験を幸せそうに語る様子は、件の男の子と一生を添い遂げると言わんばかりの勢いである。

 

 美しい純なる愛。それが叶うならばどれほど素敵なことでしょうとアカネは思った。

 学園の女たちは多かれ少なかれ虚無的な諦観の中を生きている。溌剌然としたアカネも一皮剝けば変わりない。未来に展望など一つもない。

 

 彼女は覚えているだろうか、それがどれほどつまらない相手であっても、男の要求を断れないという自分たち『肉便姫(オルギニアン)』の特性を。

 この状態で、他の男に抱かれたら、今度こそ心が壊れやしないかと危ぶまれた。幸翔自身が学園に染まって粗暴な男に成り果てる未来もあるだろう。

 

 はあーっとため息を吐く。

 モジモジクネクネしている翠の首元をチラと見れば、スカーフに先日までなかったピンバッジが着けられている。

 最初にそれを見た時、アカネは我が目を疑った。瞼を閉じて、眉根を揉んで、改めて見たけど消えていなかった。

 短期間のお世話係から一足飛びに登録パートナーまで行くのは意味不明に過ぎた。

 

 初恋にのぼせあがって、まさかこんな短慮な行為に走るだなんて。

 

 ご主人様を必要とする『奉仕姫(メイドプリンセス)』は例外だが、原則的に誰もが抱けるSSR職に固有の主人がつくことは稀だ。

 社会通念として彼女たちは教職員含む全校男子の共有財産と見做されている。

 またこれはある面では、代表的な所で一日一回セックスしないと死亡する等、多大なデメリットを抱えているSSR職のホルダーを守る為でもある。

 

 特に翠は現在でも生き残っている四年五年の高学年からの人気も高い。

 

 紳士協定でしかないが、それを無遠慮に踏みにじった新参者に制裁の矛が向くのは必然に到来する未来と思われた。

 

 パートナー制度は確かに女を一人の男が占有する為の決まり事だが、それも男の側に力があって初めて成立する代物だ。

学生決闘(メンズーア)』を持ち出すまでもない。有形無形の圧力。例えば相手が音を上げるまでダンジョンの中で闇討ちを繰り返すなど、抜け道はいくらでもある。

 

「……あのね。自分でも無粋なこと言ってる自覚はあるんだけど。逸りすぎじゃないかな。その辺りのこと、ユキトくんはちゃんと理解してくれてるの?」

 

 アカネは老婆心を承知で苦言を呈する。かわいい後輩と彼女が恋した小さな男の子とが、傷つき苦しむ羽目になるのが嫌だった。

 

「アカネ先輩」

 

 その真心は過たず翠に伝わった。自分は良い先輩に恵まれたと胸が温かくなる。心配させてしまって心苦しくもある。だからこそ安心して欲しかった。

 

「大丈夫です。ご主人さまは、私の幸翔くんは敗けません」

「根拠は? 信じたいから信じるなんていうのは単なる盲信よ」

 

 楽観しているとしか思えない言葉に思わず語気も鋭くなる。

 

「だって彼は第四段階職の人たちでもできなかったSSR職の隷属を成し遂げたんですよ」

「む。それは確かに」

「それって幸翔くんのレベルがずっと高いって事ですよね」

 

 言われてみると、理屈としては確かにそうなる。一瞬、頷きそうになった。だが、それが何を保証してくれると言うのか。

 

「だとしても……!」

「それにもう私、『肉便姫(オルギニアン)』じゃないんですよ。だから最初から前提が違ってるんです」

「……はい?」

 

 今日一番の爆弾発言に、今度こそアカネは呆気に取られた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 翠が『肉便姫(オルギニアン)』の職を脱したのはお茶会前日の事である。

 

 木曜日の昼下がり。

 暦の上では秋分も過ぎ寒露に入ろうかという晩秋の候だが、山間の学園にも夏の名残はいまだ留まり、日中は少し汗ばむくらいだった。その分、時折吹く風が心地良かった。

 

「風が気持ちいいね」

「そうね。でも、そのままだと風邪を引いてしまうわ」

 

 翠はそう言うと、幸翔の額と首筋に浮かんだ汗をハンカチで拭ってあげた。幸翔は目を細め、くすぐったそうな素振りを見せたが、逃げ出す事はなかった。

 

 部屋の掃除が一段落したところで、幸翔と翠は仲良く手を繋いで買い物に出かけた。

 買い物の内容は幸翔がこれから使う日用品を園内の購買部で見繕っただけだが、気分はすっかりデートだった。翠が右に立ち幸翔が左に並んで、互いの指と指とを絡ませる、いわゆる恋人繋ぎでゆっくり歩く。ふわふわと浮かれ心地で新婚さんみたいだねと二人して笑い合った。

 

 もっとも。客観的に見たならば、翠が端然と落ち着いた美貌の持ち主なのもあり、若い母親とその息子の微笑ましいおでかけの方が近かったかもしれない。

 この二人、腕を組むには少し身長差があるのだが、もしも腕組みをしたならば、ますます母親に抱き着く子供の観が出てきた事だろう。

 

 翠が甲斐甲斐しく幸翔の世話を焼くのも、その印象を加速させている。

 

 実際のところ、隷属状態にあるからと言って、皆が皆、相手の事を盲目的に愛し、全肯定するようになるわけではない。嫌いな相手は嫌いだし、不快な物も変わらず不快なままだ。

 その上で、いざ眼前に肉棒を突きつけられると、腰をヘコらせ、縋りつかずにはいられなくなる。そして一度子宮を小突かれれば、快楽がすべてを押し流してしまう。

 肉壺を屈服させられるとはそう言う事である。

 

 事後に冷静になった頭で、自己嫌悪に苛まれる者も珍しくなかった。

 だから翠から幸翔に向けられる正の情念は純粋に彼女の中から生じた物である。主人を堅く信じ、お世話をしたがるのは、偏に翠の資質に拠る。美しく言えば慕情。露悪的に言えば依存。

 

「そうだ。この学校にはゲームみたいにクラスチェンジできる場所があるんでしょ。ボク、学校案内のパンフレットを読んだ時から気になってたんだ」

「ふふ。男の子たちはだいたいみんな好きよね」

 

 年齢相応に声を弾ませる幸翔の言葉に、翠はころころと笑った。

 買い物が予定より早くに終わったのもあり、そのまま早々に帰るのが惜しまれて、デートの続きがてらに翠は学園を案内して回った。

 内実はどうあれ、歴史ある伝統校の豊蘆原学園のキャンパスは、大正浪漫の香りも高い和洋折衷の美々しい建造物群が(いらか)を並べる古都の歴史地区のようで、見ているだけでも楽しかった。

 

 その上で、幸翔の年頃の少年からすると、一番気になるのはやはり何と言っても『聖堂(カテドラル)』の存在だった。元より逍遥、そぞろ歩きだ。明確なデートプランがあっての物ではない。恋人たちは『聖堂(カテドラル)』へと向かう事とした。

 

 余談だが、カテドラルと聞いて幸翔がつい連想した物とは異なり、豊芦原学園の『聖堂(カテドラル)』は規模としてはそれほど大きくはない。

 目にも清らな白亜の壁に色鮮やかなステンドグラス。様式の特定ができるほどの建築の造詣は幸翔にはないが、名前の通りにヨーロッパの教会を思わせる建物だった。

 もっとも。この建物自体は単なる箱に過ぎず、真に重要なのは内部に存在する十本の石柱である。

 

 入堂してすぐの『王冠の祭壇(ケテルオルター)』を皮切りに等間隔に並んだ、カバラ神秘思想の生命の樹セフィロトになぞらえられた列柱は、建物どころか学園にすら先立って存在する人知を越えたオーパーツだった。

 人をして超人に変える神秘の祭壇。

 すなわちケテル(王冠)コクマー(知恵)ビナー(理解)ケセド(慈悲)ゲブラー(峻厳)ティファレト()ネツァク(勝利)ホド(栄光)イェソド(基礎)マルクト(王国)、そして十一番目の隠されしダァト(知識)

 

「待って。走ると危ないですよ」

 

 半地下の斎庭(ゆにわ)に駆け足で飛び込んだ幸翔を追いかけて、翠が堂内に入った時、それは起こった。

 

 彼女の足元の床から光の筋が伸びる。

 転職可能を知らせる合図。床のモザイク模様の上を走るほのかな光が道となり、クラスチェンジを求める人間を相応しい祭壇に導いてくれる。

 

「嘘。何が起きているの」

 

 翠が異常事態に顔を強張らせる。希望に燃えた在りし日の翠が体験し、最後には彼女を絶望の淵に叩き込んだ畏き輝き。

 一度SSR職に就いた人間に先はない。その常識が破れようとしていた。

 

「わあ。これって翠先生がクラスチェンジできるってこと? すっごーい! おめでとう!」

「……えぇ。そうねありがとう」

 

 恋人の無邪気な称賛に、けれど翠はどこか浮かぬ顔をして、言葉を濁す。

 

「もしかして……そういうことなの!」

 

 一つ、とても信じがたい仮説ではあるが、翠は思い当たる事があった。

 

 三日三晩に渡って幸翔の精液を介して膨大な経験値が注ぎこまれた事により、本来なら非現実的なSSR職のレベルアップが完遂され、再度、別の職に就ける可能性が出てきたのではないか。

 

 結論から言うと、それは当たっていた。

 ただし、半年間熟成された性欲の全てを真っ向叩き付けられた末での現象なので、仮に今から幸翔が他の女を三日三晩抱き潰したとして、再現性があるかは怪しい。

 

 更に、常識外の出来事がもう一つ。

 

「翠先生! 奧の扉が開いているけど、あの先には何があるの」

 

 床に浮かび上がった光の道が指し示す先が破格であった、

 聖堂の最奥には固く閉ざされた石門がある。『秘匿の祭壇(ダァトオルター)』。まだ誰も到達したことのない段階のクラスチェンジに使用されるのだろうと推測されるのみで、今まで扉が開かれたことのなかった開かずの扉。それが今、翠に対して開かれた。

 

「本当。あなたと出会ってから常識外れな事ばかり起きるわね。ご主人さま」

 

 目を輝かせて扉の先を見つめている幸翔の後ろ姿に、ほんの少し恨めし気な声色で翠はぼやいた。吉報も過ぎれば凶報に似る。

 

「翠ちゃん! はやく行こう!」

 

 ワクワクウキウキ、我が事のように興奮する幸翔の誘いに、けれど翠はすぐには応じられなかった。

 急な事で理解が追いつかないのもあるが、仮に転職をできたとしても、結局、またしても『肉便姫(オルギニアン)』に就いてしまうのではと言う恐怖があった。

 同時に『肉便姫(オルギニアン)』だからこそ主人の性欲を受け止めきれると言う自負心。

 その二つが綯い交ぜ(ないまぜ)となり、このまま現状を維持して『肉便姫(オルギニアン)』のままであるのが正解なのではなのではないか、ついそんな事を考えてしまう。

 

 葛藤の時間は永遠とも思われたが、実際にはほんの僅かの間であった。

 

 ご主人さまが与えてくれた贈り物を蔑ろにする選択肢は有り得ない。

 その当たり前に思い至ると、すっと心が楽になった。

 

 そうして、閉ざされていた扉の先で翠は秘されし『秘匿の祭壇(ダァトオルター)』に触れた。

 

 翠は幻視する。

 猥褻な妄想により貶められた乱交(オルギー)に耽溺する女たちの元型。酒と密儀の神ディオニューソス(バッカス)の熱狂せる女信者たち(マイナデス)の姿を。

 

 これがSSRを超えたレジェンダリー(LR)躁宴信女(メナード)』を翠が得るに至った顛末である。




 どうも。作者の「素直で真面目で可愛らしく、お姉さんと心から愛し合っているショタっ子が無限の精力でお姉さんを抱き潰しちゃうタイプのショタおねが好きマン」です。
 この名義で前回匿名投稿したつもりが、設定ミスってて普通に本来の名前が表示されてて笑ってしまいました。なんてこった。

 翠ちゃん先生の転職先『躁宴信女《メナード》』はオリ職ですね。
 オルギニアンは乱交を意味する英単語orgyに接尾辞-ianが着いた物かなって推測の上(違っていても本作ではそうとして扱います)、語源であるオルギア儀礼の参列者マイナスまで遡って貰いました。
 原作でのSSR職のデメリットが大きすぎて、そのままだと外も出歩けないので、メインヒロインとして起用する都合上、脱SSRは必須でした。
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