ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター 作:アイウ
時間は過ぎ、叶馬パーティーとの約束の時間になった。
昨日と同じく午前中の授業をサボった俺達は、授業が終わって食堂に向かう生徒達に沿うようにして丙組の教室へむかった。
「よっ、蓮。来たな」
「待たせたね誠一。今日はよろしく」
「午前中サボってきたんでしょ~。授業は真面目に受けないとだめだよ」
麻衣がそう茶化してくるが、当の彼女が真面目に授業を受けているとは思えない。
原作だと中学生レベルのテストで低い点数を取っている描写があったため、そう思うのだが、今の段階でそれを指摘して言い返すことはできないので適当に受け流す。
「そうだね。そろそろ問題を片づけて真面目に取り組むよ」
「蓮。無理しなくていい」
「ダメだよ。アイナちゃん。中学生レベルの簡単なテストのはずだから一緒に頑張ろうね」
どうやらアイナも勉強が苦手の様子。
どのくらいの程度なのかわからないが、酷いようだったら勉強の面倒も見よう。
少なくとも俺は転生前に大学を出ているので、そのくらいの余裕はあるはずだ。
「まぁ実技さえできていれば補習は避けられるからそんなに気にしなくてもいいんだがな。さてと、全員揃ったしまずは飯だな」
「ああ。早く行こう」
叶馬を先頭にして食堂へと向かう。
面白いのが道行く生徒達が、揃って自分から道の端により明後日の方向を向く動作をする。
理屈がわからないが、叶馬が無意識に放つ気配にやられて、そういう挙動になるのだろう。
当の避けられてる叶馬は食事のことで頭が一杯で気にしてないようだが、避けられすぎてて笑ってしまう。
俺も初めてみた時は体が勝手に震えたが一度慣れてしまえばなんてことはない。
昨日が初対面だった茜とアイナだって...いや、若干距離を置いているな。
それも長い間過ごせば、全く気にならなくなるはず。
きっと、多分、おそらく。
ともかく叶馬のおかげでスムーズに食堂に行けたし、席を探したら無言で譲ってくれた。
ひとり食事を喉に詰まらせている生徒がいて可愛そうだったが、不可抗力だから仕方ないだろう。
学園の食堂はかなりの規模でメニューが豊富で味も良いので俺も気に入っている。
最初に食べた時は、原作で叶馬が絶賛していたのが納得できるレベルで素直に驚いた。
値段はそこそこするが、ここにいるメンバーは十分に稼げているので問題はない。
各々好きなものを好きなだけ食べた。
ダンジョンダイブ前の腹ごなしを負えると早速、羅城門へと向かう。
昨日絡まれた倫太郎とその仲間達がいると思っていたが、案の定、羅城門を見張っていた。
「あっ、来たぞ!」
一人がそう叫ぶとぞろぞろとこちらに向かってくるが、その足は段々と重くなり10メートルくらい先で止まる。
「ぐっ、くそ。こっちにこいや、オラ」
「アイナとそこのスカした顔のお前!、お前だ。この野郎」
叶馬に近づきたくないのだろう。
離れた位置から吠える彼らだが、叶馬がそっちの方向に視線を送ると、ピタッと言葉が止まる。
慌てて目線を逸らしてたじろぐ彼ら。
「ふっ、流石は誠一。野次など人睨みすれば黙らせることができる」
この空気をナチュラルに誠一に押し付ける叶馬。
ここは乗っておくことにしよう。
「ああ。本当に凄いよ。誠一」
「いや、どう考えても俺じゃないよね。まぁいいや、ビビッて引いてくれるなら好都合だ。さっさと行こうぜ」
「うむ」
俺達は少し足を早め、転送魔法陣のある場所へ向かう。
この転送魔法陣には最大転送人数が設定されていて、この場にいる8人を一気には転送させられない。
だから、沙姫さんだけ俺達のパーティーに入ってもらい、4対4の2グループに別れて転送魔法陣に乗った。
転送魔法陣は、『
だから沙姫さんを中心に、俺達が手を繋ぐ。
やがて転送魔法陣が光輝き、何事もなく転送が始まった。
▼▼▼
――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――
――第『参』階層、『既知外』領域――
「よーし。全員そろったな。まずここの階層なんだが」
「第3階層だね。ここは。あと既知外領域でもある」
「3階層まで来てたのか」
「ああ、俺達はまだ2階層にいるから凄いよ。ちなみにこの辺のモンスターでも問題なく狩れてるんだよね?」
「ぶっちゃけ、ほとんど叶馬のおかげだからな」
「まぁ、叶馬ならどんな敵でも倒せそうだもね。心強いよ」
「強さに関しちゃ頼りになるぜ。コイツは、それじゃ早速狩りと行こうぜ」
「ああ。とはいえ実際に共闘するのは初めてだから、まずはお互いの戦い方を見てみよう。先に俺達がやるよ」
「わかった。頼む」
というわけで玄室を移動し、ゴブリンを探す。
そう時間はかからず5体の群れを見つけた。
「出でよ、ゴーレム。コボルト」
「はぁ? なんでゴーレム」
召喚した直後、誠一の声が耳に届くが、戦闘に集中だ。
「コボルトA、B、召喚!」
続けてアイナもコボルト2体を召喚する。
「ファイアーボール」
茜の魔法が、こちらに気付いていないゴブリンに直撃してパニックに陥る。
混乱しているところに、コボルト3体、ゴーレム、俺の順番で突撃していく。
コボルト3体がそれぞれの獲物で、ゴブリンを斬りつけながら間を通り抜ける。
続くゴーレムのパンチ一発で、一体が壁に激突した。
最後に俺が、ゴブリンの首を剣で切り飛ばす。
コボルトの攻撃で仕留めきれなかったゴブリンに止めを刺し、1分もしない内に殲滅できた。
「やりますね」
「うむ」
沙姫と叶馬が賞賛してくれるが、誠一はそうはいかないようだ。
「いや待てよ。おかしいだろ。なんで『
「落ち着いて誠一。ちゃんと説明するから」
「そうだ。興奮し過ぎだ。誠一」
「...ふぅ~。わかった。落ち着いたから早速説明を頼む」
「まず俺のクラスだが『
叶馬側から俺にどう見えているか確認するため、途中で叶馬に話を振って回答を促す。
自然な話の流れだと思うので開示してくれるかもしれない。
目論見通り、叶馬はあっさりと答えてくれた。
「『
「お前見えてるなら言ってくれよ」
「プライバシーの問題だ。常識だろ?」
「存在自体が非常識な、お前が常識を語るな!」
「内輪揉めは後にしてくれ。俺が言いたいのは、叶馬には俺のクラスが見えてしまうから隠す気なんてないってことだ。だから興奮しないでくれ」
「あっ、ああ。悪いな」
「良いよ。混乱するのもっともだと思うから。それで叶馬が言ったクラスで合ってるんだが、そうなってる理由は『
「そんな気軽に合えるものじゃないはずだが...」
溜息交じりにそう言う誠一の追及を、確率の話だからねと運のせいにしておく。
実際は『黄泉衣』を装備した際の強化された感覚があったから運任せとは違うが、話がややこしくなるので言わないことにした。
「それでそのスキルは、自分の得たクラスの他に、2つまでクラスを付け替えができるんだ」
「え。チートじゃん」
麻衣が思わずといった様子でコメントする。
「まぁ、どうせ交換するなら強いスキルもらうよね」
「それはたしかに。ということは蓮君は他の人の3倍強いってこと?」
「明確な指標や計算式がないからわからないけど、そんなには強くないと思うよ。この間だってダンジョンで死にかけたしね」
「おいおい。気をつけろよ。せっかく『
「ああ、気を付けるよ」
誠一の指摘はもっともなので素直に頷く。
焦って、死に戻ってたら元も子もない。
「それで蓮。その付け替えられるクラスってのはどんなクラスがあるんだ」
「レアクラスを除いた基本的なクラスは、『
「戦闘、斥候、マッピングに生産ができるってことか。便利すぎるだろ」
「ねぇ、これは正式にパーティーに入って貰った方がいいじゃない?」
麻衣さんが誠一にそう意見するが、俺は首横に振る。
「昨日も話したけど、それはできないかな。レイドとか大人数で挑むものなら良いけど、基本的には別で動きたい」
「頑なだな。でもそれなら仕方がない」
「悪いね。それで他のスキルなんだけど」
「え?まだあるの?正直お腹一杯なんだけど」
「別に俺としては黙っててもいいけどね。アイナが『
「え?さっき言ってたスキルじゃないの?」
「別のスキルだよ。『
「え?それを使えば誰でも剣士とか、職人とかに成れるってこと」
「あくまでスキルを使えるようになるだけね。クラス毎の能力補正は得られない。例えば後衛職が、前衛職のスキルを得ても、近接戦闘は純粋な前衛職に敵わないってこと」
「それじゃ、さっき言ってたクラスを追加でセットできるスキルを入れれば良いんじゃないか?」
「それはダメだ。できなくはないが、肝心のセットする候補になるクラスの追加を俺ができないから無駄なスキルになってしまう」
「そうか...いやでもスキルだけでも十分強いな。なぁ、試しに俺に何か入れてくれよ」
「俺もカードバトラーになりたい!」
「そんなに気軽に使えるものじゃないよ。一人あたりにスキルを与えられる限界があるんだ。それに検証が終わってないからどんな弊害があるか分らないし、試しで入れるくらいの気持ちならやめといた方がいい」
誠一の提案に、叶馬が便乗して自身の希望を述べるが首を横に振る。
使えるスキルが増える利点は大きいから欲しがるのも当然だと思う。
俺としても原作キャラの強化に繋がるのは良いが、弊害で弱くなってしまったりするリスクは排除するべきなのだ。
少なくとも、十分に検証ができてから実施しないといけない。
「...それもそうだな。でも有用なスキルに変わりはない。俺達もできることは手伝うからさ。問題なさそうだったら、俺達にも使ってくれよ」
「もちろん。約束するよ。叶馬には借りもあるしね」
「うむ。期待してる」
▼▼▼
ゴブリンのドロップ品を回収した後、今度は叶馬のパーティーの戦闘を見せてもらうことに。
ゴブリンの群れに、まず沙姫が突っ込んで先頭のゴブリンの頭を撥ねる。
その動きは無駄がなく、剣の刃があっさりとゴブリンの首を切断したところや斬った後スムーズに次の動きに繋げているところに、技量の高さを感じた。
その沙姫の後から、叶馬が六角の大きな鉄棒を振り回し、ゴブリンを殲滅していく。
沙姫の時とは違いゴブリンの体がひしゃげ、体液が飛び散ちらせながら蹂躙していく。
「何と言うか...」
「ヴァイオレンス」
「そうそう、グロすぎて勘弁してほしんだけどね~」
女性陣がそんな感想を言っている内に戦闘は終了した。
「二人だけで倒しているが、大体はこんな感じだ。前衛が敵を削って余裕がある時に後衛組のレベリングをする感じ」
「そこは俺達と変わらないね。違いは前衛の安定感かな」
「そんな卑屈にならなくてもいいだろ。新入生でそんだけ戦えれば十分だ」
「それはわかってるつもりだけどね。高難易度レイドに挑むつもりなら、十分以上にやらないと攻略なんて無理だろ」
「蓮君。真面目過ぎ~」
「ああ。もっと肩の力を抜いたらどうだ。焦りすぎて潰れたら元も子もないだろ」
「うん。それは気を付けるけど、強くなるために使える時間は限られていからね
特に授業がある日は12時から17時までの5時間程度しかダンジョンに行けないんだ。休憩は夕方と午前中の時間があれば十分だよ。
むしろダンジョンダイブの時間が少ないくらいだと思うから、少なくとも序盤は毎日でもダンジョンに潜ろうと考えてる」
「うむ。そうだな。毎日でも行こう」
「はい。頑張りましょう!」
叶馬パーティーのバトルジャンキーな叶馬と沙姫が、俺の意見に便乗する。
反対に苦い顔をするのは麻衣と誠一だ。
「え~。毎日とかしんど~い」
「普通で考えたら2日1回でも真面目に潜ってる方だ。もうちょいペースを落としてもいいじゃないか?」
「別に俺に合わせる必要はないよ。単純に俺達はそうする予定ってだけ。そっちのパーティの頻度はそっちで決めれば良い」
「毎日を希望する」
「同じく」
「ダ~メ。絶対反対」
当然、叶馬達と麻衣で意見が割れる展開になる。
こうなると人とのコミュニケーション能力が低いバトルジャンキー二人が折れる方向になるのだが、
俺としては彼らには原作以上に強くなってもらいたい。
だから助け船を出すことにした。
「もし。叶馬と沙姫が希望するなら、そっちのパーティーのオフの日は俺達のパーティーに入るか?いやむしろ手伝って欲しい。麻衣さん、これなら休みたい人は休めるから問題ないだろ?」
「それはそうだけど...」
当然、そうなると仲間の中でダンジョンに潜った時間による強さの差が開いてしまう。
だから皆で休む方が、心置きなく休めるので望ましいのだろう。
気持ちはわからなくもないが、オーバーワークで体を壊すとか精神を病んでいるなら兎も角、努力できない人に合わせるのは悪手だと思うのだ。
休みたい麻衣には悪いが、ここは意見を通させてもらう。
「もちろん麻衣さんもやる気が出た日は言ってくれ。歓迎するよ」
「う~わかったよ、もう!」
「残念だったな麻衣。蓮のが一枚上手だった。さてと話してても時間が惜しいだけだ。先に進もーぜ」
誠一が話を締めくくり、俺達は探索を再開した。
▼▼▼
想像通りというか叶馬がいることによる探索の安定感は凄いものだった。
明らかにサイズの違うゴブリンが現れても、叶馬の攻撃数発で倒れ、残った雑魚をレベルが低い子達に倒させるだけで、戦闘というより作業という感覚になってくる。
ぶっちゃけ、俺達のパーティーが居ようが居まいが関係ない、叶馬一人いれば大丈夫な気がしてくる。
とはいえ階層が進めば、叶馬でも倒せないようなモンスターが出てくることは原作知識から把握しているので、彼の仲間にも強くなってもらはないといけない。
苦戦することなく黙々と、ダンジョンを進んでいるとと、途中で誰が言い出したのかセックス休憩をすることになった。
正直、他の人に見られながらセックスしたいとは思わない。
でも経験値取得でムラムラしてしまうダンジョンの仕組みがあるので、大勢でダンジョンダイブするなら慣れないといけないのだろう。
見張り役をゴーレムとコボルトに任せて、俺達はセックスを始める
チラッとみてしまったんだが、叶馬のペニスのサイズはかなりデカかくておののいてしまう。
やっぱり読んだ情報と実際に見るのとでは全然違う。
さておき、見られているという意識から変な気分になったが、やっているとそれぞれが相手の子に集中しているので、そんなに気にならないことが分かった。
俺は着衣のままアイナ、茜の順で二人がイクまで相手をした。
二人分の相手をする必要があったので、先に行為を終えていた誠一と麻衣に揶揄われて気恥ずかしかったが、彼らもセックスをしていたのでそこまで恥じ入ることはないと思い直した。
その後も戦闘とセックス休憩を繰り返し、慣れてきたのでローテーションで戦闘とセックスを交互に行いながら先へ先へと進む。
次の玄室の確認をしたところ、大きな石の門が見えた。
「あれって、階層門か?」
「おそらく」
その大きな扉の前を巨体なゴブリンが居座っている。
そのゴブリンは頑強そうな鎧をしており、明らかに強そうだ。
原作通りなら奴はゴブリンロード。
叶馬たちが初めて倒す『
戦闘描写からすると叶馬達でも苦戦しており、長い間戦闘が続いた後、最終的に叶馬がGRクラスのスキルを発動して勝利する展開だった。
結論、叶馬次第で勝敗が決まるという状況だが、他のメンバーも戦って膠着状態にしていたので、ある程度は戦えないといけない。
俺が展開を早めてしまったので、ここにいるメンバーのレベルも戦闘経験もかなり低いはずだ。
俺達のパーティーが加勢するとはいえ、どこまで通用するかわからない。
「どうする?叶馬、挑むか?俺から見るとかなり強そうだが」
「レッツ。トライ」
要の叶馬に確認したところ、気軽にそう答えた。
その言葉を信じて俺も覚悟を決める。
「おっしゃ、気合入れていこーぜ」
誠一がそう発破をかけ、皆が頷く。
俺は『
一番戦闘向きのクラスだ。
切り替えた直後、凄く力が漲ってくる。
おそらくゴブリンロードが俺よりもずっと格上で補正がグッと上昇しているのだろう。
準備ができたところでボス戦だ。
手始めに沙姫が、剣を振りかぶり攻撃するが、ゴブリンロードのごつい籠手に阻まれギンっ金属音を響かせる。
ゴブリンロードは腕を振り払って沙姫に反撃すると、沙姫の体が吹っ飛んでいった。
「大丈夫か!?、姫っち」
誠一が問いかけるが、俺達もゴブリンロードの目の前にいるためそんな余裕はない。
叶馬が六角六尺棒を振りかぶって攻撃するが。ゴブリンロードは打ち合ってお互いに数メートル吹っ飛んだ。
「叶馬ぁ!、マジかよ」
叶馬が吹っ飛ばされたことに驚き、誠一の足が止まる。
「集中しろ!前衛が足止めしないと後衛が死ぬぞ」
吹っ飛ばされたことで怒りの雄たけびを上げて、突進してくるゴブリンロード。
俺はゴーレムを突進させ、その動きを止める。
腕を組合押し合いが始まった。
『
それでも純粋な力比べで負けており、ずりずりと後ろに下がってくる。
だがこちらには本体の俺がいるので手数は2倍だ。
その両手が塞がっているところに接近して鎧の継ぎ目に剣を突き刺して傷口を作る。
「グォォォ」
ゴブリンロードは雄たけびと共に、足を上げてゴーレムを蹴ろうとするがゴーレムも足を使って抵抗する。
だが足の使い方はゴブリンロードの方が上手く、足を払われて踏ん張れなくなったところを投げ飛ばされた。
ゴーレムの巨体が、俺の方に投げられてくるので慌てて盾を構えながら回避を試すが、失敗してゴーレムの巨体の激突する。
5メートルくらい吹っ飛んだ場所で、受け身を取って立ち上がるが距離が空いてしまった。
遅れてやってくる痛みを堪えて状況を確認するが、今のは危なかった。
もしゴーレムの下敷きになっていたら身動きが取れず、即アウトだったかもしれない。
でもゴーレムがゴブリンロードの腕を離さず粘ってくれたので、ゴブリンロードの追撃は免れた。
ゴブリンロードはゴーレムや俺を無視して女性陣の方を向くが、ゴーレムの腕はゴブリンの腕を掴んで離さず、引きずられながらも足止めをしている
「魔法!頼む」
「はい。ファイヤーボール」
「え!あっ、燃えろぉ!」
二人の火魔法がゴブリンロードの直撃するが、ゴブリンロードは怒りが増したように雄たけびを大きくし、女子の方に向かってくる。
「はぁあああ」
復帰した沙姫が、俺がつけた傷口をなぞるように剣戟を振るうがゴブリンの足は止めない。
「キエエエエエ」
叫び声を上げながら叶馬が六角六尺棒をゴブリンロードの二の腕に叩き込むとゴブリンロードと、ついでにしがみ付いていたゴーレムがふっとばされる。
やはりというか、この中で一番ゴブリンロードへダメージを与えられるのは叶馬だろう。
沙紀の攻撃があまり効いているように見えないため、やつを倒せるかどうかは叶馬次第ということになる。
叶馬がスキルを使えば簡単に倒せるだろうが、それには叶馬が状況を俯瞰しスキルの必要性を感じることと、自身に使えるスキルを考察する時間がいる。
だが現状、叶馬がいないとボスの足止めが難しく、パーティーが壊滅してしまう可能性があるためそれはできない。
だから思考誘導してスキルの使用を促すことにした。
ゴブリンロードの攻撃を盾でいなしたり、反撃で鎧の隙間を斬りつけながら叫ぶように話かける。
「叶馬!、何かやつを倒せるスキルを持ってないか?」
「ない」
「即答するな。やればできるはずだ。連想してくれ、お前のクラスを!その名から何ができるかを」
「お前、無茶苦茶だぞ。いくら叶馬でもそれは」
誠一からツッコミが入るが、自分でも無茶なことを言っていると思う。
叶馬ならできると信じて頼む。
「ふむ...少しの間任せる」
「了解!任せろ」
正直、要のゴーレムの損傷が大きく、そう長くは持たないと思う。
だが叶馬に無茶を言ったからには、自分も無理をしてでも叶馬のオーダーに答えるべきだ。
俺は覚悟を決めてゴブリンロードと正面から向き合う。
まっすぐ突進して両方の腕を伸ばしてくるが、身を低くしてそのデカい図体の股をくぐりぬけるのと同時に、股間に剣を突き刺す。
ギャァァ、グォォォと雄たけびをあげながら後ろ向きにボディプレスするように倒れながら俺に攻撃するが、ギリギリのところで回避する。
次の手で俺はゴーレムを動かし、ゴブリンロードの足を掴んで自身を軸に周り始める。
いわゆるプロレスのジャイアントスイングだ。
ゴブリンロードの巨体かつ重装備となっておりかなり重たいが、ゴーレムの利点である力強さの活かせばできるかもしれない。
その考えは成功し、ゴブリンロードを地面から離し、遠心力を使ってどんどんと回転の速さを早めていく。
ゴブリンロードのは腕を振り回して藻掻くが、回転は止められない。
「すげぇよ。蓮」
誠一が褒めてくれるが、ゴーレムの操作で返事をする余裕がない。
ゴーレム操作時の感覚同調で、段々と目が回ってくる。
しばらくして限界がきそうなので人がいない方向で足を離して投げ飛ばす。
ゴン、ゴンっとゴブリンロードの巨体と鎧が、床を打ち付け音を鳴らす。
欲を言えば壁や硬い物に打ち付けるようにしたかったが、何もない玄室だったのでできなかった。
それでもそれなりにダメージが入ったと思うが、ゴブリンロードは普通に起き上がりゴーレムへ突進していく。
現実世界とはことなり、この世界の生物、魔物は耐久力が高いようだ。
効いていないかのように接近してくる。
ゴーレムの方も突進させ体当たりをするが、ゴブリンロードは衝突時に重心を低くして威力を逃し、ごレムの下から持ち上げるようにして投げ飛ばした。
ゴーレムの巨体が床に叩きつけられ、振動が伝わってくる。
その後、ゴブリンロードは仕返しとばかりに、ゴーレムの足を掴んでジャイアントスイングをやり返す。
同時に周りながらこちらに近づいてきて、ゴーレムを俺達へぶつけようとしてきた。
俺は咄嗟にゴーレムのスキルを解除して塵に変える。
勢いつつけた所に、掴んでいたゴーレムが消えたことで重心がずれ転倒する。
そこに畳かけるように、ゴブリンの腹に剣を突き刺した。
勢い余って思いのほか深く刺さってしまって抜くのが遅れる。
そこにゴブリンロードの裏拳が飛んできて、咄嗟に腕で防ぐが吹っ飛ばされて壁に体を打ち付ける。
「がっ、ほ」
痛みが体全体に走り、息が止まる。
壁に手をついてなんとか立ち上がるが、体に力が入らない。
ゴブリンロードがこちらに向かってかけてくるが避けれそうにない。
ここまでか…
そう諦めかけたその時、ゴブリンロードの後ろからコボルトが現れゴブリンに槍を突き刺す。
ゴブリンロードが振り返りながら薙ぎ払うように腕を振るうとコボルトが吹っ飛んでいく。
少しの時間稼ぎになったが、次は俺だ。
そう思ったその次の瞬間、今度は視界がピカッと光目を塞ぐ。
ゆっくりと目を開けると、目を抑えて暴れ回るゴブリンロードの姿があった。
数秒管の間その場を歩き回るゴブリンロードだが、しばらくすると慣れてきたのか目の抑えを外していく
茜とアイナの手助けで時間稼ぎになったが、もう手段はないだろう
それどころか動きもせず、一点を眺めている。
「待たせた」
声のした方を向くと、そこには座布団サイズの黒い雲に乗った叶馬がいた。
上半身は裸で、物騒な鉄棒を持っているのがシュールだが原作通りの展開だ。
その光景を見た瞬間、安心して力が抜け座りこんでしまう。
叶馬は、理解が負いつがず固まってるゴブリンロードの頭上にスーっと雲で移動したあと、鉄棒で頭を殴る。
それによってゴブリンロードは膝を突くが倒れはしない。
「なぁ叶馬、なんだよそれ」
「旦那様、凄いです!」
誠一が呆れた声を、沙姫がはしゃいだ声で褒める。
それに気を良くしたのか叶馬の下の雲がバチバチと音を鳴らし始める。
「叶馬!加減しろよ」
そう注意するが効果があるかわからない。
「―――ヘソをよこせああああああああっ!」
その声とともに黒い雲の下からゴブリンロードのへそに目掛けて雷光が迸る。
ばりばりっという音は数秒で止まり、後には肉が焼け焦げ、肌が爛れたゴブリンロードがそこにいた。
雲が消え地面に着地した叶馬が、驚いたり怯えたりしている周囲に戸惑った後、鉄棒を振り上げゴブリンロードに止めを刺そうとするが、その前にゴブリンロードが瘴気に帰り、装備だけがカランと音をたて床に散らばった。
▼▼▼
「お疲れ様、叶馬」
痛む体に鞭を打って、起き上がり叶馬に声をかけた。
「うむ。足止めご苦労」」
「正直、死ぬかと思ったよ。間に合わせてくれて助かった。ありがとう」
お互いに賞賛しあうが、そこで誠一のツッコミが入る。
「いやいや、ちょっと待てよ。何さらっと流そうとしてんだお前ら。説明しろ叶馬」
「何のことやら」
「あのサンダーの魔法だよ、あと黒っぽい綿菓子みてえな乗り物は何なんだ。そもそも何で脱いだ。吐け!」
「落ち着け」
興奮した様子で叶馬に食ってかかる誠一。
上半身裸の叶馬に詰め寄っているので、絵ずらが不味いと思う。
案の定、静香さんが鼻息を荒くしている。
「てゆーか、あれ魔法スキルなの? いや魔法じゃなきゃ何なんだって感じだけど」
「上手く言えないけど、なんとなく別物って感じがしたよね」
「腰が抜けちゃいました...」
「格の違いがわかった」
麻衣、茜、沙姫、アイナの順でそうコメントを残す。
「まあまあ、落ち着いて。せっかく階層ボスを倒して次に行けるんだから」
「いや、逆に何でお前が落ち着いていられるのか聞きてーよ。知ってるなら教えてくれ」
「俺も『
「なあ、叶馬。お前が自分の奥の手を隠しておきたい気持ちは分かる。だけどな、俺たちは、もう仲間だろ。それにな。ダンジョンの中で、こう……ぴゅーっと飛ばれたり、裸で光ったりされると、流石に俺たちも頭が真っ白になんだよ。対応に困るんだ、分かるだろ?ていうか分かれ」
「あたしも叶馬くんの非常識っぷりには少し慣れたつもりだったけど、心構えはさせて欲しいカナ…」
誠一と麻衣の説得に叶馬が頷き少し考えた後、話始める。
「アレは俺のクラスが使えるスキルなのだと思う。クラス辞典に書いてなかったので名称は不明だ」
「そいや、『見習い』とかいうクラスだったよな。……なあ、何の・・見習いなんだ?」
「……雷神だ。正式名称は『
誠一が確認を取るようにこちらを向くので頷いて肯定した。
「雷神様……あー、なんかちょっと納得したかも」
「そういうクラスもあるんですねぇ」
「ゴットパワー...すごい」
麻衣と沙姫、ついでにアイナは軽い感じで受け止めてくれた。
静香も叶馬の『
「……聞いたことねーぞそんなクラス。ぜってーイリーガルクラスだろ」
「それは間違いないね」
「SSRみてえな趣味特化枠じゃねえし、レア枠みてえに一極特化してるクラスとも違う感じだよな」
「思うに、サンダー魔法に特化した『術士マギ』系のレアクラスじゃないだろうか」
「いや、あれは『術師マギ』のそれはなんか違う……」
「あたし、ボスとガチ殴り合いするような魔法使いが出るゲームとか知らないんだけど」
「装備次第なんじゃなかろうか。魔力を攻撃力に変換する系アイテムみたいな」
「前にパンチでゴブリンの頭吹き飛ばしたりしてたよね」
「トンファーと同じだ。装備していることに意義がある」
叶馬の無茶のある誤魔化し方に苦笑いしながらも、この場の長話を区切るためは話に割って入る。
「誠一と麻衣さんの言い分もわからないではないけど、ここはダンジョンで危険な場所だ。一旦飲み込んで帰ってから話あおう」
言われたは、はぁーっと大きな溜息を吐いてから表情を引き締める
「そうだな。続きは帰った後で。それと他人事みたいに言ってるがお前にも聞きたいことが沢山あるんだぞ。蓮」
「うーん。何かあったかな...まぁ、話せることは話すよ。さて、せっかく四階層に行けるようになったんだ。戦利品を回収して早く行こうぜ」
俺の提案に全員頷いくれた。
ドロップアイテムの鎧は、原作通り叶馬が引き取ることになった。
その後、俺達は階層門の中へ足を進める。
次の階層からはゴブリンは出現せず、木に擬態するエントや、梟の頭の熊のオウルベア、ブラックドックが出現するはずだ。
俺の『
このまま少し探索をしたいところだったが、叶馬が先ほどの戦闘による経験値による影響、もしくは急激なGPの減少による影響のどちらかで興奮してしまい、4階層到達早々、休憩時間になる。
かくいう俺も中々の経験値を得られたので便乗して茜とアイナを抱いた。
そうこうしてると時間は過ぎ、ダイブ終了時間になって俺達は現実世界へ帰還した。