ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター 作:アイウ
ダンジョンから帰還した俺達は、内緒の話もあるため『白鶴荘』の静香&麻衣の部屋で打ち上げ兼、反省会を行うことになった。
戦利品の換金と食材の買い出しの二手に別れて対応した後、部屋に集まる。
二人部屋に8人いる状態なのでかなり手狭だが、他に漏れたくない話もあるのでここでやることになったのだが...
「でも流石に狭いよね。もっと広いところないの?」
全員、部屋の中に入って早々麻衣が文句を言う。
まぁ、声に出さないだけで皆思っているだろう。
「食堂があるが、あそこで聞かれたくない話をベラベラ話すのは良くないから仕方ねーだろ」
誠一がそう言って麻衣を宥める。
だが丁度、話をしたい内容に繋げられるので積極的に提案する。
「そうだね。う~ん。倶楽部の部室とかあればいいんだけどね」
「ああ、いいよな倶楽部」
相槌をする叶馬だが、反応からして話を合わせているだけと伝わってくる。
「無理に話を合わせなくていいって。でも確かに部室があると便利だよな~。それじゃ、さっさとメンバー増やして作っちまうか。めぼしい奴は上級生の倶楽部からスカウトされる事もあるらしいから早めに唾つけとくに越したこたことないし」
「メンバーの当てはあるの?最低10人いるはずだけど」
「実は、もう色々声はかけているんだがな...怖がられちゃって」
そう言って叶馬の方を見る誠一。
それにむっとした叶馬が口を開く。
「誠一が脅したのが原因だな」
「いや、人のせいにすんなよ。毎回毎回お前が教室に入った途端、全員が目を逸らしてるだろ」
「そんなはずは...いいだろう。ならばスカウトだ。少し誤解されているようだが、一人ずつフレンドリーに肩を抱いて外に連れ出して向き合って話せば分かってくれるだろう」
「……可哀相なことしようとすんなよ。女の子ぜってー泣き出すぞ」
「別に男でも構わないが」
「野郎もパニック起こすからヤメろ。あと静香、何書いてんだ」
「いえ、続けて下さいどうぞ」
「はぁ~。蓮、お前らは入れないのか?」
「悪いけど、倶楽部は上級生のまともな人達がいるところに入れてもらおうと考えているよ」
「蓮、貸しを使う」
ここで叶馬が、沙紀の面倒を押し付けた時の借りを持ち出して来る。
その話を持ち出されるとかなり痛い。
「それを言われると断れないかな。でもその前に一度は自分達で仲間探しをしてみて欲しい。
それで人数が集まらなくなったら参加させてもらうけど。やる前から諦める必要はないだろ?もちろん俺も手伝うし、叶馬なら行けるって」
「いやどう考えても叶馬には無理だろ」
誠一がバッサリと切り捨てるが、俺は首を振る。
原作でメンバーの勧誘をして成功しているのは叶馬だけだ。
正確にいうと勧誘というより成り行きからのセックスによる従属かもしれないが、彼の任せて置けば集まるはずなのだ。
だから誠一を納得させる言葉を考える。
「逆だよ誠一。誠一が上手いことメンバーを誘ったって、結局のところ叶馬と行動できなきゃ意味ないだろ?」
「そりゃそうだけど、最悪、席だけ置いてもらうとかやりようはあるんだよ」
「頼れる仲間は重要だよ。特にサポートメンバー、マッピング役や生産職とか信用できる人がいた方がいいだろ?他倶楽部の伝手を探すよりかリスクは少ない。数合わせで人を集めるなんていつでもできるだろ?試しでいいからちょっとやってみてもらおうよ。叶馬なら奇跡的に噛み合う人材を見つけてくれる可能性があるだろ」
「お前は叶馬に期待し過ぎだ。それが成功する可能性と、叶馬が問題を起こす可能性どっちが高いかなんざちょっと考えればわかるだろ」
「仲間を見つけて、致命的な問題は起こさないことに賭けるよ」
さすがに問題を起こさないとは言えないので、言い回しに気を付けながら宣言する。
「...はぁ。どっからくるんだよその自信。わかったよ。お前がそこまで言うなら信じる」
結局、誠一は悩みながらも折れてくれて、叶馬がメンバースカウトをすることになった。
「脱線しちまったが、話を戻すぞ。叶馬の謎クラスについてだ。お前が何をできるのか把握しておきたい」
「ああ、それなんだがクラスチェンジが可能になった」
「はあ?」
「俺たちのパーティに必要なのはタンク、盾役だと思われる」
叶馬のすっとぼけた発言で、少しの間沈黙が訪れる。
「えと、今の叶馬さんが問題なく担当されていると思います」
「というか、今日のボス戦からすると叶馬君と蓮君の二人しかまともに戦えてないよね。なんならあの謎の雷で一撃だったから、もう叶馬君一人で良くないって感じ」
麻衣さんがぶっちゃけてしまう。
気持ちはわからないが、怠けるような表現は良くないと思う。
これも俺が物語の進行を早めたことにより、叶馬以外の活躍の機会を奪ってしまったことが原因だろう。
だから叶馬にとって仲間が必要な理由を伝える必要がある。
「麻衣さん。あと他の皆にも聞いて欲しんだけど。叶馬も万能じゃない。戦闘力の高さで言えば圧倒的だけど、例えば今日のゴブリンロードが戦った後、俺のインターフェースで見たところ消耗が酷かった。だからあの雷は何発も撃てるものじゃない」
叶馬の方を向くと、頷いてくれる。
「あ~。MP消費の大きい強力な魔法ってことか。理解したわ」
「まずそれが理由の一つ。二つ目、叶馬のクラスは間違いなくイリーガルクラスだ。この学園の教材や資料を調べればわかることだが、イリーガルクラスは総じて精神面で不安定になってしまう。『
「なるほどな。叶馬がわけわからな過ぎて思い至らかったけど、もっともだ。…でもそんなの対策はどうすればいいんだよ?」
「俺にも詳しくは分らないけど、人とのコミュニケーションが効果的だと思う。会話だけじゃない。一緒にご飯を食べたり、寝たり、セックスしたりと人らしい行動をするのが良いらしい。だから叶馬について行ける仲間は大切なんじゃないのかな?」
原作でも明確な描写がないが、少なくとも叶馬が荒ぶった時は周囲の女の子が鎮めていたはずだ。
「それなら今の関係を継続していけば良いと思いますが」
静香の質問からの質問が来たので頷いてみせる。
俺に言われるまでもなく、原作で彼らはそういう関係になっていたので言うまでもないことではあるのだろう。
でも俺としては叶馬以外のメンバーに強くなって欲しいので、危機感を持つような説明をする。
「うん。それができているなら問題はない。あとは継続して叶馬の横に立っていられるか?、置いて行かれないかを心配をする必要がある。例えば危険な敵やレイド世界に挑むとついていけなかったり、このダンジョンにある個人の力量で突破しないと進めない階層で躓いたりする可能性がある。...色々言ってしまったが、簡単に言うと叶馬に任せっきりじゃなく、助け合えるくらい君達にも強くなって欲しいってこと」
「...りょーかい。私もちゃんと頑張るって。...でも蓮君、何と言うか他人任せじゃない?」
麻衣は一応は納得してくれたみたいだが、反論をして不満を表しているのだろう。
正直、図星なので言い返せる言葉がない。
それに本来の原作で問題なくストーリーが進行しているから、俺が何も言わなくても上手くやっていくことは確定している。
だからレベリングを急かしているのは俺のエゴでしかない。
「それに関してはごめん。俺にはできないから君たちに頼るしかない。もちろんできる限りの協力はするから」
「お?、言ったな。遠慮なくコキ使わせてもらうぞ」
「うん。言質取ったからね」
「お手柔らかに頼むよ」
「なんでもする。と...あっ」
静香さんがメモに何かを書いているが、叶馬にメモ帳を没収されてしまう。
その後、叶馬が咳払いをして話の続きをする。
「それで俺のクラスチェンジ先なんだが」
「ああ、ぶっちゃけ何でもいんじゃね」
「そうそう、どんなクラスになっても何とかしちゃうでしょ」
「まぁまぁ、でも叶馬にどんなクラス候補が出るのか興味があるでしょ?まずは聞いて見ようよ」
誠一と麻衣が話を茶化すが、俺はフォローを入れておく。
原作知識からどんなクラスがあるのかは把握しているが、彼らからしたら気になるのが当然だろう。
「それもそうだな。それじゃあ叶馬、まずは候補を書き出してくれ」
そう言われて叶馬が候補を書き出すと、そこには原作通りSSRかGRのクラスしかなかった。
俺も細かくは覚えていないので、完全に一致するかは分らないが取得するクラスが同じになれば問題ないだろう。
もう好きにしてといった感じで投げやりな叶馬の仲間達のコメントに紛れて、候補先を誘導する。
「今の段階で凄く強いから、純粋な強化番っぽい『雷神』が良いんじゃない?文字からして強そうだし」
「うん。ぜったい強い」
「いや、やはり基本的なクラスに戻る方が」
「候補の全部が規格外のクラスなんだ。諦めなよ」
「ぐぬ」
結局、俺の意見にアイナも加勢し、反対する人が居なかったので叶馬は『雷神』を選ぶことになった。
その後は、明日以降の予定等を話合いをした後、打ち上げで飲み食いをして親睦を深めた後、俺と茜とアイナは寮へと帰った。
▼▼▼
翌日、この日の午前中も授業は受けずに3人揃って寮で過ごした。
午後からダンジョンに行く予定だが、このまま授業に出られない状況を何とかしたいので、アイナのクラスの仲間になってくれそうな人を探すことになった。
条件は2つ。
アイナに情欲を向けないことと、クラス内での地位が高いこと。
そうでないとアイナを守ることはできないから。
だから狙いは異性と対等に付き合えてる男女だ。
異性が傍にいるなら性欲目的でアイナを狙う必要がないし、異性と健全な付き合いができているようであれば性格もマシだろう。
この学園だと希少かもしれないが、入学して間もないこの時期の新入生なら期待できる。
午前の授業が終わったタイミングを狙って、アイナの教室へ向かう。
狙いは上手く行き、教室にはまだ沢山の生徒がいた。
アイナが顔を出すと、生徒の中の何人かが騒ぎだす。
そうなるとこちらに注目があつまり、当然アイナにちょっかいをかけてきた男子集団も騒ぎだすが、それも折り込み済みだ。
案の定、彼らがこっちに気付いたら突っかかってくる。
「おい、てめぇ。よくもぬけぬけと顔見せやがってどういうつもりだ」
「別に君達に用はないよ。...でも一々突っかかって来られるのも面倒だな。せっかくだし、この学園のルールに則って決闘でもしないか?」
「決闘?」
「ああ、この学園で揉めた時の定番の対処方、『
意図が伝わったのか、男子生徒達がひそひそと話始める。
一通り意見交換が終わったのか、顔をあげるとニヤついた顔で条件をあげてきた。
「パートナー契約の解除なんてしけたこと言ってんじゃねーぞ。やらせろ。あとお前が連れてるもう一人の子もつけろ。そしたら受けてやる」
「それだと賭けている物が釣り合わない」
向こうは話しかけないようにすれば良いだけなのだ。
賭ける物の重要性が釣り合ってないので抗議する。
「おっ、どうした。勝てる自信があるから挑んできたんだろ?急に怖気づいちゃったのかな?」
「そうだそうだ。さっきまでの威勢はどうした。受けてみろよ」
水を得た魚のように、ドヤ顔で捲し立ててくる男子生徒達。
正直、彼らに負けるとは微塵も思ってない。
だがアイナの、茜の人権を賭けのチップにすることはしたくない。
だから断ろうと考えていると。
「良い。蓮。受けて」
「私も良いよ。その代わり絶対勝ってね」
そう言って了承してくれる彼女達。
「ごめん。ありがとう。絶対に勝つよ」
「チっ、うぜぇ。受けんならさっさと始めるぞ」
「いや、こっちも条件追加だ。そっちが負けた場合、お前ら全員10日間の謹慎を約束しろ」
「ふっ、いいぜ。それくらいならよ」
余裕そうな笑みを浮かべ受け答えをするリーダーらしき男。
「交渉成立だな。それならこの後は我々決闘委員会が仕切らせてもらう」
「うわっ、なんだお前ら」
急に話に入り込んだ先輩達に驚きの声を上げる男子生徒達。
俺も声は出さなかったが、彼らがいつ近づいてきたのか全く分らず驚いた。
彼らは名乗った通り決闘委員会という組織で、生徒達の揉め事を聞きつける、いつの間にか近くにいる集団らしい。
メンバーは学園の上級生の選りすぐりで構成されているため、全員かなりの強さになるはずだ。
彼らに悪い印象を持たれないよう、言葉使いには注意して話を進めていく。
「勝負内容はどうする?」
「先に降参するか、ダウンしてから10秒以内に起き上がれなかったら負けというのは?」
「それでいいぜ」
「了解した。君たちは6人いるがどうする。連戦か、多数を同時に戦うか」
「そこは俺達に決めさせてくれよ。勝負を吹っ掛けたのはそっちだから文句ねーだろ?」
「問題ない。本来決闘のルールは、挑戦を受けた側が決める。それがこの学園のルールだ」
決闘委員の説明により、否定することができなくなる。
「…ああ。それでいい」
渋々といった感じで俺がそう返すと、その男子はにやっと笑みを深めて「同時にやらせてもらう」と宣言した。
それから決闘の準備が始まる。
決闘場所は近くの中庭に設営されるらしい。
その準備の間に、装備を用意する。
俺達、新入生がたいした装備を持っているはずもなく、全員初心者セットの装備だ。
俺達が中庭に行くと、野次馬が山ほど集まってくる。
彼らの教室の前で揉めていたのだから当然だが、野次集団の中にはアイナのクラスの生徒も沢山いるので、
無様はさらせない。
他にも、教室の窓を空けて観察する生徒達も居て結構な人数がこの戦いを見ているはずだ。
「最終確認だ。挑戦者側の要求は受諾者達の10日間の謹慎。また以降の挑戦者及びそのパートナーへの不干渉。受諾者側の要求は、1年辛(かのと)組 アイナおよび1年乙組 茜のパートナーを受諾者のいずれかに変更にすること。パートナー契約をすれば無理やり性行為を迫っても女子に拒否権はなくなる。からこの条件で良いだろう?異論はないな」
「ああ」
「はい」
仕切り役の決闘委員の説明に、男子生徒達のリーダーと俺が頷く。
「双方の条件が合意したと見做す! よって、ここに『
決闘委員さんが叫ぶように宣言すると、野次馬たちからも歓声が飛ぶ。
娯楽の少ないこの学園で、他者の学生決闘は暇つぶしに丁度良いのだろう。
さておき審判役の指示で、距離を取って向かい合う俺と男子生徒達。
それぞれが武器を手に持ち、構えを取ると審判が開始を宣言した。
「さて、舐めたまねしてくれたしてくれた礼だ。易々と終わらせるつもりはねーから覚悟しろよ」
「そうだぜ。まずそのすかした面、殴りまくって矯正治療だ」
「そんなんじゃ足りねー。小便でも飲ませてやろーぜ」
そんな脅し文句を言いながら、俺を取り囲むように散開しつつ距離を詰めてくる。
俺は脅しに取り合わず、取り囲まれないよう、一番端の生徒を攻める。
俺が近づくと慌てて剣を構えたが、その剣を振りかざす前に俺の剣が男子生徒の手首を切り裂いた。
彼の握っていた剣ごと、手首は宙を舞い、音を立てて床に落ちる。
「は?、あ、うえええ、おっ、お、手が、俺の手が」
喚く男子生徒を無視して次の男に向かう。
仲間の手が斬り飛ばされた状況に唖然として動きが硬い。
腰をぬかして尻もちをつくが、手を止めず、転んだ男子生徒の足首を斬りつける。
「っ~、あ、え、ほ」
「てめぇ、よくもやりやがったな」
フリーズから立ち直った生徒、が裏声で威勢を張り、へっぴり腰で槍を構え突撃してくる。
だがその動きは、生産職とはいえ、2段階目クラスを得た俺にとっては、遅すぎる。
槍の柄を掴んで、軌道をずらしつつ剣で男子生徒の腹を切り裂く。
「3人目、あと半分だな」
「ひっ、ちょ、まぁ」
怯えてわけの分らない言葉を発している生徒の武器を持っている手を切り裂き、指を撥ね飛ばす
休まず次の二人を追い詰めると、彼らは転びながらも後ろに逃げようとするがすぐに結界に阻まれてしまう。
「ま、ま、まっ、まってくれ。俺らが悪かった」
「そうだぜ。ちょっとした悪ふざけだったんだ。許してくれよ」
「それは負けを認めるという意味で良いか?」
「え、あ、その」
言い淀んでいると、後ろから足音が聞こえ、振り返ると指を斬っただけで被害の少ない生徒が武器を振り上げ
「このくそやろ~」
文句と一緒に振り上げられた斧をバックステップで回避して、剣先を太ももに突き刺す。
「がぁあああ」
「奇襲なら騒ぐなよ。さて、まだ戦意があるようだから続行だね」
そう宣言して降参しない者に追撃を加えることにする。
俺が近づくと近寄るなっと叫びながら武器を投げ込んできた。
それを難なく躱すと、後ろで悲鳴があがる。
やってしまったとばかりに顔を青くしている男子生徒に近づき、剣で体を守る両腕を斬りつける。
切断とまでは行かなかったが、これでコイツの手は使い者にならないだろう。
残りの二人の方を向くと、未だ無傷の男子生徒は、俺が近づくと降参と言い武器を手放した。
審判の方を見ると頷いたので、他の奴らの方を向く。
彼らは、気付くとを抑えるように屈んでいるが降参はしていないので追撃する必要があるだろう。
一番怪我の少ない、指を斬った男に向かっていくと、彼も降参だ助けてくれっと言った。
降参と宣言したので、他のターゲットを切り替えるが他の者達は立つことすらままならない。
「そろそろ10秒経ちませんか?」
「うむ。そうだな。この勝負1年乙組、蓮の勝利だ」
その宣言とともに野次からの歓声があがってくる。
そちらの方を見ると、騒いでいるのは上級生で、1年生達はグロテスクな展開に顔を青ざめさせている。
一番酷いのは腹を斬った生徒で、腸が出てきてしまっている。
少々やり過ぎてしまったのかもしれない。
試合が終わると、怪我をした男子生徒達にむけ決闘委員が液体をぶっかける。
生徒達から湯気のような煙が立ち上がり、あっという間に傷口が直っていった。
「凄いな。これがポーションの性能か」
「うん。凄い」
「お疲れ様です。蓮君」
「ああ、心配かけたね二人とも」
アイナ、茜と話をしていると審判役の決闘委員がこちらに来て話かけてきた。
「ナイスファイトだ。少年。君は新入生なのにもうクラスを得ているのだな」
審判の決闘委員からそう声をかけられる。
「やっぱりわかってしまいますか?」
「当然だ。動きからして一目見ればステータス補正を受けていることが分かる。もし隠そうとしていたのであれば、そもそも決闘なんかするべきじゃないな」
「そうなりますよね。悪手だったかな」
「何故だ?。まだ新年度が始まって少しだ。この段階でそれだけ強くなっているってことは間違いなく学年のトップ層に入るだろう。広まればちやほやしてくれるぞ。先輩達や女子が」
それは男として嬉しい話かもしれないが、女の子に関しては困っていない
「なるほど、目立ちたくなかったのですが、そう聞くとメリットもありそうで良いかもしれません。ご助言ありがとうございます」
本当はできる限り目立たないようにするつもりだが、今は先輩の話に合わせておく。
ここで下手に目を付けられると面倒なので避けたいのだ。
「よし。怪我の回復も済んだようだな。今回の勝利者からの要望はこの後から実施するように。もし履行しなかった場合は、我々決闘委員から制裁を受けることになる。夢忘れぬようにな。それでは解散」
そういって決闘委員さんが話を締めくくり、解散となった。
アイナと茜を連れその場を離れると、野次馬達でできていた輪が割れ道が作られる。
野次馬達の何人かから褒め言葉や、決闘の感想など声をかけられながら校舎の中へと戻っていった。
▼▼▼
面倒だったアイナのクラスのチンピラ集団が謹慎になったことで、しばらくの間は問題なく授業を受けられるようになったと思う。
とはいえ、クラスで孤立していたらどんな目に合うかわからないのでアイナのクラスに戻り、教室で談笑していた男子2女子3人の集団に声をかけてみる。
「こんにちは。ちょっと良いかな?」
「あっ、さっき隆司達をボコボコにしてたよね。決闘見てたよ~」
話かけるとこちらに気付いた女子生徒が受け答えしてくれる。
話方からして、特に怖がられたり警戒されたりしてる様子はなく、むしろ好感触だ
「うん。彼、隆司君って言うんだ」
「名前知らないまま戦ってたんだ。何か笑える」
「一方的に絡んできたから聞くタイミングがなかったんだ。それで彼やこのクラスのこと聞きたいんだけど良いかな」
「うん。いいよ。それくらい」
快諾してもらったので、軽く自己紹介をした後、チンピラ集団のクラスでの立ち位置や周囲からの印象、アイナに対する印象など思いつく範囲で聞いてみた。
どうやら彼らチンピラ集団は、クラス内で悪目立ちをしており嫌われているようで、決闘で勝ったことにより謹慎になることを教えると喜ばれていた。
アイナの方は、可憐な容姿でちやほやされているが、無愛想でクラスメイトに対してもそっけない態度を取るため、関わらないようにする生徒も増えてきているらしい。
その内、孤立し容姿だけを求めている男子生徒しか寄ってこなくなるだろう。
そうならないようにアイナの手助けをしてもらうようお願いをした。
口約束だから守ってくれるか不安が残るが、もし動いてくれたら恩返しはするっと前もって条件をつけると心よく受けてくれた。
目立ってしまった決闘だが、それで俺の強さが証明されたことで良い印象を持たれているようだった。
「それにしても蓮君ってかなり強いよね。どこまで進んでるの?」
「うーん。最初の階層を歩き回ってるから、君たちとそんなに変わらないよ」
「いやいや、ダンジョンに帰還できるんだよね?。それだけで十分凄いよ」
「そうそう。俺達なんて1時間だけ潜るつもりで挑んだのに生還できなかったぜ」
「全員、記憶がないから何がダメだったのかわからないんだよね」
「先生や先輩達の話からするとクラスを得るまでが大変らしいからね。俺達がクラスを得て力を余裕ができたらレベリングしてあげるよ」
自分のクラスメイト達にも同様の約束をしているため、あまり数を増やすのは良くないが、序盤で恩を売りつつ強さによる上下関係をはっきりさせることができるため、裏切りにくい味方ができるだろう。
数日の労力で、味方が増えるならある程度はやるべきだ。
「本当に? ありがとう」
「やった。君がいれば百人力だよ」
「ああ、その代わりさっきの件、よろしく頼むよ」
「任せてよ。私達、頑張るからさ」
「期待してるよ。アイナの方も、あまり彼らに負担をかけないように注意してね」
「うん。気を付ける。皆よろしく」
アイナが端的に挨拶をする。
今までと違いクラスメイトに対して関わる姿勢を見せてくれたようだ。
それから少しの間雑談してから俺達はその場を後にした。