ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター 作:アイウ
――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――
――第『壱』階層、『既知』領域――
『
既知領域かつ壱階層に来た主な理由は二つ。
1つ目は出てくるモンスターが弱いこと。
検証中に強いモンスターが現れて邪魔される、もしくは不意を疲れてやられてしまうのを避けるため、 そしてもう一つは―――
「おっ、一年坊、可愛い女の子二人も侍らせちゃって、羨ましいね」
「調子乗ってるよな。イケメンじゃん。なんかムカついてきた」
「僻むなよ。童貞がバレるぞ」
「どっ、童貞ちゃうわ。新入生じゃあるまいし、この学園でそんな奴いるわけねーだろ」
「はは、そりゃそうだ」
そう言いながら俺達の前に現れたのは先輩5人。
武器を構え、俺達を取り囲もうとしているため新人狩りを狙ったエンジョイ勢のクズどもだ。
その証拠に彼らの称号の中に、『
この学園では、その人が特定の行動をするとそれに付随した称号がステータスに追加されることがある。
その内、ダンジョン内で人を殺していたら勝手につくものだ。
昨日は出てこなかった先輩達だが、今回に関してはむしろ望むところだ。
理由の二つ目、実験体が自らやってきてくれたのだ。
色々考えたが、スキルの検証をするなら人相手が一番確実で安心できると思ったので、実験台にしても心の痛まないクズを捕まえる計画になった。
先輩方のクラスを見ると『
3段階目クラスがいることも考慮していたが、安全に倒せる相手で良かった。
まぁ、3段階目クラスに成れるくらいのポテンシャルがあるなら、わざわざこんな低階層で新人狩りなんてことしないだろう。
俺は『ゴーレム』を召喚しつつ『
「っ!、ぐぁ」
完全に油断して反応が遅れた先輩の腕を筋を斬った。
それによって、持っていた片手剣を落とす。
追撃でしゃがみながら足首にも斬撃をいれて動けなくした。
「あ!、やんのかゴラ」
「調子のんなよ一年」
「ぐぁあああ、あちい」
騒いでいる先輩の体に、茜の火炎魔法が直撃する。
その先輩は『
「生け捕りにして」
「「「ヴォフ」」」
いつの間にかアイナが召喚していた『コボルトソルジャー』3体に指示が飛んで、先輩達を追い詰めていく。
「くっそ、こいつら戦いなれてる」
そう叫びながら逃げ出す先輩を足で追いかける。
逃げるなら黙って逃げればいいのに...
昨日の探索のおかげで俺の『
腕を切り落とし、武器や防具を茜の『
「て、テメェーらほんとに一年か?」
「おい、一年。悪いことは言わねえ。開放してくれたら良い事教えてやるよ」
「そうだぜ。俺らの言いうこと聞いて置けば」
「黙れ、喋れないように喉を潰すぞ」
俺がそう脅すと全員が黙りこくった。
「ひとまず協力者確保だな」
「はい」
「うん」
前回、スキル検証に倫太郎君を利用したらドン引きされたので今日の計画は茜とアイナに共有済みだ。
相手が、新入生を狙い、男子なら殺して女子は犯すようなクズのみにすることを伝えると反論はでなかったし今も率先して協力してくれる。
先輩達を死なない程度に四肢を切断して近くに並べた。
時間がないのでどんどん実験をしていく。
今回明らかにしたいのはスキルを取得させれる容量の限界が、クラスの段階によって違うのか、もしくはレベルの高低によって違うのかだ。
効率重視で、今回は与えたスキルが使えるかどうかは確認しない。
一方的にスキルを入れて、その記録をメモしていく。
検証の結果は以下の通りになった。
『
もっと言うと幸太郎君で試した『初心者』よりも『
『
『
追加で取得させるスキル構成を変えると取得できる数も変わったので、スキル毎に使用する容量は違うのだろう。
とりあえず有用なスキルを優先して試していく。
「良し、データは取れた。移動しよう」
「蓮。こいつらどうする?」
「万が一生き残ったら不味い。止めを刺していこう」
時間がないので、手分けして処理していく。
彼らを倒すとついでに経験値を取得できる。
なので経験値の多そうな2段階目クラスの二人は、後衛の茜とアイナの二人に任せることにした。
止めを刺した後、直ぐに玄室を移動する。
その回廊にはゴブリンがいたが、階層が低いのでかなり弱い。
既知外領域は出てくるゴブリンはもれなくレベルがカンストしているため、既知領域のモンスターの弱さに拍子抜けするが危険度が下がるのは良いことだ。
2回程玄室にいたゴブリンを殲滅し、一息ついた後、『
「検証の結果、1段階目クラスに対しては、6つ分くらいスキルが入れそうだが余裕を見て取得するスキルは最低限にしよう」
「うん。前話してた『
「分かったけど必ずしもそれができるとは限らないからそこは覚悟しておいてね」
俺はそう言って『
「終わった?」
「うん。終わったよ。さっそく試してみようか」
俺とアイナは、体を寄せ一緒に『
それに寄って体に不思議な感覚が走った。
試しに右手で左腕をさすって見ると、アイナが目を見開いた。
「凄い。触ってないのに左手を触られているような感じがする」
好奇心から感動したように声を上げるアイナ。
アイナは効果を試すために床を強めに叩く。
その感覚は俺にも反映されて、手にじわじわと痛みが走った。
「うん。俺の方も感じているよ」
「良かった。それじゃあ次にスキルを試そう。『
目を見開いてアイナが呟くが、アイナはその姿勢で固まったままになってしまう。
「使えなかった?」
「うん」
ショボンという効果音が合いそうな表情になるアイナ。
「スキルを共有するには、繋がりが足りないのかもしれない」
「ならもっと繋げよう」
そう言って距離を詰め、顔を近づけてくるアイナ。
「わかった」
俺はアイナの背中に手を回してそっと抱きしめる。
物理的に距離を縮める必要があるか疑問だが、アイナの行動に乗った形だ。
そして頭の中で、俺とアイナを繋げている線をイメージして、次にそれが太くなるイメージを取った。
しばらくそうしていると変な感覚になってくる。
それは嫌なものではなく、どちらかと言えば心地の良い物だ。
心臓の鼓動が早くなり、体が熱くなってくる。
そして焦るような感覚と楽しいという感覚もある。
これがアイナの感情か。
その結論に至ったので警戒心を解き、繋がりを強くすることを更に意識していく。
それによって、アイナから伝わってくる感覚がどんどん鮮明になって行った。
「あの~二人とも、そろそろあたしも混ぜてよ」
今まで見守っていた茜が抱き合っている俺達に対して、抱き着いてくる。
「ごめん」
そう謝りながら、茜の体を引き寄せてアイナと一緒に抱きしめる。
「あ!見えた!蓮、茜のステータス見えた」
「本当か?やった!実験成功だな」
「うん。他には...ゴーレム召喚!」
アイナが手を翳した先に、人型の物質が顕現する。
その形は、俺のゴーレムとは異なるものでアイナ特有の物になるということが分かった。
「おめでとうアイナちゃん...でもそんな有用なスキルなら私も欲しいかな」
「そうなるよな」
茜の考えは自然な物だ。
俺としてもそうなってくれたら、戦力がかなり向上するため理想とする結果だ。
だが茜に関しては、『
もし容量オーバーになった場合、要らないスキルだけが増えて、何らかの負債を抱えるリスクがある。
まさにハイリスクハイリターンだ。
茜にその話を踏まえて相談した結果、最終的にリスクを取ってスキルを入れることにした。
幸いスキルは問題なくインストールできており、懸念は俺の杞憂で終わった。
その後、アイナとやったように体を寄せあい繋がりを強くするイメージを浮かべた。
数分が経過すると、自分の物ではない感覚が芽生え、接続に成功した。
スキルの共有ができたので早速試運転だ。
次の回廊を進み、ゴブリンを探す。
見つけたゴブリンは3体だったので、一人一体ずつ処理することに。
『ファイヤーボール』
俺は魔法を行使した。
差し出した手の先から火の玉が浮かび、ゴブリン目掛けて飛んでいく。
火の玉はゴブリンに直撃し、その体を焼いた。
「おお!本当に使えた」
「うん。私も魔法使い」
アイナの方も魔法を試したようで一緒に喜ぶ。
というか感覚を共有しているのでアイナの気持ちにつられているのかもしれない。
「ゴーレム召喚」
茜の方は、ゴーレムを召喚してゴブリンに拳を叩きつけた。
「う~ん。SP消費を考えると魔法を使った方が良い気がするかな」
「相性次第でゴーレムの方が良い場面もある出てくると思うけど、無理に使う必要はないと思うよ」
原作でゴーレムの戦闘方法として書かれていたのは、モンスターの素材をゴーレムに取り込むことでその能力を扱うことだ。
だからゴーレムに格闘させている今の段階は、ゴーレムの魅力を引き出せていない状態なので弱いと感じても仕方ない。
「そっか。まぁ手札が増えるのは良いことだよね。壁役としても使えるかもだし」
「うん。そうだね。次に試すのは...『
唱えると空中に黒い裂け目が現れる。
「あ、私も『
アイナも同じように試すと、同じように黒い裂け目が現れた。
「これが全員使える恩寵はかなり大きいな」
「うん。すごい」
「お役に立ててなによりだよ」
茜が嬉しそうに言うと、『
「私だけ貢献できてない」
「そんなことない。回復魔法が使えるのはすごいことだよ」
「ああ、かなりレアなクラスだから凄い助かるよ。全員が攻撃からサポート、回復までこなせるんだから最高だ」
「そっか、なら良かった」
嘘偽りのない励ましをしたら、アイナが気を持ち直してくれた。
その後も探索を再開し、モンスターを蹂躙していく。
急激に使えるスキルが増えた分、試したいことがたくさんあるので、
意気揚々と回廊を進んでいく。
「このゴブリン達じゃ練習にならない」
「もう少し手ごわい方が良いよね」
「弱い敵相手だからできることをやってみよう。二人とも護身はできるようにある程度近接戦闘も練習してくれないかな?」
「一理あるね。やってみるよ」
「わかった」
二人とも了承してくれたので、二人に前衛を任せて俺は援護に回る。
二人とも槍を装備しているため、間合いを活かしてゴブリンをチクチク攻撃する。
比べる相手が悪いが、沙姫や誠一と比べると大分無駄が多いように見える。
それでも数回も繰り返していれば、コツや要領を覚えたのか段々とスムーズになってきた。
最初は心配で、すぐに助けに入れるように身構えていたが、問題なく処理していけることが分かると緊張が解けていく。
そうなると手持無沙汰になってきたので、以前作っていたゴーレムのプリセットを試すことにした。
『
まぁ、叶馬達がいるときなら、俺が失敗してもフォローできたかもしなかったが。
さておき『
『
そういう訳でゴーレムを召喚して試す。
最初に選んだゴーレムのコンセプトは鎧だ。
内部のフレームを極端に少なくして、装甲の硬さと小型化にステータスを極振りしたゴーレム。
もうゴーレムと言っていいかわからないが、意図したことができるなら何でも良い。
さっそくゴーレムの鎧を装着してみる。
狙い通り、装備することができた。
サイズを小さく重量を軽くしたが、それでも重さは結構ある。
体を動かしてみるがフレーム同士の噛み合いが悪く、関節を動かせなかったり、転んだりしてしまう。
これはだめだ。
そう判断して、『
次のコンセプトはアーム型。
右腕に装備して殴ったり、クローを展開して相手を掴んで捉えたりすることを想定して作成した。
イメージは、バンシィのアームド・アーマー
見た目とクローの展開ギミックはそこそこ再現できててカッコいいとは思うのだが、腕だけに重さが加わるのでバランスが悪く、この状態じゃまともに戦闘できない。
腕を振るうのと同時にゴーレムを召喚して、勢いをつけた状態でそのまま殴ることができれば使えるかもしれないが練習が必要だろう。
鎧型を使った感触からダメそうだと思ってたのでさくっと次へ行く。
今度のコンセプトはパワー型ゴーレム。
ゴリラをイメージして形を弄っており、腕を長く太くして足を短くしている。
加えて装甲を薄くして駆動部品とそれを支えるフレームを強化してみた。
操作感を試すが、動かす分には問題なかった。
意図したと通り、足が短い分移動が遅くなっている。
それにバランスが悪くて、2足歩行で歩こうとすると転びそうになる。
だけど長い腕を使うようにしたら、安定して早く歩くことができた。
それに移動は遅いが、旋回するスピードはそこまで遅くなってない。
あとはこの形態の利点であるパワーの向上がどれ程のものなのかだが、相手が役不足で試せていない。
とりあえず実戦は後にして次のゴーレムを試す。
次のゴーレムのコンセプトは搭乗型。
今メインで使っているスリムなゴーレム背中に、バックパックのようなコックピットを用意してみた。
イメージしたのはコードギアスのナイトメアフレームの背中のやつだ。
さっそくハッチを開いてコックピットに乗る。
コックピットとはいえ、操縦幹はない。
ゴーレムは俺のイメージで動いてくれるのでコマンド操作は必要ないのだ。
コクピットのハッチを閉めて立ち上がらせる。
すると重心がずれて、コクピット部分から地面に転がる。
ドスンという衝撃と頭に痛みが走る。
「わっ、ビックリした~。もうっ、何やってるの蓮君?」
「蓮、低い階層とはいえダンジョンでふざけるの良くない」
急に倒れたことで大きな音がして茜とアイナを驚かせてしまったようだ。
「ごめん。でも今みたいに余裕があるときじゃないとゴーレムの性能を試せないからしばらくやらせてくれ」
二人にはそう言って、再度搭乗型ゴーレムの試運転をする。
前後のバランスに気を付けながら立ち上がる。
その状態で前方方向に足を動かしてみるが、片足をあげただけで転びそうになりまともに歩けない。
それに操縦席を作ったのは良いが、自分のイメージで動かす物なので操作性が上がるといったメリットはなく、ゴーレムの体がスマートになるくらいだ。
間違いなくこれは没案だ。
作成したゴーレムを一通り試した後、ゴブリン相手に実戦をする。
茜とアイナに代わり、俺が前線に出てゴブリンを殲滅していく。
攻撃手段をゴーレムだけに絞っていたが、それでも問題ないくらいには余裕があった。
ゴーレムは攻撃されてもダメージはないし、こっちの攻撃はほぼワンパンだから一方的に攻撃を続けてゴブリンを倒していった。
その分、得られる経験値は低く、全員が1レベルも上がらないが、そこは諦めるしかない。
倒すメリットがないので、途中からゴブリンを『
「ゴブリンばっかりそんなに集めてどうするの?」
「今後、試したいことを思いついたら実験体として使うかもしれないって思ってね。そうならかったとしても売ればいいだけだから」
「なるほど。スキルを共有している今なら私達も使えるのかな。そのカードにしちゃうスキル?」
「使えると思うよ。ただ人 相手に使わないように注意してね」
「え?、そんなことできるの?」
「らしいよ。というか稀に人も倒された時にカードとしてドロップするケースもあるらしい。そういった場合、当然学園には戻れず失踪者扱いになって存在ごと無かったように扱われる」
「怖いね。それ」
「ああ、だから死なないよう強くならないとね」
「うん。そうだね」
「私も気を付ける」
その後、茜とアイナがゴブリンをカード化し、そのカードを召喚して使役するが何となく合わないらしく、直ぐに使うのを辞めた。
その後も追加で13枚ゴブリンカードを入手したところで帰還の時間になり、無事に帰還した。
>>>
帰還した俺達は、手に入れた魔石の一部を換金して寮に帰ると、海燕荘の先輩が話かけてきた。
「ねぇねぇ、蓮君?この手紙知らない?」
そう言って手に持っているのは一枚の封筒。
その宛名に俺の名前が書かれている。
外の社会と隔離されているような学園だから送り主は学園側だろう。
俺は身構えて、先輩に質問する。
「それ、誰からですか?」
「それが寮の直ぐ傍に落ちてて誰が落としたのかわからないの。でも宛先に蓮君の名前があったから渡した方が良いかなって」
その言葉は嘘を言っているようには見えず、十分にありえるシュチュエーションだ。
警戒する必要があるのは送り主で、それを中継した先輩を警戒する必要はないだろう。
「お気遣いありがとうございます。先輩」
素直にそう言って、手紙を受ける。
「いいよいいよ。気にしなくて。あっ、やっぱり恩を感じてるなら一晩付き合ってよ」
「ダメです。彼は私達のパートナーですから」
「夜の予定は埋まってる」
俺が答える前に、茜とアイナが理を入れる。
「ちぇー。まぁ堂々とはできないよね。蓮君、たまに味変で他の子としたくなったときは、真っ先に呼んでね」
「あ~、機会があれば」
社交辞令的な、拒否はしてない感じで返事をする。
さすがというかなんというか、この学園の風紀に染まった先輩だから性行為に対しての敷居が低すぎる。
「蓮、なんで断らなかった?」
「そうだよ。彼女が二人もいるのにどうかと思うよ」
真横で先輩とのやり取りを見ていた二人に詰め寄られてしまう。
「いや、あそこで無碍に断ったら感じ悪いだろ?」
「普通にパートナーがいるから、とか言い訳はあったよね」
「下心があった」
「確かに、もっと良い断り方はあったと思うけど...いや、ごめんなさい。俺が悪かったです」
言い訳しても心象が悪くなるだけだと思い、弁解を諦めて謝る方向に変更する。
茜もアイナも揶揄い目的だったようで、それであっさり許してくれた。
部屋に入って落ち着いた所で封筒の中身を取り出してみると、そこにはメモ用紙が入っていた。
そこには「明日の20時、3年辰組の教室に一人で来い」とだけ書かれていた。