※この作品はR-18です。

ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター   作:アイウ

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19.監視

 寮の先輩から渡された宛名のない手紙。

 この手紙の送り主として思い浮かぶのは、俺をこの学園に送り出した奴らだ。

 

 彼らは俺のことをどこかで監視していると言っていたし、定期的に連絡するとも言っていたのでその線が濃厚だろう。 

 

 もちろん監視されることを想定して、学園での言動には注意を払っていたから特に詰められることはないと思いたいが、事前にいくらでも策を講じられる彼らと、個人で場当たり的に動くしか無かった俺とでは圧倒的に俺の方が不利だ。

 入学してからの俺の行動を把握されており、それが彼らにとって好ましくない物であれば、最悪俺は消されるかもしれない。

 考えれば考える程、不安が募っていく。

 

 その感情は『組合(ギルド)』の効果を通じて茜とアイナにも伝わってしまう。

 慌てて『組合(ギルド)』の効果を切った。

 

 「蓮君、大丈夫?」

 

 「ああ、大丈夫だよ」

 

 実際何事も起きないという可能性は高いはずだ。

 この学園でこき使われる側の人間は、大半が一般科卒業の先輩達。

 4段階目クラスに到達しており強いのは確定だが、この異常な学園に染まり切っているため、頭の中は性欲に支配されているだろう。

 仕事なんて真面目にやらないはず。

 

 それだけじゃなく、原作では如何にも目立つ存在のはずの叶馬に対して、学園側が何もしていないことからもそこは心配しなくて良いだろう。

 

 楽観視するのは良くないが、恐れてばかりで落ち込んでいても仕方ない。

 

 「私達に何かできることはないかな?」

 

 「力になるよ」

 

 「二人ともありがとう。...でも今はまだ大丈夫かな。この送り主がまだ確定してないし、その人がどういうつもりでこれを送ってきたのかわからないから」

 

 お礼をしつつ断りを入れる。

 遠慮ではなく、本心からの言葉だ。

 それはスキルで感覚を共有している今なら確実に伝わるはず。

 

 話をそれで終わらせ、切り替えて日常生活に戻るのだった。

 

 >>>

 

 次の日の始業前、早めに学校に言って1年丙組の教室前で待機する。

 目的は、誠一と話すこと。

 餅は餅屋というように、学園側の動きに関しては、学園の刺客で信用できる人に聞くのが一番。

 登校してくる生徒達からの視線を受けるがそれは甘んじて受け入れるしかない。

 ちなみに目立つのが分っているため、茜とアイナは連れて来なかった。

 

 「あれ?蓮君じゃん。どうしたの?」

 

 開口一番に麻衣が明るく話かけてくれる。

 

 「おはよう。麻衣さん。ちょっと誠一に用があってね」

 

 「あ?、俺か?」

 

 「うん。詳しい人に聞きたい案件があってね。どこかの時間で話せる時間を作れないかな?」

 

 その言葉だけで、誠一は察してくれたようで表情が切り替わる。

 

 「いいぜ。なんなら今から行くか?」

 

 「ありがとう。助かるよ」

 

 「えー、誠一サボるの?ズルーい」

 

 「中学校レベルの授業だろ。1回くらい出なくてもなんともないねーよ」

 

 叶馬達から離れ、誠一の案内で人気の少ない場所に行く。

 しばらく歩くと、足を止めた誠一がこちらを振り返って話を促した。

 

 「それで。どうした?」

 

 「俺を監視している奴らがコンタクトを取ってきた」

 

 「監視?お前がするんじゃなくて、される側なのか?」

 

 「ああ、俺は観察対象という扱いだ。どちらかと言えば誠一より叶馬の扱いに近いか」

 

 「そっちだったのか。その辺もっと早く言っておいて欲しかったぜ」

 

 「ごめん。なかなか言うタイミングがなくてさ。因みに誠一の方で俺の情報は調べなかったのか?」

 

 「そりゃ調べたけど、全く情報が出なかった。多分派閥が違うんだろうな」

 

 「彼らも一枚岩じゃないってことだね。それじゃあわかる範囲で学園側の情報を教えて欲しんだけど、奴らは人のスキルを確認する手段を持ってるのかな?」

 

 「ん~。持ってる可能性は十分あるが、絶対とまでは言えない。それに派閥意識が強くて互いに協力どころか蹴落とし合ったりしてるし、実働部隊はやる気のねー奴らが多い。だからそう身構えてなくても良いと思うぞ」

 

 「そうだと嬉しいね。今までの学園生活でそこが一番バレると不味いだろうから」

 

 入学たった数日でランクを上げ、露店商店で貰った変なスキルを沢山持ってるバレたら、注目されてしまう。

 だからそこに気付かれるのが一番痛い。

 

 「確かに不味そうだな。それで他に知られちゃ不味いことあるのか?」

 

 「うん。叶馬と行動してることかな。これに関しては、叶馬の方に注目が行くかもだけど」

 

 「そりゃ、あんな見るからにヤバいのがいたら嫌でも注目しちゃうわな」

 

 「もしそうなったら合わせる顔がないんだけどさ。...学園関係者に対して他に気を付けた方が良い事ってあるかな?」

 

 「ん~。間違っても奴らに勝てると思うなよ。護衛についてる連中は4段階目クラスだろうし、華組の出身の奴らは『魂魄結晶(ソルデバイス)』も持ってるだろうから」

 

 「そうだね。相手の出方にもよるけど、表向きは従順なフリをしておくよ。...暗い話はここまでで、次は良いニュースだ。『技術伝授(スキルインストール)』の動作確認ができた。先輩を使って試したんだけど、誠一達にもスキルを2、3個入れるくらいなら問題なさそう」

 

 「おお、そりゃいいな。個々の手札が増えたら戦闘面で安定感が増すぜ」

 

 「うん。各々入れたいスキルを考えておいてね。今日は俺の近くにいない方が良いと思うから、明日以降で都合が良いタイミングでやろう」

 

 「わかった」

 

 話が終わり、俺達はそれぞれの教室に帰っていった。

 

 

 >>>

 

 その後は普通に授業を受けて午後からはダンジョンへ。

 悩んでも仕方ないので、今できることをやって行こう。

 叶馬達とのダイブができなくなってしまったので、代わりにレベリングの方を進めることにした。

 急な話だったが、皆特に予定がないという話だったのでなんとかなった。

 

 前回に加えて、翔達4人の男子が追加。

 あとアイナのクラスから女子一人追加して欲しいと、奏汰から要望があったので加えた。

 こっそり話を聞いたが、一昨日レベル上昇に伴う高ぶりを鎮めるため元々組んでいた3人の女子と一緒に寝たらしい。

 女子の部屋でダンジョン内での話をしようという話から、5人で乱交という流れになったらしい。

 その後、色々あってそれぞれパートナーになろうという話になったのだが1人余るため、歩の方が二人にパートナーになった。

 奏汰は、身近な男二人(歩と俺)が二人のパートナーを抱えているから、自分ももう一人欲しいという考えに居たり、クラス女子を口説いて今に至るとのこと。

 

 ともかくこれで合計人数は20人になった。

 かなりの大所帯になるが、新人狩り目的の先輩に目を付けられると不味いので班分けを行い、別々のグル―プを装ってダンジョンへダイブした。

 どの班も必ず前回の参加者を中心に転移陣に立つよう指示を出しておいたので、無事壱階層で合流できた。

 

 監視されていたのか、9人の男子先輩方が後からついて来たが全員1段階クラスのエンジョイ組だったのであっさりと返り討ちにしてしまう。

 レベリングに丁度良いかと、四肢を切り落としついてきたメンバーを見ると「ひっ」と悲鳴が聞こえた。

 

 「皆も新入生狩りをする先輩がいるって聞いているでしょ?やり返さないと一方的に搾取され続けるんだからこのくらいできなきゃだめ」

 

 茜がすかさずフォローしてくれるが、感情的に簡単に慣れるものじゃない。

 

 「茜、ありがとう。でもいきなりは難しいから俺が処理しておくよ」

 

 俺がそう言うと割り込む声がある

 

 「はい、はーい。人相手でも経験値貰えるんでしょ。だったら俺やりたい」

 

 翔が気軽な様子で前に出てくる。

 気負った様子は一切なく、教室で話すときと同じ口調だ。

 

 「ああ、それなら任せるよ」

 

 それを聞いた翔は、手に持った斧で先輩達の頭に振りかざす。

 その動きから一切の躊躇が感じられない。

 「助けてくれ」とか「あいつにやれって言われたんだ」等と命乞いをする先輩達だが、翔は完全に無視して止めを刺して回る。

 相手を痛めつけて喜ぶようだったらヤバい奴だが、翔は普段からにこやかな表情をしているから判別が難しい。

 躊躇する人より慣れている人の方がスムーズに進行できるし頼りになるのでありがたいのだが、慣れ過ぎていると逆に怖いという心境。

 こいつとは少し距離を取りつつ、敵に回さないよう注意しよう。

 

 「蓮。終わったよ~」

 

 「ああ、お疲れ様。これで数レベルは上がったんじゃないか?」

 

 「だったらいいね。この調子でどんどん行こう!」

 

 明るい調子の翔を先頭に、ゴブリンをどんどん倒し行く。

 初参加の翔に、負け時と奏汰と歩も張り切って前に出る。

 前回参加した子と、今回初参加した子の動きの違いを見ると成長したんだなとしみじみと思う。

 

 雑魚処理の時間が大分短くなり、しばらくすると前回参加組はクラスチェンジ可能なレベルに到達した。

 一方、初参加組は経験値取得による負荷で今では辛そうにしている。

 最初は活き活きしていた翔、これに関しては同様だ。

 

 「ふー。意外とキツイなこれ」

 

 「うん。俺達も一昨日はヤバかった」

 

 「そうだね。きつかった」

 

 競うようにモンスターを倒してた翔と奏汰、歩は仲間意識が生まれたのか気軽に話せるようになっていた。

 

 「蓮、少し休憩にしない?」

 

 翔がそう提案したのをきっかけに、良い頃合いかと判断して休憩を挟むことにした。

 そして翔は、女の子達の方へ向かい口を開く。

 

 「ねぇ、誰か俺とやらない?経験値の高ぶりはセックスで解消できるって言ってたからさ」

 

 こいつ、すげぇ!

 女子が沢山いる前でのあまりにも直球な誘い文句に唖然としてしまう。

 戦闘のことと言い、頭のネジがどこが抜けてるのかもしれない。

 

 「ダンジョンでのセックスは当たり前らしいし、あっ、パートナーいる子はもちろん対象外で」

 

 たたみかけるように話す翔だが、女子は戸惑うばかりだ。

 でも流れを作ってくれたのでここは乗るべきだ。

 性行為による経験値負荷の発散ができれば効率が上がる。

 この学園では当たり前のことだから慣れておいた方が良いのも間違いない。

 既に経験してるこもいるだろうが、先輩方から無理やり犯されるなんてことがこの学園の日常なのだから性行為に慣れておく必要がある。

 

 「一理あるな。お互い合意ならやっても良いと思う。あと『天敵者(アグレッサー)』が来るから15分くらいで済ませてくれ」

 

 それだけ注意して俺は、茜とアイナを連れて玄室の端による離れる。

 チラッと様子を見ると奏汰と歩は、同じクラスの子を引き連れて行き、翔以外の男子も必死になって誘い始める。

 その場にいるのは乙組の女子7人と男子4人で、必然的に女子が選ばれる形になる。

 一番乗りに翔が、女子二人を連れて壁際へ移動しやり始める。

 

 「ねぇねぇ。蓮君は相手してあげないの?」

 

 「俺は茜とアイナが居てくれれば良いかなって。無暗にパートナーを増やしたくないし、相手が決まってない男子に恨まれたくないから」

 

 これは嘘偽りない本音で、性欲に関しては毎日二人の相手で枯れるんじゃないかというくらいに絞りだしてるし、誘えば乗ってくれる子がそこら中にいるから問題ない。

 パートナーに関しては、多く連れていると目立つしNTRが性癖の強い先輩達の獲物になってしまう可能性が上がる。

 原作では何名か居たはずだ。

 だから相手を増やすことが目的ではなく、その子のことを独占したいと思うかどうかでパートナーにするか判断したい。

 現状、そう思えるのは目の前の二人だけだ。

 

 「そう。なら今は私が相手をしてあげる」

 

 アイナがそう言って抱き着いてきたのでそのまま着衣セックスに移行。

 茜の方は、アイナの愛撫を始めてその反応を見て笑みを浮かべている。

 

 行為が終わった後、他の子達は相手が決まらず持ち越しになった。

 

 だが幸か不幸か、その後に移動した玄室で性行為による発散ができた子とできなかった子で動きに大きく差が出てしまう。

 できた子は体が軽いと言わんばかりにゴブリンを処理していき、できなかった子は動きが鈍い。

 目に見える形で効果が表れたため、できなかった男子のアプローチがより積極的になり、対する女子側も乗り気のようだ。

 

 上手い事、相手が決まったようなので早めに休憩をとって発散する機会を与える。

 一度発散させた子達も15分じゃ収まりきらなかったためか性行為しに行く。

 あぶれた女の子は翔が引き取って相手をしたため、全員がダイブ中の性行為を経験したことになる。

 こういう風にこの学園の常識に染まっていくのだなと、しみじみと思った。 

 

>>>

 

 ダンジョンから帰還し、皆と離れた後、俺は一人で校舎に戻って手紙で指示された教室に向かう。

 夜の校舎は、暗いし怪談ネタが沢山あるからホラーっぽいイメージがある。

 だがその雰囲気をぶち壊すように、物音や喘ぎ声が聞こえてくる。

 

 こんな状況で真面目な話ができるのか?っという疑問を考えながら教室の扉を開くと、そこには白衣の男性が一人と、自衛隊が着るような軍服を着たごつい男性が2人いた。

 

 「やぁ。2週間振りだね。蓮君。調子はどうだい?」

 

 俺が教室の中に入ると白衣の男が話かけてきた。

 大分フレンドリーな感じで話しかけて来たため、こちらもそれに合うように明るく返事をする。

 

 「はい。お久ぶりです。調子は良いですよ。楽しく学園生活をさせてもらってます」

 

 「それは何より、私達の方でも観察させてもらっているよ。それにしてもダンジョンが解禁されてからほぼ毎日ダンジョンに通っているようだね」

 

 「はい。やれば必ず強くなるというのがゲームみたいでハマると結構楽しいです」

 

 「それなら良かった。僕が学生の時は、楽しさよりも死に戻りしちゃいけないという緊張感があったから、楽しくはなれなかったな。すごいよ君は」

 

 「え?、死に戻りすると何か不味いんですか?」

 

 死に戻りに関する情報が、彼らにとってどれ程秘匿性のある物かを知るためにあえて切り込む。

 その言葉で失言に気付いたのか、白衣の男は顔色を変え、慌てて話題を終わらせた。

 

 「おっと、いや、純粋に怖くてさ。僕が学生の頃はダンジョンへ行く度に怯えていたのさ。そんなことはさておき本題に入ろう。」

 

 こちらとしても、何かボロを出す前に話を切り上げたいのでそれは好都合。

 聞きながらその場にいる男達のステータスを確認する。

 案の定、全員4段階目クラスについており、護衛らしき二人は戦闘職だ。

 白衣の男は『文官(オフィサー)』系のクラスを複数取得している。

 『文官(オフィサー)』と『職人(クラフター)』は、クラスを追加していく仕様だ。

 そのクラスの数から4段階目クラスだと思う。

 加えてSPバーがついている。

 想定通りではあるが、有効な対策がないので嬉しくない。

 

 「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ。今日は君から学園生活の近況を聞きたいと思ってね。どうだい2週間程生活してみて」

 

 「すごく良い感じです。特に入学前にクラスを取得させて貰ったから、ダンジョン面でアドバンテージがあって活躍できてる気がします」

 

 「うんうん。クラスによる能力補正は大きいよね。見た目からして太ってて運動できなさそうなデブや、逆に筋肉が全然ついていないガリガリでも化け物みたいな身体能力を手に入れられる」

 

 「そうですね。ダンジョンのモンスターにも言えることですが、見た目で力量を計るのが難しいですよね。あっ、こういうのローファンタジーの漫画とかラノベとかでよくある鑑定スキルとかで相手のステータスを見たりできないんですか?」

 

 何も知らないと装い、彼らの手札を探る。

 隠される可能性もあったが、あっさり答えてくれた。

 

 「あるにはあるよ。『職人(クラフター)』と『文官(オフィサー)』のスキルに、ダンジョンの宝箱からアイテムで得られるスキルなんかもあるね。話を戻すけど。君は今ダンジョンの何回層にいるんだい?」

 

 「3層に入ったばっかりです。段々とゴブリンが強くなってきたので危機感が湧いて来ました」

 

 「入学して3層まで行けてるなら十分だよ。期待を超えるとまでは行かないけど素直に喜べる実績だ」

 

 「それは良かったです。因みに期待に添えてなかったらどうなります?」

 

 「そうだねぇ...君が力の使い方を覚えられるよう秘密の訓練をつけたり、あとは何かしら発破をかける。君がなんでダンジョンを攻略できていない理由を考えてそれに対応する感じかな」

 

 「そうなんですね。強くなる訓練とかしてくれるなら自主的に受けたいくらいですけど」

 

 「残念だけどそれはできない。過度なサポートをすると、そのサポートが良かったからダンジョンで強くなれるという話になってしまう。そうなると研究の成果じゃないという話になってくるから、極力、君の力で伸し上がって貰わないといけない」

 

 彼らにも彼らの事情があるのだろう。

 勝手に研究対象にされている俺としては、そんなの知るかっと言いたい気持ちはあるが当然口には出さない。

 

 「わかりました。期待に添えるよう頑張ります」

 

 心にもないことを、できる限りの演技で答える。

 

 「ああ、是非とも励んでくれたまえ。君が真面目に取り組んでいるならこちらとしても不干渉で良くなる。お互いwin-winな関係だろう」

 

 確かにそれは俺にとってありがたい話だ。

 ついでに監視も外して欲しいのだが、それを言って俺の印象が悪くなると怖いので言えない。

 そもそも彼らを危険視する必要がないかもしれないのだが、用心するに越したことはないし、愛想よく流しておこう。 

 

 「はい。そうですね。好きにやらせて貰えるのはありがたいです」

  

 「それは良かった。夜分遅くに悪かったね。話は以上だよ」

 

 そう言ってくれたのでお礼を言って教室から出ていく。

 一教室分くらいの距離を歩いた後、ほっと息を吐き出した。

 警戒していた呼び出しが、何事も無く終わり安堵したので思わず溜息が零れてしまった。

 正直、拍子抜けという言葉が思い浮かぶくらいだがまだ見張られている可能性はゼロじゃない。

 だから油断しないよう改めて気を引き締める。

 

 真剣な表情を作り、歩きながら考える。

 彼らの話では今日の目的は俺の近況について雑談するだけということになる。

 だがそんな無駄な事はないだろう。

 では何故呼び出したのか?

 考えられるのは俺をあの場に呼び出すこと自体が目的だったと言うこと。

 その目的はなにか?

 最初に思い浮かんできたのはスキルもしくはアイテムで俺の能力を確認すること。

 次に俺を特定の場所から遠ざけること。

 その考えに至った時、心臓がドクンと鳴り、不安が過る。

 

 堪らず寮へと俺は走り出していた。

 校舎の中にも関わらず全力で走る。

 夜ということもあって、誰ともすれ違うことなく校舎を出てそのまま寮へ向かう。

 

 寮の近くになってくると、何人かの生徒とすれ違うようになってくる。

 その中には、クラスメイトの女子もいて声をかけてくるが、「ごめん。今急いでるから」と話を切り上げて寮を進む。

 

 やがて寮へと到着し、茜の部屋へと向かう。

 彼女の部屋へのドアノブを開くとアイナの姿が目に入った。

 だが安堵する間もなく、俺の視界は真っ暗になり意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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