※この作品はR-18です。

ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター   作:アイウ

2 / 20
2.入学

 いつも通りの朝のルーティンをこなした後、研究員に呼ばれ制服に着替える。

 そして研究室を出て寮へと向かい、俺が暮らすことになる寮を案内された。

 

 『灰鳩荘』それが俺が入寮する寮の名前だ。

 主人公は『黒鵜荘』に入寮していたが、違う寮に割り当てられている。

 まぁ、同じ寮だったとして彼がいるとは限らないが...

 さておき原作知識では、2人部屋に入寮することになりプライベートスペースの確保が難しい。

 それに盗聴器等が仕掛けられている可能性もあるため、なおのことだ。

 まぁ今までいた場所も、常に監視されているという意味では変わらない。

 

 気持ちを切り替えて、寮の中へ入っていく。

 相部屋の人よりも早く到着しているようで、部屋には誰もいない。

 自分の部屋まで入っていき、段ボールの中を荷解きする。

 といっても私物がなく、備え付けのクローゼットに衣類を置くだけなのでさほど時間がかからない。

 ベットに寝転がりながら、学園パンフレットを読みながら時間を過ごした。

 

 原作の小説では、記載がないような細かい説明から、原作通りの説明を頭にいれていくとワクワクしてくる。

 なにせ転生前に好きだった作品の世界にいるのだ。

 それにゲームとかも好きだったし、自分がどれだけ強くなれるか?強くなったら何をするのか?

 そんなことを妄想しているとワクワクしてくる。

 そんな時、部屋のドアがノックされる。

 相部屋の人かな?っと思いつつ、体を起こしつつ返事をする

 

 「はい。どうぞ~」

 

 返事の後ドアノブが開き、一人の男子が入ってくる。

 その男子の容姿は小柄ではあるが、童顔で整った顔をしていた。

 服装や髪型からして、さすがに間違えることはないが女装とかしたら美人になりそう。

 身長が低いことを差し引いても、総じてモテそうな容姿をしている。

 

 「初めまして、僕、翔って言います」

 

 「ああ、俺は蓮。よろしくな」

 

 「うん、よろしく」

 

 手をあげ自己紹介に応じる。

 第一印象からすると、当たりだと思った。

 変にオラついた奴だったらめんどくさいし、コミュ障だったら話があわず気まずい。

 

 「相部屋の人が、変な人だったらどうしようって思ってたけど安心したよ」

 

 「ああ、丁度俺も思ってたところだ。変な奴と一緒だったら部屋でもくつろげそうにないからな」

 

 「そうそう」

 

 そこから色々な話をした。

 趣味や、好きな映画や音楽、漫画、アニメの話、好きな俳優または女性のタイプの話等々。

 時々頃合いを見て、学園に対する印象や、この学校に来るきっかけ等についても話し合った。

 ちなみに記憶のない俺は、原作の主人公が学園に入る時の内容を参考に話した。

 特に話にくいところは、触れられたくないような風に話して、質問されるのを回避する。

 もちろん翔の方も話にくいところはあるだろう。

 その辺は気を使って、話を濁した部分は指摘しないようにした。

 原作知識から、この学園に入学する際に戸籍情報は消されていなかったことにされるのを知っている。

 つまり入学生の大半が、何らかの暗い過去を持っているはずなのだ。

 

 入学初日から、それをつついて関係悪化したら目もあてられないだろう。

 

 さておき雑談をした結果から、外の世界は俺がいた世界とそう大きな変化はないということが分かった。

 好きだった映画や音楽の話は通じるし、違和感なく会話ができていたと思う。

 ただ年号が令和ではなく平成だという話だったため、少なからず差異はあるようだが…

 

 その後、部屋でごろごろしたり、雑談したりして時間を潰していると、寮の歓迎会の時間になる。

 原作だと、ここで先輩から色々な話が聞けるという話だ。

 料理だけでなく酒も振舞われるということなので、ようは飲み会だろう。

 社会人まで飲み会を経験した俺の記憶を活かせる時が来た!

 先輩達を持ち上げて、色々な情報を持ち帰るぞ!

 

 っと意気込んだものの、俺は一つ見誤っていた。

 悲報 蓮君、お酒に弱すぎた件。

 弱すぎたっと言っても、ビールをグラス2杯くらいは飲める。

 だがペース配分を、間違えたのが問題だった

 

 今回、先輩達にお酌をし、どんどん酔わせて口を軽くする戦法で挑んだが、

 逆に先輩達にも注いで貰って飲み干すこと数回、俺はべろんべろんに酔っぱらって気付いたら洗面所で寝ていた。

 最初の1時間くらいは良かった。

 いろいろと情報も聞けたし、意識もはっきりしていた。

 だが後半に行くにつれ記憶がなくなり、歓迎会がどのように終わったか?ここまでどうやってきたのか?全く覚えがない。

 

 周りをきょろきょろ見渡しても誰もいない。

 外は暗く、まだ夜のようだが何時なのだろうか?

 二日酔いでガンガンする頭を抑え立ち上がる。

 ふらつく足取りで寮を歩いていると、女性の喘ぎ声がそこかしこから聞こえてくる。

 原作通りの緩すぎる性風紀に、転生したんだなっという実感が湧いてくるが今はそんなことよりベットで横になりたい。

 ふらついて歩くこと数分、後ろからトイレに行くのだろうか?

 先輩らしき人が部屋から出てきてこちらに話しかけて来た。

 

 「よう、蓮!復活したのか?」

 

 「はい。とはいえ頭がガンガンいってますが」

 

 「はは、いや~良い飲みっぷりだったぜ。入学早々あんなに飛ばすやつ初めてみたわ」

 

 「なんというか、お酒を甘くみていたようです。そういえば、僕やらかしてませんでしたか?」

 

 「ん?大丈夫だったと思うぞ、途中でトイレに言った後、帰ってこなかったけどな。心配した何人か見に行ったら洗面所にしがみ付いてたって聞いたぞ」

 

 「そうですか~。それなら安心しました」

 

 初日から食堂でゲロ吐いてたりしたら、印象最悪だっただろう。

 そうはならなかったようで安心した。

 

 「まぁ飲ませた俺らもわりぃが、ほどほどにな。そうだ。どうせなら一発やっていかないか?緩まんで俺 らが使った後だが」

 

 入学初日から誘ってくれるとは、上手いこと気に入られたと考えるべきか、単純に気の良い先輩なのだろうか?

 

 「お誘いありがとうございます。ただ正直二日酔いがヤバくて、早いとこ寝たいです」

 

 「はは、そかそか、それじゃお大事にな」

 

 先輩は、そう言ってポンポンと肩を叩いて、トイレの方に向かった。

 そう言えば名前何だったか、確認しておかないとな。

 自分の部屋につくと、時刻は2時を回っており、翔は眠っていた。

 

 起こさないよう、ゆっくりした足取りでベットに入ると直ぐに眠りについたのだった。

 

 

>>>

 

 「お~い、蓮!起きて」

 

 体が揺さぶられ、意識が覚醒していく。

 目を開けると、そこには可愛らしい顔があった。

 これは、古き良きエロゲで幼馴染ヒロインに起こされるという展開...

 

 だが男だ。

 

 なんらかの理由で男装して盛り込んでいる女子という展開も期待していた。

 

 だが男だ。

 

 昨日ツレしょんしたから間違いない。

 なんならちらっと物を見ている。

 

 だから男だ。

 

 そんな馬鹿なことを考えているとだんだんと思考がクリアになってくる。

 

 「はよ。翔」

 

 「おはよう蓮。でも早くしないと遅刻するぞ」

 

 「マジか?いま何時だ?」

 

 っと時計を見ると、8時少し前。

 

 「確かに不味いな。速攻で準備する。悪い、準備できたら先行ってくれ」

 

 「わかった。遅刻するなよ~」

 

 時間がないから、朝食は抜きだ。

 着替えて、身だしなみを整える。

 そうして少々遅めの登校になったが、まぁ許容範囲だろう。

 

 校舎に入り、1年乙《きのと》組の教室を目指す。

 分かりずらい表記だが、歴史のある学園で、全部で24クラスもあるから何か意図があるのかもしれない

 

 廊下を歩いていると自分のクラスより先に1年丙組の教室が目に入った。

 その教室は、もし同学年だった場合に主人公がいる教室だ。

 原作のストーリーは、主人公が入学した時点からの開始するため、同じ年であれば原作知識が生きるが、 主人公の動向に注意をしないといけない。

 逆に違う年であれば、行動の自由度が増す。

 どちらも一長一短だ。

 ただ原作ファンとしては、主人公の様子を見てみたいという気持ちがあるので同じ年の方が嬉しい。

 ハラハラドキドキと胸が高鳴るのを感じながら、目的の教室へ向かって歩く。

 幸い教室のドアは開けっ放しになっており、こっそり覗くことができるだろう。

 

 そしてとうとう、ドアの横まで来た時、首を動かしてチラッと確認する。

 なんの偶然か、彼もこちらを見ていた。

 視線が会った瞬間、体にゾクリと悪寒がはしる。

 背中が寒く感じ、その感覚とは反対に冷汗が流れてくる。

 

 「ッ」

 

 慌てて視線を逸らし、早足でクラスの横を通りすぎる。

 正直舐めていた。

 原作でも、彼とは視線を合わせるだけでモブの生徒達は顔を背けるという描写があったが、イメージが湧かず甘く考えていた。

 だが、一目見ただけで体が反応を示したのだ。

 あれと関わってはいけない。

 思考ではなく感覚で、身に染みて分かった。

 

 これはヤバい。

 原作で怖がるモブ、逃げ出すモブ、絡まれて失禁するモブ等、その反応の描写を読んで笑っていたのだが、自分がその立場となれば笑っていられない。

 

 足がまだ震えている。

 深呼吸をして、息を整える。

 一息ついて、今度はネガティブな考えが頭を過る。

 俺はただのモブの一人に過ぎないのではないか?

 転生なんてことを体感して、俺は特別なんだと心のそこで思っていた物が崩れていくのを感じる。

 

 主人公、船坂 叶馬は、一年生の中で最強だ。

 なんならストーリーの進行次第で、学園最強になる。

 作中で『雷神』系のクラスに就き、人間ではなく神様扱いをされている。

 だから叶馬に勝てるとは最初から思っていない。

 だがその相棒キャラの誠一は、初対面から会話をして同部屋で生活を始めたのだ。

 他にも静香や麻衣はある程度会話をしてグループを組んでいる。

 それなのに、距離があったのに目が合っただけで、怯え、視線をそらし、逃げてしまった。

 つまり、叶馬と会うまでは一般人だった彼らよりも臆病ということにならないか?

 

 情けない。

 先ほどまで感じていた、どこか浮かれていた感情が消え去り気持ちが沈む。

 立ち止まり、一度溜息をつく。

 その後、パンと頬を叩き、気合を入れる。

 突然の俺の行動に周囲から視線が集まるが気にしない。

 

 「頑張ろう」

 

 小声で呟く。

 打ちのめされた後でも、一つだけ言えることがある。

 俺はあの作品が好きだということだ。

 理屈はさっぱりだが、その作品の中にいる。

 どこまでできるか?どこまで強くなれるかわからない。

 だが全力で、力の限りを尽くして学園に挑んでやる。

 

 気合を入れながら自身の教室へと足を進める。

 全部は覚えていないが、大体の主要キャラは丙組だったから、クラス内にいるのはストーリーに関わらない生徒ばかりだろう。

 

 そんなことを考えつつ、教室へ入る。

 既に教室の中に入って、その光景に唖然とする。

 原作の設定では、女子には容姿審査があり、可愛い子しか入ってこれないという制限がある。

 小説だから文字だけで、それを読んでも大して思うことはなかった。

 まぁせいぜいこんな学校あったらな~ってことくらいだろう。

 だが実際にその光景を見てみると本当に可愛い子ばかりで、素晴らしいと思った。

 同時にここにいる大半の子が、男子生徒達、あるいは教師や鬼等の性処理に使われると思うと複雑な心 境だ。

 創作上の世界感ならともかく、俺はこの一人の人間として生きている現状、現実味を感じているからこそ、強姦、レイプが横行している世界感に抵抗感がある。

 そう、正に可哀想は抜けないの精神だ。

 っとそんなことを考えながら、一人の女子生徒が視界に入る。

 黒髪ロングヘアーで、整った顔でスタイルも良い。

 表情が柔らかく、近くの女子生徒と談笑しているその光景を見て、

 胸がドキリとした。

 俺の好みど真ん中だ。

 可愛い子ばかりのこの教室でもダントツ。すくなくとも俺の中では。

 端的に言うとめっちゃ好きなタイプの女の子だった。

 

 「お~い。蓮、もう余り時間がないぞ~」

 

 予想外の事で気を取られていると、翔から声で、意識が切り替わる。

 急いで自分の席へと向かい鞄を降ろす。

 

 席は彼女の隣ではなかったが、右側の列の4個前の席が彼女の席だ。

 

 「はは。蓮って分かりやすいね」

 

 「ふっ、なんのことだい?」

 

 「いや、今のは取り繕っても無理があるよ」

 

 「ああ。そうな。多分お前の想像通りだよ」

 

 「なんか以外だな~。モテそうな見た目してたから女の子にそんなに関心があるとは思わなかったよ。

それに昨日の歓迎会でも率先して馬鹿やっててさ体張るなーって」

 

 褒めつつさり気なくディスってくる。

 まぁ翔のいう通り、俺の転生先のこの体はモテると思う。

 前世の俺が嫉妬するくらいに顔が整ってるし、背も高いし、足も長い。

 転生直後の痩せすぎで、不健康そうな見た目も食事とリハビリのおかげで、それなりに筋肉もついている。

 だが、中身はこの世界にきたばかりの別人だ。

 この体で異性と話したことはないし、どういう反応をされるかもわからないから仕方ないだろう。

 

 「でもそうだよね。僕から見ても彼女はレベル高い。う~んこのクラスでトップかな。そうなると僕もねらっちゃおうかな?」

 

 「お前は、見た目のわりに結構あれだな...」

 

 純朴そうな見た目のわりに、女慣れし過ぎじゃなかろうか?

 やはり男だ。

 だが無意識化で、俺の表情が変化していたのだろう。

 

 「ごめん。ごめん。君と争う気はないよ。この学校ならそこまでして一人の女に拘る必要ないからね。

クラス外とか、上級生とかやれる子は沢山いるだろうから。あっあの子も可愛い。人によっては1番かも」

 

 そんな馬鹿話をしていると担任の教師が入ってきた。

 ここも原作の設定通り、20代の若々しい女性で胸も大きい教師が割り当てられているようだ。

 それに罠クラスのSSR系のクラスについていて、生徒や同僚からやられまくっているのだろう。

 いけない。いけない。思考がピンク寄りだ。

 

 簡単な挨拶のあと授業が始まると、内容は昨日読んだパンフレットの通りだった。

 午前中授業で、午後はダンジョンダイブのため、自由時間。

 それに授業をサボってもお咎めなしという状況。

 まぁ原作知識がある俺からすれば、学園側が、あえて頭の中煩悩だらけの生徒に仕立て、知恵のない家畜にしようとしているのを知っている。

 

 だからそうはならないようある程度は、ちゃんと勉強しようと思う。

 そして肝心の初ダンジョンダイブだが、2時限目以降に実施されるとのこと。

 かなり早いが、1学年に20を超えるクラスがあるのだ。

 1週間で全クラスの初ダンジョンダイブを済ませる予定のため、当然早いクラスもでてくるのだろう。

 教師の説明も、要点だけの説明であとはパンフレット等を自由に見てくださいとのことだった。

 

 そして説明が終わった後、自習時間になる。

 ダイブメンバーを集めるのも良し、パンフレット等を確認するのも良し、各々が目前に迫ったダンジョンダイブの準備をしてくださいという意図らしい。

 

 クラスメイト達が会話を始め、少しずつざわめきが大きくなっていく。

 俺は、息を吐き、覚悟を決めて席を立ち上がる。

 

 目的は、一目惚れした彼女に声をかけるためだ。

 俺の転生前の人生経験上、こういうのは早い方が良い。

 機会を伺ってたって成功するとは限らないし、相性の問題もあるから話してみないとわからない。

 話す相手としても認められないくらいダメなら、諦めて次の相手を探した方が良い。

 

 「あの、ちょっと良いかな?」

 

 「はい」

 

 「この後のダンジョン実習だけど。俺とパーティーを組んでくれませんか?」

 

 そんなに大きな声は出していないのに教室が静かになる。

 そりゃ、狭い教室でそんなことをすればそうなるだろう。

 

 それにこの学園で初回のダンジョンダイブ、死に戻りが確定していて記憶がなくなる前提の状況下で女子生徒が男子生徒に何をされるか、男子生徒達が何をするのかは先輩達に聞いている。

 女子寮でも同じような感じだろうから、彼女も警戒するだろう。

 だが俺には他の手段がないし、何より時間がない。

 もし彼女が俺にとって大切な人になるなら、ダンジョンでは死なせたくない。

 まだそこまでは思ってないが、大切な人になった時に既に、ダンジョンで死を経験していたらその後苦労するのがわかっている。

 だから付き合いたいと思った彼女を生還させるため、パーティーを組みたい。

 そもそも俺に生き残れるだけの力があるかわからないが、生き延びるために全力を尽くすつもりだし、戦闘に不向きとはいえ『職人』(クラフター)』のクラスを取得しているアドバンテージがある。

 時間をかけて信頼していくのが正攻法だと思うが、悠長にしていて他の男に取られたら絶対に後悔する。

 警戒されるの覚悟で、シンプルに、ストレートに誘った。

 

「えっ、と」

 

 いきなりの誘いに戸惑う彼女。

 名前も知らない人に誘われたらそうなるだろう。

 正直、見た目だけで女の子を誘ってる俺も自分をどうかと思う。

 だが、OKを出す可能性も十分にあると思っている。

 この世界、ひいてはこの学園では、女の子にとって理不尽な法則がいくつもある。

 端的に言うと、この学園では男子に頼らないとやっていけないということだ。

 ダンジョンで魔物を倒せば、位階が上がっていくが同時に性欲も高まっていく。

 つまりは強くなるためにセックスが必要で、逆に弱いままでいたとしても強者から強姦されるだけだ。

 だから例えば、彼女が打算的な考えをする子で、今の俺が頼りになりそうだと思ってくれればOKするだろうし、単純に見た目が好み、あるいは他の男子よりもマシと思って貰えればOKしてもらえる可能性がある。

 

 返事を迷っている彼女に畳かけるように、少しでも信頼してもらえるように言葉を重ねる。

 

 「この学校で横行してることは知っているけど、俺はそんなこと絶対にしない。何だったら他メンバーは女子に制限しても良い。生きて帰れるとは約束できないけど、生き残ることに全力を尽くすことを約束するよ」

 

 俺が思っていることを包み隠さず伝える。

 信じてくれるかわからない。

 最悪振られても良い。

 そうすることで他の男子へ警戒を強めるだろうし、他の男子が誘い辛く、他の男子の誘いを受けにくくなるだろう。

 

 「え~、良いな良いな~。イケメンだし守ってくれるなら良い条件じゃん。茜どうするの?」

 

 ここで近くで話を聞いていた女子生徒が加勢に入ってくれた。

 ついているぞ俺!

 

 「えっ、あっ、うん、そうだよね。...良い話なんだよね」

 

 彼女は、少しの間考えたあと、頷いて手を差し出してくれた。

 

 「...はい。よろしくお願いします」

 

 「ッ、ありがとう!めっちゃ嬉しい!」

 

 歓喜のあまり、雄たけびをあげそうになったがギリギリ抑えて握手に応じた。

 すべすべで細く華奢な手だ。

 おっと、思考がキモイ方向に行きそうだ。

 

 「ね~、ね~、そのパーティー私も入れてよ」

 

 そんなことを考えていたところ、先ほど援護してくれた女子がそう切り出した。

 俺と彼女は目を見合わせるが、彼女は俺の判断を聞こうとしているように見えたから考えを告げる。

 

 「俺としては構わない。君と一緒にいれるだけで十分だ。他のメンバーは好きにしてくれ」

 

 自分でもくさいセリフだと思いつつ、上がったテンションの勢いに任せて告げる。

 

 「はい。うん、じゃあ一緒に頑張ろう」

 

 彼女は、友達の願いを聞き入れ返事を返す。

 

 「それであの~」

 

 何かを言いづらそうにしている彼女の様子で、自分が名乗っていないことに気付いた。

 

 「ごめん。自己紹介がまだだったね。俺は蓮、よろしく」

 

 「はい。私は茜です。よろしくお願いします」

 

 「あたしは美咲ね」

 

 「茜さんに、美咲さんね。覚えたよ。他にもパーティーに入れたい人がいれば好きに誘ってね。俺は反対しないから」

 

 「あっ僕も僕も、僕もその仲間に入れてよ」

 

 そう言って割って入ってきたのは同室の翔だった。

 

 「お前はダメだ」

 

 「なんでさ」

 

 「見た目のわりに思考が下種だからだ」

 

 「ひどい!蓮だって同じだろ?」

 

 「いや、お前みたいに女の子に順位づけはしてない。俺のはただの一目惚れだ」

 

 その言葉を発した後、周囲の女子から黄色い声のようなものが聞こえた。

 だが今は目の前の男だ。

 

 「それって、結局容姿じゃん!」

 

 「っ、そうだけどまだ初日なんだ。見た目が好きだ。だから誘ったって別に悪くないだろ」

 

 「もっとこう、内面で選ぶとかあるよね」

 

 「内面を知るためにまずは、まともに話せるくらい距離を縮めないといけないだろ!それは誰だって同じだ。だから、その前段階は見た目が好きかどうか声をかけるのも仕方ないだろ」

 

 「それはそうだけど」

 

 「それに、さっきやり取りから雰囲気とか、仕草とかめっちゃ好きだってわかった。だから誘ったって良いだろ?」

 

 「そもそも蓮がさっきメンバーは彼女に任せるっていったじゃん。蓮に拒否権はないよ」

 

 「くっ」

 

 さすがにそれは反論できない。

 これはもう彼女の判断に任せるしかない。

 そう思って彼女の方を見た時、俯いて顔を隠し、手で顔を覆っている。

 よく見ると耳が赤くなっており恥ずかしさに耐えているようだった。

 そして周囲の生徒の様子も目に入ったが、こちらをニマニマとした顔で様子をみていたり目を合わせると教室の他の生徒も俺から顔を背けたり、顔を両手で覆ってないかに堪えるようにしたり、不満そうにこっちを睨んでくる等、様々だ。

 

 その光景を見て、冷や水をかけられたかのように冷静になり、今の状況を振り返る。

 

 不味い!やらかした!最悪さっきの約束がなくなるレベルの失態だ。

 ここはもうあれしかない。

 

 膝を突き、手を床につけ頭を下げる。

 いわゆる土下座だ。

 ここは多少引かれても精神誠意、最大源の謝罪をするしかない

 

 「すいませんでした!。はしゃぎすきました!」

 

 「だっ大丈夫だけど。ただもうあまり騒がないでほしいかな」

 

 「本当にごめん」

 

 起き上がり、クラスの様子を見るが凄く非難されているような感じがする。

 

 「それで、僕も一緒にダンジョンダイブ行ってもいいかな?」

 

 !?

 こいつ、この空気の中で誘えるなんてメンタル化け物か!?

 まともに見えたがヤバいやつなのかもしれない。

 

 「えっ、あ、ごっごめんなさい」

 

 「え~、なんで~男手が多いほうがいいこともあるでしょ?」

 

 そして断られてもごねる。

 そのイかれた度胸だけは尊敬する。

 

 結局、翔はOKを貰えずごねる翔を引っ張ってその場から離れた。

 

 席に座ると俺は、後ろから鉛筆か何かで後ろから刺される。

 

 「なんだよ?」

 

 「蓮、酷くない?友達なら入れてくれたっていいじゃんか」

 

 「友達なら、好きな人にアプローチしてるのわかるだろ。そっとしておいてくれ」

 

 「そんな友達って言葉を盾にして、ずるい」

 

 「先に使ったのは翔だろ。...それにお前なら良いって言ってくれる子いるだろ?」

 

 性格はともかく、見てくれは本当に良いと思う。

 

 「さっきあんな騒いでおいて、誘いに乗ってくれる人いると思う?」

 

 「あ~。まぁ頑張れ!」

 

 「くそっ、既に約束済ませたからって調子にのって~。

よし、こうなったらあることないこと話してお前を道連れでボッチにしてやる」

 

 「やめてくれ!いやマジで!」

 

 「声量を抑えて下さい!そこ」

 

 「「すいません!」」

 

 思わず声が大きくなっていたようで、自習時間とはいえ見かねたのか先生から注意を受けてしまった。

 新入生、主に男子がこの学園生活に慣れると、教師のヒエラルキーは低くなっていく。

 彼女達、女性教員は罠クラスのSSR系クラスについており、1日1回セックスしてないと死んだりっと、かなり理不尽なルールを課せられているからだ。

 原作知識でそれを知っているがゆえ、悪いことをしてしまったと罪悪感が湧いてくる。

 

 「もうやめてくれよ。怒られたじゃないか」

 

 「わかったよ」

 

 言葉通り、その後は俺から離れ、他の生徒に声をかけていった。

 

 その姿は眺めていると席が男子生徒の中で何人かに凄く睨まれてることがわかる。

 彼らも彼女を狙っていたのだろうか?

 気持ちはわからないでもないが、人間関係なんだから気があるなら早く行動しなかった方が悪いと思う。

 だが、それは俺の考えなので警戒は必要になるだろう。

 この学園の治安は良くない。

 警察みたいに取り締まる機関がなく、学園独自のルールで成り立ってっている事や、ダンジョンで生物を殺し何度も死に戻りして感覚が狂ってくるのだろうか?

 確実なことはわからないが、他の生徒の幸せや成功を妨害することなど日常茶飯事だろう。

 

 さすがに入学早々そういう行動を取るやつがいないと思いたいが、原作のモブの行動から想像すると可能性はないと言えない。

 とりあえずあまり刺激しないようにしておこう。

 

>>>

 

 その後、授業が終わるまでパンフレットを眺めていたが、あまり頭に入ってこなかった。

 そんなことよりも、この学園でどう生きていくかをひたすら考えていた。

 

 船坂 叶馬が、同学年に存在する。

 だからここからは、作品のストーリーどおりに進行していくのだろう。

 ここで問題になってくるのは俺がどう動くかだ?

 主人公、または主要キャラの仲間になり積極的に絡んでいく方針。

 原作を遵守するため、できるだけ主人公と距離を取る方針。

 大枠としてはこの2つがあるだろう。

 

 前提として俺は、基本的にストーリーを変える気はない。

 原作では一歩間違えば世界が崩壊するような展開や、別世界線では仲間が消えてしまうことが示唆されている。

 どの章でも、最終的に主人公達が何とかして悲しい展開にはなっていないが、俺がいることで変わってしまう可能性がある。

 そうなると何もせず、主人公、主要キャラとは関わらない方が良いだろう。

 

 だが重大な問題が一つある。

 それは原作が完結しておらず、俺にも彼らのひいてはこの学園の結末がわからないことだ。

 自分が把握している内容の後半あたりから、世界の終わりを匂わせる場面が時々挟まれている。

 そして最後に読んだ章の鬼が島レイドでは、簡単に主人公を跳ねのける程の強者や、同格以上のボスが存在し、その鬼の軍勢が学園に攻め入るという危機的状況で掲載が止まっている。

 だからハッピーエンドになるとは限らないのだ。

 

 俺もこの世界で生きてる以上は、ただ状況に流されるだけというのは嫌だ。

 だから俺は俺で、ストーリーが好転するように努力していこうと思う。

 

 まぁ俺が何をしても世界の修正力的な物で、強制的にストーリーをなぞる可能性があるし、

 逆に既に俺が存在する時点で、連鎖的に大きな差異が発生するかもしれない。

 

 だから俺がいくら考えても、正解なんてわかるはずもない。

 自分を信じて必要だと思ったことをやっていくしかない。

 

 「蓮君?お~い」

 

  視界に手が挿し込まれ、はっと思考が切り替わる。

 

 「美咲さん?どうかした?」

 

 「どうかしたって授業終わったよ」

 

 「マジか、気付かなかった」

 

 「もう、ぼ~っとし過ぎだって。」

 

 「ごめんごめん。それでその子は?」

 

  周りに茜さんともう一人女子生徒がいたので、聞いてみる。

 

 「こちら、穂乃果ちゃん。ダイブメンバーになりました」

 

 「おお、そっか。俺は蓮。よろしく!」

 

 「それでさ、休憩時間中にダンジョンダイブについて話したくて」

 

 「うん、いい考えだね」

 

  色々考えたが、ひとまずは初ダンジョンダイブ集中だ。

  どこまでできるか分らないが、最良の結果を目指そう。

  そう心に決めた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。