ハイスクールハックアンドスラッシュIF 偽りのギルドマスター 作:アイウ
薄暗い玄室の中を二人の足音だけがする。
茜さんは不安なのか、俺の袖をつまみながら隣を歩いている。
帰還まで約1時間程。
この間に茜さんと最低限、情報共有を済ませないと行けないし、できるだけモンスターを狩ってレベルを上げておきたい。
「長話をしてごめん。それに隠し事もしてたし、美咲さん達を助けられなかった。ごめん」
「そんなことない。助けて貰っておいて文句なんかないよ。それに気になる話もあったし。聞かない方が良かったかな?」
「いや、信頼した相手には共有したいと思ってたから問題ない。むしろ君には教えたい情報が沢山あるくらいだ。時間が惜しいから歩きながら話すよ」
「う、うん」
歩きながら、『
名称、『神崎 蓮』
種族、人間
属性、‐
階位、『10』+『17』
能力、『
拡張魂魄候補、『
『
『
『
『
『
『
『
『
『
存在強度、☆☆+☆+☆
「神殺し」「豊葦原学園壱年乙組男子生徒」
『
不必要にセットしない方が良いが、それは確実にモンスターを倒せるようになってからの方が良いだろう。
とりあえずゴーレムを召喚して先行させる。
召喚したゴーレムの姿は、巨人みたいな容貌から元の物質的な物に戻っていた。
おそらく精霊さんと取引で、『
巨人みたいな前の形態は、『
今のゴーレムは相対的に弱体化しているが、ただの『
ゴーレムは自身の半分のSPを使用して召喚するが、俺は『
1段階クラス二つ分の能力が上乗せされているため、2~3倍の性能になるからゴブリン程度なら問題なく倒せるはずだ。
このあたりの情報は、露店精霊さんから聞いたから間違いないだろう。
今は茜さんへの情報共有を優先するため、操作はオートモードで行動させる。
「まず急ぐ理由だけど、学園の運営組織からの監視を掻い潜るためなんだ。
彼らには色々と隠したいことがあって、その情報統制をするために校舎や寮に盗聴器や監視カメラを仕掛けて監視をしている。反対にダンジョンの中は、そういった機械の設置ができないからその心配がない。だから今、ダンジョンにいる内に説明しておきたいんだ」
「うん。そうなんだね。私も聞いておきたいから説明お願い」
茜さんは、疲れた様子ではあったが表情を引き締めて頷いた。
疲れは、俺と精霊さんの長い商談に付き合わせてしまったことが原因だと思うが、
ここからの行動は学園生活を上手く進めていくためのアドバンテージを作るチャンスだ。
多少無理してでもできる限りのことはしておきたい。
「OK、それで帰還するまでにやりたいことが3つある。一つ目は情報共有、二つ目はクラスチェンジができるレベルまでレベ上げ。三つ目は露店精霊から貰ったスキルを使う練習」
「私も一つ貰ったよね。たしか『
「うん。『
「自衛?」
「そう。この学園の可愛い子は、真っ先に先輩達から狙われると思うからその自衛」
「それができるなら嬉しいけど、でもスキルは基本的にダンジョンの中でしか使えないじゃないの?」
「いや、条件はあるけど使えるよ。そして俺達はその条件を満たしているから使えるんだ」
「その条件って?」
「ダンジョン内で1回も死なないこと。この情報自体は、一般入学の生徒達にも知っている人多いはずだ。なにせ華組という条件を満たしている集団がいるからね」
「つまりダンジョンの外でスキルを使わせないために、あえて新入生にダンジョンでの死に戻りを経験させるということですか?」
俺の話から推測して質問をする茜さん。
ちゃんと聞いてくれていることが分かるし、説明したいことが多すぎて、どういう順序で話すか悩んでいたから話易くて良い。
「それも理由の一つではあるだろうね。でも一番の理由は生贄としてだ。詳しい理由はわからないけど、この黄泉比良坂を安定させるために、人がダンジョンで死んだときに落ちる『
「なんというか...ずるいね」
その意見には同感だ。
一般入学の生徒達が、何もしらないのを良いことに、自分達の都合の良いように誘導する。
やられる方からすれば堪ったものじゃない
「ああ。だからといって彼らに正面から反抗するのは無理だ。戦力が違いすぎる。それなら彼らの目の届かないところで上手いことやってくしかない。...あっ、敵が出てきたからそっちに集中だ」
敵はゴブリンが3体。
俺のゴーレムに対し攻撃を仕掛けているが、ダメージは大してない。
フィードバックで痛みを感じるが、耐えれるレベルだ。
オートモードのゴーレムは、一番近くにいるゴブリンにパンチを放つ。
直撃したゴブリンは、吹っ飛んでいき壁に激突し動きを止めた。
続けてゴーレムは腕を伸ばして、ゴブリンを捕らえようとするが躱されてしまう。
だが飛び退いたところに、俺が追撃を加える。
「スマッシュ!」
戦士のスキルを発動し、全力でゴブリン頭を警棒で殴る。
敵の反応を待たず、盾で押し倒し体勢を崩したところに追撃をする。
最後のゴブリンが、後ろから襲いかかって来るが、そこをゴーレムが捕まえる。
周囲を確認すると、2体のゴブリンは消えていたため倒せたようだ。
ゴーレムの制御を切り替えて腕を操作し、ゴブリンを地面に抑えつける。
「茜さん。止めを刺せる?」
「あっ、うん。やらせて」
茜さんは、震えながらもプラスチックの警棒を両手で持ち、ゴブリンに叩き付けた。
手に伝わる感触や音が気持ち悪いのか、茜さんは「うっ...」と零してしまう
「大丈夫?」
「...まだ大丈夫」
そこから3度、茜さんが警棒を振るうとゴブリンが粒子となって消えた。
「お疲れ様。今ので凄くレベルが上がったよ。あと数体倒せばクラスチェンジレベルまで到達すると思う。」
「そうなの?っというかレベルが分かるの?」
「うん。『
「...凄く便利そうなスキルだね。大体の生徒は『
「うん。だから真っ先に精霊さんに要望したんだ。でも有用な分、学園側に見つかると不味いんだけどね」
「分かった。口に出さないよう気を付けるね」
「ありがとう。さて戦利品の回収をしよう。茜さん。『
ゴブリンの落とした短剣とクリスタルを拾って、茜さんにお願いする。
「はい。『
茜さんが唱えると、空中に真っ黒な丸い窓のようなものができる。
そこに短剣とクリスタル入れると、想定通りに収納することができた。
「ありがとう。そのスキルがあれば他の生徒達の何倍も効率よく戦利品回収ができるはずだ」
「うん。無事に使えて良かったよ」
いきなり使えるか不安だったようで安堵の息をついている。
「それで『空間収納アイテムボックス』を使った自衛方法だけど、襲ってきた人を収納するんだ。
そうすれば勝手に出てこれなくなる」
「なるほど。人も入るんだね」
「そう、中に人が入ると、酸素がないのが原因か、寒いのが原因か分らないけど、意識を保てないらしい」
「それって死ぬんじゃない?」
「...大丈夫だと思う。数時間程度なら俺の知る限りでは死んでなかったはずだ」
確かに不安だが、原作がそうなっていたのでそう信じるしかない。
「そうなんだ。私以外にも持っている人がいるの?」
俺が持っていないスキルだから、疑問に思って当然だ。
だがどのように答えるか悩んでしまう。
そもそも俺が話している内容は、新入生で華組でもない俺が知っているのがおかしい情報ばかりだ。
「あっ、ごめん。蓮君が答えたくないことなら話さなくていいよ」
俺が悩んでいると、茜さんは慌てて質問を取り下げようとする。
だが今後、彼女と行動を共にするなら知ってもらいたい内容がまだまだ沢山ある。
彼女とはずっと仲間で居たいと思うから。
「茜さん。俺が色々と知ってることが不思議だよね?それの理由を話そうと思う。ただ突拍子もない話だから信じられないかもしれないけど...」
「正直、凄く気になってた。でも話せる範囲で良いからね」
「助かるよ。それで俺がこの学園の内情を知っているのは未来で見てきたからだ」
さすがにこの世界が創作上の物語で、俺が読んでいたから知っている、なんて言われたら彼女は混乱するだろう。
だからこの世界でありえそうな内容かつ俺がこの先の物語を知っていることを納得してもらえるように考えて、未来から来たという設定に変えた。
嘘をつくことに罪悪感があるが、情報を伝え易くするためだと割り切る。
「未来、ですか?」
「そう、一年後のね。だからこの学園で一年過ごした記憶がある」
「それじゃあ、この先私達がどうなるか分かるの?」
「いや、それは分らない。俺の未来の記憶はこの体、蓮とは別の人間として生きていた時の物だ。それに色々と違うところがあるから平行世界って言えばいいのかな? そこで別の人として生きた記憶があるだけ。だから君や俺自身のことはあまりわからないんだ」
「...精霊と話していた異世界ていうのは、そのことだったんだね」
「うっ、うん。そうだよ」
表情を取り繕いつつ、肯定する。
茜さんは、精霊さんとのやり取りをちゃんと聞きいていたらしく、俺の説明と精霊さんとの会話から情報を繋ぎ合わせた上で確認を取っている。
内心、かなりドキッとした。
体の所有権の話は問題ないが、異世界から来たという話と、俺が即興で考え説明した平行世界という話方では、違和感が残ってしまうだろう。
そこを突かれると不味い。
だが幸いにも茜さんが気になったのは別のことだったようだ。
「そうなると前の君は別のクラスにいるの?」
首を振って否定する。
未来から来たことを語る以上、当然その回答は考えている。
「理由はわからないけど、入学初日に真っ先に確認しに行ったけどいなかった」
「そうなんだ...前の君は何て名前だったの?」
「司、佐藤 司っていう大した取柄のない普通の生徒だったよ」
(実際には社会人だが)
「じゃあ私、司君って呼んだ方が良いかな?」
少し揶揄うような表情で聞いてくる茜さん。
「いや、蓮で頼むよ。ここ数か月呼ばれたから慣れたし、司って呼ばれても何で?ってなるからね。
それで俺はこの学園の研究者達によって、おそらく魂的な物だけ召喚されてこの体に憑依させられていたんだ」
「...露店精霊が言ってた憑依や体の所有権の話に繋がるわけだね」
「そう。だから今喋っている俺は本当の俺じゃない。黙っててごめん」
「うん。気にしてないから大丈夫...その憑依したのはいつからですか?」
「う~ん。数えてないけど数か月は経っていると思う」
「それなら私にとっての蓮君は今の君だけだよ。だからそんなことで謝らないで」
真剣の表情で訴える茜さん。
その言葉で受け入れられたことに安堵を感じ、胸が軽くなった。
「ありがとう。茜さん」
「どういたしまして。それで蓮君はどんな未来を知ってるの?」
「ああ、年明けの1月に最高難易度のレイド世界『鬼ヶ島』から大量の鬼が学園を侵略してくるんだ。学園側は対抗できる戦力が足らず、ダンジョンの外だから死に戻りができないから多くの人が死んだんだと思う」
「それって...最終的にどうなるのかな?」
「ごめん。俺もわからないんだ。記憶がそこで途切れてしまって」
「あっ、ごめんなさい」
その言葉で俺が亡くなったと察したのか茜さんは謝ってくれるが、実際は嘘だから心が痛い。
それに危機感を持ってもらうために良い話だと思って語ったが、確実に起こるかどうかは分らない。
原作の鬼ヶ島編で、その可能性が示唆されていた内容だから起こる可能性は高いと思うが、示唆されている段階で原作の掲載は止まっている。
だからもし掲載が再開して、鬼ヶ島に潜っている主人公達が何かをして止めている可能性もある。
「いや、気にしないで。俺自身どんな死に方をしたかは覚えてないんだ」
「うん。それじゃあ蓮君は、その鬼達に対抗するために頑張ってるのかな?」
「それもあるかな。他にはこの学園で自由に過ごすために、とりあえずクラス内、同学年の上位になって立ち位置を良くしたいとか、あわよくば高ランクのクランにスカウトされて、良い生活がしたいとかそんなところ」
「それなら今、初ダイブで生き残れてるのはかなり順調だよね」
「ああ、生き残れただけじゃなく、反則級のスキルを貰えたんだ。これ以上ないと思うくらい上手く行ってる」
「なら良かった。でも全部蓮君のおかげだから、申し訳ないなって」
後ろめたい気持ちが出てしまったのか表情が曇る茜さん。
少し言葉に悩んでから返事をする。
「...今日のこの結果は、茜さんがいないと最高にはならなかったと思う。俺じゃ貰えなかったスキルがあるからね。...それでも引け目を感じるようだったら、この先も俺と一緒に居てくれ。それで俺が困った時は助けて欲しい」
「うん!、むしろ私からお願いしたいくらいだよ。蓮君は学園の誰よりも頼りになるし、信じられる人だって思う。今日の行動でそれを示してくれたから」
「ありがとう。それじゃあ改めてよろしく」
「はい。よろしくお願いします」
お互いに手を差し出し握手をした。
>>>
その後、次の玄室に出ると初めてゴブリン以外の敵に遭遇した。
といっても原作で最弱扱いされていたコボルトが3体。
コボルトを見るのは初めてだが、見たところ強そうな気配は感じず超越個体には見えない。
だが今日の遭遇率からして希少な気がしたので『
『
このスキルは、顕現させているモンスターをカードに戻す時に使う『抽象化アブストラクション』とは違い、対象を強制的にカードにさせる能力。
さすがに格下にしか通じない手で触れないといけない等、制約はあるがドロップ率の低いカードを簡単に入手できるのはチート級に強いスキルだと思う。
そんなスキルだが系統のクラスを極めたら使えるようになるらしく対価少な目で済んだ。
コボルトの動きを見極め、空きをついて右手を伸ばしコボルトの体に触れようとする。
しかしそのコボルトの脇から槍が飛んできて、避けるために体を逸らす。
そこを手前のコボルトが剣を振るい、さらに他のコボルトから追撃が迫る。
「ッ!!」
コボルトが振るう剣を腕で防ぎ辛うじて致命傷を避けるが、腕に刃が食い込み、腕にジーンとした痛みが伝わってくる。
慌ててゴーレムを間に呼び寄せ、俺は後ろに下がる。
こいつら、強い。
正直、ゴブリン以下の性能だと舐めていたが、少なくともゴブリンよりは強い。
なにより連携能力も高く、俺一人では分が悪い。
「蓮君!大丈夫?」
茜さんが心配の声をあげるが「大丈夫!」っと半分強がりの返事をした。
一度距離を取り、『
幸いコボルトの攻撃力は高くないようで、武器が刃物ということもあり硬いゴーレムと相性が良かった。
コボルトの攻撃を物ともせず、反撃に腕を振り回させる。
だがその攻撃は遅く、コボルトにあっさりと躱されてしまう。
それでも時間を稼げたことで傷は直せた。
感覚が麻痺してるが動かす分には問題ない。
再び武器を構えるが、コボルト達はゴーレムを無視してこちらに突っ込んでくる。
闇雲にゴーレムに攻撃し続けるような馬鹿ではないようだ。
盾持ちのコボルトが先頭を走り、その後ろに剣持ち、最後尾に槍持ちが続く。
俺は『スロット』を2枠とも『
稼いだ少しの時間でゴーレムがこちらに到着し、コボルト3体の中
盾持ちの突進を回避し、追撃にくる剣持ち、槍持ちの攻撃もギリギリで避ける央に割り込む。
攻撃は当たらないが上手く分断できた。
俺は一番近くのコボルトに迫り、その体に触れると同時に『
するとコボルトの姿が消え、手に一枚のカードが残る。
成功だ。
残されたコボルト達は、突如消えた仲間を思ってか遠吠えを上げ、俺の方に突進してくる。
それによってゴーレムから意識が逸れたようなので、死角からゴーレムの腕を伸ばして片方を捕まえた。
先ほどはその連携力の高さに苦労させられたが、1体ずつなら対処は簡単だ。
冷静に攻撃を避け、隙をついて『
こちらの問題なく成功した。
残りの1体は、ゴーレムの腕に掴まれたまま藻掻いているが抜け出せていない。
だから難なく近づき、『
カードにしてしまうと経験値が入らなくなってしまうが、あのコボルト達は強かったし、
連携が強味ならば、3体揃えない手はないだろう。
「ふっー」
戦闘が終わり、溜息をつく。
正直、危なかった。
もし奴らも連携攻撃から逃れられず、俺が死に戻りしたら、ゴーレムを消えるので全滅することになってただろう。
そうなれば今日作ることができたアドバンテージを台無しになっていただろう。
『
特殊個体に遭遇しただけで危うく死ぬところだったことを考えると、気を抜いていい場所じゃないと改めて反省する。
「お疲れ様。その手に持ってるのはモンスターカードですか?」
「そうだよ。今日貰った『
「おめでとう。最初押されてるように見えて心配したよ」
「心配かけてごめん。事前情報だとコボルトって最弱だって聞いてたから油断してた」
誤魔化すように苦笑いをしながら、次の話題を振る。
「あと数体も倒せば目標に届くから、ここからは無理せず慎重に行こう。丁度斥候役も手に入ったからね」
『
3枚のコボルトカードの内、槍持ちのコボルトが目の前に現れた。
「そっか、コボルトを使うんだね」
「ああ。モンスターカードの方も好感度みたいなのがあるから、あまり無茶な依頼はできないだけど、俺達が死に戻りすることになるんだったらそっちの方が良い。このコボルト結構足早かったから強敵に当たっても逃げれるかもしれないし」
そう言いながらコボルトのカードを確認する。
やはりただのコボルトではなく『コボルトソルジャー』という種族名になっており、存在強度が☆☆だった。位階は20なので一体くらいなら問題なく従わせられるはずだ。
なのでコボルトに斥候をお願いし先頭を歩かせ、その後をゴーレム、俺達の順で足を進めていく。
それから何度かゴブリンの群れと戦ったが、従えたコボルトは想像以上に優秀だった。
鼻が良いのか耳が良いのか分らないが、敵に見つかる前に索敵を済ませ、報告に来てくれる。
戦闘面でも、足の早い前衛として一撃離脱戦法で敵の陣形を崩してくれる。
そのおかげで敵を一体ずつ削ることが容易で、1.5倍くらい効率が早くなった。
数を減らして、茜さんに止めを任せる。結果、茜さん、俺の順でクラスチェンジが可能なレベルに到達した。
経験値取得に伴う興奮は、戦う前に
ゴブリンの群れと戦ってる時、数体倒したらレベルが上がったため、残りのゴブリンはスキルの実験体としてカードにすることに。
ドロップ品を回収して時計を見るとダイブ終了まであと10分程度。
経験値をため込み過ぎるのも辛いという話なので、探索はやめてスキル練習時間に当てることに。
俺が今日手に入れたスキルの中で試していないのは、『
『
説明からして反則級に強いが、人には覚えられる容量があるため制限がかかる。
それでも有用であることは変わらないが、問題は俺がその容量を見ることができないことだ。
『
容量を確認する能力を貰えば良かったが、そこはスキルの問題ではなく、その情報を閲覧するために必要な格というものが足りないらしい。
無いものねだりをしても始まらないため、手探りで情報を探していくしかない。
とは言え、できる限り保険はかけておきたい。
もし万が一、その容量とやらを超過するまたは使いきると死んでしまうなんてことがあったら一大事だ。
そこまではなくても、クラスチェンジができなくなるとか、他にデメリットがあるかも知れない。
だから俺自身や仲間で試したくはない。
そこで、先ほど捕まえたゴブリンだ。
召喚した彼らに色々と試して、問題点を確認しておこうと思ったのだ。
被験体として、2体程度では足りないと思うがやらないよりはマシだろう。
そしてもう一つのスキル『
これは他者(茜さん)からは見えないようだったので、ダンジョン外でも設定できると判断し、練習は後回しにした。
正直、『
さっそくゴブリンを召喚し、スキルを与えていく。
精霊さんが俺にしたように、ゴブリンの手を握りまずは『情報閲覧』を思い浮かべてスキル名を唱える。
すると俺の中から何かがゴブリンに流れていくのを感じる。
数十秒したところで、スキルが停止した。
「ゴブリン『情報閲覧』を使え!』
そう命令するが、傍から見たら使えているのかわからない。
カードの方を確認すると、能力欄にそれが追加されており、効果があることが分かる。
次に『技術伝授スキルインストール』を与えることができるか?を試す。
最初の感覚は同じだったが、10秒足らずでスキルの感覚が止まった。
結果を確認するためカードを見るが、そこに『能力拡張』の文字はなく、文字化けした謎のスキルが残っていた。
「これが、容量を超過した場合か?」
呟くが、当然答えが返ってくる訳もなく。
とりあえずゴブリンに指示を出し、動いて貰うが命令通りに動く。
容量を超えてスキルインストールをしても、死んだりとか精神的にそのゴブリンを元に戻し、もう一枚のゴブリンを出現させる。
今度は、アーキタイプのクラスが使えるスキルで、できるだけ有用そうなスキルを入れていくことにした。
『
最後にインストールしようとした『
カードの文字化けが残った。
精霊さんとのやり取りから想定はしていたが、やはりスキル毎で使用する容量はバラバラのようで、
精霊さんから貰ったスキルよりはだいぶ軽い。
それでも、入れられたスキルを持ってるだけでも相当強いゴブリンだ。
「ゴブリン、ゴーレム召喚だ」
ふと文字化けになったスキルを使わせるとどうなるか気になったので、インストールを失敗したスキルを発動させる。
ゴブリンは、ギャギャっと返事を返したが、何も起こらなかった。
今度は、『
すると効果が発動しゴブリンが粒子となってカードに吸い込まれていった。
『
次にもう一体のゴブリンのカードを手渡し、『
こちらも成功して、もう一体のゴブリンが現れる。
ちゃんと指示に従うかを確認するため、俺が召喚したゴブリンに指示を出し、そのゴブリンが指示を出す。
ギャァギャァっと何を話しているかは、分らないが意思の疎通が取れているようで指示通り動いてくれる。
「蓮君。そろそろ時間だよ」
茜さんの声で、ダイブ終了時間になったことに気付く。
「ごめん。集中してた。...とりあえずお疲れ様」
「うん。お疲れ様でした」
「なんだか、初ダイブなのに俺の都合で慌ただしくさせちゃったね」
「いいよ。私にもメリットがある話だったから、むしろありがとうだよ」
「帰ろう、現世に」
そう言って茜さんに手を差し出すと、彼女はその手を取ってコクンっと頷いた。