平成初期のオカルト好き女の子が騙されて開発される話 作:ワックス
土曜日の午後、蒸し暑い夏の陽射しがアスファルトを照りつけていた。
綾子はみゆきの後について、駅から徒歩で十五分ほどの新しいアパートに着いた。
二階の203号室。ドアからは遠い異国のような香りが漂ってきた。みゆきがインターフォンを鳴らすと、中から落ち着いた男性の声が返ってきた。
「どうぞ、入って」
部屋に入った瞬間、線香とお香の混じったような少し甘く、それでいてスパイスのような匂いが鼻をくすぐった。薄暗い室内にはなにやら小瓶に入った液体や、型に流し込まれた蝋燭がテーブルの上に並べられており、テープレコーダーからは低くゆったりした音楽が流れている。
先生は大学生くらいの青年だった。
長めの黒髪は櫛で綺麗に下ろされ、黒のシャツに木製のペンダントを下げている。目は大きく、柔らかい笑みを浮かべていたが、どこか掴みどころがないように綾子には感じられた。
「星野さんの友達だね。話は聞いているよ、霧島綾子さん……うん、今日は二人とも施術してあげようか」
先生はそう言うと、部屋に椅子を並べた。まずみゆきが椅子に座り、セーラー服のブラウスを少し捲り上げ、お腹を露わにした。
綾子は少し驚きながらも、隣に座って見守った。
先生は綾子のすぐ後ろに立ち、手になにやら液体を垂らすと、彼女の下腹部に両手をそっと置いた。
「リラックスして。深呼吸して……」
ゆっくりと、手のひらで円を描くように擦り始める。腹は液体で濡れ、艶々と光り始めた。それで丸を描き終えると、最初は優しく、徐々に圧を加え、指の腹で押しながら滑らせていく。
反応はすぐに現れた。彼女の顔はすぐに赤く火照り、小走りしているときのように息が浅く早くなった。すると手はグッグッグッと腹を一定のリズムで押し始めた。
ハッハッハッハッと息も早くなり、顔が俯き加減となり、ぎゅうっと足を閉じていく。
「背を伸ばして足も閉じないで」と先生に言われ、無意識のうちに丸まっていた背を伸ばしたところで、手がぎゅうっと下腹部を押した。
すると「ふぅっっ……あっっーっ」と息が漏れた。
そのまま手はぎゅうぎゅうっと捏ねるように動き、彼女は必死でスカートを握りながら施術を受け入れた。そして最後にグッと強く長く押された瞬間、彼女は体を跳ねさせて震えるように呻き声をあげた。
ふうっと先生が大きく息をして「どうでしたか?」と尋ねると、彼女は「すっごかったです!」と喜んで言った。
「前よりずっと早く深いところまで気が巡るようになったね。流れもすっかり良くなった」
それを見ていた綾子は、明らかに異常なことだとわかっていた。しかし彼女には性感帯に対する知識が足りていなかった。彼女にとってエッチなこととは性器で行うものであり、乳房や口ならまだしも、腹部で達するなどということは想像もしていなかったのだ。
なので「じゃあ次は君だね」と言われたとき、彼女はつい受け入れてしまった。
「服の上からだから感じにくいだろうから、ゆっくり時間かけてやるね」
彼はそう言って、服の上から腹を撫で始めた。服の上から先ほどよりもゆっくりと、しっかりと円を描く。しかし全く性器や胸へは手を伸ばさないことに、彼女は少し安心していた。
するとトントントントンと押す工程に入ったあと、今度はユサユサと体を揺らされる。暫くそれが続くと手が離れた。
「今日はこれで終わりかな。どうだった? 綾子ちゃん」
「いやその……うーん」
さっきのみゆきのような大きな変化を感じられなかったが、それをストレートに言えず言葉を濁す。
「まあ初めてだからね。星野さんも最初はなかなか上手くいかなかったよ」
「そうですか…」
その後、特筆すべきことは起きず、男の用意したアイスティーを飲みながら軽く風水や気についての話をして終わりとなった。
綾子はみゆきの紹介とは言え初めて会う男性への警戒をしていたが、何事もなく帰れたことに少し安堵しつつ、また来週会う約束をスケジュール帳にメモした。
書くの久々だから誤字が沢山ありそう