アークナイツ:不本意姦短編集 作:片腕チェーンソー
じゅる、じゅるり、じゅぽ──
「ああ〜〜、一日蒸れた雌サルカズの臭いは染みるなぁ〜〜」
「……」
薄暗い部屋。水音が響くその部屋で、一人のペッローが大きな黒いブラジャーを顔に被せ、その臭いを嗅ぎながら恍惚とした表情をうかべる。
そんな彼の足元には、怜悧な表情を浮かべるバンシー──ナスティがひざまずき、彼の怒張した一物をその整った顔を歪ませながら、頬張り、吸い付いている。
「ああ、そろそろでますよ、主任……あ〜、おれは本当にツイてるぜ」
ペッローの男は、クルビアの三流ゴシップ誌の記者だった。彼にはライン生命の社員のような探求心も、マイレンダーの人間のような実務能力も持ち合わせていない。しかし、彼はただただ幸運で、そしてほんの少し賢しい男だった。プロペラパラダイスの取材において、ひょんなところから立ち入った区域でライン生命として隠しておくべき『木』を発見した彼は、それが政府などに見つかってはまずいものであると察し、しかしそれを活用して利益を上げることは自身の能力では叶わないことを悟り、より安易で、より低俗な利益を得ることを選択したのであった。
「おし、おし口すぼめ吸い上げろ。ああ、いいねぇ……まだ飲むなよ、へへ」
ぱしゃり、と男がもつカメラがナスティの顔をとらえる。ぱっと目元を隠す彼女の反射を無駄なことだと漢は笑う。
「くく、こっちはもうあんたの素っ裸からイキ顔までとりまくってんのに、けなげだねえ……あ、もう飲んでいいぜ」
男が言うやいなや、ナスティはごくりごくりとその濃い精液を飲み下していく。どろりとしたそれは、ナスティの食道までを犯さんとするかのようであり、彼女に著しい不快感を与えていく。目を閉じて、しかしその常の怜悧な表情は動かさないまま、なんとか飲み干したナスティは、男に目を合わせることもなく退出を促す。
「……もう気は済んだなら、早く帰るといい。君に仕事があるのかは知らないが、私にも仕事がある。」
彼女の部下でも聞いたことのないようなぞっとするほどに冷たい声を前にしても、男はにやにやと笑みを崩さない。彼は分かっているのだ、すでに上下関係が構築されていることが──
「おいおい、また言われねえと分からねえのか?こんな賢い頭してんだからそろそろ覚えてくれよ、なあ?」
がしりと男がナスティの頭を掴み、立ち上がらせる。傲岸なふるまいだがしかし、ナスティは抗えない。
「しゃぶったらそれで終わりなわけねえんだから、さっさと股開いてこっちむけ」
ぺっと吐かれたツバがナスティの顔に付着するも、彼女はぴくりとも表情を動かさない。ゆっくりとした表情でベッドの下のゴムを渡すと、男の指示通りにその大きな尻を向ける。
「ん〜、そんななんにも感じてませんよ、なんて面しても、ねえ。本当にあんたが合理に身を任せるってんなら、おれを気持ちよくさせるためにアンアン喘いで媚びてる方がさっさと済んで合理的だよなあ。なのにそうしてねえってことは、イヤなわけだろ?おれみてえな奴に媚びんのが。くく……そんな奴にライン生命で最も若い主任たるあんたが好き放題されてると思うとよお、こっちは興奮が止まらねえんだよ!」
ずう、と男がナスティにのしかかる。明らかに彼女を嘲弄したその発言は、確かに彼女の心を揺らすものであり、ナスティの顔が僅かに歪む。それを知ってか知らずか、男は彼女を押しつぶすかのように腰を動かし続け、それと同時に言葉を続けていく。
「いやあ、あんたのグラビアも最高だったぜ?過去最高の売り上げだっつー話。おれ的にはあのハミ毛がよかったと思ってるんだがよお」
男の要求は彼女の身体だけではない。当初は胸を揉む程度のことだったその要求は、いまでは身体を捧げるものにまでなっており、そしてそれに加えて男にナスティが利益を与えるためにグラビアを撮ることまで要求してきたのであった。直接的な金銭の利益ならばナスティに要求すればより多くの金銭を得られるものを、あえてグラビアを撮らせたのは、男がいつの間にか単に利益を得ることから、ナスティという若き俊英を汚すことに悦びを感じ始めていた証左であった。
同じ時間をライン生命の業務に当てれば何倍もの効用を得られるであろう女に水着をきせ、これまで露出の多い服すら着てこなかったであろう彼女にきわどい姿勢をとらせる。そして剃るのを禁止してこさせたことで毛の多い陰部を、自らの手でビキニをずらして撮影したときのナスティの表情──羞恥、怒り、これからを予期しての絶望──を思い出し、男の一物がさらに怒張する。
「というかあなたの方は大丈夫だったのか?ひひ、お硬い主任がいきなり三流誌でグラビアなんだ、びっくりしちまったんじゃねえのか?それとももともとオカズだった主任が脱いでくれて大喜びか?」
腕を掴み、強引なピストンを繰り返していた男の腰の動きが緩やかになり、その代わりにナスティの豊満な胸を揉みしだき、慣れた手つきで彼女の乳首を掻いていくと同時に、彼女の首筋を舐め回す。
「……サリアやミュルジスからは訝しまれたが、こちらのことは一任されている。広告のっ……一環といえば、この複雑な土地でのことだ……ある程度は頷かせた。それに、私の部下は君のような低俗な人間ばかりでは、ない……んっ」
「ふーん、そうかねえ、俺はあんたの部下がグラビア買ってるところもみたけどなあ……つーかナスティ主任だって気づいてんだろ?あんたの部下の目が変わったって」
「……んぐっ」
男から与えられた快感をこらえるも、反論の言葉ではなく喘ぎ声のみがこぼれ落ちていく。実際にナスティは男性社員からの服の内部を見透かすような下卑た視線と、女性社員からの僅かに見下すような視線を感じていたからである。
「ひひ、袋綴じがわりにあんたの部下に送ってやろうか?俺が撮ってきたあんたの秘蔵写真をよお。どれがいい?首輪つけて素っ裸でしょんべんしてるやつ?正座で口の中に俺の精液ためてるやつ?ああ、笑顔でマンコ開かせたやつとかもいいよなあ!」
「……やめろ」
「やめろ?」
「……やめて、ください」
「くく……ひひ!」
ナスティを服従させたことを再認識した男は、興奮を強めて、それに比例するかのように強く腰を打ち付けていく。懸命に声を殺すナスティの頭を掴み、その唇を奪うと、その口内をも蹂躙する。
まるで主従関係にあるかのような強引な一方的な行為は、男の優越感を満たしていくとともに、ナスティに確かな屈辱感を与えていく。
「おお、出すぞ!」
「ああっ──うぐっ──イく、ぐうっ!」
男が精を放つと同時に、ナスティもまた潮を吹き、快楽に飲まれていく。呪文を放つバンシーの口から絶頂を宣言させられることに、ナスティはこれまでをも汚されたような心地を抱かされる。
「ふいー、あ、催しちまったわ。」
「な、にを……?」
息も絶え絶えなナスティを仰向けにひっくり返すと、男はナスティも顔の前にその一物をつきだしていく。
「……やめろ」
「やめてくださいだろ?もう忘れちゃったのかな、ナスティちゃ〜ん」
観念して目を瞑るナスティの美しい顔に、単なる三流誌の記者に過ぎない男の尿が浴びせられていく。まぶたに、額に、鼻に、唇に、羽に。
あますところなく自身の尿を浴びせると、男はようやく腰を上げ、立ち去っていく。
「ひひ、やったやった。んじゃあおれはそろそろ帰るから、また明日も業務を頑張れよ、1人のクルビア国民として応援してるからよぉ」
ぱしゃり、とカメラで撮影され、男は去っていく。
取り残されたナスティは動く気力すらない。全身を苛む倦怠感と、嫌悪感。この関係が永遠に続くわけではないということはナスティも、そしてあの男もわかっている。しかし、それでも自身が飲み干し、搾り取った精液と尿は、彼女の身体に染み渡り、もはや拭い去ることのできない不可逆的なもののように彼女は感じてしまっていた。