アークナイツ:不本意姦短編集 作:片腕チェーンソー
どんよりとした雲が空を覆い、ひたひたと冷たい雨が街に降りしきる。いつも通りのひどく澱んだシラクーザの、さらに空気の澱んだ部屋の一室。
そこにウルピスフォーリア──かつてシラクーザで最も恐れられた麗しき殺し屋はいた。
もっとも。
もっともその周囲にいるのは、不幸にも彼女の標的になった者の血まみれの亡骸でも、それに怯えながら彼女の仕事を補助する部下でも、愛する家族でもなく、薄ら笑いを浮かべた男たちであったが。
「それじゃ、はじめて行きましょうかね〜、イングリッドさんの、[[rb:自己紹介 > ・・・・]]。こういうのが一番大事ですからねぇ……しっかり頼みますよ?」
薄く笑みを浮かべたままの男に、イングリッドは表情を一つも変えないまま、無言を貫いている。本来なら彼らの関係性は狩るものと狩られるもの、それだけのものであったがしかし、こと現状において、その関係性は逆転し、男たちにとってイングリッドはただの獲物、しかもただ喰らうための獲物ではなく、嬲って愉しむための獲物と化していた。
──リサの身柄が奪われた。
それを知ったのは、もはやイングリッドが直接的に挽回し難い状況になってからのことであった。イングリッドを恨む者は多く、そも手がかりはつかめない。そして慎重な犯人は、何が目的か、おそらくは直属の部下でもないであろうこの若い男たちを上司とした[[rb:仕事 > ・・]]を行うよう指示してきたのである。
男たちは場末のファミリーの面々であり、直接的にイングリッドと関わりがあるわけでなく、またそもそも彼女のことすら直接は知らないような若手の面々である。しかし、未だイングリッドが影をつかめぬ黒幕にたどり着くため、彼女はそんな彼らに従うことを余儀なくされていた──
部屋の中心で、彼女を収める映像機器が稼働を開始する。にたりと笑う下卑た男たちの視線を感じながらも、イングリッドは事前に読み込まされた台本通り、その口を動かしていく。
「イングリッド。昔はこの地で色々な仕事をしていたけれど、今日からここに出ることになった。」
視線はレンズの高さに合わせる。見下ろしも、見上げもしない。
「結婚していて、娘もいる……でも、締まりには自信があるよ、鍛えているからね」
間を置くでもなく続ける。
「身体も、この通りだ。平坦で、触り甲斐があるとは言えないね」
自分の胸元へ、一瞬だけ視線を落とす。声色は変わらない。
「それでも、指名を受けたら尽力させてもらう……プレイに制限はないよ、舐めろと言われればなんでも舐めるし、私の身体をどう使ってもらおうが構わない。」
数秒、沈黙。機器越しの若い男の促すかのような仕草に、内心で臍を噛みながら、思い出したように付け足す。
「……浮気淫売ババアをたくさん可愛がってくれ」
口元が、わずかに歪む。
「以上」
──撮影が止まる。
「はいオッケー。いやぁ、その顔で可愛がってぇ♡なんて言われちゃうとたまらんねぇ」
背後で笑い声が上がる。
安っぽい、作り物の拍手までついてきた。
「平坦でも使い道はいくらでもあるし、そういう子が好きって客はいくらでもいるからねえ」
かつり、と立ち上がると、イングリッドは振り返りもしないまま歩みはじめる。
「用件は終わったはずだ。退出しても構わないよね」
機材の脇を抜ける。
止めるなら止めればいい──その程度の歩調で。
「……あー、ちょっと待って」
にやり、と粘着質な欲望を込めた声がイングリッドにかけられる。本来なら無視か、機嫌が悪ければ叩きのめされうるようなそんな声に、しかし彼女は抗えず、歩みを止められる。
「仕事、今から始めてもらうことになってるから」
喜色満面といった男とは裏腹に、イングリッドの表情は色を失ったようなそれであり、感情をさとらせない。
「トップ指名ってやつ? 撮影スタッフ特典で優先取らせてもらったよ」
「たっぷり楽しもうな〜、イングリッド」
数秒、何も言わない。
「……そう」
短く、息を吐く。男たちの下卑た視線が突き刺さり、イングリッドは反吐がでそうな心持ちになる。彼女が言わされたそれが、決して言葉だけのものでなく、現実に迫り来ることへの嫌悪感を感じる。しかし、彼らにそしてこの先しばらくの間、愛する男でないろくでもないよいな連中に身体が貪られることがどうしようもないことであることも、彼女はすでに理解していた。
「好きにすればいいさ、羽虫に集われたところで、嘆くことなどありはしないからね」
告げるや否や、男たちは彼女に群がった。
「か……あ……」
むせ返るような性の匂い。その源たるイングリッドは、ひどく無様な姿となっていた。
「おいおい、あんだけ大口叩いておいてこれかよ、おばさん」
「まあまあ、旦那さんとしか経験がなかったんでしょう、むしろ感じやすくて良かったじゃないですか」
「羽虫の手マンが大好物なんだなぁ、おい?一分も持たなかったときのあの情けない面誰か撮ってるか?」
「フェラはヘッタクソだし、これからは毎朝練習させてやるからな」
潰れたカエルのような姿勢で仰向けとなり、息も絶え絶えな状態であると同時に、秘部には未だゴムが刺さっており、なかからは大量の精液が漏れ出ている。頭には自身の紫の下着が被せられており、口内にも中に精液が満たされた大量のゴムが詰め込まれている。直接身体にかけられた精液と卑猥な言葉や男性器が書かれた全身は、いかに酷い陵辱があったものかを伺わせる。
「んじゃ、俺らは先に戻るけど、今晩から仕事だから、たーっぷり励めよ、おばさん?」
ぱしゃぱしゃと、そんな彼女の醜態を撮影し、笑いものにしてから男たちは立ち去っていく。
イングリッドはそれからしばらくしてようやく常の息遣いを取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。
その状態は未だ悲惨なそれであったがしかし、彼女の目は常の怜悧さを取り戻していた。
※
イングリッドがシラクーザを出たのはもう随分と前のことである。当然、彼女のことを知らないファミリーの者も増えたし、なにより一般市民においては彼女のことなど知るよしもない者が大半であった。
しかし、娼館において重要なのは彼女が何者かではなく、いかに男の情欲を満たせるかであり─イングリッドの美貌は彼女から滲み出る底しれない恐ろしさを上回るものであった。
部屋に入ると、視線が値踏みを始める。
胸元、腰、顔の順だ。まだ若いが、おそらく通い慣れているのだろう。嬢を抱くことに慣れている素振りである。
「人妻なんだっけ? 旦那かわいそー」
笑い声。ずかずかと歩み寄り、我が物かのように乳首をつまみ、尻を撫で回す。
「へへ、ゴムさえつけりゃあNGなしなんだよな?」
「好きにするといいよ」
視線を逸らさずに続ける。
「そういう契約だからね」
「へへ、んじゃ、遠慮なく」
ねっとりと舐るかのようにイングリッドの唇を奪い、口内を蹂躙する。ひとしきりイングリッドとの濃厚なキスを楽しむと、男はイングリッドの秘部に指を入れ、丹念にほぐしていく。
手慣れた男の指つかいはあっさりと彼女の股を濡らすと、男は彼女を押し倒し、ゴムをつけた一物をゆっくりと挿入する。
「ん……くう……」
にやつく男の顔が不快だった。イングリッドが挿入に対して心理的抵抗があることを見透かすかのように、その反応を楽しんでいることが伝わってくる。
「……随分と趣味がいいんだね」
「なに、あんたは新人だろ?経験豊富か否かってのは、割とすぐに分かるもんだからな。それに、こういう楽しみ方をする客を満足させることも、これからのあんたの仕事なんだぜ?」
「……んく……んふう……」
ぬちゃり、と男が腰をつきだし、イングリッドへの挿入を深めていく。思わず声をあげる彼女をみて微笑んだ男は、イングリッドの唇を再び奪う。
「ん……えお……んあ……」
初対面の男との濃厚な交わりあい。ぴちゃりぴちゃりと響く水音に心を揺らされながら。イングリッドはゆっくりと目を閉じた。
──事後
「いやー、思ったより従順じゃん。なんか怖いイメージあったけど、締まりもいいし、またリピするわ」
服を着た男が、不遜な眼差しとともに評価を下す。
イングリッドはゆっくりと、喉の奥に残っているものを、飲み込む。
「……本日は、ご利用ありがとうございました」
三つ指ついての土下座。かつてのイングリッドにそんなことを強いることが出来た者はいなかった。しかしこの娼館の嬢としての当然の態度として、男は振り返ることもなく部屋を出ていく。
「またのご予約を、お待ちしています」
ぎこちない笑顔と、疲労。イングリッドに課せられている労働は一回限りのものではない。時間の大半を拘束する勤務時間は、彼女を消費せんとする悪意よりなるものであり、イングリッドの心を蝕んでいく。
「……問題ない」
そう自分に言い聞かせて、イングリッドは、次の客を待つ。
着実に与えられた職務をこなすイングリッドはしかし、その従順さから娼館を経営する男たちの増長を招き、他の嬢からは拒まれるような客まで率先して取らされるようになっていく。
※
ちゃぽ、じゅる、ちゅう、じゅるる──
「だからさ、女は“役割”を自覚しないとダメなんだよ」
中年太りしたいかにもうだつのあがらない男が、立ったまま語り続ける。
最近の女は楽をしたがる、女は男を立てるべきだ、生意気なことを言うべきじゃない──
聞くに耐えない浅はかな男尊女卑の思想を聞き流しながら、しかしイングリッドはそんな男の股に顔を埋め、その一物を口内でねぶりまわす。男はイングリッドの従順な様子に満足したのか、彼女の美しい髪をすき、僅かに口角をあげる。
「はは、いいぞ!そこで止まれ、俺と目を合わせろ……いいねえ、自分がどれだけ無様な顔をしていると思う?」
男の一物を最奥まで頬張り、口をすぼめた状態で制止させられたイングリッドは、唇をのばしたひどくみっともないひょっとこ顔で男と見つめ合う。
鏡などなくとも自分がどのような顔となっているかは把握できる以上、さすがのイングリッドとしても羞恥が芽生える。男の目には嗜虐心と愉悦、優越感が宿っており、そんな彼から目を外すことのできないイングリッドは、自らが男に隷属しているかのような心地さえ抱くがしかし、実際に今の彼女ははした金で買える娼婦であり、その時間において、男に仕えるものであった。
「ん〜、こんな淫らな親のもとに生まれた子が不憫でならんなぁ……そろそろ、出すぞ!」
どびゅ、びゅるるるるる──
男の欲情が極まると、頭を押さえつけて強引にイングリッドの喉奥に押し込まれた一物から精が放たれる。
「んご、んぐ──んあ、おえ」
「ふう……あの量を飲みきるとはとんだ淫売だなぁ?ま、男を気持ちよくさせている点では評価しておいてやるよ」
「……ありがとうございます」
※
「イングリッドの浮気おまんこを……いっぱい躾けてください」
「んー、なんかあんまし真心感じないなー。他の子ならもっと甘えて声出してくれるよ?」
仰向けに寝っ転がった上で、両足首を自分で掴み、足を開く──男に自身の秘部をむきだしにする極めて恥辱的な姿勢を取らされたうえで、さらにイングリッドは媚びることを強いられてた。
「もっと切ない声でさあ、チンポ欲しくてたまらないって声だしてよ。君みたいな女のことだし、こんな見せつけちゃったら、どうせ頭の中には僕のチンポしかないでしょ?」
そう言って腰を屈め、イングリッドの顔に自身の一物乗せる男に対し、彼女は脳内の罵詈雑言を押し殺したのち、ひとつ深呼吸をいれる。
(手すきの時間でここを経営する連中について調べてみたけど、リサとつながっている情報はでてこない。お世辞にも優秀とはいいがたい彼らのことだ、もう少したてばボロをだしてくれるはず──)
脳裏にリサの顔がよぎる。こんな自分と彼の間に出来た、もったいないような可憐な愛おしき娘。
(彼女を救う僅かな確率の上昇と、私の醜態。比較するまでもないことだね)
懸命な正当化と冷静な優先順位の定義によって、必死に羞恥心と屈辱を押し殺す。
再び息を深くすい、これまで出したこともないような声をあげる。
「イングリッドのぉ……チンポ欲しくてたまらない浮気おまんこを……い〜っぱい躾けてください♡」
「ぶっは、やればできんじゃんおばさん!んじゃ、ご褒美のチンポだぞ〜」
顔を僅かに赤くしたイングリッドに、男が覆いかぶさり、腰を上下させる。
「あー、めっちゃ気持ちいい!こんなん旦那にはもったいないな!ふんっ、おい!イングリッド、言えよ!僕のチンポのほうが気持ちいいって!言えよ!」
「ん……ぐっ、ん、それは……」
「はあ!?言えよ!店にクレームいれるぞ!こんなっこんなにヨガっておいて!事実をのべればイイんだよ!言え!」
乱雑なピストン。イングリッドのことを顧みる気もない男との行為は、当然ながらイングリッドにとって愛する夫との行為に比肩する余地のないものであったがしかし、彼女にとってもっとも重要なのは真実でも貞操でもないものであり──
「っ……気持ちいい!あなたの方が気持ちいいから!」
「そうだ!イングリッド!いいぞ!俺のイングリッド!ああ、イく──」
ゴム越しに叩きつけられる精液。イングリッドの中で発射されたそれは、決してイングリッドを孕ませるものでもなく、しかし彼女の精力を、果てしなく奪うものであった。
「……」
半ば放心状態にあるイングリッドだが、男の興奮は収まるところを知らず、彼女をその時間いっぱいにまで弄び続けた。
※
「これは……どういうことかな?」
「いやー、イングリッドさんすごい人気ですからねぇ〜」
「答えになっていないね」
「はは、そう怒んないでくださいよ」
へらへらと笑う男。普段は娼館の経営をする男に呼び出されたのは、すこし廃れた教会であった。
そしてイングリッドに渡されたのは、ほとんど布面積もなく透けているかのような、ただ性行為に使うためだけの安っぽいウェディングドレスであり──
「もちろんイングリッドさんは新規客もリピーターにさせる大人気娼婦ですけどぉ……イングリッドさんがうちで働いているってきいて、どうしても抱きたいっていう方が何人も連絡くださって、本当に人気者だったんですねえ、イングリッドさん」
くつくつと笑う男に、イングリッドは眉をひそめる。
(私のことを知っている、ね。そんな連中に弄ばれるのは癪以外の何物でもないけれど、いまさらだね。それよりもそこからリサを拉致した人間につながる可能性が出てきた分──)
「──結婚してもらおうと思います」
「……なんだって?」
「ですから、イングリッドさんにはここで、お客様と愛を誓いあい、結ばれてもらうことになるんですよ。ま、もちろんお客様とイングリッドさんなんで、対等な関係にはなりませんし、イングリッドさんには何人にもやってもらいますけどね」
「きみたちは……悪趣味だね」
イングリッドは表情を変えなかったがしかし、その両手はひどく握りしめられていた。
※
「……君か」
「おや、覚えていただけているとは光栄ですなぁ、イングリッドさん」
「もとより私が標的を討った以上衰退するだろうとは思っていたけど、こんなところにまでくるようになるなんて、君は想像以上に[[rb:優秀 > ・・]]なんだね」
「っ!いや、くく。ひどいなあイングリッドさん、いやイングリッド。今日からの旦那に向かって」
イングリッドの軽口に苛つき、しかしこれからのことを考えてすぐに気が晴れたのか、男──かつてイングリッドの暗殺を手引きし、ドンを死にいたらしめたものの、そこからファミリーを引き継ぎ立て直すことに失敗したドンという肩書だけの落伍者──はすぐににやけた顔に戻り、さすさすとイングリッドの胸を撫で回す。
すでにウェディングドレスに着替えさせられたイングリッドは男に一切の抵抗をせず、わずかに身じろぎをする。
「……ふふ、随分と躾けられたようですな、あのイングリッドが」
「やるならさっさとすればいいんじゃないかな……旦那様」
すでに割り切ったかのように振る舞うイングリッドをみて、再び笑みを深めた男は、イングリッドを連れて彼女を本来新婦が立つであろう場所に導くと、彼女を跪かせ、自身の一物を露わにする。
「くく、では読ませた通り……私に永遠の愛を誓ってくれるかな、私のイングリッド」
ぽんぽんとイングリッドの頭を撫でながら男は笑う。本体なら取引相手にすらならない二人。しかしこの場においてはイングリッドは彼に尽くさざるを得ず、そしてそれは極めて一方的な搾取の形であった。
(……)
不覚にも、イングリッドは想起しまいとしていた記憶を思い出す。
ここより遥か遠く、極東においてのある男との出会い、そしてあの美しき神社での誓い。
幸せな、彼女にとってこれ以上ないほどに幸せな記憶が目まぐるしく浮かんでは消え、そして──目の前にある男の一物が存在感をもって突きつけられる。それは思い出をも奪い去るものであるかのようで、イングリッドは内心で小さく、愛する男へ謝罪した。
「……愛しい旦那様、イングリッドはお会いしたときから跪き、旦那様に股を開きたくて仕方ありませんでした。どうかこの男に媚びるしかないような女を、旦那様が飽きられるまで存分に使い倒してください」
「……愛しています、結婚してください」
ちゅ、とイングリッドの唇が男の一物の先へとふれる。
「愛しています、ご寵愛をください」
ちゅ、と再びふれる。二人で笑い合った記憶がどこか虚ろになった気がした。
「愛しています、大好きです」
「愛しています、可愛がってください」
「愛しています、なんでもいたします」
ちゅ、ちゅ、とふれるたびに男の笑みは強くなり、それと同時にイングリッドが真に愛する男との思い出が色褪せていく。
「──愛しています、旦那様だけを愛します」
単なる言の葉。イングリッドが心から発するものではなく、彼らがどれほど強いろうとも、その心の底にあるものまでは歪めることはできない。
しかし。しかしながら、健全な精神は健全な肉体に宿るように、外形的な行為もまた、行為者の内心に影響しうるものである。イングリッドが男に媚びへつらい、愛を囁き求める行為を行っていること自体は事実であり、その外形はイングリッドも知らず知らずのうちの彼女の心を蝕んでいく。
絶え間ない求愛と、教会に響く[[rb:キス > 隷属]]の音。
ぎしり、と。どこかで、イングリッドの大事ななにかがきしむ音がした。
「くく、ああ、いいぞイングリッド。それじゃあ尻をむけろ。お前が散々おねだりした愛をくれてやるよ」
「……はい、んぐっ──う、ぐう──」
わずかに歪んだイングリッドの顔を見て、ようやく満足したのか、男は怒張しきった一物をイングリッドの秘部にあてがっていく。興奮のままにぱんぱんと幾度も腰が打ち付けられ、男にとっては充足感に溢れた至福の、そしてイングリッドにはひどく長い時間を経て、男は彼女に[[rb:愛 > ・]]を放った。
「いやあ、お疲れ様でしたイングリッドさん。素晴らしい式でしたねえ」
「……はあ、ふう、それじゃあ、服を返してもらえるかな。戻らせてもらうよ」
「いやいや。なにをおっしゃいますかイングリッドさん。人気者だって言ったじゃないですか」
「……え?」
「このあとも今日は3件式がありますからねえ、今回みたいにたっぷり愛をこめてくださいね、旦那さんと同じくらいに……おっと、いまでは旦那様が2人いるからどちらか分からないんでしたねえ!」
くだらないと切り捨ててきた屈辱的業務において、イングリッドはそのとき始めて顔を青ざめさせた。
※
「えお、んま……もっと胸押し付けろよ、貧乳なんだからさぁ、考えな?」
「……」
いつも変わらぬ澱んだ部屋の中。イングリッドを飼う娼館を経営する一人──本来ならイングリッドの雑用係にもならないだろう地位も能力もない男が、剥き出しになった彼女の乳首にすいつき、これを舐め回す。乳首を吸わせる一方で男のあらわになった一物を手でしごくイングリッドは、心を無にしているかのように男の発言を無視するが、その様子に男の眉が少しあがる。
「ん〜俺たちには本当に反抗的だな、おばさん。リサちゃんにやってもらったほうがよかったか?」
「……お前」
「凄むねえ……でももういくら凄んでも俺等の娼婦であることに慣れちまったから、ちーっとも怖くねえんだ。裸踊りもチンポ当てクイズもやらせたし、そもそもあんなに旦那様〜♡とかやってるやつにビビるかって話。それにな、くく、あんたのお陰で俺たちも大分稼がせてもらってね、お褒めの言葉がてら……ほれ」
男が一枚の写真を取り出す。男の隣でどこか引きつった笑みを浮かべるのは確かに彼女が愛する娘であり──
「ッ!」
「おおっと落ち着けよ、情熱的だなぁ、おばさん!言っとくが俺をどうしようが彼女について詳しく教えてもらったわけじゃないし、いまだ上役様がどんな顔してるのかも、俺たちのファミリーだとドンでさえ知らねえよ、それに──まだ俺は彼女に何もしてねえしなぁ~」
流れるように男にまたがり、その首を絞め上げんとしていたイングリッドの動きが止まり、ゆっくりと元の姿勢に戻っていく。
「あんたを躾けるために頼み込んだらよ、[[rb:どこまで許してもらえると思う? > ・・・・・・・・・・・・・・・]]」
ぎり、と奥歯を噛みしめる音が響く。
しかしイングリッドはそれ以上の反応を示さず、すんと落ち着いた表情に戻ると、男の一物をその手で優しくつつみ込み、そして男の顔にぴたりと胸をよせ、その口元に乳首をまとわせる。
「くく!よしよし、よくできました。しかしイングリッドさんよお、これは相談なんだが、最近の客人たちはあんたともーっと[[rb:愛を育みたい > ・・・・・・]]って聞かなくてよお……もちろんあんたがちょっとでも嫌だってんなら断ってもらっても構わないんだぜ?さすがに伝説の殺し屋イングリッド様はそんなことできないよな?」
男の右手がイングリッドの下腹部を撫で回す。
安い脅し、軽薄な悪意。彼女が断ればそのかわりがどうなるかなど明らかになった状況での問いかけに、しかしイングリッドは抗う術を持たない。
「……そんなことはない。私も……彼らとの……子を欲しいと思っていたところだよ」
貼り付けた笑顔を見て、男の怒張が増していく。
イングリッドは僅かに疲弊を感じ、ゆっくりと目を閉じた。
※
「……ふむん」
シラクーザにおける、ある部屋。人生を賭けた乾坤一擲の行為に、入念な準備と天運によって勝利を掴みかけている男は、ゆっくりと背もたれに身を任せる。
男は優秀だった。若くしてファミリーの若頭となり、弱小だったファミリーを中堅規模にまで拡大させた。しかし惜しむらくは、男の能力は優秀止まりであり、その程度では覆せないものが中堅のファミリーと、たとえばそう、ヴェネツィアのような巨大なファミリーとの間にはあった。
何でもありで勢力伸長に成功した男のファミリーであったがしかし、それがヴェネツィアの怒りを買ったのか、はたまた単に邪魔だったのか。男のファミリーのドンはあっけなく、ヴェネツィアの美しき凶刃に倒れることとなる。
しかし。しかし偶然にもその凶刃によってドンが倒れるのを目撃した男が感じたのは憎悪でなく、畏怖と羨望だった。自身にはない圧倒的な才能と、それに比する美貌。いつしか男の執着は彼女に対する破壊、破滅への欲求へと変化する。
ドンの死後、持ち前の才を活かして別のファミリーでそれなりの勢力を築いた男は、その殺し屋──イングリッドがシラクーザを去ってなお、彼女の帰還を信じぬき、計画を磨き続けた。そして彼女の動向を知り、彼女の娘が男の住まう街を偶然にも訪れるという天運により、ついに大望を成就させたのである。
彼女を汚すのは自身である必要はない──否、中途半端に能のある自身などよりも、彼女のことすら知りもしない能のない連中にこそ、その美しさにつく泥が映えるのだと、そう考えて彼女の管理を任せた連中であったが、なかなかしかし、いい働きをする。
男はゆっくりと送られてきた書類という名の彼女の痴態に目を通し、映像資料を再生する。
『……んっ、ぐうっ、なかには、もうこどもがっ、ああっ、口でもお尻でもいいからっ、旦那様っ!愛しています♡、だから旦那、ああっ──』
僅かに膨らんだ腹を揺らし、必死に男に媚びながらもしかし、それを無碍にされて勢いよく腟内に射精され、情けなくも同時に達するイングリッド。かつて男が見た鋭利な刃とはほど遠いその無様な姿は、男を興奮させるに十分なものだった。
「出すぞ、ガキ」
机の下で必死に奉仕していた幼いヴァルポの頭を掴み、その剛直を喉に突き刺すと同時に一気に精を放つ。
「んがっ!?ご、きゅ、んぐ──ごきゅ、んぐ……んえあ」
「ふふ、随分と仕上がったものだな……そろそろお披露目といくかね」
突然の射精に鼻まで精液を逆流させるも、男の精液をすべて飲み干し、さらに飲み干した証しとして空となった口を見せつけるヴァルポに、男は満足げな表情を浮かべる。
ヴァルポの外観は、酷いものであった。
まだ少女といっていい彼女の瞳は虚ろであり、男の言葉にもまるで反応をしない。衣服も与えられず露わになっているその素肌には、卑猥なタトゥーが刻み込まれている。
『ぐ……くう……本日もイングリッドに旦那様のご寵愛を授けていただき、ありがとうございました』
映像のイングリッドと、男の眼前の少女。似通う二人の女性がともに醜態を晒している事実に、男の心は充足感で満たされる。
シラクーザに晴れ間が差すことが稀であるように、この街に囚われた哀れな母娘もまた、日の届かぬ澱んだ場所に沈みゆくのであった。