※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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エロ無


4.九月十九日『船は帆任せ帆は風任せ』 - Go with the flow

「ようやく見つけた! ちょっと、食蜂」

 

 それは、彼女が……大覇星祭も始まり、今年は選手宣誓などを辞退したために少しばかり暇な時間が出来たため、御坂美琴のクローンとかいう厄介力の塊みたいな少女を引き連れて競技の観戦巡りをしていた時のことである。

 今一番合いたくない人間が食蜂の姿を見つけてまっしぐらに突進してくるではないか。彼女は心の中で大きなため息を吐き、実際にも吐いた。

 

「なんなのかしらぁ~? 私、本来御坂さんとはそこまで仲良しじゃなかったはずだゾ☆」

「過去がそうでも今は違うんならそれでいいじゃない。……じゃなくて。ちょっと聞きたいことがあったのよね」

「……往来じゃできない話かしらぁ?」

「察しが良くて助かるわ。……っと、ああ、一緒に回ってる人がいたんだ。それは……ごめん」

 

 げんなりしている食蜂の隣。

 そこには、元の顔から大きく離れた……西洋人形を思わせる顔立ちの妹達(シスターズ)がいる。

 

「初めまして、御坂様。どうぞ私のことはお気になさらず。と、モリヤは最大限のお淑やかさでカーテシーを決めます」

「っ……。……食蜂、あんた、まさかとは思うけど」

「短絡的な御坂さんの思考なんて読むまでもないから当ててあげるけどぉ~、どーせこの子の口調がアナタの知る子達によく似ている、とか言うんでしょう?」

「やっぱり……アンタ、知ってるのね。……この子は?」

「ちょっと事情があって『アルモニ屋』の店長から預かっているのよぉ。日本語学習をどっかの馬鹿研究者が横流しした『学習装置(テスタメント)』で刷り込んだ(インストールした)らしくて、日本語を喋ろうとするとぜーんぶコレになるらしいわぁ」

「……それは、また、難儀ね」

「わかってくれたら何よりねぇ」

 

 という設定にしてある。間違っても「お姉様」「オリジナル」と呼ばないように「御坂様」という呼称に設定し、余計なことを喋りそうになると喉が震えなくなる、というところまでセットアップ済みだ。

 

「それで……ああその前に。周囲にいる人はこれで私達の会話を気に留めることも記憶することもできなくなったから、これで移動しなくていいわねぇ。で、何を聞きたいのかしらぁ?」

「……アンタが前に私と黒子をおびき寄せるために使ったヒントを思い返してみたのよ。『裏常盤台(ミッシングスクール)』は撒き餌だったにしても、『ミッシングノイズ』ってなんだったの?」

 

 思ったより自分のまいた種だったわぁ、と胸中で反省する食蜂。確かにあの時は御坂美琴をおびき寄せるために興味を引きそうな話題を出した。

 とはいえ……ここで食蜂から何か情報を与えるのもおかしな話である。これを聞けば目の前の少女も……そして安東も心中穏やかでいられなくなる。そうなれば待っているのは……と、彼女は腹部に手を当てた。

 

「なによ。まさか交換条件? ご飯でも奢れって言うの?」

「そういうことじゃないけど……ま、いいか、義理立てなんて。……簡単に言うとぉ」

「きゃ。と。モリヤは短い悲鳴を上げて連れ去られます」

「カエル顔のお医者さんに妹達(シスターズ)のことを聞けばその辺全て……待ちなさい、なんて?」

 

 二人がそちら……今まで西洋人形のような少女ことモリヤのいたところを見れば、彼女がいない。

 さらに遠く。真昼間から、そして学園都市にはあまりに似合わない黒いローブを羽織った人影が、モリヤを俵抱きにして走り去っていこうとしているのが見えた。

 気付けなかった。攫われた瞬間が目に入っていたはずなのに、()()()()()()()()()()()()()()攫われたという事実が認識できなかった。

 まるで……それこそ『心理掌握(メンタルアウト)』を受けた人間のように。

 

「嘘っ……!? 何やってんのよアンタ──私の前で誘拐とかできると思うんじゃ──」

 

 何か……逆鱗に触れるものがあったのだろう。

 御坂は磁力を用いてビル壁を駆けあがり、そこからすっ飛んで誘拐犯を追跡していく。

 ……残念ながら食蜂にそういう運動能力は無いので、起動するは万一のためにと持たせていた発信機の受信機だ。

 

「……けど、そもそもあの子を含めて周囲の人間は私達を認識できなかったはずなのに……これはちょっと気を付ける必要があるかしらぁ?」

 

 自分たちが気付けなかったこともそうだけど、なぜか下手人には『心理掌握(メンタルアウト)』が効果を為していなかった。それも懸念事項だ。

 行き当たりばったりにならないよう様々を考えながら、彼女は早歩き程度の速度で発信機の元へ向かう。

 食蜂操祈。美容には気を遣っているものの、運動はからっきしである。

 なのでスマートに……最短距離で彼女を救出しにいくことにした。できるだけ歩かないために。

 

 果たして。

 

「……追い詰めたと思って突撃したら、それは立体映像……いえ、投射映像みたいなもので、触れなくて……地面にはコレが落ちていたわ」

「私が持たせた発信機、ねぇ。……もしかしてちょっとマズい案件かしらぁ? 私の『心理掌握(メンタルアウト)』も上手く働いていなかったみたいだし……」

「……『ミッシングノイズ』とは関係ないって、言い切れる?」

「……。……とりあえず、さっき私が言ったことを実行してみるといいわぁ」

 

 さっき食蜂が言ったこと。

 それは、カエル顔の医者に連絡をしてみろ、という話だった。

 

 釈然としない思いを抱えながらも、御坂は件の病院に電話を掛ける。

 1コールもしないうちに取られた通話。その内容は。

 

 

 一時間後。

 御坂は自身の出る種目を心ここに非ずの状態でぶっちぎり1位で優勝しつつ、様々を確認し、食蜂の元へ戻ってきた。

 周囲の人間の心理を操作しようとする彼女の手を引き、路地裏へ入って。

 

「……ダメね。ミサカネットワークに繋げられる子に聞いてみたけど、話は本当みたい」

「まさに『不明信号(ミッシングノイズ)』でしょう?」

 

 曰く、ミサカネットワークに長期間繋がっておらず、カエル顔の医者でも所在の把握できていない個体が何人かいる、という話だった。

 その個体の製造ナンバーは、ミサカ10039号、ミサカ10054号、ミサカ11111号、ミサカ14216号、ミサカ18001号の五人。内ミサカ10039号は絶対能力進化(レベル6シフト)計画凍結以前から行方不明だったとのこと。

 行方不明。それが……もし。此度のように、何者かの手によって攫われている、となると。

 

「アンタの方はどうだったのよ。『アルモニ屋』 だっけ。あそこの店長さんに連絡入れたんでしょ」

警備員(アンチスキル)の知り合いに当たってみる、だそうよぉ」

「……そっか。そうよね」

「けど……大覇星祭期間中に警備員(アンチスキル)がどこまでできるか、というところが問題力高めよねえ。……せめて大まかな位置とか学区とかだけでも絞り込めたらいいのだけど……」

 

 手がかりが無い。どうして彼女が攫われたのかもわからない。

 八方塞がりに手をこまねいていると、食蜂の端末に通信があった。

 

「……ああ、店長ねえ。ちょっとごめんなさいねぇ」

 

 御坂に断りを入れ、通話を始める食蜂。

 

「何か進展があったかしらぁ?」

「"攫われた場所は第一四学区。攫った奴は『トライブ』って暗部。メンバーはスポンサーがいなくなったことで足切りを受けた『DA(ディシブナリー・アクション)』の元メンバー。頭を斬り落とせば烏合の衆になると思っていた俺が甘かったってところか。誘拐対象は妹達に関係ない、外国籍の生徒。親がいないことが条件。『DA』といえば置き去り(チャイルドエラー)に関連したあくどい組織さ。第一四学区に居を構えてんのはそういう理由かもな"」

「この短時間でよくそこまで調べられたわねぇ」

「"失せ人探しはできないことはないんでね。……『極楽(エデン)』と、そして早速のご活躍、『頭蓋内飾(インテリア)』の証言も辿ってみたが、暗闇の五月計画やら小児用能力教材開発所なんかのところとも関わっている可能性があるっぽいな。簡単に言えば親のいない外国籍の子供を使って好き放題しちゃおうぜ、みたいな奴らさ。まぁお前にゃ説明するまでもないだろうが"」

「……ええ、そうねぇ。……アジトの詳細位置はわかるかしらぁ?」

「"行くんならもうちっと武闘派のやつ連れていきな。お前さんだけじゃ流石に無理無理"」

「心配はありがたいのだけど……まぁ、一度預かるって言っちゃったしねえ。こういう能力を使っているからこそ、そういう責任力は持ちたいっていうか」

「"そうか。銃弾が関節内で粉砕している、程度の怪我なら俺でも治せる。健闘を祈る(In bocca al lupo)"」

 

 通話が切れると同時、ショートメッセージで座標が送られてくる。

 それをしっかり記憶して……彼女が顔を上げれば。

 

 真ん丸な目で食蜂を見つめる御坂の姿が。

 

「な……なによぉ」

「アンタの口から出たとは思えない殊勝な言葉の数々に驚いてたのよ。……へえ、言葉に責任を持つとか……言うじゃない、アンタ」

「御坂さんの中の私のイメージはどうなっているのかしらぁ~?」

「妖怪乳デカ心操り女」

「はぁ~っ!? ちょっと、私だってちゃんと怒るんだから」

 

 まで言って……食蜂の口は、御坂の指にて封じられた。

 

「今のアンタはかっこいい、って言ってんのよ。察しなさいよね、ったく」

「……」

 

 心に沸いてきた感情に取り消し線を引いて、彼女はその気持ちを外へ追いやった。

 そしてそれをかき消すように。

 

「第十四学区の座標……をもらいはしたけれどぉ、危険だから、って」

「そりゃそうでしょうね。でも警備員(アンチスキル)じゃ間に合わないかもしれない。そんでもって、アンタは戦闘向きの能力じゃない」

「……それは」

「あーあー落ち込まないの。私がくだらない闇なんか潰して来てやるって言ってるんだから。その代わり、この件が『不明信号(ミッシングノイズ)事件』と関係なかった場合、そっちの事件の解決はアンタにも手伝ってもらうから。いいわね」

「いいわね、って……あ、今の一瞬でハッキングしたのかしらぁ!? ちょっと、手癖が悪いってレベルじゃ」

「それと! 私が出るはずだった種目、アンタが代わりに出といて! 最下位だけは避けなさい、以上!!」

 

 とんでもない運動能力のもと三角飛びを行い、路地裏から屋根にまで抜けて走り去っていく御坂。

 話を聞かない力の権化だ。……それに、あんな。

 

「もう……。私には心に決めた人がいるんだから、入り込む隙間なんてないんだゾ☆」

 

 なんて言葉は誰にも聞かれない。

 

 ……言葉は聞かれなかったけれど。

 

「──よォ、第五位。直接話すのは初めましてだなァ」

「ひ──」

 

 底冷えするような声。だけど……"話に聞いていた荒れ具合"からは少し離れているように思える声だった。

 

「あ、一方通行(アクセラレータ)……?」

「知ってンなら話が早ェ。()()()()詳しいテメェのことだ、俺の境遇にも心当たりあンだろ?」

「……まぁ、あなたが関わっていた実験程度なら」

「ならそいつについては聞くな。質問をせずに、オレの問いかけにだけ答えやがれ」

 

 振り向けない。

 食蜂操祈とて無数の悪意、その温床にて育った少女だ。

 けれどこれは、文字通り質が違う。

 

「さっきぶっ飛ンでった第三位は何しに行った」

「……私の知り合いの子が……誘拐されたのよぉ。それを……解決しようとしてくれているわぁ」

「誘拐だァ? ……チッ、どいつもこいつもくだらねェことバッカ考えやがる。……そいつが誘拐された理由に心当たりは?」

「今掴んでいる情報だと──」

 

 特に隠すことでもないから、食蜂は全部を喋る。

 喋っていくうちに……特に置き去り(チャイルドエラー)や暗闇の五月計画のあたりで第一位の纏う気配が氷点下にまで落ちていくことを体感しながら。

 

「……面白れェ。良い度胸じゃねェか、なンだ、そりゃ。やってる奴は相当なバカだなァ。なんせこの俺に喧嘩売る気しかねェときた。むしろよく……ここまで、俺を怒らせるためだけの情報を集められたもンだ。差し向けられているよォな感覚にさえなるなァ、オイ」

「ここからは推測だけれど……彼女が使ったという日本語学習用『学習装置(テスタメント)』から個人情報を抜いて……彼女が狙われたと見るべきねぇ。けど、だとして私の『心理掌握(メンタルアウト)』が効かなかった理由がわからないのだけど……」

「知るか。能力の研鑽はそれこそ第三位みてェなオトモダチとやりやがれ。……俺みてェな()()()の殺気でビビり散らかすよォなケツの青いガキは、安全圏でじっとしてろ。今日中にはカタを付けてやるからよォ」

 

 そう言って……彼もまた高く跳躍し、すぐに姿が見えなくなる。

 

「任せてもいい……気はするけれど、あの二人に問題解決能力があるかというと微妙なところのような。むしろ事態と被害を大きくさせそうっていうかぁ。……でも、あの二人にはそもそも『心理掌握(メンタルアウト)』が利かないから、追いかけたところで、という部分はあるけれど……」

 

 逡巡は……一瞬。

 と、言うか。

 

「あの子の記憶領域の読み取りなんかされたら……赤っ恥もいいところだし。大覇星祭には代役を立てるとして、と」

 

 10039号の脳内には食蜂の痴態がこれでもかというほどに詰まっている。

 それを考えれば、行かないなんて言い出せるはずがなかった。

 

 

☆☆☆

 

 

 それとは別所で。

 

「もぉ~、あの人のことをちゃんと待ってなきゃダメなのに、ヨシカワったらどこ行っちゃったのー! って、ミサカはミサカは憤ってみる!」

「今日のとうまは全然かまってくれなくて退屈なんだよー! って、私は私は頬を膨らませてるかも!」

「ところであなたは誰? って、ミサカはミサカは今更なことを聞いてみたり!」

「そっちこそ誰なの? って、私はわたちがっ……私は聞き返してみるかも」

 

 という……微笑ましいやり取りを見ながら、ふむ、と顎に手を当てているのが俺である。

 

 ことをかいつまんで話すと。

 まず、従業員ズが赴いた出店でそれぞれヘルプを受けた。いたはずの人員がバックれたかなんかで人手が足りない、というのが四回続いたのだ。

 午後は自分で見て回るから行ってきな、と彼らを送り出した後、食蜂から受けていた10039号誘拐事件のことを思い出し、研究者用アカウントを使って『書庫(バンク)』にアクセス。従業員ズをヘルプに呼んだ学校・学年・クラスに外国籍の生徒がいないかをチェック。するとビンゴで、恐らくその子らも攫われたから人手が足りなくなったのだと思われる。

 ちょっと手にあまり過ぎる案件なので大覇星祭用の警備員(アンチスキル)の詰め所のテントに行って、「外国人の学生が俵抱きに抱えられていくのを見た」と通報。類似する催し物が無いと確認があった上で、同様の目撃証言が出ていた─出ていたのに行き渡っていなかった─ことが発覚。「上がキナ臭いじゃん」と言わせた上で、「任せてほしいじゃん」、「子供達は必ず助け出すから、あなたは大覇星祭を楽しんでほしいじゃん」とまで言ってもらえたのでそのままバックホーム。

 一人になったし言われた通り大覇星祭を楽しむ……なんてわけもなく、使い魔を放って第一四学区を偵察に向かわせた直後、迷子の迷子の最終信号と迷子の迷子の禁書目録に出会う、と。

 

 ……中年おっさんと幼女二人はそこそこに事案なんだよね。しかも禁書目録は外国人な見た目だし。

 学生IDになってないだろうから大丈夫だと思うけど……禁書目録まで攫われたら今度はイギリス清教のこわーい神父と聖人とそげぶが来て……まぁ食蜂だけ、よりかは解決できるのやもしれんが、ほぼそれ大戦争なんだよね。

 

「とりあえず、お前さんら」

「なぁに? って、ミサカはミサカは初めて会うおじさんに振り返ってみる!」

「この前ご飯奢ってくれた人だよね? って、私は私は期待の眼差しを向けてみるんだよ!」

「ああ、芸が無くてすまんが、それだ。人探して腹減っただろうし、なんか食おうぜ」

「やっぱり! とうま、この人良い人だよ……って。……そっか、今とうまいないんだった」

「ついでにあのツンツン頭の高校生の勇姿でも見るか。中継で、だけど」

 

 というのを考えつつ、『霊磁性流体』の使い魔で現場を見ようの巻。

 

 こいつらは物を食わせておけば大丈夫。

 ……これで俺が誘拐犯に間違われたりしたら本末転倒七転八倒七天七刀ダネ。

 

 

 ってなわけで、視点は上空、第一四学区に移る。

 食蜂はまだついていないのか、あるいは静かに事を進めているのか、騒ぎにはなっていない。

 使い魔を下水道に入れて逆流し、トイレから這い出る。臭いはつかないつるつるボディです。こいつには呪符が貼ってあるので同期を行えば。

 

「やっぱり……うん。流石は学園都市だねぇ、置き去り(チャイルドエラー)に等しい外国人だと、うん、誰も追ってこないんだ。うん」

「……」

「うん? どうしたんだい蛭魅。……監視カメラの異常? はぁ、まったく……『DA』も折角出資してあげているんだから、もう少しまともな設備にしてほしいよねぇ、うん」

 

 聞こえる声は……菱形幹比古か。

 成程……木原幻生の代わりと言うには小物だけど……ああいや、木原相似が動いているってことなのかな。

 

「……?」

「ん……蛭魅?」

 

 あー、何だっけ、この子。中身がローゼンタールの魔術師なんだっけ。

 だとすると……霊視ができる可能性があるな。ちょいマズだ。

 

 しかしドエロい恰好してんなオイ。

 触手……触手方面か。

 着手してみるのもありけりよりはべり。

 

 ま、ここは退散して……囚われの10039号がいる部屋に向かう。

 アレの顔と腹ン中にたっぷり『霊磁性流体』がいるんだから、位置を割り出せんわけがなくてですね。

 

 やがて辿り着いたのは、部屋の中に牢屋を設置しました、みたいな場所。

 ……攫ってきた子を……おーおー、ハダカにひん剥いちゃってまぁ。

 少女らは身を寄せ合って恐怖に怯えている。それを監視しているのが……このドデカ機械、と。

 確か渾沌だったかな、機体名は。『知覚迷彩(ステルスハイド)』の能力者の肉体を使っているだのなんだの。

 

 ローゼンタール家の疑似霊魂、ねぇ? 完全なるゴレムに人間の脳を使う時点でナンセンスだが、その後の当主がどんどん死霊術に染まっていくのもナンセンスだ。

 霊魂の存在証明自体もっと簡単な方法でできるし、例外を除外して死者蘇生は叶わない。正確に言うと、その世界では叶わない、だ。即ち同じ世界への転生は神の子だって成し得なかったわけだな。その例外というのも結構数があったりするし。

 そんで……完全なるゴレム。いやはやまったくわかっていない。こういうのは如何にヒトという素材を使わずにヒトの代替を作るか、が醍醐味だっていうのに。

 

「──だから、こいつは処分してあげよう。初めまして、ローゼンタール。そしてさようなら」

 

 機体にするりと入り込み、コックピットに入っていた死体を捕食する。

 コアを失った渾沌はステルスを解除して崩れ、動かなくなった。

 

 突然現れた巨大機械に悲鳴を上げる学生たち。

 さらにそこから透明な流体が現れたので、更なる悲鳴が上がる。

 

 それを聞き流し、牢屋の鍵穴に入ってそれぞれを開錠していけば。

 

「たす……けて、くれたの?」

「ダメよ……反抗的な態度を取ったら、殺されてしまう……」

「その姿はもしかしないでもマスターですか? と、モリヤは驚きを言葉にします」

 

 特に特別扱いはされていなかったらしい10039号。『霊磁性流体』を操れば自分で乗り越えることもできただろうに、人を傷つける能力使用禁止、の『アルモニ屋』ルールを守ったのかな。

 

 捕まっている少年少女らの手かせ足かせの錠も外してやれば、オッケー☆

 

 ……と、そこで、上空を旋回していた使い魔があり得ないものを見つける。

 ん。

 んー!? セロリマンと……ビリビリ!?

 

 あるぇ!? 食蜂が来るんじゃなかったの!?

 

「──反撃開始ですね。と、モリヤはたっぷり溜めた言葉を言い放ちます」

「反撃って……逃げないと! 殺されちゃう!」

「誰か、早く窓を開けて……って、こ、ここ、四階!? そんな!」

 

 騒ぐな騒ぐな。そういうことをしていると──。

 

「何事だ! 監視カメラの映像が止まったと報告が……。……貴様ら!!」

 

 あーあー言わんこっちゃない。騒いでるの関係なく来たっぽいけど。

 にゅるんと身体を伸ばし、携行銃の銃身内部に体を潜り込ませれば。

 

「この──だから外人なんか学園都市に入れるべきじゃ、ぎゃあ!?」

 

 暴発する銃。……これ以上長居する理由は無いな。10039号を攫って逃げるか。

 

 怪獣大決戦はな、被害の及ばない観客席で見るから楽しいんだ。

 誰だってオキシジェンデストロイヤーを間近で撃ちたくはないってそういうこと。

 それじゃあ10039号の腕を引っ張って──。

 

「待ってください。私はまだやるべきことを残しています。と、モリヤはマスターを必死に説得します」

 

 やり残したことぉ?

 ……まさかとは思うが。

 

「乗り掛かった舟です。モリヤはここにいる生徒たち以外にも連れ去られた生徒がいることをお知らせします」

 

 そいつらは怪獣(レベル5)が助けるからいーと思うけどなァ……。

 まぁ……付き合ってやるか。少しくらいは、だけどな。暇ではあるし。

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