※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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5.九月十九日『遠水近火を救わず』 - Feeling of helplessness.

 昼食時になり、大覇星祭もまたインターバルに入った。

 出店だけでなく普通の飲食店もオープンしている時間なのでどこも混雑の限りだけど、生徒たち以外は出店でたらふく食べているからそこまで並んだりなんだりはしていない印象だな。

 そしてここで。

 

「インデックス! 良かった、ようやく見つけた……と」

「む。とうま、どこ行ってたのかな!」

「どこって……十時から昼まではぶっ続けで種目に出るから小萌先生と一緒にいてくれって言っただろ」

「あ。……そういえば、そんなことも言われたような」

 

 つまるところ迷子ではなかったと。

 そげぶの視線が俺に向く。

 

「あんたは確か、いつぞやのひったくり事件の時の」

「ああ、世話になった。その時の借りを返した形になるかな」

「そんな、気にしなくていい……って、既にお世話になりまくった痕跡があるから何も言えない……」

 

 俺、禁書目録、最終信号の前のテーブル。

 ──そこに積み上げられるは、山のような紙皿。パック。

 

「こっちも人を待っている時間だったからな、大丈夫だ。ガキ連中の食い物にかかる出費なんて痛くも痒くもないし」

「いやいやいやどー見ても万を超えている気が……」

「それくらいが問題ないと言っている」

「こ……これが大人の余裕か……」

 

 無能力者(レベル0)にはほとんど援助金とか出ないだろうし、なんかバイトやるにしてもこいつは度々フラっと学園都市からいなくなるから続かないだろうし。

 体力はあるから日勤の仕事とかは向いてそうだけど、建築に能力使ってる現場とかに行ったらワンチャン全てを台無しにするしな……。あと不幸もヤバいか、建築現場は。

 金を稼ぐのに苦労する、か。今の段階ではまだまだだけど、今後イギリス清教とかお世話になりまくるわけだから援助金出してもいいくらいだと思うけどな。禁書目録の保護・監視料金もあるだろ。……まぁ勝手に首輪壊して勝手に手元に置いてる、くらいの認識なんだろうけどさ。

 

「……そっちの子は?」

「こいつも迷子だ」

「だから迷子じゃなくて、ヨシカワがどっかに行っちゃっただけだから! ってミサカはミサカは自己主張してみる!」

「いやだからそういうのを迷子って……。……待った、今なんて?」

「ヨシカワがどっかに行っちゃっただけだから、って、ミサカはミサカは同じことを二度言ってみる!」

「そこじゃないけどそっちでもいい。……御坂の妹……っていうか、だから……まさか」

「?」

 

 ふーむ。こいつに預けてしまうのもアリではあるが、こいつも別に午後からまだ競技があるだろうし……果たして今のフルパワーセロリマンとこいつを引き合わせて何が起こるのか、というのはよくわからん。史実の後期セロリマンこと上条厄介オタクマンなら問題は無かったんだけど、今はなぁ。

 

「あ、あのさ……じゃない、えーと、この子多分俺の知り合いの知り合いで……」

「それはもしかしなくとも、さっき障害物競争で爆走していた第三位のことか?」

「えっ……。ど、どうしてそれを」

「いやだってミサカはミサカは、って言ってるし。関連を見出さない方が無理だろ」

「確かに……」

 

 そして……その上で。

 

「が、こいつの探しているヨシカワって方には心当たりがあってな。午後からも忙しいだろうお前さんよりは流石に俺の方が都合がいい。なんでこのシスターだけ貰って帰ってもらえりゃいいよ。ここにある食い物だったものの八割はその子の中に収まっているわけだし」

「えー。もっと食べたいのに……」

「いやいやいやこれ以上迷惑をかけるとかないから! ……わかった、そういうことなら任せるよ……任せます」

「友達は同年代ばっかりか? いいさ、別に尊敬される大人でもない。タメでいいよ、高校生」

「……すみません。……って、その呼び方、どっかで」

「名前を聞いてないからな。こう呼ぶしかない」

「え゛……もしかして俺、前も名乗ってないか?」

「ああ、聞いていない。瑞折には自己紹介をしたのやもしれんが。……ああ、だからまぁ、こちらから自己紹介をしておくと、俺は安東という。安東気朔」

「本当にすみませんなにからなにまで……。……上条当麻といいます」

「私は禁書目録(インデックス)っていうんだよ!」

「ミサカは打ち止め(ラストオーダー)っていうって、ミサカはミサカは話に入ってみたり!」

 

 白々しいことなど重も承知だけど、こういうのは挟んでおかないと「え、自己紹介してないのに……」からおかしな疑念に繋がりかねないからなぁ。

 そしてもう一つ、白々しいことを聞かなければならない。

 

禁書目録(インデックス)……が、名前か? ……能力名、とかか?」

「あ、いやー……あはは……」

「私には十万三千さ、」

「どわあああ、あだ名ですあだ名! 俺も『幻想殺し(イマジンブレイカー)』とかって名乗ってて、こいつもそんな感じで……あはは」

「タメでいいと言っているだろうに。……しかし、なるほど。禁書目録(インデックス)は知的そうなあだ名だし、幻想殺し(イマジンブレイカー)はカッコイイあだ名だな」

 

 果たして今のこいつが『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という呼称を知っているのか、という疑問はあったが記憶喪失の件で入院した際に……ナース狙い……もとい冥途帰し(ヘブンキャンセラー)が教えたか、漏らしたかのどちらかだろうなぁ。

 元条さんなら『偽善遣い(フォックスワード)』の方を名乗る可能性もワンチャンあったが。

 

「そして、それで言うとお前さんもだが」

「えー? って、ミサカはミサカは首を傾げてみたり! あ、ラストオーダーっていうのはミサカがシリア」

「のわああ!! さ、さっき言った知り合いも『超電磁砲(レールガン)』ってあだ名だから、そういうのを真似したんだと思います!」

「いやそれは能力名だろう。……まぁ研究者やら教育者は生徒を能力名で呼ぶことも多いと聞くし、そういうことなのか? 個人的には嘆かわしく思うが」

 

 シリアルナンバー、も凡そ人間には使わない単語だもんなぁ。

 機密保持って大変。

 

「ふむ。おじさんにもそういうあだ名が欲しいところか、これは。……『食事代払(コンズマツィオーネ)』とかでもいいが」

「それを俺達がつけたらもう故意犯だって……」

「あれ、とうま、よくわかったね。コンズマツィオーネってイタリア語なのに」

「……この前の一件でローマについて勉強したばっかだからな」

「あなたも、よく見たら日本人的な顔立ちじゃないし、もしかしてイタリア人だったりするのかな?」

「ちょ、インデックスさん、流石に不躾が過ぎるって……」

「いや、ドイツ人だ。バーデン=ヴュルテンベルク州ってとこの生まれでな。随分前に帰化してそれっきりだが、英語より先にイタリア語が浮かぶのは流石にクセなのかね」

「あれお名前は安東さん……でした、ああ、だったよな?」

「タメがきついならその時々の気分で良いけどさ。ま、そこまで珍しくないと思うぞ。その国に合わせた名前を取得する、って行為は。俺の元の名前は……実家に帰って戸籍謄本を見ないと思い出せないくらい使ってないんだけど、一応ドイツドイツした名前だった気がする」

「濁点多目な感じの」

「そう、VとかZとか使いがちの」

 

 ……さて、話し込んだけど、結構時間が経ってしまったか。

 まだ手を付けていなかったたこ焼きと焼きそばのパックをそげぶに差し出す。

 

「冷めてはしまったが、これ、持っていきな。手は付けてない。腹減ってんだろ高校生」

「いやいやいやいや、インデックスに奢りまくってもらった挙句にそれは」

「今日は大覇星祭。学生の頑張りを大人が観戦し、応援する日だろう。お前さんの頑張りは見ていたんだ、午後も応援させてくれ。これは届かない声援の代わりってことで」

「要らないなら私が貰うんだよ!」

「お前さんは今十五人分くらいを平らげたばかりだろう……」

「ははは……インデックスの腹は底なしなんで……。……じゃあ、ありがたく貰います。お礼になるかはわからないけど、勝つんで、見ててください」

「おう。頑張れ」

 

 いやー。

 リドヴィアや歩く18禁が来ていない+科学側の闇はビリビリとセロリマンと便利リモコンが対処しているから、今のそげぶには憂いが無いんだろうな。

 だから学生らしく競技に打ち込める、と。良いことだ、それは。

 

「行くぞ、インデックス」

「ちぇー。……はーい。またね、ラストオーダー、アンドー。ご飯ありがとうだったんだよー!」

「はいよ。これからは上条の言いつけをしっかり聞くように」

「色々ありがとうございました!」

 

 なんて言って去っていく二人。

 ……さて。

 

「やけに大人しかったが、なんだ、お前さん」

「特に意味はないけど……あなたって能力者なのかな? って、ミサカはミサカは思ったことを口に出してみたり」

「違うが、どうして?」

「常に彼の右手に注意を払っていたから、何か能力を使用中で、彼に触られたくないのかな、なんて考えてみた! って、ミサカはミサカは自分の考察を垂れ流してみる!」

 

 ……。

 ……ふん、よく見ている。……いや、一万人の戦闘記録のおかげか?

 

 正解だ。『霊磁性流体』と俺の間にあるパスはしっかり上空に逃がしてはいるものの、俺自身にあの右手で触れられでもしたら簡単にパキンといってしまう。

 便利リモコンが到着する前に『霊磁性流体』との同調(リンク)を切るわけにはいかなかったから、万が一にでも彼が俺に触れてこないよう注意を払っていた。

 

「どうして能力を使用中だと上条に触れられたくないんだ?」

「それは……。……彼がそういう能力者なのかなってミサカはミサカは勝手な想像を言ってみたり」

 

 おや、素直に言わないのか。

 ……一応実験の内容だから一般人に漏らしちゃダメ、みたいな心理があるのか? シリアルナンバーの時点でダメな気もするが。

 叩けば埃も出るだろうが、同時に俺の埃も出るのでそれで納得しておこう。

 

 さて、じゃあそろそろ芳川桔梗に連絡する手段を考えるか。

 彼女が遺伝子系統の研究者であることは知っているんだけど……絶対能力進化実験の中止に伴い、研究職をやめているはずなんだよね。

 生徒じゃなく無職の大人を探す、ってことが学園都市においてどれほど難しいかって話でさ。

 

「あなたはヨシカワの知り合いなの? って、ミサカはミサカはさっきの話を思い出して聞いてみたり」

「直接の知り合いじゃあない。俺は航空開発系の研究者でね。テラフォーミングの議題で芳川桔梗の名前を聞くことがあっただけだ」

「それだけで……ミサカのいうヨシカワと結びつけられたの? って……ミサカはミサカは確信めいたことを聞いてみたり」

「……何を聞きたいんだ? 俺が実は誘拐犯なんじゃないか、とでも言いたいのか?」

「そうじゃなくって、……さっきの人との話の時、あなたはわざと何かについて知らないふりをして喋っていたように感じられたから、って、ミサカはミサカは曖昧な返事をしてみたり」

「何か、とは?」

 

 こいつは人格的には幼い少女なのだろうが、知識面はちゃんと妹達(シスターズ)なんだよなぁ。

 その上で妙に思慮深いというか、芯を食うような言葉を吐くというか。

 

「──それは俺が、」

警備員(アンチスキル)だ! ……って、あれ……通報があってきたんだが、外国人の女の子なんてどこにもいないじゃんよ」

 

 ……ん。

 そういう「前触れ」は大事にするか。

 

「さっきまで外国人の女の子は確かにいたけど、保護者が連れていったよ。……そして」

「通報者が通報されるとか、……はぁ、もう少し特徴を精査するべきだったか」

 

 じゃんじゃん。この人とは初対面時点から敬語無しなのでそのままの口調でいく。

 

「特徴が無い人、とはよく言われるが。……丁度いいや、黄泉川さん。この子迷子で」

「迷子……。外国人感はないから、普通の迷子か?」

「っぽい。ヨシカワって人が保護者みたいなんだけど、ずっと探している割に中々見つからなくて」

「芳川? ……それなら本当に丁度いいかも知れない。私の知り合いに芳川ってやつがいるから、聞いてみるじゃんよ」

 

 ……これで改めてセロリマンと最終信号がじゃんじゃんの庇護下に加わるのかね。

 最終信号は……こちらをじっと見ている。何かを見透かそうとしているのか。やめてくれ、探られて痛い腹しかないぞ、こっちは。

 

「そういえばそっちはどうにかなったかね。外国人誘拐事件の方は……」

「もう攫われたと思われる学区まで特定して、あとは制圧するだけの段階だから、気にしなくて大丈夫だ」

「へえ、さすが警備員(アンチスキル)。心強い」

 

 ま、詳細は語らんか。学生と違って守秘に力を入れていて何より。

 ……ふむ。

 

「でも……そうだな。よかったらこれ、貰ってくれ」

「ん? ……これは?」

「お守りってやつだ。聞く感じどうにも危険そうだし、俺の通報からあんたらに何かあったらちょっと寝ざめが悪い。あんたら警備員(アンチスキル)はそんなことまで気負う必要はないと言うかもしれないが、どうしてもこればっかりはな、性分で」

「……そういうことなら貰っておくじゃんよ。ありがとう」

 

 小さな包みに入ったビー玉のようなものをじゃんじゃんに渡す。

 芸が無くて申し訳ないけどアレも『霊磁性流体』である。ただ呪符を貼っていないので同調はできない。いざという時に炸裂させるか、千里眼の魔術で覗いている時だけしか使えん。

 菱形やDAの事件が今起きているってことは、スカベンジャー関連も前倒しになる可能性がある。じゃんじゃんは無能力者・大人の中でも極めて重傷を負いがちだからなー、多少の助けになればいいが。

 

「ほら、おいで。一緒に行こう」

「……わかった。って、ミサカはミサカは素直に従ってみる。……ごはんありがとう、って、ミサカはミサカはちゃんとお礼も言う!」

「ああ、無事を祈るよ。またな」

 

 まだ何か言いたげではあったけど、じゃんじゃんの手を煩わせるわけにはいかないと思ったのだろう。最終信号はそうして彼女に手を引かれ、ここを去っていった。

 

 後に残されたのは俺と──山のように積もった食い物のゴミ。

 これを見てリアクションの一つもしないとは、流石だぜ黄泉川愛穂。

 

 

 さて、先程の応対とは関係なく、並列に展開していた思考による内部情報を整理する。

 攫われた外国籍の生徒は合計二十一人。あの牢にいたのは十三人。つまり八人が今行方知れずである、と。

 また、彼女らを攫った「ゴーグルの男たち」が話していたことを整理すると、彼女らの中からより良い能力者を選出して『棺桶』に入れる、みたいな話をしていたらしい。生徒らはそれを殺すことだとイコールで結んでいたけれど、実際にはもう少し残酷だ。

 

「生体電気のスキャンによると、この壁の向こうに意識を失った子供と思われるサイズの人間が二人、手術台らしきものに寝かされています。それを囲むように大人が四人立っています。と、モリヤは許可された技術をフル活用してマスターに情報を伝えます」

「ふむ。……お前さん、『フレキシブル・フェロフルイド』を操る時の最大射程はどれくらいだっけ?」

「十メートルジャストです。と、モリヤは成長を見せつけ、ふふんと鼻を鳴らします」

「まぁそんなもんか。……良し、なら作戦はこうだ。『フレキシブル・フェロフルイド』を地面に這わせ、その四人の足元までやったら一気に拘束。口まで塞げ」

「……仮にも体内へ出入りするものを土足の往来のある床に這わせるのには抵抗があります。と、モリヤは若干嫌がりながら指示に従います」

「なんだ、気付いてないのか? そいつは自身への汚れや細菌の付着を許さない。でなけりゃ腸内なんてド汚い場所に入ったもんを他者の中に入れさせたりするかよ」

「それは素晴らしいこだわりですが、そもそもの前提の問題のような気もします。と、モリヤは既に配置につかせたことを報告しつつ苦言を呈します」

「つべこべ言わず──」

「──拘束、完了いたしました。ついでに廊下の監視カメラも発見しました。と、モリヤは自身の有能さを所有者に見せつけます」

 

 実際有能ではあるんだけどさ。

 監視カメラの方は俺が破壊しておくか。ビリビリが近くにいる時に電撃の放出はさせたくない。

 

「破壊を知らせるのならばこうも隠密に徹する必要はないのでは? と、モリヤは結局破壊する乱暴さに呆れながら言葉を発します」

「そんなこと言ったらさっきの機械の破壊で気付かれてるよ。研究者共の口を封じたのは音声認識で生徒が危険にさらされる可能性を排除したまでのこと」

「……成程。素晴らしいケアだったことを認め直します。と、モリヤは研究室の電子ロックを解除し、さらにドヤ顔になります」

「はいはいわかったわかった」

 

 スライドして開くドア。

 中では……気絶した研究者四人と、そして全裸の少女二人が手術台に完全拘束されていた。開脚状態。天井にはドリルやら手術道具やらが吊り下がっている。

 うーむ。(へけっ)。……いやいや、ドリルは流石にだろ。え、ドリルで犯すの? 天元突破がすぎない?

 

「攫われた八人の内の二人です。と、モリヤは研究者から白衣を奪い、少女二人の体にそれを被せます」

「いやまず拘束を解いてやれよ」

 

 学生にしてはかなり豊満な肉体を縛るベルトを破壊していく。

 意識が戻る気配は無い。薬品で寝かされている感じだな。

 

 足音。

 

「そ……その子達、生きてるの?」

「おや。ついてきたのですか? と、モリヤはあれほどまでに怯えていたあなたたちからは考えられない行動力に驚きを示しながら問いかけます」

「怖いことは……勿論怖いけど。……誰かを見捨てて自分だけ助かった、なんてことを考えていきていく後の人生の方が……怖かったから」

「充分に立派な動機だと思います。この方々はしっかり生きていますから、一緒に連れていってあげてください。と、モリヤは彼女らの安全を示します」

 

 さっきの……抵抗したら殺されてしまう、とか言っていた学生だ。彼女だけじゃなく、それなりの人数がついてきているらしい。

 知らん顔だから史実に出てきた奴じゃないと思うけど……流石は学園都市。ヒーローの素養が死ぬほどいるのはこの時点でそうってな、そりゃそうか。

 

「モリヤたちは先に進み、更なる学生の確保を目指します。と、モリヤは簡潔に報告を入れます。ただし、これ以上先にはついてこないでください。と、モリヤはあなたたちの身を案じて警告します」

「嫌よ! 私だって……戦わないと。そのための超能力でしょ! こういう時のための……」

「戦力の問題ではなく、大人数になると見つかりやすさが急激に上昇するため、ついてこないでくださいと懇願しています。と、モリヤはやれやれと肩を竦めながら事実を述べます」

 

 正しい。能力者が一人いるだけで戦力がダンチ、っていうのもわかるけど、戦闘行動に慣れていない素人なんか防犯ブザーの防犯できない版みたいなモンだ。

 加えて……今からここにはビリビリとセロリマンと便利リモコンがやってくるわけで。

 便利リモコンはまだしも、他二人の前で雑魚がうろちょろしてみろ、余計なトラウマ刺激するだけだろう。

 

「こうしている間にも残りの六人は危険に晒されているかもしれません。と、モリヤは決めきれないでいるあなたに事実を告げます」

「……わかった。……けど、ここにいるから……誰かを見つけたらここに連れかえって。そうしたら……全力で保護するから」

「承知しました。と、モリヤは簡潔に返事をし、先へ進みます」

 

 ……こういう手合いは口では納得しておきながらもついてくる、とかありそうだから怖いけど、まぁなんとかなんべ。

 なんとかならんかったらお前が悪いで終わりだしな。

 

 さて。

 さらに進んでいく。

 

「……今、何か聞こえたような」

「私には何も聞こえませんでしたが。と、モリヤは」

 

 直後、轟き散らかす全く同時の破砕音。遅れて響きだす警報。

 ……おいおい。射線上に人がいたらどーするつもりだったんだよ。

 

「流石に聞こえました。と、モリヤは言葉を訂正します」

「これは追加情報なんだが、どうにもここへ向かって第一位と第三位が向かってきていたらしい。食蜂じゃ心許ないとは思っていたが、これはこれで過剰戦力だよな」

「御坂様と第一位とは、どういう巡り会わせですか? と、モリヤはまかり間違っても共に行動するわけがない二人に疑問を浮かべます」

「その答えがこれだろう。別々の場所からの破壊攻撃。偶さかタイミングが重なっただけだろうが」

「素晴らしい偶然ですが、御坂様の方ならともかく、第一位と遭遇した場合、モリヤは殺されることを覚悟する必要があるのでしょうか」

「なんだ、死ぬのは嫌か?」

「難しい問いです。モリヤは既に既存の実験の材料ではなく、マスターに購入された道具です。そのため、道具として使い物にならなくなる、ということは確かに恐ろしいですが、死自体への恐怖は然程もありません」

「……お前の人生哲学はどうでもいいけど、第一位の前でマスターとか道具とか言ってくれるなよ。俺が死にかねん」

「どうしてですか? と、モリヤはよくわからない因果関係に首をひねります」

 

 こいつはミサカネットワークに接続していないからな。最終信号がセロリの庇護下にあることも知らないのだろう。

 ……っていうか、いや? ……ここで手放して、セロリに回収してもらえば万々歳じゃねえの? 時限爆弾でしかないし、『展示品(ディスプレイ)』は封環で充分だし。

 そうすれば……こいつがゲロりさえしなければ、俺の事もバレることなく……とは思ったが。

 やるなら便利リモコンと合流してこいつの記憶消してからだな。脳波スキャンとかされて全てが明るみに出たら便利リモコン共々お手上げだし。

 やーっぱ負債だよなー総合的に。

 

「前方手前の部屋に四人の子供がいます。大人の気配は感知できません。と、モリヤは自身の報告に疑問を浮かべながら言葉を紡ぎます」

「確かに……なんで放置されてんだ? ……子供の中に研究者がいるパターンか?」

「成程、良い着眼点です。と、モリヤは生体電気によるスキャンの限界を感じつつどうするかを所有者に委ねます」

「今回は俺が見てくるから、お前は周辺警戒な」

「承知しました。と、モリヤはそういえば最初からそうすればよかったのでは? という疑問を浮かべます」

「万一にでも俺が破壊されたらお前が孤立するだろ」

 

 ドアの隙間に入り込み、そして滲み出して室内へ。

 中では──。

 

「うっ、ぐ……が……」

「あっ、あっ、あっ……」

 

 三人の少年少女が……その身にそれぞれ搾精機、搾乳機、愛液吸引機をつけられ、体液を搾り尽くされていた。

 Oh……これも癖を感じるワネ……。

 

 残された一人はやはり研究者であるらしい少女。白衣を身に纏い、子供達から抽出される体液を見てしかめっ面をしている。

 やがて。

 

「やっぱり……本当に微かだけど、精液や膣分泌液のようなものにまでAIM拡散力場をかき乱すなにかがある……。逆に、薬で出るようにした母乳じゃダメ……。これ、本当の母乳だと違いがあるのかしら。……気になるわね」

 

 なんてことを呟いた。

 

 成程。つまりは「プロデュース」の延長線上みたいな実験か。能力者の最小単位は何か、って話。

 死体にして取り込む前に実験させてくれって懇願したかなんかかな?

 

 薬物で出るようにされた母乳を一生搾り取られている胸の大きな少女。様々な器具で性感を覚えさせられ絶頂の愛液をこれでもかと吸引されている胸の小さな少女。

 そして、顔をラバーマスクで封じられ、肛門をピストンで掘られ、乳首に電極クリップを繋げられ……そのペニスからどろどろと精液を搾り取られている少年。

 こーれは。

 

「……けど、菱形も『プロデュース』の奴らも杜撰よね。脳をクリスマスケーキみたいに分けただの、血液や髄液まで検証しただのと自慢げに語っていた割に、誰もが知っているこんなことは実験項目にすら入れていないんだもの。……男の精子と睾丸、女の卵子と母乳。そして子宮なんて、生命を生み出す器官にこそ能力は宿るのよ。それを……」

「成程それは興味深い」

「──、誰っ……。……え、ぅ? ……なに、これ。お腹が……いえ、膣が、熱い……?」

 

 立ち昇り──少女の足を伝い、膣と肛門、尿道へするりと侵入する。膣の方は細い隙間を縫って子宮内部へまで。

 

 呪符は外に出してあるけど、女体の中身なんて慣れたもの。すぐに下半身のほとんどを掌握する。

 そして、身体を震わせ、合成音声で喋ってやれば。

 

「お前も能力者なのだろう? 是非ともその子宮から俺を追い出してみてほしいものだ」

「ひぅ……ひ、い、いやぁ!? なに、お腹の中で……子宮の中から、こ、声が……嘘!?」

「お前の理論を言うなれば、ここ……卵管を通って卵巣にまで行けば、超能力の根源が見られる、ということだよな。ぜひ見せてくれ」

「あ、つ゛……!? し……子宮の中で、何かが動いて……ぼ、げぁ!?」

「安心しろ、肺から気道にかけては細い隙間を用意している。窒息の心配はない。──では、お邪魔しようか」

 

 子宮内のその小さな穴、卵管子宮口を通り、染み渡るようにして采部へ向かう。

 

「ぁ……あ、が、がが……」

「どうした、能力者。集中をしろよ。このままではお前の卵巣が得体の知れない液体に浸されてしまうぞ」

「ぅ……ぉ、()、のォ゛……出……出べべ(てけ)っ! あぐぅ!?」

 

 お。……念動力者か。

 身体がぐよんと外に押し出される……も、そんな勢いで出せば苦しいのは自分だろうに。

 そして残念、この体はそんな粗っぽい力で掴んだって全部は掻き出せん。感じた感じ、出力は異能力(レベル2)くらいかな。

 

「ぃ……ひ──」

 

 到達する。

 それを掴んで……と、行こうと思ったのだが。

 

「ぶ……ごっ、ぁ……」

 

 そこで泡を噴いて気絶する少女。このままだと流石に窒息の危険があるので色々ケアし、体内から出る。

 ショック耐性の無い研究者だな、まったく。

 

 ロックを解除する。

 

「随分とかかりましたね、と、モリヤは所有者の手際の悪さに苦言を呈し……つつ、部屋の中の惨状に言葉を失います」

「食蜂を思い出すか?」

「多少は。と、モリヤは所有者の意地悪な問いを真顔で返します」

 

 ドアが開いて聞こえるようになったのは、遠くの方で響き渡りまくる破砕音と……ガトリング砲の射撃音みたいなもの。

 どうやら『棺桶』は超能力者たちが相手してくれているらしいな。実際俺『相互置換(リプレイス)』みたいな空間移動能力鬼門だったからありがたい。『霊磁性流体』はアジリティがそんなにないのが欠点なんだよねー。

 

「彼女らを解放してあげましょう。と、モリヤは当然の提案を提示します」

「お前がやってやってくれ。俺は人間大のものを持ちあげるに向かん」

「承知しました。と、モリヤは少年少女から体液を搾り取る機械に手を掛けながら承服します」

 

 ……こういう時でも性教育は欠かさない。……どういうこと、って。

 少女からの苛烈な機械姦のあと、同い年からの事務的な介助、とか。

 この少年の性癖、ひん曲がりそうだな、って。うーむそれもまた性教育(エンリッチメント)!!

 

 さて、あと三人か。どこにいるのやら。

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