※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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7.九月十九日『巣食われる者に巣食いの手を』- It's just a different kind of bad.

 暗部組織の一つ、『トライブ』。

 警備員(アンチスキル)の秘密組織であった『DA』が出資を切られた後、いち早く設備・施設などを己たちの手中に納め、それを売り物にすることで自分たちの保身を図った四人。

 それが『トライブ』のメンバーだ。

 その彼らは、今。

 

「……ど……どうすればいいんだ、この状況」

「そりゃ……正義を執行する……んだよ」

「う……撃つのか? 俺達を守ってくれた……あの子ごと」

「……それは」

 

 大きく天上の破けた部屋。貫き、蔓延っているのは気色の悪い化け物。

 しかし、化け物は『トライブ』のメンバーに欠片も興味を示さない。

 

 彼らの眼前……触手が球体になるまで殺到している部分にいる少女に、助けてもらったのだ。

 

「……生体電気を操って……こんな、意思があるかどうかもわからない化け物の注意を、自分に向けて。……今も必死で戦っている子供に、銃を……向けろって?」

「今更日向面したって遅いだろ! 俺達にはもう後がない!」

「無制限に湧いて出てくる敵相手じゃどっちみち弾切れがオチだ。なら密集しているのを……って考えるのは、合理的ではあるんだけどさ」

「……今更『警備員(アンチスキル)』面ができないのはわかってっけど……つーか、この事態を引き起こしたのが俺達で……結局は利用されてただけだってわかってっけどさ。……どうせ死ぬなら、子供じゃなく、化け物に銃を向けた後に死にたいよ、俺は」

「お前ら……」

 

 リーダー格らしき男以外は、腹が決まっているらしかった。

 否、あるいは、リーダーもまた。

 

「はぁ……。わかったよ。……銃は最終手段だ。護身格闘用ナイフであの子に向かう触手を少しでも削れ。……んで、死にそうになったら仲間のいない方向に銃を乱射して、死ね。どうせ終身刑だ。なら、最期まで仲良くやろうぜ」

「そうこなくっちゃ!」

「俺達はトライブ、だもんな!」

 

 チャンッ、と。自分たちが携行する武器で乾杯のような仕草を取って。

 彼らは、再び死地へ向かう。

 

 

 時同じくして、というか眼前で。

 彼らを助けた少女こと、超能力者(レベル5)・御坂美琴は今──。

 

「(ちょ、立ち直ってくれたのは正直嬉しいけど今じゃないっていうか──!)」

 

 焦っていた。とても。

 

「(っ、またこの触手、へ……ヘンな所にっ!)」

 

 生体電気を用いて行ったぶっつけ本番のヘイト誘因。

 それ自体は成功したのだが……御坂に群がってきたあの「鋭い歯を持つ触手たち」はなぜか、御坂に噛みつくことなく、その身からネタネタとした新たな触手を出して……御坂の、アンナトコロやコンナトコロにペタペタ張り付いてきているのだ。

 まるで、「人間を食え」と命令されていたプログラムが、突然「快楽を貪れ」と命じ直されたかのように。

 何の冗談か、服のほとんどは剥がされてしまっている。その歯を攻撃に使わず、「余計なものをはぎ取る」ためだけに使っている。

 

 さらには。

 

「っ~~~!!」

 

 バヂヂッ、と電撃を逆流してくるはとてつもない快楽信号。

 触手そのものがとてつもない快楽を覚えているかのようなソレだが、そんなことあり得るとは思えないので、御坂への新しいアプローチであると考えられる。

 全てを『反射』できるだろう一方通行(アクセラレータ)や、感情・心理のスペシャリストたる食蜂には効果の無いアプローチだ。

 しかし、今の彼女は……あの日の責めをまだ忘れられていない。

 アンナトコロに張り付いてくる触手のザラザラとした感触は、アレを思い出させるし。

 肌にぴっとりと張り付く冷たい肉は、ゴム膜を彷彿とさせる。

 

 その上で。

 

「待っていろ、さっき助けてもらった分、必ず助けてやるからな!!」

「無責任だが、耐えてくれ! 出してやるから!」

 

 という外の声が聞こえる。

 今の恰好で外に出たら。

 

「(~~~っ、嘘!?)」

 

 またも走る快楽信号に……自らの股座で鳴った、ぷしゅ、という小さな水音に驚愕する御坂。

 イった。知らない男性が四人もいる部屋で、触手に包まれて。

 まるで、変態みたいに。

 

 ──さらに、追い打ちをかけるかのように。

 歯を持たない小さな小さな触手が──かぷ、と。

 御坂の陰核に吸い付いたではないか。

 

「(ひぅ……!?)」

 

 思い起こされる。極薄のゴム膜越しに受けた、蟲による愛撫が、その噛みつきが。

 また、今度は、さっきよりも大きく。

 

「助け……だぁぁああす!」

「ぐ、ぁあああ!?」

「リーダー!?」

「(い、今はいいから! 命に別状無さそうだし、早く逃げて! でないと……でないと、私!)」

 

 また──信号が逆流してくる。

 身構える彼女の身体に走ったのは。

 

「──え?」

 

☆☆☆

 

 あとはセロリマンを待つだけ。そう思っていたんだが。

 

「ガァアア──、ナン、っだ!?」

 

 極光と轟音。その二つを立てて……すぐ近くに天雷が落ちる。

 

「ワオ。……お姉さんの仕業じゃないよ?」

「わかってる。……オイオイ、こいつは」

 

 イサク=ローゼンタールの肉体、という名のクリトリス。

 その一部が盛り上がると同時、激しい激しい放電現象が始まる。

 

「や゛、や゛めろ゛っ! 気が狂う──気持ちよすぎて、おか゛し゛くだなる!!」

「安心しろ、元からおかしい。……しかし、そんなにつらいならパージすればいいだろう、その巨体」

「ああ、ああああ゛、ああ゛あ゛あ゛!! ッ!?」

 

 バチンと菱形蛭魅が弾けるように仰け反ると同時、放電現象の起こっていた場所が、これまたパチンと弾け飛んだ。

 中から出てきたのは──真白の肉体を持ち、頭部に角を生やした少女。

 激しい雷を纏い、その背には骨のような翼が生え揃っている。

 

「……なに、あれ。雷神トール?」

「戦闘狂なのは同じかもしれんが、違うだろうな。どう見ても科学側(あっち)だろう」

「どう見ても、ってほどじゃ、無いと思うけれど」

「ああ──くそ、くそ、くそくそくそ!! どいつもこいつも邪魔しやがって──四百年の悲願の成就だぞ!? それを、気色の悪い方法で潰して──」

「ねえ、あの子……お姉さんの気のせいじゃなければ、腕をこっちに向けてきていない? ……まるで、照準を合わせているかのように」

「言っておくが、俺は単純に耐えるだけタイプの結界は苦手だぞ。……だがまぁ、大丈夫だろう」

 

 なんせ。

 

「ああ、うざってぇ! だが、行動に何か縛りがあるわけじゃない……快楽を無視してコトを進めちまえば──あ?」

 

 下方から飛んできたるは、落雷。いや、飛雷とでも呼ぶべき雷撃の槍。

 普段の彼女が出しているものよりもずっとずっと高い威力のそれが……菱形蛭魅の体にクリーンヒットした。

 やはり、狙いはあっちか。

 

 ……しかし、なんで暴走しているんだろうか。

 木原幻生はいないのに。ウイルス以外の事で、どうやって『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)』に……って。

 まさか。……いやいや。

 ……まさかな?

 

 また雷撃。さらに雷撃。

 イサク=ローゼンタールが元凶だとわかっているのか、雷神からの連撃が止まらない。

 菱形蛭魅の死体そのものは別にクリトリスとは同化していないから、快楽は無いだろうが……放電がべちべち叩いているから途絶えるわけでもなし、か?

 

 と。

 そこへ。

 

「だァァァりゃァ!!」

 

 なんて豪快な咆哮と共に着弾したのは、我らがセロリマン……ではなく。

 

「──なんだなんだ、どの学年の競技かと思えば! こりゃすっげー根性なことになってんな!!」

 

 ……すごいパンチマン!?

 

「そこのアンタ、この状況に詳しかったりするか?」

「いいえ、お姉さんは外部の人間だから。……詳しいのは、この子」

「ん? ……スライム? そりゃまた、根性無ぇな」

「それはまた、スライム差別が過ぎようさ、削板軍覇」

「おわ喋った。……オレのこと知ってんのか?」

「まぁ、肩書きは超能力者(レベル5)らしく死ぬほどあるんだろうが、この世で最も根性のある男、というのが一番だろう」

「へえ。スライム界隈にまで知れ渡っているとは、流石はオレの根性! ……で? この状況は?」

「まず、今あそこで雷撃を食らいまくっているやつ。それが今回の騒動の元凶。んでそこにいる色気たっぷりな女は共犯者だったが、俺が懐柔した」

「共犯者ってのも根性がないが、懐柔ってのも根性無いな」

「んで、一生雷撃撃ってんのが、元凶率いる組織に誘拐された生徒たちを救いに来た超能力者(レベル5)が第三位、『超電磁砲(レールガン)』の御坂美琴。恐らくだが敵にウイルスみたいなもんをぶち込まれて暴走してる」

「暴走してるってのは根性無いが、誘拐された奴を助けに来たのは根性あるな!」

「あと、今日お前と一緒に選手宣誓をしていた第一位もいるが、そいつと元凶を一撃でどうにかできるやつは、超広範囲『相互置換(リプレイス)』で飛ばされたっきりだ」

「そりゃ根性ねえな! 踏ん張れば空間移動(テレポート)くらいどうにかなんだろ!!!」

 

 オリアナ=トムソンが若干引いている……というか、既に話が通じないことを見抜いているな、これは。

 

「ヘッ、第一位だかなんだか知らねえが、今朝見た時からひょろっちぃガキだと思ってたんだ。もっと筋肉をつけて根性を注入すれば!! すべては!! どうにかできる!!!」

「──そりゃ頼もしいじゃねェか。だッたら誘拐事件なンてものが起きる前に止めて見せろや第七位ィ」

「む!」

 

 着弾する。

 ──それは、ついに、これこそ!!

 

「よォ女ァ。さっきはよくもやってくれたなァ。日本海溝の底の底なンて場所は、流石の俺も行ったことがなかったから、多少は焦ったぜェ?」

「水も滴るイイ第一位、状況が変わっている。その女は俺が懐柔した。もう害が無い」

「あァ? ……オマエ、吐いている言葉の意味がわかってンのか? そいつはあの金髪女を殺しかけたンだぞ」

「そういえば、23代当主はいないのか。……すべてを『反射』、あるいは『ベクトル操作』することでなんとかなる可能性のあるお前と違って、あの子は耐えられずにぺしゃんこ、か?」

「フツーはそォなる。だが、『空間移動(テレポート)』ってのは『瞬間移動』とは違ェ。距離があればあるだけタイムラグが生じる。跳ばされたと理解した瞬間に自分の身にかかる11次元の視座を割り出して、折り畳まれた方向を導き出してやれば、どの角度にどの距離飛ばされるか、くらいは計算できる。それが海の中、しかも人間が生きられねェよォな深海であるとわかった段階であの女を反射の内側に入れ、水と水圧をフィルタリングすりゃどォとでもなる。……が、酸欠問題だけはどォしようもなかったンでな。無我夢中にすべてのベクトルを使って俺達を海上へ向けて射出している間に酸素が尽きた」

 

 言ってること激ヤバ子さんだけど、えっと、それで……そっから入れる保険があるって?

 

「そォしたらあの女、俺に抱き着いて、キス、なンてもンをしてきやがった。……人間が吸った空気の中に含まれる酸素は約21%。対し、吐く息には約16%~17%の酸素が残ってる。あの女がどこまで考えていたかってのはわからねェが、肺の中にため込ンでた酸素の全てを俺に押し付け、失神しやがったわけだ」

「そりゃ根性あるな!!」

「うるせェ。……女は来る途中で医者に預けてきた。だから、今はいねェ。……だからよォ、俺はそこの女をぐちゃぐちゃにしてやらねェと、あいつに顔向けできねェんだよ。なァ、わかるだろォ?」

「その理論はちと根性が無いな。そもそもお前が酸欠になった上で根性を見せれば良かっ、」

「うるせェってンだよ。俺の能力は、第七位、オマエみたいに考えなしで使えるもンじゃねェんだよ。人体の構造上酸欠になりゃ脳が回らなくなる。常ォ識だろォが」

「ならお前は、次、酸欠が理由で負けた時、同じ言い訳をするってことだな!! そりゃ根性無いぜ!!」

 

 あ、あのー?

 奇跡の生還もすごいですし、23代当主は凄いことをしたとは思いますけど、そこがバチバチになられると俺ら小市民は困るっていうかぁ。

 ま最悪歩くR18はお譲りしますのでぇ、まずはあの、イサク=ローゼンタールと雷神をどうにかしてもらうってことは……できたりしないですかね?

 

「……チッ、話にならねェ。……まァいい、その女の処理は後だ。……そういう経緯だから、このナイフこそ預かってきたが、あの女はいねェ。この化け物、オマエならどォにかできるのか」

「術者じゃないとあれを一撃で、ってのは無理だな。が、一応俺の頑張りがあって、今お前さんらが跳ばされてから今に至るまで、イサク=ローゼンタールは自身の計画を進められていない。つまり、あいつの言う完全にも、神にも、程遠いにも程がある位置にいる」

 

 一応隠さなきゃいけない話題、というのは理解しているのだろう。小声モードになったセロリマンに近付き、言葉を交わす。

 

「簡潔に話せ、つったろォが」

「──膨大ではあるが、尽きるって話だよ。完全だったら、もしくは見てくれだけでも神なんてものになっていたら、人間が何千年かけたって枯らすことのできないエネルギー量になっていたが……この場にはなんと攻撃系の超能力者(レベル5)が三人もいる。便利リモコンも含めると四人ではあるか」

「……ゴリ押しで削り切れ、ってか。……聞き忘れてたが、第三位は、ありゃなンだ」

「推測になるし……お前さんが怒るような内容だけど、聞く?」

「早く言え。勿体ぶるンじゃねェ」

「大前提として、俺は色々知っている。それを念頭に置いて……知っての通り妹達(シスターズ)ってのは御坂美琴のクローンだ。それらが構築するミサカネットワークもまた、御坂美琴の脳波や信号とほぼ同一の性質をしている」

「俺にその辺のことを言うのは釈迦に説法も良い所だろォが」

「今回、あのイサク=ローゼンタールという魔術師がここまで短時間での肥大化を果たしたのは、『一万パターンの死の記憶』を『学習装置(テスタメント)』で取り込んだから、っぽくてな」

 

 ブチィ、と。血管が切れたような音が聞こえた気がする。

 

「どうにも……そいつが、あの触手の生体電気を通じて、オリジナルの御坂美琴にも流れ込んだ……っぽい。恐らくそれが……御坂美琴の持っていた闇、あるいはトラウマを刺激し、ああなった、と」

「……そォ簡単に抜け出せるとはハナから思っちゃいないし、一生をかけたって……償える、なンてこた思ってねェが。……なンだ、どォしてこォ……見ず知らずの奴にまで傷口に塩を塗りたくられなきゃいけねェ。……いや、俺のことなんざどォでもいい。……第三位は、ありゃ戻るよォに見えるか?」

「あの暴走状態をどうにかできたら、俺がちっとはやってやれる。正体を明かす気はないが、俺の中身は精神系の医者でね。外傷治療よりそっちの方が得意なんだ」

「精神系の医者なンてもンは調べりゃすぐに辿れそうだがなァ。……もう一つ。……これを聞くのが、罪を軽視していることになることぐらいわかってるが……ミサカネットワークには、何か悪影響が出ると思うか」

「どうだろうな。クローンたちは一万の死を受け入れているんだろう? なら今更ぶちこまれたって、多少の混乱程度で済みそうだが。……問題は、この触手及びイサク=ローゼンタールにミサカネットワークの脳波が内包されつつあること、だと思う」

「……。そりゃァ、確かにそォだ。人を食い殺す感触。銃だの超能力だのに灼かれる感覚。ミサカネットワークってのは確かアップロードもダウンロードも自在だって話だから、意図的に探り当てない限りは問題ないかもしれねェが……。その分別がつかねェよォな個体なら……」

「あるいは、すべての情報を管理するような個体なら、自ずと」

「……オマエの見立てじゃ、こいつはまだミサカネットワークには繋がってねェンんだな?」

「元々電気系の魔術師じゃないからね。……ただ、御坂美琴についてをこのまま学習でもしたら……ってさ」

 

 セロリマンは……口角を上げる。

 そして。

 

「オイ、第七位」

「ん、なんだ、第一位」

「このスライムは医療用だ。あそこにいる第三位を殺さずに元に戻すためには、あの状態を解除した第三位にこのスライムを当てる必要がある」

「へえ。……で?」

「俺の能力は制圧向きじゃねェ。強すぎる力相手だと相手を殺すことしかできねェ出来損ないだ。オマエのは?」

「そうだなぁ。……わからん!!」

「……」

「わからんが、気に入った! まさかお前の口から女の子を助ける、なんて言葉が出てくるとは思ってなかった。勝手に偏見ってモンを抱いちまってたみたいだ。それは謝る。だから、その埋め合わせに……やるだけやってやるよ! そんで、お前も根性見せろよ、第一位!!」

 

 左掌に右拳を打ち付けるはすごいパンチマン。

 直後、景色が目まぐるしく変わる。恐らくセロリマンに持たれて高速移動をしているのだろう。

 

「うぅぅううううううううぉぉぉおおおおおぉぉぉおぉおおおおおおおおおおお!!! だぁぁあああああありゃああああああああ!!!」

 

 地の底から天の彼方にまで届くような咆哮と共に現れるは、真っ白なエネルギー。

 ……理解不能。というか、色々混ざっているのに……純粋で。い、意味が分からん。

 

「……第七位。世界最大の原石、って話だったか。……この俺をしてさっぱり意味が分からねェ能力ときた。ベクトルも何もあったもンじゃねェ」

「お前さんでも分が悪いか?」

「耐久度自体はニンゲンよりちょっと上な程度だってンなら、遠くから狙撃でもしてやりゃカンタンに死ぬンじゃねェの?」

「お前さんは日本海溝でも死なないんだもんなぁ」

「……酸素が無くて負けたら、仕方ねェことだと諦める。……クソが、あの無能力者(レベル0)といい第七位といい、虫唾が走るほどの精神論を並べ立てやがる。……もし、あの金髪女がいなけりゃ、俺は死ンでた。『相互置換(リプレイス)』なンてくだらねェ能力で殺されてたわけだ。ハッ、何が最強だ。……弱点も、隙も……二万人を殺さなくたっていくらでも見つかるってのに、その辺を放棄していた時点で、俺は……」

 

 こーれは刺さってます。こーれは効いてます。

 そげぶだけじゃなく、ああいう純然としたヒーロー属性に弱いんだろうなぁこいつ。

 

 白いエネルギー塊が……真っ白に包まれたビリビリを、少しずつ、少しずつ……押し返していく。

 い……行けるか?

 

「一方通行、俺を彼女の眼前に」

「あァ。……雷撃からは守ってやるよ、雑魚スライム」

「俺にどこまでの幻想を抱いているか知らないが、掠りでもしたらこの体は弾け飛んでしまうからな。丁重に扱ってくれ」

「さっさとやりやがれ。話が長ェよクソジジイ」

 

 グサ。

 ……いいもん。俺今生きてるほとんどの人間よりジジイだからいいもん。

 

 さて。

 

 身を分離させ、五角形を作り上げる。

 その辺一本ごとに、「STYX」、「ACRN」、「CCTS」、「LTHE」、「PRGT」を浮かび上がらせ、「LTHE」だけに赤色を差す。

 

「誓いを済ませ、苦悩を抱き、嘆き苦しみ、燃え盛る。其は記憶の女神(Mnemosyne)。写せし鏡には忘却の川を。下りよ、下りよ。冥界へ下りよ。白い糸杉を辿り、泉を見つけ。されど、されど。LTHEを飲むのはひと口まで。喉の渇き。飢えた腹に、今一度の我慢を刻め。歩け、歩け。私は星空の子。大地と天の子なれば、記憶の女神よ、どうか私に潤いを。されど、LTHEの水のある限り、この魂に未だ安らぎは訪れず。眠れ、眠れ。我が子よ。あなたの子よ」

 

 ……ぶっちゃけると遠隔で使うのは初めてだけど!

 大丈夫、まだ……成功者側だと思うから。失敗ゾーンに差し掛かってたらごめんな!

 

呑み込め(D)

 

 すごいパンチマンのエネルギー塊で顔の部分が剥がされていた雷神ビリビリ。その喉が、何かを飲むように……コク、と動く。

 

 ──瞬間、今までのそれらが嘘のように……ビリビリは元の人間に戻った。

 当然、そのまま真っ白なエネルギー塊が彼女を押しつぶして──。

 

「フン」

 

 しまわない。セロリマンがエネルギー塊をぶっ飛ばしたから。

 え。意味わかんないんじゃなかったの?

 

「……エネルギー自体の意味がわからずとも、架空のベクトルを設定し直してそれを操りゃどォにかなる。重力なンて未だに重力子なのか時空の歪みなのかわかってねェモンを操る能力があるのと同じだ。そのための『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』だろォが」

「さ、さいでっか。……超能力のことは実はよくわからんのだが」

「あァ、それでよく超能力は魔術に内包される、とか言えたよなァ。……で? 第三位に何したンだ」

「とりあえず有害そうな記憶を全部切除して、それが埋め込まれる前の状態で保持するように保護を掛けた感じ。彼女に意識が戻り次第その保護は取り払われるだろうけど、俺が戻さない限りはこっちの奪った記憶は戻らんよ」

「……脳を弄ったわけでもねェのに記憶だのなンだのをそうカンタンに操作してんじゃねェよ」

「それが魔術の汎用性だからな。……さて、戻るか。イサク=ローゼンタールに止めを刺さないと」

「あァ」

 

 こっちを優先したことで、火力が少し減ってしまったけれど。

 

 まぁ──。

 

「おう、戻ったか! 無事に助け出せたみたいでよかったぜ!!」

「……てめェ、どォした、その怪我は」

「思いのほか抵抗が強くてな! ま、ちょっとしたかすり傷だ! ったく、オレもまだまだ根性が足りないぜ!」

 

 血だらけのすごいパンチマンと、無傷のセロリマンが並ぶ。

 なんという……安心感か。

 

「第七位。このデカブツは、削り切りゃ殺せるらしい。再生しまくるがなァ」

「再生? そりゃ根性無ぇな。──ぶっ倒してやろうじゃねえか、第一位!」

 

 そうして始まるは──学園都市最強の超能力者(レベル5)、その頂点と最下位による怪獣退治。

 残念ながら雷神ビリビリの雷撃でイサク=ローゼンタールの意識がトんでてヨガり狂う痴態を二人に見せることはできなかったが──。

 

「そろそろ終いだなぁ! んじゃあ最後に奥義を見せてやる!! ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームゥ──もっかいハイパーァァア!! すごいパーンチ!!!」

「いちいちうるせェんだよてめェは。こォいうのはスマートにやれ」

 

 これで一件落着ということで。

 こんな感じで、ようやく、長い長い九月十九日は終わりを迎えるのである。

 

☆☆☆

 

 そんな騒ぎから、少し離れたところで。

 

「はぁ……。なんとか……隠蔽できたニャー」

「最大主教も無理を言うというかなんというか。……あの規模の魔術に対して隠蔽工作を、しかも後からやれ、だなんて……無茶苦茶にも程がある」

「まぁローゼンタール家は十字教から追放を受けた魔術師。その処分不備を学園都市側につつかれたら痛いってことだろうニャー。……それと、気付いているよな、ステイル?」

「ああ。遠目だったから術者までは見つけられなかったが……あれを弱体化させた魔術は恐らく『切り拓かれし四象限(テンプルム・アウグル)の術式』。200年前の疑似聖人に対し『楽園築き(パラディスヒール)』が使った魔術。……あんな古文書レベルの魔術を使う時点で、という話ではあるけど、やっぱり潜んでいるみたいだね、この学園都市に」

「魔術師居すぎ問題だニャーオレたち含めて」

「敵対している組織が無数にあって、スパイが一人も紛れ込んでいない、だなんてのは御伽噺さ」

 

 なんて会話があったり。

 

 

 さらにそこから離れたところで。

 

「なんとか……生き延びることができたわねぇ。登場人物全員災害力高すぎだゾ☆ ……というか、そういえば……大覇星祭の方って」

「いたぁ!! 食蜂さん! 出番、出番ですよ!!」

「へ? 私、どこにも立候補していないのだけどぉ?」

「何言ってるの! 午後の部の障害物競走、女子500mリレー、幅跳び、棒高跳び、能力有の壁走りリレー……その他諸々! 全部あなたが出ることになっているでしょ!」

「そ、そんなわけはないわぁ? ……ってこれ、元々御坂さんの出る種目なような。……まさかハッキングで書き換えを? 嘘でしょぉ!?」

「提案があります。と、モリヤは流石に可哀想な爆乳に対して名乗りをあげます」

「な、なにかしらぁ?」

「今回色々ご迷惑をおかけしたので、記憶や認識をあなたに操作してもらった上で、競技へは私が出ます。と、モリヤは御坂様の代わりになる、という因果に驚きつつ、胸を張ります」

「それは……本当に助かるかも。……じゃあ、お願い」

「何の話をしているの、まったく! 間に合わなくなってしまうから──ほら、運んで行ってあげます!!」

「またもや攫われていることに驚きを隠せません。と、モリヤは爆乳の早業認識操作に驚きつつ、サムズアップをします」

「……いえ、こんなことじゃ全然埋め合わせに勘定しないけれどぉ。……まぁ、助かったわぁ」

 

 なんて会話があったりして。

 

 

 さらに──窓のないビルにおいては。

 

「……。ミサカネットワーク、そして『木原』を介することなく他者を『SYSTEM』に踏み入れさせる、か。……『楽園築き(パラディスヒール)』。あるいは我が学園都市は、君の巣によく似ているのかもしれないな」

 

 学園都市の基礎の基礎。能力開発という()()()

 それによる集団治療……あるいは集団催眠を、彼が生まれる百年も前に実践していた魔術師、『楽園築き(パラディスヒール)』。

 超能力者というものが存在しなかった時代から「段階を引き上げる」ことに成功していた彼ならば。

 

 加えるのならば。

 どうやら彼は……()()()()()()ようであるから。

 

「あるいは私自らが……というのも、手やもしれないな」

 

 なんて。

 ()()()()()()()()()()()から選定を、などしながら……また、水泡の裏へと消えていった。

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