※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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2.八月十三日『狡兎死して走狗烹らる』 - Disposable.

 10039号を使った『体験型ダッチワイフ』はかなり人気だった。

 透明で円柱形のショーウィンドウの上下に防音性且つ拘束力の高い緩衝材を敷き詰め、10039号を配置。手は後ろ手に手錠を嵌めた状態で、呼吸等々は通常通り行えるようにしてある。つまり10039号は首から下と太ももの中腹あたりから上までだけを露出した状態で拘束されている、というわけだ。

 その状態でタブレットと同じ信号を出すようにイチから作り上げたリモコンをチェーンに繋いで設置。

 このリモコンには「絶頂」とか「クリ勃起」とか男子の好きそうなボタンのみを配置してあって、ワンボタンで10039号の身体にそれが起こり、楽しめると。

 傷モノにすると色々発覚した時に殺されそうなので折衷案を取った。これでも殺されるかもしれないけど一応十八万したし……。

 基本的に『アルモニ屋』の中は能力使用禁止─というか利用者はほぼ能力無し(スキルアウト)なので使うやつはいない─なためその辺の安全も取れている。

 維持に必要なのは普通の人間と同じ食費くらいだけど、特に我儘を言わないので最悪点滴だけでもいい。それだとがりがりになってって刺さる奴が減るから食わせるんだけどさ。

 従業員も楽しめるし、こういう場所を利用する女も他の女をそういう目で見ることができる……ダッチワイフともなれば素直に楽しめるようで、流石に利用率は男の方が多いが、女性受けもそこそこ良い。

 

 総じて……良い買い物だったかもなぁ、とか思い始めていた頃合いで、一通のメールがあった。

 件名、「どう? いいだろ?」。

 ……この首輪のことといい、悪名高き『心理掌握(メンタルアウト)』とかに連なる精神系能力者が黒幕なんかなぁ。俺の頭覗かれちゃってんのかなぁ。

 

 複数のウイルスチェッカーに通した上で開封してみる。

 文面は以下の通りである。

 

" ハロー、おはよう。どうも初めまして。ダッチワイフ購入者くん。ちゃん? どっちでもいいか!

  色々な兼ね合いから元のサイトは削除させてもらったけど、ダッチワイフはまだ在庫があってね。これはつまり、もう一体、二体、どう? っていうお誘い。あ、購入者にはみんなにこれを送っているから特定個人がどうこうってことはないぜ。ダッチワイフ購入者の個人情報とか銀行口座以外キョーミねーし。

  もしキョーミがあったら添付したファイルの中にある番号にお電話お電話! 自動応答サービスが応答するから、ガイダンスに従ってほしい個数を入力してな! 次送られてくるダッチワイフに振込先を同梱しておくからヨロ。気付いた? そうつまり、後払いでいいってワケ! いょう太っ腹ァ!

  ただしお値段は二十万に上げさせてもらうよ。ダッチワイフ自体は十八万そのままなんだけど、あのサイト使わないと配送料がね……。あと首輪の材料費もあるし。そんな感じで!"

 

 特に思い当たる口調の人間はいない。この世界特徴的な喋りのやつが多いからワンチャン、とも思ったけど、文面にまで現れるわけではないだけかもしれないし、代筆の可能性もあるし。

 とにかく相手方は妹達を割合好き勝手できる立場にいるらしい。……今『絶対能力進化計画』の真っ最中だから次から次へと生産中なんだろうな。……ってことは『絶対能力進化計画』の関係者か? この配送ルートが嗅ぎ取られた場合、ビリビリしてるのまで乗り込んでくるまでないか?

 

 うーん。……悩ましい。

 人気だからもう一体、という思いは確かにある。ダッチワイフそのものの方は別口で手に入ることが決まったからそっちの要望に応えるわけじゃないけど、……たとえば10039号は「何もしないでイくところ」が楽しいダッチワイフだ。それをもう一体買って、そっちは「無限ピストン」とか「玩具放置」とかも良いかなって……あーでも前の穴を使うと後々が面倒か……。

 

 とかなんとか悩んでいる時、もう一通メールがあった。同じくウイルスチェッカーにかけた上で開封する。

 件名「『事業(ビジネス)』最高管理者へお礼」。

 ……え、なにそれ怖い。

 

 開封する。

 

" 初めまして、『事業(ビジネス)』創設者、及び最高管理者様。

  貴所の目的、『神ならぬ身にて天上の快楽に辿り着くもの(MAYHEM)』に甚く感銘を受けました。

  つきましては最上の発想にお礼を申し上げたいと思います。ささやかではありますが、ご入り用であるのならば、添付ファイル内のプログラムをご使用ください。

  また、是非、当研究所、並びに『胤河製薬』にて貴方の『事業(ビジネス)』のお手伝いをさせてください。"

 

 なにそれ知らな~~~~い!

 いや……この『アルモニ屋』の裏側で行っているものは確かに『事業(ビジネス)』と呼んでいたけど、なに、メイヘム? 知らないけどなにそれなにそれ。

 しかも『胤河製薬』ってそこそこ有名な製薬会社じゃないですか。いいんですかこんなことに関わって。普通に泥船ですよ。

 

 ……いやマジでなんだ? というかウチはクリーンなの。シャブはやってないの。……避妊薬についてなら……いやいや、それも市販ので大丈夫だし。

 怖いなぁ。……これ既読トラッキングとかついてないよな? 関わらん方が良いかなぁ。

 

 添付ファイルには……びっくりするほど軽いサイズのプログラムが。

 面倒なウイルスとか入ってたら嫌なので、メールごと別途ストレージに移し、端末も別のものに変えて、実行。

 

 立ち上がったのは……骨董品もいいところなVBを思わせる青と灰色のUIの画面。

 被験者IDなる数字しか受け付けない項目があって……まさかな、と思いながら、10039、と打ち込んでみる。

 すると、画面中央に裸体の10039号が表示された。彼女の今の恰好を忠実に再現した3Dモデルらしく、口と目が半開きで、舌をだらんと出して、客のリモコンに弄られるまま何度もイく10039号が見えた。

 項目も販売者のものより……なんだろう、より医学的に特化している感じがある。自分たちの方が有用ですよ、ってことをアピールしたいのか?

 

 ……少し気になったことがあって、被験者IDのところに10040と入力してみる。

 更新される画面。映し出されるは、直立不動の姿勢で目を閉じている妹達の姿。……まさかな。

 再度被験者IDのところに、今度は9980と入力。表示されるは──全裸なのは変わらずとも、見るも無残な姿になっている……死体。

 死体程度で騒ぎはしないが……これは、どういうことだ。

 まだ怖くなっていない方のおにーさんに殺された個体。そいつが……ダッチワイフ用の首輪をつけていたはずがない。

 ……まさかこのプログラム、首輪の有無に関係なく生体電気を制御できる、とか言わないよな。つまりあのメールは、「そんな木っ端な研究者やめて大手なウチと手を組もうじゃないか」ってこと?

 

 一応他のIDも試してみると、全裸のまま歩いているのだろうもの、何かを抱き上げたっぽいもの、眠っているもの、排せつしているもの……そして、戦っているもの。

 ……どこの誰の案かは知らんが、変態制服官能小説持込おじさんの『プラン』とバッティングするんじゃないかこのプログラム。

 いやまぁあのおじさん的には『絶対能力進化計画』なんてどうでもいいんだろうけど。

 

 んー。……このプログラムは遠隔リモコンみがあってとーっても魅力的だけど、逆探知の可能性が増えるし、軍人に乗り込んでこられても迷惑だし。

 なにより遊んでた人形が次の瞬間パァンもあり得るわけでしょ? 無いカナー。首輪の機能で充分だし。

 

 なので……普通に元のダッチワイフをもう一体だけ買うでこの話は終わりにしようかな、と思った段階で。

 なんだ。

 

 魔が差した、というか。

 誰でも調べることができる情報……『書庫(バンク)』を調べる。

 そこで……適当な女性名を入力。ここには個人情報に関するものもあるけど、そういうのは特殊な立場の人間しか閲覧できない。ただ、たとえば何某かの施設の代表者だったり表舞台に立つ人間は名前と──学生IDくらいなら、わかる。

 

 姓は違えど名は同じな女の子がずらっと並び、名前の漢字が可愛い子を選んでそのIDを……被験者IDの爛に打ち込むと。

 

 そこに、見ず知らずの少女の、恐らく学校にいるのだろう椅子に座った……全裸のモデルが表示された。

 

「おいおいおいおい……」

 

 これ……マズいか?

 学園都市全体を巻き込む何かに関わっている気がする。あんな変態首輪なんかつけていないだろう女性の……全裸モデルとパラメータが手に入るのは……ヤバいな。

 能力開発に関する薬品……それも『テレマ』とかの激ヤバ真相に携われるクラスの人間がバックにいないとこんなこと……。

 

 待て、胤河製薬、つったか?

 ……この街で過ごす時間が長くて忘れてたけど……確か歯抜けサイボーグおじさんが「胤河製薬 特別顧問」みたいな肩書きじゃなかったか?

 いや~~~「木原」案件はきついんじゃないかぁ? おにーさんずやビリビリの何億倍もヤバイだろ。

 

 これ……断ったら断ったで、の可能性無い? つかあの爺さんがこんなしょーもないモーテルに何を……いや、あの爺さんが下手人なら本名で来そうなものだ。

 つまり……あくまで『胤河製薬』だけの話か? その上で権限だけは爺さん並、みたいな?

 

 んー。前門の虎後門の狼。ただまぁ、前門の方が頭数が多い。それに極悪。

 仕方ない。

 

 了承を返すメールを送る。もう一体の購入は無しだ。食費が馬鹿にならんのもあるし、「そんな奴らとははよ手を切れ」と言われているようにしか思えなかったんでな。

 さて……お祈りタイムだな。はー、こういう綱渡りをするタイプじゃな……くもないが、心臓に悪いわぁ。

 

 アレだな。

 ダッチワイフを買っただけなのに。……だな。笑えねえ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 警備員(アンチスキル)、黄泉川愛穂はその現場に到着するなり溜息を吐いた。

 最近なにかと話題に上がりがちな第一〇学区……ではなく、そこから遠く離れたに第一九学区にて発生したその事件は、今月に入って十件目。

 

「また同一の手口じゃん?」

「ええ、また。……恐れていた事態の一つ、ではあるのでしょうね。思春期の青少年であればこそ……」

「あんまりそうやってレッテル貼りをするのは良くないじゃんよ」

「……すみません」

 

 第一九学区で起きている事件とはずばり、強姦事件である。ただし白昼堂々、しかも必ず監視カメラの前で。

 再開発に失敗したせいで寂れてしまったこの学区に設置されている監視カメラ。その画角内を歩く人間が一人になった時、大抵それは起きる。

 対象は男女を問わず、突然しゃがみこんだかと思えば、何か見えないものに体をまさぐられているかのように身を捩り、強姦される。

 透明人間になる超能力か、はたまた遠隔からの念動力か。被害者に付着するはずの体液が欠片も見られないことから前者ではなく後者の線が濃厚だが、周囲の他の監視カメラには怪しい人影が写っていないこと、被害者の身体以外─つまり衣服などの全て─に干渉された痕跡が無いことなどから、少なくとも強能力(レベル3)、ないしは大能力(レベル4)以上であると推測できる。

 よってその時間に該当学生らがどこにいたのかで犯人もわかりそうなものであるが──。

 

「『快楽自切(バズキルセルフ)事件』、ね。上もふざけた名前をつけるじゃん」

「まるで被害者が自らそうなったように見えるから、だそうで。……そんなわけがないのに、ふざけているとしか思えません」

「現場では強姦事件で通すのがせめてもの仁義か。……十三日で、十件。……こういう手合いは自分に危険が及ばないと知ると加速していく傾向にあるが……」

「第一〇学区の『事業(ビジネス)』と関連性があるように思いますか?」

「ううん。私にはたまたま同時期に同じジャンルの事件が重なっただけに見えるけど……なんか思うところがあるの?」

「確信というわけではないのですが、手際の良さや足取りの掴めなさが……その、こういう言葉を使うのは嫌ですけど、プロフェッショナルを感じるというか」

 

 話題が話題なだけに協力要請の憚られていた学生の組織風紀委員(ジャッジメント)にも『事業(ビジネス)』の話は通してある。

 が、彼らも全くと言っていいほど情報を掴んでおらず、未だその言葉だけが宙吊りになっている現状にある。

 

 嫌な予感と言うのは往々にして当たる。

 ──二人の警備員。その耳に、女性の叫び声が入った。

 

「っ──すぐそこじゃん! 私は先行するから、応援を!」

「気を付けてくださいね!」

 

 数ブロックも離れていない場所。その声のした所に黄泉川愛穂が急行すれば。

 

「あっ……ぅ、ぁ……いや、いや……はいって、こないで、ぇ……っ!」

 

 スーツの女性。それが仰向けに倒れ、苦しそうに喘ぎ声を上げている。

 一応『透明人間』である可能性も考え、女性の上の空間にタックルをする黄泉川。しかしそれは空を切る。

 違う。透明人間ではない。

 

「念動力……なら!」

 

 即座に思考を切り替え、黄泉川は周囲を探す。

 それは、道路の対面側にあった。監視カメラだ。

 彼女はそのカメラと女性の間に入り込むことで視線を遮ろうとする。大抵の念動力は視認できていないと上手く操れなくなるものだから。

 

「いや、ぁ、ぁっ、あっ、あっ!」

「チッ、お構いなしか! だったら──」

 

 携行している銃器にて監視カメラを撃ち抜く黄泉川。始末書ものだが、背に腹は代えられない。

 これで収まる──かに思われた。

 

「あ──あが、が、が……んぎ……」

 

 止まらない。終わらない。

 どれほど見渡しても他に監視カメラは無い。銃のスコープで高台などを見ても誰も見つからない。

 ただ、彼女の目の前で、苦痛と……強制的な快楽に染まった女性が、喘ぎ声と呻き声を立てていく。

 

 黄泉川は。

 

「とりあえず、背負うから……気にしなくていいから、もうちょい辛抱するじゃん!」

「いや、もう、嫌、やめて──ん゛……っ……イ、ぐ……っ!」

 

 その後、救急車が到着するまでの間、黄泉川はあらゆる手段で視線を遮ろうとしたが──彼女の背にいる女性は絶えず犯され、愛撫され、絶頂させられ続けた様子だった。

 以降警備員は容疑者を大能力者以上に絞り、捜査を続けることになる。

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