とある性教の雌女昇格(メスメライザー) 作:無ければ作れ(Invenire404)
誘拐され中なう。
……なうもきょうび古くなってきたんだったか。これがほんとの古今理解集。
俺のことを今真っ黒なビニールに入れて運んでいるのは二人の魔術師。知り合いじゃあない。使っている魔術の感じからしてローマ正教寄りに見えるが、全身甲冑とかいう時代錯誤人間なので恐らく十三騎士団のメンバー。十三騎士団はローマ正教本家とはまたちょっと違うんだよなー。
さらに言うとローマ正教の十三騎士団はイギリス清教の騎士派のモロパクである。ローマ神話に「十三」とか「円卓」みたいなワード一切ないしね。
そのイギリス清教騎士派……元十三騎士団が多角的な面への都合から騎士派に名を変えたことで、すっかりこっちの十三騎士団がオリジナルですよ、みたいな面をし始めた者達。
まぁローマ正教徒らしく狂気的な忠誠心で異端者や異教徒は人間に非ず、それでいながら治安維持に関しては滅私精神でやり遂げるもんだから手が付けられない。
此度のこの誘拐も、あくまで人類というものを脅かす脅威を排除するための行動だろう。俺が『
あ、滅私的な献身精神があれど、大のために小を切り捨てるのは当然のようにできる連中なのは言うまでもないことだからな。
とはいえ
ドイツの夜は静かだ。だからこんな甲冑が爆走してりゃ注目の的になっておかしくない……んだけど、流石にそこは隠蔽系の魔術を使っているらしい。
これを乱してやるのも悪かないが、まぁ、大人しく誘拐されてやろう。
……ところで後方から覚えのある神の祝福が爆速で近付いてきているのは気のせいではな──ッ!?
「ちょっと待てちょっと待てちょっと待てオイ神裂さんちょっと俺達に安全を提供する云々の話はどこへどこへどこへーッ!?」
「ステイルと土御門より聞いています。あなたの能力を最大限に活かし、且つあなたに不用意な行動をさせないためにはこうするのが一番良いと!!」
「それ絶対嫌がらせ──うぉぉおおあああああ!?」
という緊迫したやり取りがあった後、俺が包まれているビニール袋に右手の形が深々と刻まれたかと思えば、ガラスの割れるような音が響き渡った。
「*なん──隠蔽の術式が破壊されただと!?」
「*止むを得まい、この子供の排除を──」
「させません」
凛とした声と共に風切り音が響いて──。
語るところに。
「*その男が一般人だと? ……そんなはずはない。此度の主犯格らは口をそろえてその男を総支配人だと呼んでいた。その男が首謀者に違いない」
「*む……なんだと? 二日前にドイツへ来たばかり? それまではジャパン……学園都市にいた、だと?」
「*総支配人というのは昔の役職のことで……本当に関係の無い一般人だと……いうのか」
「*む……ぐ。……そう凄まないでくれ、少年。……誠心誠意謝罪をさせていただきたい。否、まずはあなたに頭を下げるべきか」
からの。
「*そうだ。数日前から……否、事の発端を考えればひと月は前からこの国を脅かしている殺人事件、及び魔術師による魔術の濫用事件。その背後にいる組織が新興の魔術結社『地を貫く大樹の根』であることがわかった。ここ二十年で作られた新興も新興の組織であるこれの構成員は、そのほとんどが『
「*件の『
「*そうだ。我々十三騎士団が行っていた"是正"とは、即ちこの類の魔術師を捉え、『地を貫く大樹の根』の居所を吐かせることにあった。そして……やっとの思いで掴んだエリーアスという男は遠方からの狙撃によって口封じが為され、イシュという男は自らの心臓を刳り貫き魔術によって貫き自死。その時に受けた襲撃により我々の仲間も負傷し、撤退。……これが君の言う"大義のもとの殺人の是非"の全貌だ」
という説明があってのなう。
重く神妙な空気のところ申し訳ないが、さっさと話を進めたい。
「*あーっと。……すまんが、魔術というのはわからん。あるのかどうかすら。ただ……イシュが自殺しただの……メリンダが秘密結社? っていうのは、本当なのか」
「*秘密結社……そうだな、その認識で構わない。……真に一般人であるというのであれば、あなたはここで聞いた話を全て胸の内に閉まっているべきだ。……だが、巻き込んだのが我々の勘違い故である手前、そう無下にもできない」
「*俺があいつらに関わってたのは二十年前のほんの一瞬だけだ。その後の人生がどうなろうと知らないが……なんだ、だから、もうあいつらの罪っていうのは決定しているものなのか。騎士団? 的には死罪以外の道はない、と?」
「*それを判断するのは我々ではない。だが、重ねた罪の数からして、だろうな、としか言えない」
「*その罪は、すべての悪事を止めて、何らかの形で罪の償いをする、とあいつらに誓約させることで軽くなるものか?」
「*……相手は魔術結社だ。二十年前の恩の一つでその在り方を変えようとするのはおすすめしない」
「*おすすめなど聞いていない。軽くなるかどうかを聞いている」
「*……可能性はあるだろう。魔術的な制約を結ばせるほどまで行くことができれば、あるいは、だ」
「*それはあなた達が使える魔術なのか?」
「*ああ、それくらいの誓約であれば、我々でも行える」
「*なら決まりだ。俺をあいつらに会わせてくれ」
使い魔越しに安眠している禁書目録と……それを監視する『
成程、アフターケアはばっちり、と。
「……話はまとまったようですね」
「えっと神裂さん、俺実はドイツ語わからなくて──」
「安心してください。私も主要単語以外は拾えていません。彼らの話すドイツ語は標準的なそれから大きく離れているため、聞き取れないのも無理はないでしょう」
「*世界的に見て田舎である国出身の者に田舎者扱いされているぞ」
「*俺は南部出身だからな、田舎でいいさ」
「*そうだったのか。通りで聞き馴染みのあるドイツ語なわけだ。ということはもしや、イタリア語もいけるのか?」
「*自慢じゃあないが、九十か国以上の国の言葉を話すことができる自負がある」
「*それは十二分に自慢になるだろう。……重ね重ね申し訳ないな。あなたとは、こう言った血腥い世界以外で出会いたかった。良き友人になれたような気がする」
ああ、そうだろうとも。
そうやってすべての信徒は俺に心を開くのだから。
「上条当麻。すまない、俺の都合というやつだ。あの店のメンバーは、どうやら秘密結社に関わっているらしい。……俺とあいつらの交点なんて二十年前の一瞬だけだが、それでも一度は面倒を見た連中なんでな。ちょいと……話をしてみたい。それで、やってる悪いことをやめさせられたら……なんだっけ、誓約の魔術? というものをかけて、罪の減刑を図ってもらえるかもしれない、という話だ」
「……それは」
「あまりにも望み薄でしょう。相手が魔術結社であり、あなたがこの国に現れてなおも犯行を止めなかった時点で、あなたにできることはありません」
「ちょ、神裂……」
「うーん、正論。その通りだとは思うよ。……けど、やる前に諦めるのは性分に合わなくてね。やった上で絶望した方がまだいい。その後の人生に影を負わなくて済む」
どの口が言うんだか。……と、イマジナリー便利リモコンも申しています。
「つーわけだから、えーと、神裂さん? だっけ。あんたさ、上条連れて帰ってくれないか?」
「え」
「……異論はありませんが、如何にしてでしょうか」
「秘密結社なんて裏組織っぽい話で、殺人がこれでもかと関わってる話なんだ。子供がいていい場所じゃあない。ともすれば上条の方が魔術ってのに詳しいのかもしれないが、今の俺は上条当麻と禁書目録ちゃんの保護者枠なんでな。その身を案じることのためだけに言葉を使わせてもらう」
「成程、救出に来たのは正解でしたね。これほどの方であれば、上条当麻。あなたがああも助けたいと願ったことに納得がいきます」
「俺達は安東さんを助けに来たんだ。安東さんには悪いけど、ここではいそうですかって引き下がるわけにはいかない」
「なんじゃそりゃ、本末転倒な……」
「同じなんだよ。安東さんがさっき言った通りだ。俺も……この後の人生に影を刻みたくないから、一人で逃げ帰るなんてことをしたくない。もし本当に俺が不幸以外を……運に関するすべてを引き寄せているのなら、安東さんが勘違いで攫われたって不幸のあとに、安東さんの声が奇跡的にも届いた、みたいな幸運が無いと嘘だ。約束するよ。出しゃばらない。けど、幸運を引き寄せるためだけに、一緒に行かせてほしい」
若干アクセル踏み過ぎたな、なんて反省しつつ、まっすぐな目を向けてくる上条当麻を見つめ返す。
経った時間は数秒なれど。
「神裂さん。あなたは相当……魔術的な強者である、と認識しているが、あっているか?」
「ええ、正しいです」
「なら、まず第一に上条を守護することを念頭に置いてほしい。俺は二の次だ。それを約束してくれるのなら、俺も上条の同行を許そう」
「……。……いいでしょう。元の使命通り、有事の際は上条当麻の安全を最優先に考えます」
「OKだ。……それじゃ、禁書目録ちゃんに気付かれる前に……朝が来る前に、終わらせに行こうか」
さぁて、いつの間にか細工は流々──あとは仕掛けを、ってな。
十三騎士の二人、ワルガヌスとモドレドゥスを引き連れてやってきたのは、……なんと、『Zuvörderst』の地下。……俺としたことが、確かにここの地下へ感知を飛ばすことを忘れていた。
しかしまー便利な魔術ととんでもない聖人もいたものである。鉄道で四時間かかる、フライトでも一時間かかる距離をたった三十分で詰められちゃあ世話が無い。
……そう、つまり神裂火織の肩に上条当麻、そしてそれに牽引される形で騎士の二人と俺が、かかるGなどを魔術で低減しての大爆走である。時速848kmの弾丸旅行(物理)。流石に人生経験豊富な俺と言っても普通に気絶しかけましたねええ。
さて、そうして下ってきた地下に、彼らはいた。
なんともまぁサマになっている着こなしで、真っ黒なローブ……一部動きやすく改造されているソレを着ているメリンダたちが。
「*……本当に来ちまうとはね、総支配人」
「*十三騎士の二人を侍らせて。まるでローマ正教の一員じゃあないか」
「*む。予め言っておくが、この三人は我ら十三騎士団とは何の関係もない。仮にここで我らが敗北し、この三人だけ逃げたとて、彼らがローマ正教にお前達の話をすることはないぞ」
「*うわ生真面目そうな奴が来た。つか、そんな
うーんこれは減刑はおろかここから罪を重ねそうな感じ。
実際問題別にこいつらの行く末がどうなろうとマジで知ったこっちゃないし、別にこいつらは俺の魔術師としての姿の全貌を知っているわけじゃないから良いっちゃ良いんだけど……それでも、一つだけ知られちゃあならないことがある。
だからそこを
「*俺から言いたいことは二つだけだよ、メリンダ」
「*今更……何を言おうって」
「*どうしてお前達がそっちに行ってしまったのか。そして、どうして俺に迷惑をかけるとわかっていながら、実行タイミングをずらさなかったのか」
問えば──面々の顔は、怒りと悦楽が綯い交ぜになったような、奇妙な顔を浮かべた。
発される怒気と殺気に思わず、と言った風に武装を固める騎士の二人。
「*オマエが言うのか、それを」
「*総支配人……そんなこと言われたらさぁ、……歯止め、利かなくなっちゃうよ」
「*安東殿、おさがりを! 様子がおかしい!」
「*『
ワルガヌスの首が飛ぶ。
──飛んだと、誰もが幻視した。
違う。飛んだのは人の頭蓋と同じくらいの大きさの麻袋であって、彼の首はついたままだ。
「*……へぇ、
「*どうしてお前達がそっちへ行ってしまったのか。結局のところお前達が欲しかったのは自分たちの居場所であり、あのホテルでも、目先の快楽でも無かったってことなんだろう」
「*それ、挑発なんだとしたらサイコーの一撃かも!」
真っ黒なナイフが飛び、俺の胸に突き刺さる。
否、あらぬ方向に飛んでいったネクタイが、その影を俺の表面に通しただけだ。
「*どうして俺に迷惑をかけるとわかっていながら実行タイミングをずらさなかったのか。それほどまでに俺の存在は小さくなってしまっていたんだな。あの再会の時も、お前達にとっては思い出したくもない過去が追いついてきたとか、そういう程度の話だったんだろう」
「*この──その口を閉じろ、メ、」
「*すまなかった。今はただ、そう謝罪することしかできない。殴りたければ殴ってくれて良いさ。その資格があるよ、お前達には」
三度折れ曲がった剣が俺の頭蓋を捉える。
無論そんなことは起きていない。力無く倒れ伏した子供達の一人が、俺に抱き着いてきただけだ。
ふむ。大体の感情は読み取れたな。
それぞれがしていた
そしてその汚染源とは、20年前に学園都市とイギリス清教の間で起きた「新たな能力者を作り出す」実験の被験者の一人であると。そこから魔術に傾倒し、いつしか魔術結社化。汚染源は早期に処刑したものの汚染を受けた者達……トビーのような例が内部に残っていたため、野良魔術師にわざとちょっかいをかけて接触を促し、それを除去していた、と。イシュは本当に情報を漏らさないための自害をしたらしい。
そんでもって俺を巻き込んだのは純粋なる逆恨みな復讐。性交だけで満足できていたはずの自分たちが今こうして魔術結社になって「他者を侵害すること」でしか快楽を貪れなくなったのは俺のせいだと。いや、満足しなければならない身体にしたお前が諸悪の根源だと、そういうことを言いたいらしい。
素晴らしい。そこまで他責思考ができる時点で魔術師向いてるよお前ら。このまま頑張ってくれ。
まぁ。
「*……あれ。私……何を、こんなに怒っていたんだっけ」
「*涙を流すほどつらいことがあったんだな。……すまなかったよ。そら、メリンダたちも……こっちへ来るといい」
人は相手の動きを無意識に模倣しやすい。いわゆるミラーリング効果というやつだな。
発声の瞬間に全く同じ口の動きで違うことを話されたり無声であったりすると、「口を動かす」という動作と「声を発する」という動作の自動連携機能が損なわれ、まるで言葉に詰まったようにそれ以上先を言えなくなる。
さらにそれを眼球に施した光彩パターンによる「意識の揺さぶり」で強調してやると、あら不思議。
今自分が何をしようとしていたのか、何を考えていたのかまで──きれいさっぱり忘れてしまう。一番強く抱いていた感情さえも、発露できないのならば無いものと同じと脳が勝手に処理してしまう。
……しかし、意外だったな。『
さめざめと抱き合って泣く元子供達の頭に手をやって、頭蓋を叩く指の動きと視界に映る足の形でもう一段深い奴をかけてやれば。
「*そこの騎士さんは、お前達が此度の罪を全て認め、再犯をしないと誓約を交わせば、罪の減刑が見込めるかもしれないと言ってくれた。……どうだ、できそうか?」
「*……そう、さね。魔術結社自体……なんで……やろうとしてたのか、もうよくわからない。……いつの間にか、止まるに止まれなくなっていたというのなら……ああ。今日で『地を貫く大樹の根』は……おしまいさ」
言っただろう、上条当麻。以前アニェーゼ部隊を相手に見せた「目的を奪う」は言いすぎであると。あんなのは本当に一時的に決心を奪う程度の手品だ。
目的を奪うっていうものの本来あるべき姿はこっち。快楽が第一になって目的を見失うのはあくまで副次的な効果だしな。
「*騎士さん。どうか……こいつらのこと、よろしく頼めるか」
「*……正直に言わせていただくのならば、とても信じられない、という心境だ。だが……
「*新興の魔術結社であれば、その思想が根深きものではないと判断されるやもしれません。教皇は慈悲深いお方ですから、きっとなんとかなります。いえ、してみせます」
──ほうら、これで、みんな笑顔だ。
美しい楽園が築かれただろう?
「ホントに……言葉だけで。最初あんなに殺気立ってたのに……」
「ええ、俄かには信じ難いですが……それほど根の優しい方なのでしょう」
「お前らも、見守ってくれてありがとう。……それに、上条当麻。お前さんの言った通りだったな」
「え?」
「お前さんがいたから俺の言葉が通ったんだ。これはお前さんが引き寄せた幸運だよ」
地獄への道は善意で舗装されている。
ありがとう上条当麻。お前のおかげですべての嘘にそれっぽい理屈がついたよ。
さて、元子供達を騎士の二人に引き渡し、行きよりかはゆったりと─それでも高速─元のホテルに帰ってきた俺達である。
禁書目録を見張っていた『
神裂火織は美しいお辞儀をして。
「……正直、救出へ向かう当初は、荒事になる予感がしていました。また……この刀を振るわねばならない事態になるものだとばかり考えていました。しかし、結果としてそうはならず……無血のままに全てが善き方向へ動いた主因には、まず間違いなくあなたの人柄に依るところが大きいでしょう。……どうかあなたの今後の道行きに、此度の事件に関わったことで差すような影が落ちぬことを切に祈っています。それでは」
なんて言って去っていった。
律義か。そんで。
「……なぁ、上条。ずっとツッコむかツッコまないかの境界線にいたんだけどさ」
「もしかしないでも:神裂の恰好」
「若者の流行り……ってやつか、アレは」
「なんか魔術師的に意味があるらしいけど、俺にもわからないし、30%くらいは趣m──」
チッ、と。
上条のツンツン頭の先っぽ数mmが消える。
「ナンデモアリマセンハイ!!」
神裂火織、ね。
確かによがり狂う様は見てみたいが……安全の確保が厳しそうすぎる。右席連中とバトらせまくった後とかじゃないと無理そう。
なんにせよ、これで──。
「ハローカミやん。それと巻き込まれちまった一般人。感動的なフィナーレの後で悪いが、魔術のことを知られたまんま帰すってわけにゃいかないんでね。そら、忘れろビーム!」
陰陽術──恐らく悪縁切りを解釈に使った記憶消去の魔術。
残念ながらこんなもの効きはしないが、効かないとおかしいのでフィードバックを高速で組み立て、返しておく。そのまま意識を失った感じで倒れる。
「ん……?」
「ちょ、な、何やってんだ土御門!?」
「……気のせいか。いや、ごふっ、今言った通りぜよ。そのおっさんは一般人。ローマ正教だの騎士団だの聖人だのなんだのを知った状態で学園都市に帰すわけにはいかねーんですたい。んでもって、残念だけどドイツ旅行は今日でおしまいだ、カミやん。そのおっさんの安全のためにもオレと一緒に日本へ出戻りしようぜい」
「……安東さんが、なんか……狙われてんのか」
「魔術結社『地を貫く大樹の根』ってのは実はそこそこ方々に恨みを買ってる組織なんだニャー。そこへ、十三騎士が無理矢理に誘拐するほどの存在且つ、その誘拐後本当に『地を貫く大樹の根』の連中が自首して捕まりました。はい、カミやん。何も知らない、それでいて『地を貫く大樹の根』に恨みを持つような他の魔術結社だったら、こいつのことをどう認識するかニャー?」
「それは……実際に『地を貫く大樹の根』に対して強力な人質のカードになるくらいの……弱み、か」
「そういうこと。最近のカミやんは物分かりがよくて助かるぜい。ま、学園都市に戻っちまえば大丈夫だ。あそこは魔術師たちにとっての敵地。学園都市に用向きでもないままに来て、他組織への人質を確保して脱出を、なんてコスパの悪い真似をする奴はいないからな」
おお。良いアフターサービスだ、ローラ=スチュアート。少しばかり見直したぞ。
まぁこれ以上近くでわちゃわちゃしてほしくない、っていうのもありそうだが……しゃーない、帰るか。
……色々用意してくれた瑞折には若干悪いなぁ、とか思ったり。
「よっこいせ、っと。そら、カミやん。禁書目録ちゃんを連れてきな。プライベートジェットで行くから、夜中でも飛び立てるぜい」
「……まさかとは思うけど超音速で有名なアレじゃあ」
「カミやんと禁書目録だけならその手もあったが、このおっさんはアレに耐えられんだろうから普通のジェット機だ。そんでもって、金属のアクセサリーはご法度だ。現地で買ったものなんだろうが、その指輪は置いてきな」
「あー、いやこれは、安東さんからの」
「貰い物でも買い物でも、関係ねーですたい。三人ともお揃っちで名残惜しいのはわかるけど無理なモンは無理だから、そら取った取った」
「お揃っちって……また妙に古いな」
あー、ま、マディか。茂みに隠したのとか使い魔にしている分とか……結構な量の『霊磁性流体』とリンクが切れかねない。
今の内に一年を通して人目につかない場所に蓄えておこう……。しくしく。これ元手の費用割とバカにならないんですよ?
見直したの撤回だよローラ=スチュアート。もう少し俺の使い魔事情を知っていてほしかった。
そんな形で。
俺達は急遽、学園都市に帰ってきたのだったとさ。
☆☆☆
どこかの場所で、一見パジャマみたいな……もとい縦ストライプの入った服を着た、セミロング赤髪な青年が、その報告書を読んでぐしゃりと皺を作った。
十三騎士の二人が嘆願書を書いてまで減刑を願った『地を貫く大樹の根』という木っ端組織。その根幹……だけでなく。
「どう考えても『
果たして。
彷徨いの声は、誰の標に導かれ。