とある性教の雌女昇格(メスメライザー) 作:無ければ作れ(Invenire404)
それとは対照的に、になるのだろうか。
御坂美琴。学園都市の
「ふふふ、もう万策尽きた感じですかー?」
「うるっさい!!」
奇妙な能力者だ。そもそも大人であるという点も奇妙であるが、「電撃を下位に人体を上位に」というよくわからない言葉を吐いたかと思えば、御坂の発した電撃をすり抜けるようになったし、かと思えば小麦粉らしきものの形を自在に変えてそれを武器としてきたし。
前者であれば、学園都市の科学者たちが涎を垂らしてこの男を調べるだろう。後者であれば、それこそ
その可能性の場合、親機と呼べるものは恐らく、男が守り続けている布の巻かれた大きなもの。
だから──御坂は、札を一つ切る。
狙うは直線状。──つまり、御坂、緑一色の男、親機が一直線に並んだ瞬間。
その手から放たれるのは、彼女の代名詞、
ああ、けれど。
「読めていますよー。優先する! 『小麦粉』を上位に、『相手の攻撃』を下位に!」
防がれる。否、すり抜けるはずだと読んだ。
それを、読み違えた。
「なん……私の
止まる。突き進めない。
いくら流体操作……あるいは粒状物質の操作に長ける能力者であったとしても、貫けない理由は無い。
けれど、事実は事実だ。
すり抜けてもOK、貫いてもOKということにするはずだった作戦は、無為に帰す。
「本当に、まーったく理解力がないんですねー」
「なら──」
上空。曇天へと働きかける御坂の行動は、即ち。
「んん~、優先する! 『小麦粉』を上位に『落雷』を下位に!」
「そうしてくると思った!!」
落雷が降り注ぐ……その寸前で、砂鉄を操って「布の巻かれたもの」を攻撃しようとする御坂。対し、緑の男は、
「優先するゥー、『小麦粉』を上位に『超能力』を下位に!」
「んなっ……!」
落雷、そしてまったく同タイミングの砂鉄のスパイクが、漂うばかりの小麦粉に防がれた。
落雷も砂鉄のスパイクも、自然物ではない。超能力の産物だ。
もしこの男の言葉が真実になるというのなら、御坂の持つどの手段でも、目的を達することはできなくなる。
……いいや。
大抵の場合、能力行使時に発する言葉というのは、『
目の前の男は巧みに能力を行使しているけれど、「すり抜け」も「物理法則の無視」も「小麦粉の操作」も、
もし自在であれば、言葉など必要ないし、言葉なしで使っているあの小麦粉は、わざわざ「小麦粉をギロチンの形にして落す」なんて手順を踏まずとも、御坂の砂鉄のように動かせて然るべきだ。
つまり、男の言葉は「イメージの補強」であり、且つ「ブラフである」という可能性が高い。
なれば。
御坂は再度電撃の槍を放つ。そしてその中心部に、溶けたゲーセンのコインを混ぜ込んだ。
「奇を衒ったところで効きませんよー。優先する、『小麦粉』を上位に、『相手の攻撃』を下位に!」
防がれる。『超能力』という大きな言葉を使わず、わざわざ『相手の攻撃』に言い直した。
次だ。
雷撃の槍を放ち──上空から、持ち上げた鉄材を落す。
「──否! 優先する! 『鉄材の動き』を下位に『空気』を上位に!」
上空、ぐわぁんとおかしな音を立てて弾かれる自由落下中の鉄材。
しかしその隙に雷撃が──。
「優先する! 『雷撃』を下位に、『人肌』を上位に!」
止まる。……そして、弾かれた鉄材もまた落ちてきた。
次だ。
電撃の槍を打つために、額付近に紫電を迸らせる。
「学びませんねー。優先するぅ! 『雷撃』を下位に、『空気』を上位──ゴァ!?」
──その、緑尽くめの男の身体を、砂鉄の塊が横殴りにする。
途中で電撃が空気に阻まれてしまって威力らしい威力が出せなかったが、これは。
「っふぅ。……つまり、あんたの能力の特徴は二つ。一つは物理法則の優劣関係の書き換え。どちらを上位にするか下位にするかを宣言することでイメージを補強して、その際に起こる物理法則を念動力か何かでその通りに見せているだけ。実際に物理法則が書き換わっていたら、世界中の"今雷の落ちている地域"に雷が落ちなくなっちゃうし、それが解除されたら余計大変なことになるはずだし。雷撃、って言葉がどこまでを包含するかは知らないけど、電磁波のことを言っているなら学園都市は一瞬でダウンするでしょうね」
「ぐ、ぅ……!」
「もう一つはその念動力を小麦粉に適応させる、恐らく本来の使い方。もしくは『粒状のものを操作する』っていう大雑把な能力かもしれないけど、こっちはあんまり
あくまで学園都市の能力者目線で、緑尽くめの男の全てを解析しきる御坂。
そのようなものではないと憤ろうとした男であったが、異教徒に何を言っても無駄だと思い直し、ゆっくりと起き上がる。
そして、布で巻かれていたもの。その一つ……棘、としか表現できないものを持ち上げた。
「……なんのつもり?」
「いやねー? これでも自重はしていたんですよー。こういうのちょっと、趣味が悪いかな、ってねー。……けど、異教徒相手なら、関係ありませんよ、ね!」
身体を抑えていたに見えていた緑尽くめの男。
それが、御坂に向かってとびかかってきた。
意図は理解できないまでも、されるがままはマズいと後ろに跳んだ御坂であるが。
「優先する! 『学生』を下位に、『空気』を上位に!」
「うっ!?」
飛び退いた勢いそのままに、堅固な壁にぶち当たったかのようにして叩き落される御坂。
そして。
「じゃあ、ちょーっと、チクっとしますよー、っと」
ちくり、と。
彼女の足に何かが刺さる。……そして、それが引き抜かれた瞬間。
「……」
「はい、良い子ですねー。──それじゃあ、アックアの援護でもしましょうかー」
「……」
言葉を発さぬ御坂。彼女は腕をゆっくりと上げ……まるで天使が如き姿で大男と戦う
刹那。
放たれた熱線にも見える
「エ?」
派手にぶっ飛ぶ男。
けれど。
「……」
今度は雷撃の槍を
効かなければ次。効かなければ次、と。
しかし当然、全て効かない。あの実験の時にわかったことだ。
なれば。
九月三十日十四時三十三分。
誰が呼んだか雷神御坂。大覇星祭に続き──再臨した。
☆☆☆
妙だ。
現在第二二学区で見えた人影を不良神父が追っている。高空から禁書目録がルートの行動予測をしている。使い魔はその伝達役を務めている。
が……『ドッペルゲンガー』は逃げ続けている。
やっぱり史実通りの自殺が目的ってわけじゃなさそうだ。しかし、あの操歯涼子にここまで大それた……ここまで被害を出すことができるだろうか。
それに、やはり「学園都市全体をシジルにする」というのも些か暴力的だ。ぶっちゃけその辺の紙に書いたって儀式は成り立つだろうに。
誰かが誘導したとしか思えない。そしてその誰かに該当しそうなのはやはりアレイスターだ。……が。
あっちの戦場。既に接触しているらしいスーパーセロリマンとビリビリとかいう凶悪コンビvs左方・後方ズの戦い。アレイスター的にはあっちがメインコンテンツであるような気がするんだよな。俺のスーパーセロリマン計画に乗じてアレを完全体の天使にしようとしている気がする。いや、その上か。
アックアの持つ「神のベクトル」をセロリマンに解析させて、なんらかの衝撃を与えることで覚醒を促す。あいつの十八番のやり方。
さらにビリビリという「もう一つのアプローチ」の開花も狙っていると思う。あの霊装……『聖ヒエロニムスの棘』はいつぞやの雷神御坂を再現するのに適しているから。
だからこっちに……ドッペルゲンガーをサブプランに使っているようには感じないんだよな。誰が狙いかよくわからんし。
……んー、まぁ俺、ということはあるのか? あるいは……便利リモコンも最大効率とか言ってたっけ、あいつ。
ふむ。『アルモニ屋』の守りは強化しておくとして……あとは、そげぶ&アシメエロ女と。
そして……不気味なくらい、一切姿を見せない……ヒューズ=カザキリ、か。
作られていないということはないはずだ。製造ライン……ドラゴンを成立させるための必要なパーツ。
それがこうも姿を現さない理由はなんだ。
「──それは、当然に。私というカタチを製造ライン無しに作り上げるためのすべを、お前は奴に見せすぎてしまった」
……流体の使い魔の背後、ではない。
本体の俺の背後から……声が。
「初めまして。否、久しぶりだというべきか、『魔女の夜宴の角山羊さん』?」
「……エイワス」
後ろにいた。光り輝くモノ。最下層の天使。あるいは、天を使う者。
「そう敵意を向けないでくれ。
……。
ノイズの一切無い言葉で、その声が俺に届く。
それがどういう意味か、など。
語るまでもないけれど。
「……それで、何用だ。俺は今人間ライフを謳歌中なんだが」
「いないモノを探すのは些か憐れなのでね。風斬氷華。ヒューズ=カザキリという存在は、この位相においては私の製造ラインではなくなっている。君はこの街に住まう人間を検索するシステムを有しているだろう。
「……風斬氷華が、普通に学生をやっている世界、か。そりゃ、なんとも」
奇跡みたいな御伽噺だ。
それでいて……なんの特別でもない普通の学生だからこそ、禁書目録と友達にならなかった、だなんて。
「
「また、本人の嫌がりそうなあだ名なことで」
「それは仕方ないだろう。あれは今なお天使であるつもりも悪魔であるつもりもドラゴンであるつもりも、あるいはヒトであるつもりさえない自罰者だからね」
その通りだ。あそこまで来たら……少しくらい自分を許したっていいだろうに。
本当に一方通行な人間だよ。
「用はそれだけか」
「否、もう一つ。──そろそろ身の振り方を考えたまえよ。ここから世界は驚くべき速度で変わるのだから」
「知っているとも、それくらい」
「ならば何も言わぬとも。──さらばだ、同族。君の先行きに幸多からんことを」
……余計なお世話の塊だな、アイツは。
しかし、そうか。……まさかいないとは。いや、ある意味でいるのか。
……思考が乱されたけど、じゃあそこは考えないものとして……もうすぐセロリマンとビリビリのところにそげぶとアシメエロ女が到着する。
ここの、再会は何を呼ぶ。ありきたりに……暴走したビリビリが敵対するセロリマンに、勘違いしたそげぶが殴りを入れにいくか。
あるいは、別の展開か。
不良神父と禁書目録の方は、そこまでアシストしなくてもいいだろう。ドッペルゲンガーに不良神父は効果抜群だし。
気を付けるべきは第二二学区の話自体がブラフだった場合くらいか。
となれば、シジルの動きを天空で監視しつつ
さて。史実ではこの事件をきっかけに第三次世界大戦が起きたに等しいけれど。
此度は、どこまで広がるのかね。
☆☆☆
有機物質の全てを分解する滝のような攻撃。
アックアはそれに耐えながら、「もう一つ」の流れがあることに気付いた。
「あ、れは……最早天使の階層ではなく……!」
分解する滝の攻撃。それはアックアからの反撃ではなく、その降誕したものからの攻撃によって中断される。
先程この眼前の『天使であり悪魔であるヒト』によって弾き返された、不幸にも──あるいは作為的に──テッラへと直撃した稚拙な攻撃とは質が違う。
一つ段階を飛ばしたところにいる存在。天使の階層の、ギリギリの上辺を彷徨う者。
溜息を吐くアックアである。
その後……数々の攻撃が
「……てめェらの仕業だなァ、こりゃ」
「是を返す。恐らくテッラが使用したのであろう。『聖ヒエロニムスの棘』の霊装。対象の足にそれを刺したあと、引き抜くことで、隷属の契約を強制的に成立させる術式である」
「……」
「隷属時の命令は、主が死のうと気を失おうと継続する。憐れであるが、その娘はもう貴様を攻撃することしかできない」
「……クソやろうが。──オイ! どっかで見てンだろ!」
声を張り上げる
「やッぱりか、この覗き見野郎が」
「"こっちもこっちで色々あったんだ、許してくれ"」
「あァ。……で、第三位を助ける方法を教えろ。どンだけ荒唐無稽でも構わねェ。俺は今回取りこぼしなしを己に課してンだ。そこにゃ勿論第三位も含まれる」
「……フィアンマの警戒していた魔術師、『
学園都市に向かう前のことだ。
まさか『神の右席』まで『
かつて、聖母の象徴を有していたローマ正教の聖人を取り込み、 己が信徒にしてしまったという怪人。三百年間、あちらこちらで信徒を作り続けた何者か。
「忠告しておこう。その魔術師は」
「あァ、危険だのなンだの、身を亡ぼすだのなンだのを言いてェんだろォが、今は黙ってろ。解決方法が妥当なモノだってンなら悪党の口から出たモノだろォと信用する。検算は俺がやるンだ、含まれる悪意なンざ除去してやりゃァいい」
己の能力。超能力ではなく、ヒトとして持ちうる全能力に、絶対の自信があった。
声を荒げなくなった……非常に凪いだ声色の
「で、どォだ」
「"結論から言うと、無理だ。霊装強度が高すぎる"」
「……続きは? オマエの話が長ェことは織り込み済みだ。早く話せ」
「"お前さんは知っているだろう。あの最弱の拳を"」
「……。……あいつは、どこにいる」
「"さぁ? だが、どこにいたとしても、この状況で現れないと、そう思えるか?"」
己とは違う、と。
間に合う──まだやり直せるところで現れることに特化した、ヒーロー。
「そいつは、俺には、できねェのか」
「"……あの拳の再現を、ってか"」
「そォだ。いつか来るヒーローをひたすら待つだけ、ってのは……ヒーローの端くれに数えられた学園都市第一としちゃ、どォにも納得いかねェ」
いつか来る救いを祈る。
今更、
ヒーローの登場を願う、だなんて。
「"ま、やるだけやってみるのはアリだ。心の方は俺がなんとかしてやろう。……良いか、大体のことは前回と一緒だ"」
「一度空気を読んで攻撃を中止したであるが、そこまでの長話をされるのであればこちらから行こう」
「"まぁ待てって。ほら、これで遊んでな"」
ぽい、と。アックアに投げつけられたもの。
それを見て──彼は静止する。
「……なンだ。意識でも奪ったのか?」
「"似たようなもんだな。あいつはローマ正教徒に見せかけたイギリス清教徒。その信仰がどこにあるのか、ってのは若干定かじゃなかったが、使う力や術式から逆算してタブーを見抜く、ってのは俺の基本技能でね"」
「……まァ、良い。そンで?」
「"話の続きと行こう。大部分は大覇星祭の時と同じで、外側を剥がして内側にあるエネルギーを全部喰い尽くすなりブチ飛ばすなりをしなければならない。もう『
「あァ。生成だけはするなと言われているが」
「"その通り。してはならない。お前さんはこの場に満ち溢れる力を統御するだけで良い。残念ながらお前さんではあの最弱の拳を再現することはできない。だが、あれよりもすごいことができる"」
真白に光る身体。頭部付近を宇宙のように煌めかせる第三位は、既に既存の法則のどれにも当てはまっていないのだろう。
けれど、自身の意思ではない。霊装などというものに植え付けられた力なれば。
「"力業だ。中身を傷つけずにその力の全てを剥がし、上空……いやさ宇宙まで逃がして放出させる。恐らく霊装の魔力はあの真っ白なエネルギーの陰に隠れて層を作っている。それを見つけ出して剥がしてしまえば、第三位は自我を取り戻し、己を律するだろう。どうだ、できそうか"」
「そんなことで、良いのか」
「"学園都市における魔術のイメージは、儀式が必要だったり生贄が必要だったりと、数多くの手順を踏ませるもの、みたいに描写される。だが、実際の魔術はピンキリなんだよ。確かに膨大な準備を必要とする魔術もあるが、こうやってシンプルな構造をしているものも多い。学んでおけ、初心者"」
安堵があったのやもしれない。
そんなことで。
そんなことでいいのならば。
「やってやるさ。こちとら……曲がりなりにも。何の事情も知らねェ、何のかかわりもねェ
結局それは、全てを救えないことに対する言い訳でしかなかった、と。
「そンで? 怪人『
「"できないな。普通に負ける。……が、足止めくらいなら任されるぞ"」
「あァ、充分だ。──頼んだぜ、
立ち位置が変わる。役割が変わる。
そして流体の鳥は──ようやくフリーズから覚めた、アックアの眼前に。
「……つまり、原理としては、
「"おお、そうだ。その通り"」
「『
「"真実だよ。ただ、俺が逃げてばかりだったのは、やり合う意味を感じなかったからだ。──決して弱いからじゃあ、ないんだよ"」
非常に鋭い槍らしきものがアックアの後方より飛来する。
彼はそれを、影から取り出した剣で薙ぎ払い、対処をした。
したはずだった。
「む……粘性。否、不定形であるか」
「"どちらも正解だ、聖人!"」
地面より突きいでしは巨大な槍。それを名も無き武骨な剣で防ぎ斬り、周囲から飛来する滴も避け切って。
水の属性を感じない流体。神の力が通っているわけでも、魔力が通されているようにも見えないソレ。
どのようにして自在に操っているのか。
試しに一つ、叩き切ってみれば。
何のダメージもなく繋がり、またも攻撃して来る。
「成程。等しく怪物であるらしい。──異教徒、それも学園都市という危険なものの中に住んでいるとはいえ、子供を手にかけることには後悔と自責があったであるが──」
アックアは……その口角を、僅かに上げたように見えた。
「怪物退治であれば、心おきなくやれるであろう。──行くぞ」
第二ラウンド、開始。