とある性教の雌女昇格(メスメライザー) 作:無ければ作れ(Invenire404)
切り裂こうと叩き潰そうと、魔術で散らそうと何をしようと。
弱らない。減退しない。
だというのに聖人の肉体を貫き得るスパイクとなったり、積極的に窒息を狙ってくる流体。
「……言葉の通りであるか」
「"ん? 何の話だ"」
「貴様が逃げ回っていたのは弱いからではなく、戦う意味を感じられなかったから、という話。どうやら真実のようであるな」
流体は、「んー」と言いながら、そのカタチで後頭部を掻くという奇妙な動作をしたあと。
「"まぁ、概ねそういうことだ。といっても学園都市に根を張ってからそれなりに経っているから、ってのは大きいかね。俺は古臭い魔術師なもんでね、現地の工房化にどれほど時間をかけられるかで強さが変わるのさ"」
「そういうことであるか。……一つ、先達としての貴様に問いをする。不定形の使い魔を遠隔操作する以上、ここまで精密に操る方法は二つ。一つは使い魔に意識を映し、完全な操り人形とする場合。もう一つは使い魔のもととなった生物を死霊として憑依させ、元来の生物通りに振る舞わせるという種法。──『
「"何がだ、二重聖人"」
「今私が知覚している限りで、八十六体。上空に鳥の形で飛んでいる使い魔。あれらも貴様の使い魔であろう。魔力を辿れども、か細い線が天空に向かって繋がっているだけの使い魔。あれらと私に対峙しているその個体が同等量の操作であるとは言わぬが、どう考えても割ける意識が多すぎる。これをどのようにして成し遂げているのか、だ」
「"ハハッ、真面目か? なんで敵にそんなことを教えなきゃなんだよ"」
「真理である。だが、真似ができるとも、対処法を考えつけるとも思えなかった。ゆえに聞いたまでである」
流体は……にぃ、と笑ったように見えた。
そうして、地下から、あるいは空から。瓦礫から建物から、そこかしこからそれを……流体をとくとくと汲み上げ、やがて……一人の人の形を作り上げる。
「"俺に教授を願うか、二重聖人"」
「然り。『
「"……別に、あいつらが今どこで何やってるか、なんざ知らねーけどな。……ま、良いだろう。トップシークレットだ。──俺は魔術師であり、超能力者でもあるわけさ"」
「否、その二つは両立しないはずである。……。……まさか」
掌を上に向け、日光を受け止めるかのように、周囲にある流体を浮かべている魔術師。恐らく男性であるもの。
魔術師であり超能力者。矛盾するはずのそれが意味するところは、つまり。
「原石……であるか」
「"その通りだ、聖人"」
原石。
学園都市のような人工的な手段に依らず、超能力を発現させた天然の異能者。
魔術、あるいはそれに包含される超能力も、遥か昔に原石の力を羨望の対象として見た者達によって、彼らに追い縋ろうとして生み出された技術だ。
「"学園都市の開発。それが魔力生成の阻害をするらしいが、その演算工程を挟まない
「……成程。使い魔の額にある呪符は、あくまで発声装置でしかないわけであるな。だからこそ辿れぬほどに魔力が薄い」
「"良いね、その通りだ。元から俺はそこまで大それた魔術が使えなくてな。死ぬほど準備をしてようやくあんたらと渡り合える。俺の最たるところはそこじゃない。わかっているだろう? 発声や結界の魔術でも、こいつらを操る原石の力でもない──
事実だった。出立前、わざわざアックアたちの前に出てきてまでその警告をした『右方のフィアンマ』。
──お前達まで『
おかしい。おかしかった。
「"超能力の中には、『
敵意が溶ける。害意が失せる。
武器を向けるべきではないと、感じてくる。
「"どうだ、聖人。──俺が、教師に、見えるか?"」
「ぐ……が、
その全てを引きちぎり、愛用のメイスでヒトガタを叩き潰すアックア。
けれど、無駄だ。流体はメイスに、腕に巻き付いて、その何も持たない顔をぐにゃあと歪める。
「"『
「私の、脳裏、ニ……」
「"
「侵入はぁぁ……許さぬ!!」
「"おっと"」
それは『神の力』の純粋発露である。それにより、バチン、と流体の全てを弾き飛ばすアックア。
だが、不利を悟ったらしかった。
「搦め手に特化した魔術師。……これほどとは、油断していたし、下に見ていたことを認めるである。……テッラがあの状態であり、私が貴様に勝てぬ以上は撤退を選択しよう」
「"そうかい。そりゃ重畳だ。だが一つだけ、こっちからも聞かせてくれ、ウィルアム=オルウェル"」
「……今の私は『後方のアックア』である。して、何用であるか、『
「"聖ヒエロニムスの術式。棘と石がある以上、『ヴルガータ』の方も持ってきているのだろう?"」
「否。あのような非道な術式を使わずとも、学園都市を落すことは可能である。貴様と対峙するまではそう考えていたゆえ、置いてきた。あれは些か多くを殺しすぎる。そんなものの使用を認可することはできない」
「"そうか。つまり『左方のテッラ』の懐にある本はただの読書用の本で、『ヴルガータ』とは何ら関わりの無い本であるということだな?"」
「──なに?」
アックアの視線がそちらへ……気絶しているテッラへ向いた直後のことだった。
激しい光。聖人でさえ目を開けていられない程の光が、宇宙へ向けて照射される。
その根元にいるのは、天使であり悪魔でありヒトである存在。
「"ちょいとあれを手伝いに行くんでな。ウィルアム=オルウェル。
そう言って光の方へと歩いていく『
武器を持ち直せども、学園都市を見ても。
もう、そういう気は起きない。アックアがいくら自己分析をしても、だ。これは重症である。
「……テッラを問い質したのち、精神修行をイチからやり直すであるか」
あるいは、彼が元よりローマ正教徒ではない、という部分が幸いしたか。
それでも入り込んできた『
しかし、そのスタンスは瞬時にして崩れることになる。
それが、顕現したからだ。
☆☆☆
ジャングルジムと化した風力発電施設。そこでの戦いは、長期も長期に長引いていた。
「くそ……ちょこまかと!」
「"すている、後方一階下だよ!"」
「ああ、ありがとう!」
ステイル=マグヌスの放つ炎、その火力は一級品であり、敵……ドッペルゲンガーに対して有効打足り得るものである。
あるが、では削り切れるか、といったらそんなことはない。
禁書目録と楽園築きの見解によれば、その補給源が学園都市全体の瓦礫と同量であるなどと言われたら、いくら禁書目録の前といえども悪態を吐かねばやっていられない。
決定打が無い。敵の仕組みを崩し得る術がない。
「クソッ!」
本日何度目かわからない悪態を吐きながら、禁書目録の指示通りの場所へ向かい……その壁面から生えて、ぼーっとステイルを見ているドッペルゲンガーに炎を食らわせる。
また移動だ。攻撃はしてこない。ただ堅いだけの敵を──。
「……待て、どうして攻撃をしてこない? いや、まさか……今までのやり方を考えると。……インデックス、『
指示の内容は、的確に伝わったらしかった。
ややと時間の経たぬうちに、その結果が伝えられる。
「"今日のすている、凄すぎるかも。ドッペルゲンガーの足跡と、すているの炎で燃え広がった焦げ跡で描こうとしていたのは、『アブラリメン書』の『BEBHER』だと思う!"」
「成程ね。それで、僕が行っちゃいけないところはどこかな」
「"上層だよ。一番上から数えて二階層分! そこに手を付けなければ大丈夫だと思う"」
「了解! ありがとう、助かったよ」
学園都市の精緻さで正確に組まれた角形に刻まれかけていたのは、『アブラリメン書』にて用いられる魔術円を用いないタイプの方陣。これもまた、ステイル=マグヌスがルーンの魔術師であるからこそ気付けた話。
「『BEBHER』……浄化、あるいは身体を癒す、か。……やはり、母親の病を治すため、というやつか。……それで、ここまでの人間を巻き込むんだから、世話が無いね」
煙草を吸って、一息。
……考えなければならない。敵は今、まさにインデックスの言った場所の二層部分にいる。あれを倒さねばこの地獄が終わることはない。学園都市のためになんぞ戦うつもりは一切無いが、彼女の……インデックスの生活が脅かされることを良しとできる性格でもない。
彼がミスをしたとすれば、たった一つ。
──火の手が上がる。予め設置された導火線を辿り、焦げ跡がついていく。
「"すている、ダメ! そこは"
「いや、僕は何もしていない。これは……」
「"やられたな。配電盤だ。そもそもここは風力発電施設。火を起こし得るものなんざいくらでもある。というより、偶さか現れたお前さんが火を扱っていたからこれ幸いにと誘導していただけで、初めからこうやって焦げ跡を刻むつもりだったと見たね"」
「そんなことはどうでもいい! 『
「"無理無理。俺の流体は水の属性を有していない。むしろ土に近いんでな"」
「じゃあ、どうす──ッ!?」
九月三十日十五時ジャスト。
月曜日にして月の支配する時間に入るこの時間は、七日間の中で最も天上への扉が開きやすいタイミングであると言える。
ヒトで作り上げた巨大な『ブエルのシジル』。それを見下ろす位置に作られた、これまた巨大な『BEBHERの魔方陣』。
いずれも治癒のための知恵を要求する術式であるが、魔術に素人である者が開く扉なれば、出てきたとしても本物ではないはずだった。
生贄を如何に良くしようとも、呼び出す手順が違えばおかしなものしか現れない。
ただ、この場には、『神の右席』と、さらにそうでありながら聖人であるものと、天使でありながら悪魔でありながらヒトであるものと。
そして、『向コウ側』へと接続した『
ステイルの言葉は最後まで紡がれなかった。
その顕現を、見たからである。
☆☆☆
時は少し遡る。
怪物に後を託し、魔術の闇に囚われてしまった第三位の前に降り立った
絶えず
バチン、と。大きく弾かれた。
「ッ……なンだ、マジュツの力だけじゃねェな……科学もだが、それ以上に……何かが混じってやがる……!」
未知のベクトル。それに対し、再度の接触を図る
その腕が、今度は引っ張られるようにして牽引される。
「チッ」
これを転がることにて回避する
「(最初は上方……反射に近ェ弾かれ方。これはあっちのアックアっつゥやつに吹き飛ばされた感覚と似ている。つまるところ、聖人のチカラ。神の子のチカラ。その名称は何だっていい。アレは明らかに"それに類するチカラ"……マジュツによって生成されたモンとは別物だった。第三位はマジュツによって隷属したンじゃねェのか? ……第三位は……何と繋がる才を持ってやがンだ?)」
考えながら、
手で起こした風はどう動くのか。ベクトル操作にどんな誤差が生じるのか。音はどうだ光はどうだ、
「(この『層』は第三位の雷を弾くことはない。的確にオレのベクトル操作のみを弾いている。っつゥことは、だ。俺の攻撃を俺の攻撃であると認識するための何かがある。悪意も害意も乗せたつもりはねェが、もし超能力にタグ付けってもンが為されているとするのならば、あるとすりゃ
恐らくはそれと同じ事象なれば、同じ手法にて攻撃は可能。そして。
「(別々のエネルギーが『仕事』として完全に同一の振る舞いを見せること自体は確かにある。……が、これが発想の飛躍でねェンなら……まさか、
急速に──
外なる力。その正体を知らぬままに、こちらの世界で「変換されたチカラ」と比較し、誤差を修正し、理解し、さらに手を伸ばし。
雷神御坂──木原幻生の見出したもう一つの可能性。
理解だけではない。確実に、だ。
確実に……彼女を覆う『層』の、その一層目のベクトルを扱い、反発を利用して……剥がし切り、丸めて、中空へ待機させることに成功する。
言語野は潰されていない。その翼が容量を付け足している。すぐに発散しないのはそれによって起こる何かを避けるためだ。できることはできる内にやっておくべきだと。
新しい『層』に手を付け、剥がし、丸めて。
直接触れているわけではないから"ある鉱石"が生成されることもない。一つ、また一つと、光球が二人の周囲に増やされていく。
──そんな、時だった。
申し訳ないと思いつつ、努めて無視をしようとした
このタイミングでかかってきた、ミサカネットワークにおける上位個体たる
演算は正直に言えば厳しいと思える領域でも、思考を潰していないのが功を奏したと言える。
だから、ちゃんと、出た。
「なンだ」
「"出てくれた! あのねあのねあのね! 今ミサカネットワークにお姉様の意識が漏出してて、でもおかしな言語に書き換えられてて、妹達全体で頑張って翻訳したの! ってミサカはミサカは急いで伝えたくて声を張り上げてみる!!"」
「あァ、急いで伝えてェなら落ち着いて言え。声を張り上げられちゃァ聞こえるものも聞こえねェ」
「"そうなの? じゃあ普通に話してみる。……お姉様は、助けを求めてるみたい。さっきまでは恐怖と不安一色だったけど、少し前から希望に変わった。でも、沢山沢山警告してるみたい。って、ミサカはミサカはさっきまでのテンションをどっかにやって普通に話してみたり"」
「警告? 第三位はなンて言ってる」
「"そこから先は、異能とかそういう類じゃない。学園都市の闇とか、外からの侵入者とか、そういうものを消し去ってしまいたいと私が願い、呼んでしまった、どこか別の世界のチカラ。これに触れたら誰だってタダじゃ済まない……って内容の発言をずっと繰り返してるみたい。ってミサカはミサカはお姉様の精神状態を心配してみる……"」
どこか別の世界のチカラ。消し去りたい意思の権化。
確かに、現在の『層』は今までのものとはどことなく雰囲気が違う。おどろおどろしいというか、言うなれば今までのが
しかし、危険であるのだとしても。
「安心しろ。第三位は必ず助けてやる。オマエらは、冥途返しのところで大人しくしてろ。良いな」
「"う、うん。……なんだか、あなた……雰囲気が、ふんわりしたかも。って、ミサカはミサカは伝えてみる"」
「ふンわり、ねェ。……いつになく、穏やかな気分なンだ。それが原因かもしれねェな」
「"だとしたら、それは成長なのかも。今まで認めることができなかったものを、成長して、噛み砕けるようになった。だとしたら、今日はあなたの誕生日かも! って、ミサカはミサカは教えてくれなかった誕生日をこの場で設定してみる!"」
「──……」
満ち足りる感じがあった。
思い出す感じだ。
輝きを覚える。
穏やかな心が、より研ぎ澄まされていく。
「……あァ、それでも良い。……すまねェな。ちょいと……やらなきゃいけねェことがある」
「"うん、わかってるから! お話をしてくれて……お姉様を助けてくれて、ありがとう! じゃあね、無事で帰ってきてね、って。ミサカはミサカは、あなたのこの先の幸運を、心から願ってみたり!"」
「あァ、じゃァな。必ず……無事で帰るさ」
通信端末を切り、またポケットへと入れ直し。
息を吸い。
息を吐いて。
「つくづく……学ぶことばかりだなァ、オイ」
また、獰猛に笑う。
取りこぼしなし、だ。
精神状態がマズい状態にあることなんて、見ればわかる。魔術による隷属で、強制的に超能力を使わせられるという状況が、『
なれば迅速に。それでいて、安全に、だ。
腕が折れていたってダメだ。それは無事とは言えない。指の一本でも、くれてやるつもりはない。
食らわれた、というような感覚。袖口の一部に噛みつかれ、破られた。その僅かな感触が無ければ、恐らく腕ごと。
なれば、と。
中空に待機させている"神の子のチカラ"。その操作を崩し、エネルギーの塊を、粘土でもこねるかのようにして形を変更していく。
広げて、伸ばして──まるで、大きな手のように。
さらにそれを動かして、"異界のチカラ"にぶつける。
激しい反発はあるが、減衰は認められない。ならばこれを防護服の代わりとすればいい。
誤差の修正。"神の子のチカラ"と"別の世界のチカラ"にはなんらかの親和性があるらしく、計算式の一新ではなく誤差修正で対応できる様子だった。
ミチミチと、粘性のあるようなその『層』を、じっくり、じっくりと剥がしていく
決して焦らず、流行らず。
正確に。確実に。
──そうして、その『層』が見える。
"それに類するチカラ"……魔術の『層』だ。
それでも焦らない。
この"異界のチカラ"は、扱いを誤ったが最後だ。慎重に慎重に、それでいて迅速に……それを剥がし。
やがて、"異界のチカラ"さえも中空で球を成す。「お手玉」ができる程度には扱えるようになった、ということだ。
そうして、あとは──それに類するチカラを剥がしてやれば。
「ぅ……あ、あれ……」
「意識が戻ったか。だが、もうちっとじっとしてろォ。まだもう一枚『層』がありやがる」
「……
「何意外そォな声を出してやが……。……いや、そォだ。その通りだ。すまねェな、調子に乗っていた」
取りこぼしなしと決めたのだから、助けるのは当然だ。そう返そうとして、言葉に詰まったのだ。
第三位……御坂美琴からすれば、その疑問は当然だろう。
なんせ
「あ、違うの、そういうことを言いたかったんじゃ……」
「良い。気にしてねェ……じゃねェな。ちゃんと、考えてる。だが……今は、従え。必ず……助ける」
言葉を改めて、そうして。
最後のチカラを、『層』を、剥がし切った。
──その、瞬間。
「!?」
ふらりと倒れる第三位の身体を支えようと腕を伸ばした瞬間、すべてのチカラが
いくら演算を重ねようとも関係ない。否、制御を外れたのではなく──奪われたと、そう言うべきだ。
まるで。
まるで、
「"
「わかってンだよそンなこたァ! 今制御を取り戻すから──」
「"違う、上を見ろ!"」
上。上だァ?
と、彼が上を見上げれば。
そこに──無数の瓦礫を束ねて作ったかのような、光の翼を有する……超巨大なナニカが、悠然と佇んでいた。
目算4,000mはある巨人。雲を突き抜けるようにして立つナニカ。
「ンだ、こりゃァ……」
その巨人が──
「ッ、ちィ──!」
腕が振り上げられ、振り下ろされる。気がした、ではない。確実に目をつけられている。
故に
反射はできない。ベクトル操作が上手く働かない。
複数の力を動力源としているのがわかる。引っ張る力と弾く力、さらにはベクトル操作を抜いてくる力までもが複雑に絡み合い、計算式の意味を失くす代物に変わっている。
抑えきれない。ベクトル操作を抜かれ、そして、思い切り弾き飛ばされ──。
「神裂!! あいつと御坂、頼めるか!? 状況は良くわかんねぇけど、どれが敵なのかはわかる!!」
「良いでしょう」
腕の振り下ろし。
霞んで見えるほどの巨大に対し、立ち向かうのは人一人の右手。
なんとか守った頭部は、揺れてはいるが、その姿を認める。認められないはずがない。
何かワイヤーのようなものが御坂と
それを……純粋な目で、見る。
「てめぇがどこの誰の産物で、この街にどんな思いがあって、何が目的で生み出されたのかなんて、知らねえ!」
「(……あぁ)」
理論ではなく。
理屈ではなく。
「けどな! そんな高いところから見て、誰が誰かもわかんねぇような距離から叩き潰して良いものなんて、この街にはねぇんだよ!! だから俺は、その幻想を──悉く、ぶち殺す!!」
「(……どれだけ、手を伸ばしても)」
巨人の腕と、あの、ちっぽけな「たった一人」の右手が触れた瞬間、甲高い……ガラスの割れたような音が響く。
何かが千切れる音。腕を構成していたもののエネルギーが悉く殺され、一瞬、その腕が資料にあった人工筋肉の、その骨組みだけに戻る。
──だとしても。
それがなんだとばかりに──骨組みが、叩きつけられ──。
「……よォ。遅かったじゃねェか、
「……ハッ、三下?
いつの間にか鋼糸を千切り、抜け出し。
その黒翼にいつの間にか白を混じらせた状態で……彼を、上条当麻を受け止めた。
彼らの眼前に、おあつらえ向きと言えば良いか。
透明な、流体で出来た足場が組み上がる。
「チッ、演出好きが」
「これは、『
恐る恐るといった感じに足をつけてみると、見た目に反し、かなりしっかりした足場であることが分かった。
飛行手段の無い上条にとっては、非常に助かるものであると言える。
そうして二人は、見る。
腕を千切られたかに思われた巨人は、しかし、その腕に瓦礫を再装填する。何事も無かったかのように再生したのだ。
けれど。
「……俺があの身体に満ちてるおかしなチカラをぶち殺す」
「あァ。俺があの身体の人工筋肉とやらを千切り壊す。……だが、
「……何があったかは知らない。お前が今、
「……あァ。アタマのてっぺンから、足先まで、理解してる」
「じゃあいい。それがわかってんなら、俺はお前とだって足並みを揃えられる。……そうだ、これ」
上条は、それを……『
「この中に、状況の理解に繋がる資料が……って、そっか、あの人の通信端末を預かっているんだっけ」
「あァ。そいつも紛う方なきヒーローだった」
「じゃあ、追加資料を送信する。道中で集めた情報と、魔術に詳しい奴の考察を乗せたものだ。『
「助かる。……マジュツに関しちゃ俺は見習いも良いところだ。情報があるに越したことはねェ」
「……ハハッ、ホントになんかあったみたいだな。……なぁ、お前、幾つなんだ? あと名前も教えてくれよ。
「今聞くことかよ。……年齢は、覚えちゃいねェ。十五か、十六か、その辺だろォが。名前も……
「ああ。俺も多分、十五か、十六だ。高一だし。実は俺も年齢は覚えてないんだ。そんで、名前は上条当麻。……もう少し色々話してみたかったけど、どうやら奴さんがお怒りの様子だから……また、落ち着いた時にでも」
「……そォだな。そうさ。こんな……バカげたモンをぶち殺してやれば……落ち着きは、取り戻されるさ」
あるいはその時点で。
これが長い長い夜の始まりだと、気付いていたのやもしれないが。
今注視すべきことを正眼に。
「知っての通り、俺の能力は『
「任せとけ、
行動を、開始する──。