とある性教の雌女昇格(メスメライザー) 作:無ければ作れ(Invenire404)
そうして、その作戦が敢行される。
偶像の理論を無理矢理に当てはめた心臓融解。そのための熱湯を運ぶ使い魔と上条当麻を、なんとしてでも守り抜く
なんとアツい展開か。
小さな人間たちが共闘して巨大な敵を倒す。王道であればこそ、そこへ参戦する者達の感情は一つになる。
──どうして一つになれたかなど、一切考える暇もなく、だ。
誰が覚えているのだろうか。
学園都市の子供達の教義をすり替える──そんなことが彼らの目的だったわけがない、なんてことを。
彼らが、二人がかりでやろうとしていたことは……本来、安東気朔という一般人を殺しにきていたはずだったじゃないか。
それがいつの間にかすり替わっていたことを、すり替えられていたことを、当事者の誰一人として気付くことができなかった。それよりも大きな脅威が現れたから、全ての意識がそっちに行って、束ねられて、「元々の動機」なんて
どうして「神の右席」が一般人を殺しにきていたのか。ローマ正教の指示なんてものではないことくらい、そして本当に一般人ならこの規模の魔術師が必要ないことくらい、通常の上条当麻なら気付けただろうに。
……とはいえ、もう無理だろうな。
アックアが真面目な奴で助かった。あいつを取り込めたのはかなりデカいが、逆に神裂火織が取り込めなかった。どころか違和感を……疑念を抱かせてしまったのがチョイ痛。
そんでもってこの結果を受けて、必ずアイツ……フィアンマは動くだろう。あれが動くなら、俺も動く。
だってそのための準備をばら撒いてきたのだから。
使い魔の音を脳裏に流す。
──大切な人のためなら、ここまで多くの人に迷惑をかけても許されるとか……馬鹿言ってんじゃねぇよ。
──お前が今やろうとしていることが! どういう事態を引き起こすのかわかってんのかって聞いてんだよ!!
──自分と同じ境遇の人を、自分と同じ苦しみを抱く人を増やしまくって……その顔でお母さんに再会の言葉を告げるのか? その手で、その口で! 本当にそれがお前の目指したかった場所なのかよ! 違うはずだろ! 内臓の代わりができるくらい凄いサイボーグ技術を作ったのは、母親にもう一度だけでも目を開けてほしいっていう、痛みを訴える臓器をどうにかしてあげたいっていう、ただそれだけのことだったはずだろ!
とか。
──オマエにもしなにか失敗ってモンがあるとすりゃ、『
──尤も、オマエにとってのそれがマジュツだったンだろォがなァ。……ったく、どいつもこいつも。ちったァ学園都市の一員ってことに誇りでも持ちやがれ。
──俺は持っちゃいねェが、オマエら科学者なンだろォが。ねェのかよ、矜持の一つくらいよォ。
とか。
とはいえ正論パンチは正直意味ないと思う。そのドッペルゲンガーにへばりついている魂かなり希薄だし。もう妄執だけで動いている……判断や外敵検知は機械とほぼ変わんないと思うよ。
氷の心臓は融解を始めている。
この説得に意味は無い。事実
そうさな、俺から言えることがあるとすれば。
「"あまり考えたくないことだが、彼女が機械なのであれば、どこかのサーバーにでも意識がアップロードされていた場合は"」
とか。
「"あくまで可能性の話だ。そもそもこの騒ぎに乗じて出てきていない時点で、仮にアップロードされていてもオフラインサーバーなんだろう。このドッペルゲンガー含めてそう簡単に作り得るとは思えないし、……つまり、だな"」
みたいなエッセンスを、さも心苦しいかのように吐き出せば。
──ここで、塵も残さねえくらい消し飛ばしてやらねェと……失敗に終わったことすら認識できねェままに、新しいドッペルゲンガーが出来かねねェ、ってか。クソッタレめ。
──救う方法は……本当に、無ぇのか。
──オマエのそういうところは心から眩しく思うがな。殺すべき時、ってモンもある。……任せろ、破壊は俺の領分だ。
──……すまない。アンタにも……彼女にも。
──はン、いっちょまえに気負ってンじゃねェよ。つゥか、オマエがいると計算が乱れる。そのクソ流体と共に外へ出てなァ。……ンだよ。
──いや。……お前にも、色々あったんだな、って。
──……うるせェ、と言いたいところだが。……落ち着いたら、話すさ。贖罪も含めて。
という展開になって、上条当麻を脱出させつつ、残った一羽で
「"良い友達ができたようじゃあないか"」
「うるせェ。……一応俺は空気ってモンを読んでやったンだが、気付いてンだろ?」
「"ああ。ありがとう、俺の名を呼ばないでくれて"」
そう、
呼んでくれてもよかったのに。そういう準備もしていたのにな。
「一つ聞いておくぜ、『
「"なんだろうか"」
「オマエは──
「"うーん。それは本当に難しいんだよなぁ"」
「どォいうことだ」
「"クローン技術自体は利用しているが、妹達と関わっているかは定かではない。俺が製造ロットを有しているわけでもなし、技術の購入者である、というのが一番正しいか"」
用意していた答えだけど、さて。
「……クローン技術を、どう利用した」
「"俺の身体の修復"」
「あァ……三百年前から存在している怪人だのなンだの、地上で騒いでたのはソレか」
「"聞こえていたのか。まぁ、そういうことだ。俺は未だに生身を維持している怪人さんでな。クローン技術というのがあったから、これ幸いにと購入した。とはいえ前回負った致命傷を治すくらいにしか使えなかったがね"」
これも用意していた答え。
ちゃんとね、理論武装はしているんだ。
「あの女はなンだ」
「"モリヤのことで合っているか?"」
「そォだ。マジュツを知っているとは到底思えなかったが」
「"そうだよ、魔術とは一切かかわり合いがない。学園都市に外部の人間が入るには相応の技術を引っ提げてないと無理でね。『霊磁性流体』という相応の技術を渡したら、適当な研究所が与えられたし、あの子が訪ねてきた。能力で見たくないものが見えてしまって苦しい、と"」
「……生体電気で敵の位置を測るアレか。だが、あの女も『霊磁性流体』を操っていただろう」
「"能力の拡張だよ、それは。俺からしたら超能力ってのは念動力の中の狭い部分をさらに狭めている、って話はしただろう。だからまぁ、俺なりのやり方で、あの子の悩みを解決しつつ、あの子の能力が損なわれない、という風にしたかったんだ"」
一応雑談しながらも、とんでもないプラズマの槍が形成されつつある。最早抵抗の意思を失っているらしいドッペルゲンガーはぴくりともしない。
「第五位と繋がってンのは、なンだ」
「"説明が難しいが、本気で偶然。木原幻生ってわかる?"」
「木原だと? ……いや待て、そォいや第五位も木原について聞いてきてたな。ありゃそォいうことか。……チッ、今ほど穏やかな気分じゃなかったせいで、聞き損ねたぜ……」
「"俺も科学者だから、木原一族については知っているよ。ただ、親交があったかっていうと微妙だな。俺が食蜂操祈と出会ったのは、木原幻生のお葬式だったから"」
「……脳科学の権威だったか、その木原は。成程ね。第五位がそこと繋がってたのは理解できるが、なンでオマエなンだ」
「"俺は木原さんの部下の碓井さんって人と友達だったんだよ。俺が学園都市に来て右も左も分からない時に色々教えてくれた人でね。そこから話の流れで紹介されて、木原さんとも意見交換をするくらいの間柄にはなったわけ"」
「科学者の……くだらねぇサクセスストーリーを聞いている気分だなァ」
えー。ちゃんと考えたのに。
良いだろ、滑稽で。
「葬式で会った奴と、どォやって腐れ縁になる」
「"いや知らんけど。俺は別にあそこで関係おーわり、のつもりだったんだけど、まず御坂美琴との接し方がわからん、みたいな思春期メールから始まって、あとは実は能力者じゃないのか、とかも聞かれてたなぁ。あいつの超能力凶悪すぎるから魔術的な防護をしていたら、自分と同じ心理に作用する能力者なんじゃないのか、って。中らずと雖も遠からずってヤツ"」
「……チッ、普段から……胡散臭い喋りのせいで、どォにも真偽を確認できねェな」
「"そこは生きた年数がものを言うってやつだ。……ま、納得が得られんことは知っているが、害意が無いのはわかってるだろう"」
「世の中にゃ害意ってもンがなかろォと人を食い物にできるやつがごまンといンだよ」
それは同感。
それこそ……いや、まさに此奴が思い浮かべているやつが、か。
「完成だ。……その鳥共、できるだけ退避させるンだなァ。消し飛んでも弁償はしねェぞ」
「"大丈夫だ、五百羽はいるんでな"」
「そォかよ」
接続が切れる。直後──立ち上がった巨人の胸のあたりが、とんでもない光に呑み込まれた。
そこから飛び出てくるは、根元を白く染めた、未だ黒翼の天使、ってか。
絵になるねぇ。写真撮って最終信号に送ったろか。
なんて。
さて……最後の大仕事をしに行きましょうかね。
お前が悪いんだぜ。大団円に水を差そうだなんて、な?
*
諸々が終わって。
過去最大規模の被害を齎した『ドッペルゲンガー』事件。どうしてこれが起きたのか、という事件の背景として報道されたのが、『インディアンポーカー』だった。
悪質な販売元による洗脳効果の危険性。同じ夢を見たことで狂信者のように振る舞う存在の姿も報道され、瞬く間に学校側がそれを禁止に。さらに生徒間でも自粛の流れが強まることとなる。
またこの機に乗じて外国人が侵入してきていたこと、生徒の誘拐騒ぎ、以前あった怪物騒ぎなどがないまぜになって、「見慣れぬ恰好をした者」への目線が強めになった今日この頃。
神裂火織やステイル=マグヌスも居心地の悪さを感じる程で、どの道『
一つだけ。
上条当麻に、戦いの最中で己が覚えた違和感、というのを伝えてから、それをするつもりだった……のだが。
「また……この道」
おかしかった。
先程から何度も何度も同じ道に出る。顔を上げて上条当麻の住むアパートを見るも、距離は縮まっていない。
魔術か、超能力か。迷わせるタイプのソレが使われていることは明白だったが──。
出ることができない。どれほどの速度で動こうとも、結界の基点であろうものを切断しようとも。
精神を研ぎ澄ませ、気配を探るも……何もいない。何かがアクションを仕掛けてくる、ということもない。
「何者ですか。私にどのような用があってこのようなことを?」
問いは虚空へ消える。
埒が明かない。だから神裂はやむを得ず周囲にある全てを切り裂こうとして──眼前にある人影に気付いた。
「ようやくお出まし……な!?」
「かおり? どうしたの?」
「……いえ。彼女の気配ではありませんね。どころか、気配自体がしない……幻、ですか」
驚きはしたけれど、すぐにそう判断してこの幻を無視することにした神裂だ。
けれど、その判断はそう長くは続かなかった。
「かおり、喉乾いたから……おちち、貰うね」
「なにを──う!?」
禁書目録が、その手に持っていたコップを神裂の胸へと押し付ける。
それにより、ぶしゅうと滲み出てくる真白の液体。
いつの間にか上半身の服が無い。
いつの間にか拘束されていて動けない。
拘束。ただの縄に見えるそれは、聖人の全力を以てしても千切れない堅固がすぎるもの。……否、聖人を拘束できる縄など、あるはずが。
「んー。ちょっとずつしか出ない。……直接吸っちゃえ」
「はうっ!?」
乳房に吸い付いてくる感覚があった。子供の口。子供の舌が、彼女の豊満な乳をしゃぶる。
「か、彼女はこんなことをしな──うぅっ!」
ぢゅぅ~っと吸われる乳首。それに応えるように、出るはずのない母乳が分泌されていく。
ちゅぱちゅぱと音を立てて、美味しそうに美味しそうにそれを啜る禁書目録。幻とわかっていても、動けなくて、どうしようもできなくて。
それがようやく終わりを告げて。
「おい、何やってんだよインデックス……」
「っ、上条当麻!? 見ないでください!」
「ん? お、神裂か。何やってんだ、そんなとこで」
「かおりはね、自動販売機になったんだって」
「自動販売機ぃ? ……成程なー。けど、直接口をつけたらダメなんだよ、こういうのは」
「だって……かおり、おちち出すの遅いんだもん」
理解のできない光景。理解のできない会話が続けられている。
状況を噛み砕くのに時間を要している間に。
「直接搾りゃ遅いのは当然だろ。ここにお金を入れると」
視界の隅でマシンアームが動く。いつの間にか両手を頭の後ろで組んだ格好になっていた神裂のその乳房に、カップのようなものが吸い付いた。その上で、腋には羽毛のようなものが当てられて──双方が一斉に動き出す。
先程とはくらべものにならない程の吸引力により、量の乳房から、その乳頭から、びしゃびしゃと母乳が搾られ始めたではないか。
「わ」
「こーすることで出が良くなるんだよ」
「羽みたいなのは、なぁに?」
「くすぐると出だか味がよくなるんだっけな? 俺もちゃんとは覚えてないんだけど。今は泣きそうな表情だから味もちょっと固めだけど、笑えば柔らかい味になるはずだ」
「かおりはなんで笑わないの?」
「うーん。我慢してるのかもな。神裂、笑ってみてくれないか。インデックスが笑った時の母乳が飲みたいらしくてさ」
「……」
既に先程の時点から、彼女は心を閉ざすことに集中している。
感覚のすべてを切って、幻を心に入れないようにして。
「かおり、壊れちゃった?」
「みたいだなー。……メンテナンスボタンってのあるけど、これ素人が押していいものなのか?」
「わかんないけど、喉乾いたから、早く飲みたいかも」
「うーん。まぁ、押しちゃダメなら、こんなわかりやすいところに置かないか。……えい」
がしゃこん、という音がした。神裂の、下の方でだ。
何かが近付いてきている気配はあった。それでも何も反応しないでいた神裂の──肛門を、容赦なく貫くは、太めのノズル。
「っ!?」
「お、反応あった」
ぶぢゅぅうぅ……と音を立てて肛門内に注入されていく冷たい液体。
それが直腸に入ってきた瞬間、彼女の全身が熱を帯び始める。肌に触れる空気が、震える乳房の切る風が、より克明に感じる。より際立って感じる。
腋の羽先が、乳房を吸い立てるカップが、肛門を貫くノズルを意識してしまう。
閉ざしていたはずの心に、しとしとと、たらーりと……何かが降ってきて、崩されていく。
ピンと足が伸ばされる。地面に着く感覚は無い。
その趾の一本一本、指の付け根、土踏まず。
筆のようなものがいったりきたりを繰り返し、彼女にかゆみを与えていく。
「遅いよとうまー」
「俺に言われましても。……このクリ漆ってボタンはなんだ?」
マシンアームが動く。墨壺……ではない。色と、先程聞こえた言葉が、勝手に……それが何かを判断させる。
ノズルが肛門を突き刺した時には消え去っていた下半身の衣服。秘されるべき亀裂の中の小さな突起物。それが、ひとりでにずりゅんと剥けて……ぴと、と。
筆先が、遊ぶようにその表面を撫でた。
「ひ……ぁ……」
ぺたぺた、ぞりぞり。
漆の塗られた筆が、桃色の宝石のような突起を撫でる、撫でる。
その……撫でられた箇所が、痒くて、痒くて、たまらなくなってくる。けれど動けない。今すぐに潰して抓んで引っ張りたい衝動を、肉体が許さない。
念入りに念入りに。包皮の奥まで、念入りに。
「ぁ……ぐ、ぅ……」
「かおり、笑ってー? かおりの美味しい牛乳飲みたいんだけど」
「この場合牛乳っていうのか? 人……ってわけでもないし」
「かおりは人じゃないの?」
「こんなところに入れられて母乳まき散らしてる奴が人のわけないだろ……。それに、インデックスは出ないだろ、母乳」
「うん! でも、世の中のお母さんたちは、出るよ?」
「馬鹿、子供がいたら出るものなんだってば。いいか、絶対に世の中のお母さんたちにそういうことを言うのはダメだぞ。こんな往来でクリトリスに漆塗られて喜んで母乳出してる変態とは根本からして違うんだから」
「喜んで、など……、うぶっ!?」
思わず反論しようとしたのが良くなかった。
口と尿道に、ノズルが挿入される。そこから注入されたどろっとした液体に──今度こそ、クリトリスの痒みが、そして……そのクリトリスを撫でる筆からの刺激が、愛おしくて愛おしくてたまらなくなる。
微かばかりの痒みの解消に、思わず「ふへっ」なんて笑いが出てしまう神裂。
「あ、ちょっと笑った!」
「認めろよ神裂。お前は喜んでんだよ。こんな状況で俺とインデックスにそのデカチチと全裸を見られて、ホントは全身で喜びを表したいけどできないから、クリトリスだけで精いっぱい喜びを表してる。……ああそうだ、ほら」
ぱしゃ、と。当然のことのように神裂を撮る上条。
そのことに抗議しようとした神裂は見るだろう。
ガニ又で、後頭部の後ろで手を組んだ己が。
クリトリスに漆を塗られ、肛門と尿道をノズルで貫かれ、乳房に搾乳機を付けられている己が。
それはそれは幸せそうな顔で……笑っている、その姿を。
「そんな、はずは」
顔を触って確かめたい。けれど動けない。
そこへ……今までどうしてかほとんど感じていなかった羞恥心が、濁流のようになって襲ってくる。
禁書目録。上条当麻。
周囲で聞こえるクラクション。誰かの雑談。
クリトリスが屹立する。ぶびゅうっと母乳の噴射が強くなる。
「なんだ、撮られるのが好きなのか?」
「ち、違っ」
「とうまー。なんでかおりのあそこ、あんなにおっきいの?」
上条当麻が向けてきている、神裂の、今の状態。痴態。
そこに映るクリトリスは……子供の指の、第一関節ほどには、長く、大きく。
「あれは触ったり抓んだりして欲しいってアピールなんだけど……今触ると漆がなぁ」
「布越しなら、大丈夫?」
「ああ、その修道服越しなら大丈夫なはずだ」
伸びる。禁書目録の手が、壊れた『歩く教会』……清廉なる浄化の施された真白の布越しに。
そして、ぴと、と……触れる。待ち侘びた刺激。あまりにも弱く、それでも筆よりは強い刺激。
ぴと、ぽと、ぽよんぽよん。
「づ、ぁ……ぁあっ」
「おちち強くなんないよ?」
「そんな優しくじゃなく、もっと抓んでこすったり、力の限り潰してやるとかしないと感じないんじゃないか? 神裂は聖人ってやつなんだろ?」
「聖人って、ここも強いんだ」
「そんな、わけ──あああっ!?」
ローションなどの潤滑剤があったわけではない。
漆と、汗だけ。いや、尿道から零れたなんらかの液体もか。
それらあまり滑らないものが間に挟まれた上で受ける、ぞりぞりという布地の感触。それが神裂のクリトリスを優しく苛烈に、ゆっくりヂクヂクと責め立てる。
聖人であることなど関係はない。パチパチと視界が明滅する。
「ちょっと早くなったかも。……あとは、ぎゅって潰して」
「ひぃぃいっ……!」
腰が引ける。できない。逃げようとする。できない。
もはや己の身体ではないのではないかと思うほどに命令を利かないのに、感覚だけが鮮明だ。
このままでは、クる。
キてしまう。
彼女からの愛撫で──その顔に。
その、分泌液を──。
「ストップだインデックス」
「え?」
「……ぁ、な……に、を」
「ここに書いてあるだろ。イかせると母乳の出が悪くなることをご了承ください、って。だからイかせない程度で止めないと」
「イくってなに?」
「神裂が気持ちよくなりすぎて、自分の領分を忘れて気絶しちゃう、ってこと。こいつはあくまで自販機なんだしさ、俺たち以外にも買いに来る人はいるだろうし……そういう風にさ、公共物……皆が使うものを自分のためだけに、ってのはダメだから」
「……わかった」
公共物。みんなが使うもの。
その言葉が、嫌に耳に残る。
足音。
「上条に、禁書目録? 何やってんだ、こんなところで」
「あ、アンドー」
「ああ、安東さん。こんなところって、ここウチの近所なんですよ」
現れたのは、最近知り合った……善良なる一般人。
記憶の大部分が除去されているはずだから、神裂のことは覚えていないだろう。それでも……というか、けれど、だ。
「ん、そいつは……」
「ああ、ほらこの前ド──」
「とうま」
「……ラ焼き買ってる時に見つけたんです、この自販機」
「どら焼き? ……ふむ。まぁ、買うか」
近付いてきて、当然のことのようにお金を入れて、受け取り口にコップを置いて。
「コーヒー母乳アレンジなんてあるのか。じゃあそれで」
ボタンが押された瞬間、乳房を吸うカップの中から細長い管のようなものが伸びて──神裂の乳首をぐばっと開けて、侵入してくる。
「う、ぐっ……?」
「いや、人間の乳首ってそういう作りじゃないはずなんだが」
「何言ってるのアンドー。かおりはヒトじゃないから、これが正解なんだよ」
「ほー。不思議生物だな」
どくどくと乳房へ注入されて行く液体。痛みもないし、快楽もない。ただ乳房を一本の棒に貫かれている違和感があるだけ。
今までの責めからすれば比較的楽な部類であるそれに、一息を吐こうとして。
「の……」
「ん?」
「の……んで、ください。私の……お、おっぱい……」
そんな言葉が、口を衝いた。
「あ、ああ。まぁ、金を払ったわけだしな。そりゃあ飲むが……知り合いに母乳を飲んでほしがるあたり、ホントに……」
「そーだよ。かおりはへんたいだから!」
「の、飲んで! 飲んでください、飲んで、ぁあっ!?」
頭がいっぱいになる。否定しなければならないという理性が全て「己の母乳を飲んでほしい」という欲求に代わる。
ならばと言葉を止めようとすれば、そのブレーキさえも変換される。
飲んでほしい。吸ってほしい。そして──美味しいと、言われたい。
「わかった、わかったって。……ちょうど、ほら」
今までより一層激しい吸引が始まる。その乳房から湧き出るのは、茶色い液体。
けれど、乳を噴けば噴くほどに、もっと搾ってほしくて、もっと飲んでほしくてたまらなくなる。
「ん、美味い。良い味だぞ、えーっと」
「かおりだよ。かんざきかおり!」
「かんざきさん。その……趣味とかはそれぞれあると思うし、まぁ、良いんじゃないか? 同い年くらいの少年や、多分友達かなんかかな。そんな子に蔑まれて、そんなに嬉しそうな顔ができるなら、最初から向いてたってことなんだろう」
「違う、違うんです、私は飲んでほしくて……」
「まぁ公共物じゃなかったら直接飲むことも考えられたが、俺も良い歳のおっさんだからな。こういうのに口を付けるとか、……世間体とか、な」
搾乳が止まる。快楽も止まる。
戻ってくるのは──クリトリスの、尋常ではない痒みだけ。
「とうま、お腹空いたかも」
「そうだな。じゃあ俺達も帰るとするか」
「なんだ、知らん仲じゃないんだ。夕飯くらいはどっかのファミレスを奢ってやるよ」
「い、いや平時までそんなことをしていただくわけには……」
「やったぁ! とうま、据え膳食わぬはなんとやらなんだよ!」
「おまえなぁ。……そんじゃあな、神裂。自販機頑張れよ!」
「またねなんだよかおり!」
遠のいていく。その姿が、足音が。
どぷっ、と肛門に液体が注入される。気付けば……ぷっくりと膨れた腹が、視界の端に見えた。
けれど、そんなことはどうでもいい。
痒い。飲んでほしい。痒い。飲んでほしい。
痒い痒い痒い痒い。
時間は遅々として進まない。
彼女らが次に来るのはいつなのか。それまでに誰も来ないのか。来て、来たとして……この姿を、見られて。
「──あはれにして、いと無様に見えたりけるが、なかなか愉快なる姿にてありけるわね、神裂」
声が。