※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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4.八月十五日『濡れぬ先こそ露をも厭え』 - Unstoppable.

 八月十五日。

 自室にて、新しく作った端末に入れた件のプログラムを眺める。

 そこに映っているのは被験者ID9982……妹達(シスターズ)の9982号である。

 全裸の状態で……どこかに座っているのだろう、足を閉じて身体を曲げている。

 そしてもう一つのウインドウ。こちらも件のプログラムで開いたもので、そこに映っているのは……妹達と全く同じ顔でありながら、目に生気のある……そして勝気な表情のモデル。

 研究者用アカウントで手に入れた学生IDを入力して取り込んだ、御坂美琴……オリジナルである。

 

 ただし、奴さんの技術の限界なのかセーフティなのか、オリジナルのモデルに何をしても「ERROR」と表示されるばかりで、作用はできなかった。

 というのもそれなりに手を尽くして調べた感じ、警備員(アンチスキル)の追っていた『快楽自切(バズキルセルフ)事件』なるものの被害者たちは皆異能力者(レベル2)止まりか開発を受けてない一般人であり、遠隔での挿入行為等々があったのはあの利根辺君の被害者のみ。

 10039号を弄ることができるのと、学生IDを取り込めることで少しごっちゃになってしまっていたけれど、強能力者(レベル3)以上の能力者には効きが悪い、ないしは全く効かないみたいなのだ。

 ……ぶっつけ本番でエロいことしたとかじゃなく、生放送とか見ながら「背に軽くタッチする」みたいなことをした程度だから、気付かれることは無いと思う。

 つまり……やはり、『能力開発(カリキュラム)』における学生へ投与される薬品類。その中にこのプログラムを成立させている何かがあって、けれどそれは超能力とバッティングするから、強度(レベル)の高い能力者にはどんどん効き難くなっていく……って感じなのかなぁ、って。

 

 しかし……あれからそれなりの頻度で送られてきているメールの文面を見るに、どうにかして大能力者(レベル4)超能力者(レベル5)にもこの施術を受けさせ、その能力のシフトする先を見たい、という気概が感じられるので……いつかアップデートすんじゃねーかな。

 

 と……二人が立ち上がる。

 そろそろ日の入り。……これから、実験が始まる。

 

 さて。

 ……どうしようかね。

 正直変態官能小説持ち込みおじさんの計画的には、セロリがこの実験を終えようが終えまいがどーでも良いと思うんだ。究極的に言えばそげぶのための悪役ならなんでもいいんだろうし。

 そんでもって、このプログラムが「どれほどやれるのか」を試す良い機会にはなるんじゃないかな、って。

 

 操作可能なパラメータ……その中にあるものを使って、少し試してみたい。

 どうせ死ぬる命なれば、ってね。

  

 

☆☆☆

 

 

 それは『絶対能力進化(レベル6シフト)』計画における第九九八二次実験の最中に起きた。

 

「んっ……? と、ミサカは己の身体に起こった不調に嗚咽を漏らします」

「あァ? なんだァ? まさかそれが命乞いかァ? 体調不良だから見逃してくれ、ってか」

「いいえ、そういうわけでは──」

「ならもう殺すけどよォ。──そういう同情誘いは、ニンゲンサマのやることだ。あんましナメんなよ?」

 

 白髪の人影……学園都市の超能力者の頂点、第一位、一方通行(アクセラレータ)

 彼が地面の砂利を少し蹴り上げるだけで、ニンギョウのイノチなんて薄っぺらい紙みたいなものは、容易く摘み取ることが──。

 

 できなかった。

 

「……あン?」

「体温の向上と共に、視界明瞭度上昇を確認……んっ……ぅ……全身に若干の麻痺があります。これは第一位の能力でしょうか……? と、ミサカは冷静な自己分析をしつつ戸惑いを隠せません」

「なんだ……何頬を染めてんだァ、てめェ」

「頬を染める……ですか? と、よくわからない表現にミサカは問い返します」

「アレか、死の淵にて子孫を残すために本能的に繁殖を望む、みてェな与太話。オマエラみたいなモルモットにもそういうのが来るってか? あるいは……メスとして! 死にたくねえから、セックスアピールをしよう、ってハラか! どうした、また新しいアプローチを考えるじゃねえか!」

 

 一方通行と対峙するは実験の付属品、ただのクローンである。ロットナンバーは9982。

 しかし、そんな……必要以上の入力はされていないはずのクローンがするにはあまりにも場違いな顔がそこにあった。焦点は定まらず、野犬のようにたびたび舌を出し、頬を染め、身体全体が火照っているように見える。オリジナルと全く同じであるその均整な顔は、淫蕩を想起させる。

 

「だッたらお望み通り、オレの上で腰を振らせてやるよ! 尤も振るのは腰だけじゃねえがなァ!」

 

 地面へと突き落とされた足。衝撃は威力を増しながら伝播し、9982号の足元から弾け出て、彼女を突き上げ……ない。

 既にそこに、彼女がいないから。

 

「ンだと!?」

「ミサカはこの奇妙な症状を高揚感であると処理し、実験を続行します」

「高揚感──死地の戦いに昂ってるってかァ!? 人形如きが、大層な自己判断を下すもんだなァ!」

「う、と。ミサカは大きすぎる声に顔を顰めます」

 

 銃器から銃弾が発射される。だが、そんなものに意味はない。9982号とてそれは知っているが、自身の操る電撃の方がもっと意味が無いと知っていたから、この択を取った。

 しかし……どうしたことか。

 銃撃を途中で止め、がくんと膝から崩れる9982号。流石のこれには一方通行も驚き、手を止める。

 だって彼は今、特に何もしていないのだから。

 

「発砲音が……こんなにも……」

「……さっき、俺の声がうるせェだのと言っていたが……つまりそォいうことか?」

 

 試しに。

 一方通行は、その指をパチンと鳴らす。衝撃波ほど行かないまでも、極めて強く9982号を向くように。

 それを食らった彼女は「ああああっ!?」と、今までにないほどの感情を露にして仰け反った。

 

「ンー、これは科学者共の怠慢になるんじゃねェの? クローンなんて技術がどれほど確実なのかは知らねェがよォ、戦ってる最中に感度が狂って、自分の持ってる銃の音すら耐えられない、みてェになったらもうオレ関係無ェだろうが」

「ぅ、ぐ……じ、実験は続行……」

「あーハイハイ。テメェらモルモットは二言目にはソレだ。イイカゲン聞き飽きたぜ」

 

 先程二度、一方通行の攻撃を避けてみせた9982号だが、その絡繰りもこの感度調整能力の狂いが原因だろう。

 一時的にでもオリジナルのように電子線を視認できるようになったか、鋭敏になった聴覚や触覚で第六感が働いたか。

 しかしそれが、自分の武器で自滅とは、あまりにもくだらない。

 

「セッカク感度が上がってンだ、一番キモチイイ死に方で殺してやるよ。無様にションベン撒き散らして死ねや」

 

 未だ動けないでいる9982号。──その下腹部に、ぐ、と足を押しあてる一方通行。

 

「ぁ──」

「キモチイイだろ? ──腹ブチ抜かれて死ぬのはよォ」

 

 腰椎周辺……そして、子宮のあたりを()()()()失って。

 9982号は……反転した痛みと快楽の特大刺激にびくびくと痙攣しながら、絶頂しながら、絶命した。

 

「……あんた、なに……やってんのよ」

「あン?」

 

 そこへようやく、彼女が到着する──。

 

 

☆☆☆

 

 

 いやー。

 ……上手くいかないもんだね。

 感度3000倍……は行き過ぎだけど、常人より感度が高けりゃ色々戦いやすいんじゃないかって弄ったけど、全然だった。

 せめて目の前に患者がいればもう少し微調整できたけど、リモートじゃあね。

 しかし最期は機関車に圧し潰されて、ではなく……腹ごと子宮ぶち抜かれての死亡とは。しかも数値を見るに「痛みを快楽に変換する」みたいなエロ作用が働いていたっぽいので、失血死ではなくショック死の可能性まであるだろうなぁ。

 

 なお、今オリジナルが戦闘を始めているけれど、相変わらず「ERROR」が出てしまって干渉できない。後から到着する妹達は……普通に9983号を入れても眠っている姿になるんだよなぁ。何番なのかわからんと流石に。

 

 でもこれで、このプログラムにできることがある程度わかった。

 対象者……『行使可能者(アヴェイラブル)』は胤河製薬のなんらかの薬品を摂取・投与中であるもの。恐らくナノマシン的なアレソレだと思う。

 全身の裸体モデルが抽出可能なほどに行き渡っているらしいそれは、『行使可能者(アヴェイラブル)』の全身の細やかなパラメータを操作するに至るし、相手が生体電気を日常的に操っている者であれば、それに割り込みをする形でさらなる操作が可能となる。

 

 感度を高めることもそうだけど、身体を硬直させるとか、発話を封じるとか、結構色々できそうだ。

 

 さて、それを踏まえて……未だ店はやっている中、少しメンテナンスのため、と言って下がらせたダッチワイフこと、ミサカ10039号について。

 

 現在の彼女はベッドに仰向けの状態で安置されている。衣服の類は一切無しで、全身にあった体液や汗は全てふき取り済み。

 10039号の意識をオンにする。

 

「……。おはようございます、マスター。と、ミサカは久方振りに快楽の伴わない発声をします」

「おはよう。まぁ、無意識のうちに飲ませてもよかったんだが、窒息されると怖いからな。これを飲め」

「承知いたしました」

 

 と……それがなんであるかも問わず、仰向けになっている10039号の口元に近付けたカップの液体が、こくこくと飲み干されていく。

 透明で、粘性は低く、多分飲みやすい液体。

 

「マスター、今のは一体なんだったのでしょうか、と、ミサカは驚くほどのど越しの良かった液体についてを尋ねます」

「俺の長年の研究成果の一つ、『フレキシブル・フェロフルイド』……学園都市風に言うなら、『霊磁性流体』になるのかね?」

「一聴して人体に害しかなさそうに聞こえますが、と、ミサカは恐れ戦きながら詳細を尋ねます」

「害はないよ。あんまり吸収もできないと思う。ただこうやって」

 

 と言いながら、10039号の身体に手を当てる。

 そこに……少女の肉と皮を抑えつけるようにして吸い付いてくる、件の液体。

 

「ふ……不思議な感覚が胃を支配していますと、ミサカは素直な感想を述べます」

「こいつはまぁ、絶対に千切れないがいくらでも形は変わる、という流体でな。だから、人間の身体が持っている弁なんてものは」

「ぉ……ぉ、ぉお、おおお、ご……?」

「こうやって素通りさせられる」

 

 喉から胃に。胃から小腸に。

 うにょーんと伸びる流体が、10039号のナカを少しずつ圧迫していく。

 ボコボコと肉を押し上げて小腸のカタチを露にし、弁を無視して大腸に侵入し。

 

 ちなみに最初から排泄物は処理してあるし、排泄欲に関してもOFFにしてある。

 だからただただ躯のナカを伸縮自在な蛇……あるいは触手が這いまわっているように感じられるだろう。

 

 やがて。

 肛門から顔を出す、透明な液体。

 

「あ……ぁー……。……腸内を……つるつるとしたもの、が……擦れる、感覚が……」

「そしてこれは、弁を破壊せずに素通りできる性質から、こういうことだってできる」

「──ひ、ぅ……っ!?」

 

 ずっと不可侵にしていた場所。傷物にすると後が怖いから、という理由で使っていなかった、前。膣。

 そこに……肛門から顔を出した透明な流体が入り込んでいく。中の処女膜はしっかり避けて、奥へ奥へと。

 

「は……はぅ、……ぅ……」

 

 尿道にも侵入させる。するすると膀胱へ辿り着き……そこへ流体を溜めていく。

 同じく子宮口を少しだけ広げ、ナカに入っていく。

 

「ま、マスター、これにどういう意味があるのかとっ、ミサカは率直な答えを希望しますっ」

「治療」

「ですが、ミサカの体調は万全ですと、ミサカは所有者に対してアピールをします!」

「寿命・能力を含め、オリジナルに劣っていることは不調だろう。オリジナルの1%程度の力しか出せないどころか、そこにすら至っていないじゃないか」

「……? 疑問、マスターの言うオリジナルとは、どなたのことでしょうか。ミサカは──」

「なんのためにミサカネットワークに繋げさせてないと思ってんだ。こっちはその辺全部考慮した上で色々やってんの」

 

 体内に通した『フレキシブル・フェロフルイド』とそれに挟まれる肉体。

 そこから情報を読み取って、素早くメモ用の端末に打ち込んでいく。

 

「仮に……それら言動の全てが真実だとして、マスターはどうしてこのようなこと……はぅ、ぁ……っ!」

「一つはやっぱり客のため。お前さん、ガリガリすぎてな。"反応自体はエロくて面白いけど時々萎えが勝る"とさ」

「それはっ……申し訳ありませんと、ミサカは自身の不甲斐なさを謝罪しま……ひゃあっ!?」

「もう一つは……保険かねえ。いずれお前さんを救いにくるこわーいおにーさんが来た時のために、傷物にもしていないし待遇もよくしていましたよ、ってことをアピールせにゃならん」

「意味がよくわかりませ、ん゛っ」

「そして最後は俺のプライドのため」

「プライ、ド……?」

冥途帰し(ヘヴンキャンセラー)という医者がいる。そいつの腕はとんでもなく高くてな。ヒトの形さえ保っていれば、必ず健康に戻してやるとか豪語する奴だ。……かくいう俺も医者みたいなことはしていてね。歳も近いし……だから、勝手な対抗意識というものを持っている」

 

 打ち込んだ数値をプログラムにがっちゃんこさせ、改めて操作を開始する。

 表示されている3Dモデルもまた腹部を奇妙に肥大化させている10039号であり、性感に伴う数値が天井を知ることなく上昇し続ける。

 

 その数値が──目的のものになった段階で。

 

「……え?」

「あれだけ体内を圧迫していた流体。その感触が消え去った、か?」

「は……はい。仰る通りですと、見事に感覚を言い当てた所有者を褒めたたえます」

「……オリジナルは電気操作だけでなく、磁力操作までするという。よって俺が今回施術したのは、体内に入れた磁性体を自分の身体の一つのように操れるようになるまで馴染ませる、という工程だ」

「馴染ませる……」

「──そら、クリトリスの性感を上げてやったから、オナってみろ」

「承知しました。しかし、手足が動かないままで……」

「電撃の方は使わせてやらんが、その流体はある程度操れるはずだ。同調は完了しているから、あとはコツの問題だな」

 

 言っている間に、ピクピクと流体が動き始める。

 学園都市ではこれをガンツフェルト実験などと呼んでいたかな。

 俺としては「解放(クリーズ)」の方が口に合うが。

 

 ……10039号は今、首から下を動かすことができない。感覚はあるのに命令が通らない状態にある。

 そんな中で、唯一動くモノが、この『フレキシブル・フェロフルイド』。そうすると……。

 

「あ……う、ぁ……体内で、擦れ、て……」

「さっきと違って俺は何もしていないぞ。お前が動かし、お前が気持ちよくなっているだけだ」

「……きもち、……良い。……ミサカは……体内を縦断する液体が奏でる摩擦に、言い知れぬ快楽を見出しながら、蕩けた声で告げます」

「今日からは、展示される時もそれがお前さんのナカにある状態になる。今まではされるがままだった絶頂が、多少なりとも自分で操作できる、って感覚は、甘美なモノだと思うぜ」

「命令……そうでした、命令を実行します。と、ミサカはこの新しく生えた手のようなものを操り、自身の思う快楽のツボをぐり、っと……ッ!?」

「おいおい、そんなに強くやったら腹が破れるぞ。優しくやりな。……それに、もしかしたらこのデータはいずれ、オリジナルにも役立つかもしれない」

「どういう……こと、でしょ、ゃ、あ……!」

「この天上の悦びをオリジナルにも共有できる日がくるかもしれない、ってことだ。ま、せいぜい楽しみな」

 

 ……当初、こいつの能力を鍛えたら反逆されかねんじゃん怖いじゃん、とか思っていたけど……考えを革めた。

 最初の「学習装置(テスタメント)」の時点でダッチワイフとして調整されているこいつなら、裏切りが起こるようなことはほぼない。

 無いが、その上で……急成長させた身体の耐久度や寿命やらは雀の涙なのがこいつらである。

 であるならば。もう買っちゃった以上どうしようもないのならば──セロリに恩を売ることも視野に入れよう、と。

 

 先程言った通り、『冥途帰し』すらも届かないレベルの寿命・健康を俺が実現してやれたら、その技術が俺にしか使えなかったら、セロリのいうところの「利用価値のある人間は何を言っても赦される」が適用されるんじゃないかな、と。

 

 ……無論、希望的観測である。

 

 

☆☆☆

 

 

「『楽園築き(パラディスヒール)』? とうま、そんな言葉どこで知ったの?」

 

 とある学生寮にて、二人は、一応座学のようなことをしていた。

 数日前、ツンツン頭の少年、上条当麻はとある事件に巻き込まれた。

 三沢塾の事件──魔術師アウレオルス=イザードによる事件である。

 それ自体は解決したのだが──。

 

「その魔術師が言ってたんだよ。"必然。かの『楽園築き(パラディスヒール)』であれば、あるいはまた違う答えを出せたのやもしれないが"、って」

「その魔術師の名前はわからないんだっけ?」

「あ、ああ。それは知らない」

「ふーん。……『楽園築き(パラディスヒール)』は、二百から三百年くらい前に活動していた魔術師の名前かも」

「魔術師……」

 

 魔術への理解が浅いこと。

 それで窮地に陥る場面が幾つもあったということで、上条は目の前の少女、禁書目録(インデックス)に魔術についてをさらっと説明してもらっている最中なのだ。

 これはその中で出てきた……というか思い出したワード。

 

「ローマ正教の管轄だからあんまり詳しいことはわからないんだけどね。ハイジーン協会っていう……なんだろう、女性の健康についてを催眠療法とかでどうこうする学会に所属していたとされているけど、ハイジーン協会が発足したのは二百年前で、年代が微妙に合わない、って話だったかな」

「そいつはなんでそんな御大層な名前で呼ばれてるんだ?」

「実際に幾つもの楽園を築いたから。世界各地、色んな所に現れてはそういう……巣、みたいな楽園を作り上げてはいなくなる、っていうのを繰り返してたみたい」

「巣みたいな楽園……? ってのは」

「……これ以上を女の子に言わせるのは、とうま、きちくかも」

「何故に!?」

 

 魔術師の言う「楽園」なんて、大抵ロクなものではない。

 痛みを感じないが故に「楽園」、永遠の寿命を得られるが故に「楽園」、そして──快楽を貪ることができるが故に、「楽園」。

 性交と魔術は切っても切り離せない関係にあり、こういう自分の巣穴を作るタイプはよりその傾向が強い。自身が性的快感を得たいから、とかではなく、本心からそれが最適だと考えているためタチも悪い。

 

 禁書目録(インデックス)がそういうことを考えている対面で、少年上条当麻は別のことを考える。

 即ちあの魔術師、アウレオルスがどうしてその「楽園築き」を引き合いに出したのか、についてだ。

 

 あの言葉の文脈はつまり、自分では彼女を救ってやれなかった。だから準備を整え、整え、整えた。

 けれど「楽園築き」であれば、もっと別のやり方があったのだろうが、と。

 

 アウレオルスの過去、というものについて、上条は共闘した魔術師ステイル=マグヌスから軽くではあるものの教えられている。

 アウレオルス本人から聞いたこともある。

 三年前の、インデックスのパートナー。それが集めに集めあげた「黄金錬成」を振り翳しておいてのあの顔と言葉。

 

 何か──羨望のようなものを覚えさせた、あの言葉を。

 

「ちなみになんだけど、そいつはどういう魔術を使うんだ? その巣穴ってやつを瞬時に作る魔術とか?」

「よくわかってないんだよ。でも、治癒系の噂はたくさんあるかも。さっきも言ったけど、催眠術もそう」

「催眠術ねえ。学園都市のいち学生からすると、もうその段階は通り越しているって言いたくなるが」

 

 能力開発だって半分くらいは催眠術だ。「自分だけの現実(お前はできる、やればできる)」というのが人によって違うだけ。

 そして催眠術に上手くかかれなかったやつが無能力者(レベル0)になる。

 

「もしかしてそこまで危険な奴でもないのか?」

「危険度はわからないけど、二、三百年経った今でもローマ正教は『楽園築き(パラディスヒール)』の指名手配を切ってなかったから、少なくともその時間を生きているのは確実だよ」

「うへぇ、そういう長生きしてるやつは大抵歪んだ思想を持っているものだよな……」

「さすがにそれは偏見がすぎるけど、警戒するに越したことはないかも」

「どうして?」

「もしそいつがアイサを虐めようとしたその魔術師と繋がっていたら、復讐とかを考えるかもしれないし」

「ああ……それは」

 

 アウレオルス。彼の目的を思い浮かべる上条。

 

「大丈夫だと思うぜ。多分だけどあいつはそういう……他のすべてを捨ててまで求めた、みたいなやつだったし」

「とうまは楽観しすぎだよ! ──はいこれ!」

「……なんでせうかこれは。……文字の羅列?」

「ローマ正教で異端とされる魔術結社・魔術師のリスト! これと、これらが扱う魔術についての知識を全部覚えておけば、少しは安全になるから!」

「いやいやいやいや。……無理無理無理無理無理な量! 多すぎ!」

「まだ四分の一も書けてないんだよ。とりあえずそれを覚えておいて、あとでテストするから!」

 

 ……上条当麻の受難は、まだまだ始まったばかりである。

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