※この作品はR-18です。

とある性教の雌女昇格(メスメライザー)   作:無ければ作れ(Invenire404)

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7.八月二十一日『麦飯で鯉を釣る』 - Low risk, High return.

 この日のために手ずから作り上げたSIGINT車両に乗って、現在の状況を確認する。

 八月二十一日──この日は怖いおにーさんずがぶつかり合う最初の日。

 モニタリングしているのは被験者ID10032……そげぶさんに「御坂妹」と呼ばれている個体。そげぶさんのモニタリングをしようとしたらERRORでモデルが表示できず、無理だった。

 セロリ、ビリビリにはやんない。自分の身体にどっかから干渉されている、なんてことには一瞬で気付いてきそうだしな。

 

 絶対能力進化(レベル6シフト)計画には興味無いんだけど、やっぱりセロリとそげぶのぶつかり合い……特に『反射』と『幻想殺し』のぶつかり合いはちゃんと見ておきたい。あと、どうせここで全部おじゃんになるので、『反射』についても少し確かめておきたい。プラスアルファでごにょごにょ。

 ……いずれにせよ介入しない理由は無いという話。

 というわけで用意するのはこれ、VRヘッドギア。

 これを別のモニタに出した件のプログラムと繋げて、色々弄ったものがこちらになりまして。

 

 被験者ID10048に繋げる。この個体が本実験の記録者的立ち位置にいることは事前に調べておいた。

 そしてヘッドギアを被ると……。

 

 

☆☆☆

 

 

「……? と、ミサカは自身の視界に走った微細なノイズに首を傾げます」

「機能が損なわれているようには観測できません。と、ミサカは電磁波で軽く診察した結果をお伝えします」

「記録観察に問題はありません。と、ミサカは眼前の10057号、及び所定の位置についたミサカ10032号に伝えます」

 

 して、実験が開始される。

 超能力者(レベル5)の頂点、『一方通行(アクセラレータ)』。これに対し、様々戦場・状況を設定した上で殺し合いをする……オリジナル・御坂美琴の1%の力も持たない彼女らであれば、二万人を身代わりとして戦わせることで「丁度いい」とされた実験。

 先日の戦闘から、ようやく『一方通行(アクセラレータ)』の能力が知れた。しかし、対処のすべは無い。よって演算の切れ目、不意打ち、隙を見て攻撃する……そういうことを行っていくしかないと判断している。

 戦術においては自己判断をしなければならない。それさえできないのならば、御坂美琴のクローンである意味が無くなってしまうから。

 

 ──案の定、決着はすぐにもつきそうだった。

 

 軍用ゴーグルの先にいる10032号は死に体。

 あと数秒で第一〇〇三二次実験は終了。──そのはずだった。

 

「……侵入者を確認。と、ミサカは努めて冷静に報告をします」

「あれは……あの時の。と、ミサカは今日ネットワークにアップロードされたフェイスデータとの一致に驚きます」

 

 人払いはされていたはずなのに、どのようにして潜り込んだのか。

 夕方頃、10032号と言葉を交わしていたトゲトゲ頭の少年が、実験場に姿を現していた。

 

「すぐに責任者へと連絡をしなければ。と、ミサカは……。……10048号、どうしたのですか? と、ミサカは報告を中断して眼前の個体に問いかけます」

「どうしたとは、どういうことですか? と、ミサカは要領を得ない問いをしてきたミサカに問いを返します」

「どうしてスコープを覗いているのですか、と問うています。と、ミサカはやれやれ、言葉に出さないとわからないのかと、若干の呆れを含んだ声で再度問いかけます」

 

 そう問われ、ようやく10048号は、自身が携行している銃のスコープを覗いて実験場を観察していたことに気が付いた。

 そんなことをする必要は無いというのに。

 

 さらには……自然な動作で、その銃に、弾を込める。この銃ではこんな距離、届くはずがないのに。

 

「ぉ……ぷ、ぽ……?」

「それはどういうことですか。と、ミサカは若干引きながら10048号に問いかけます」

「ですか……ら、ぅぶ……主語を……言ってください、と。ミサカは言い知れぬ吐き気に襲われながら、言いま──ぶ、ぅぐ……」

 

 ごぱ、と……10048号の口から、透明な何かが湧き出てくる。

 口だけではない。耳鼻、涙腺、汗腺、そして膣や肛門、果ては尿道などからも。孔という孔からソレをひりだして……。

 その異様な光景に携行している銃を構える10057号。

 

 10048号は、その状態でも、未だにスコープを覗いて実験場に狙いを定めている。

 異様な光景だった。あまりにも。そしてどこまでも。

 

「ああ待った、撃たないでくれ。ちょっと銃を改造するだけだから」

「……? どういうことでしょうか。と、10048号が突然獲得したアイデンティティに驚きながら、ミサカは問います」

「射程が足んないよこの銃じゃ……ってな」

 

 透明な液体が彼女の所持している銃に絡みつく。

 携帯用アサルトライフルの銃身。そこにそれが集まって……細長い筒状を形成した。

 

「こいつはASだから射程はせいぜい100mか150mそこらだけど、威力や精度に目を瞑れば銃身伸ばすだけで射程も伸びる、ってな。……んじゃ、10057号だっけ? 10048号の介抱頼むわ。規定外の行動をしたとかで廃棄処理行きになったらごめんちゃん」

 

 射撃。いや、狙撃だ。

 発射の瞬間、弾丸が銃身を引っ張って持っていって……戦闘中の彼らの、その近くに着弾する。

 

「……今、口と身体が勝手に動くという恐怖体験をしたことを、ミサカはミサカに報告します」

「それ以上の体験をしていたように思いますが、と、同じクローンであるにも拘らず違う着眼点を持つ10048号にミサカは恐怖を覚えます」

「……?」

 

 もう、何も無い。

 ノイズも、体の不調も、作戦外の行動も。

 

 ──場面は、実験場に変わる。

 

 

「チッ、ンだァ? 今度は狙撃だと……?」

「うぉおおおおお!!」

 

 吼える割に無能力者(レベル0)だというその闖入者(雑魚)よりも、一方通行にとってはそちらの方が気になることだった。

 遠方より銃撃。無論弾丸など(そんなもの)彼には効かないけれど、こうも邪魔者が多くては敵わない。

 

 何の意味があるのか、右拳を腰だめに突進してくるそいつを足を鳴らした衝撃……その調整で生み出した衝撃波によって再度吹き飛ばし、着弾点を眺める。

 スナイパーのいる位置、ではなくそちらに注目した理由は。

 

 数瞬の沈黙の後……どろり、と、着弾地点から透明な流体としか表現できないものが顔を出したではないか。

 

「ンだァ、コリャ。……これがてめェの能力かァ?」

「俺は……無能力者(レベル0)だ、つってんだろ……!」

「まだ息があんのか。しぶてェ野郎だな。……じゃあなんだ、こいつは……どっかに水流操作とかそういう系の能力者がいやがる、ってか。……はァ、どいつもこいつも……」

「まず」

「──ア?」

 

 流体は、口のようなものを作る。そこから人の声がした。合成音声だろう声。

 

「俺は絶対能力進化(レベル6シフト)計画にはあんまり興味無い。妹達(シスターズ)の扱いにもな。実験のために研究者たちが資金っつーコスト支払って作ったモンをどう扱おうと勝手だろって思うし」

「……いきなり出てきてご高説とはよっぽどジブンが好きなんだなァ、オイ」

「ただ、オマエには興味がある。『ベクトル操作』……良い能力だ。なんでもできそうだし」

「誰だ……邪魔、すんな……これは俺の……」

「お前だって邪魔者だろう。邪魔者の邪魔をしたって罪悪感はあまりない。第一〇〇三二次実験を中断させてしまったことについては謝罪しよう。ごめんネ」

 

 足元の砂利。それを蹴飛ばして、流体を吹き飛ばそうとする一方通行。

 しかし、砂利の散弾は流体を突き抜けるに終わる。

 

「チッ……で? 俺に興味があるから、俺と戦いてェ、って話であってっか?」

「戦うのは難しいな。この流体には然程の戦闘力が無い。破壊することは難しいだろうが、人間を殺傷するには窒息させるくらいしかない」

「じゃあなんだってんだ。まさかオハナシをしにきた、ってわけでもねェんだろ?」

「言ったはずだ。オマエに興味があると。──興味があるものを観察するのに最も優れたやり方は、何だと思う?」

「キョーシ気取りかよ。くだらねェ」

「正解は、手元に置いておく、だ。──ただ、オマエはそれができなそうだからね。手元に置いてもらう、でもいい」

「オレの家の家具になりてェ、ってか? お断りだ。センスがねえよ」

「──もう少しいい場所がある」

 

 耳元から聞こえてきたその声に、咄嗟に振り向く一方通行。

 そこに、流体がいた。飛びついてきていた。

 ソイツは、反射的に振るわれた一方通行の左手に当たった瞬間、ぶしゃぁ、と弾ける。

 弾けて……それきり、だった。

 

「……まさかとは思うが、今の不意打ちでどォにかなるとか思っちゃいねェよな?」

「そこまで脆くしたつもりはないんだが、一撃でやられるか。参考までに、どういう反射をしたのか聞いておきたいところだが」

「ハッ、無意識の反射しかしてねェよ。つまり、不意打ちだろうがそうでなかろうがテメェの目論見はハナから夢物語だった、ってワケだ」

「となると……あっちの少年に協力して、お前をぶちのめしてもらう、くらいしかないか」

「そりゃあ潔い話だがよ、残念だったな。そいつはなんと無能力者(レベル0)のブンザイでここに乗り込んできてんだと。期待するだけムダってやつだ。わかるか?」

 

 がらり、と。

 瓦礫が落ちる。

 そこに……立っていた。あの少年が、まだ。

 

「闘志はみなぎっているようだが」

「……みなぎらせたのはてめェだろォが。増援がいると知らなけりゃ諦めてたんじゃねェの」

「だとすれば、僥倖か。おい、少年。今から俺がオマエの武装となってやるから──」

「うるせぇ」

「なに?」

「うるせえ、つってんだよ。……アンタもそこの白髪と同じで、御坂妹のことなんとも思ってねぇんだろ。俺はそんなやつに利用される気はサラサラ無い」

「だが、勝てないだろう。強敵を前には敵同士であれど協力するべきだと思うが」

「だから、うるせぇつってんだよ! あいつは俺が倒す!! 他人を食い物にすることしか考えられねえやつは引っ込んでろ!!」

 

 言って、言い捨てて、再度一方通行にがむしゃらな突進を行うトゲトゲ頭の少年。

 

「好き放題言ってくれるじゃねェか。──なら、お望み通りオマエから殺してやるよ!!」

 

 いくらでもやれる。どんな殺し方でもできる。

 どちらが先か、など……彼には関係ない。どうでもいい。

 この勘違いした憐れな子羊を地獄に送り、そして、おかしなちょっかいをかけてきた流体操作の能力者もブチ殺す。

 

 それだけ、だった。

 だった……はずなのに。

 

「……あ?」

 

 気付けば、夜空が見えている。

 これは──。

 

 

☆☆☆

 

 

 その後、数度の殴りからのそげぶが決まって、風力発電がぐるぐるして、最強(第一位)最弱(上条当麻)に敗れた。

 御坂美琴が間に合ってしまったので、見つかる前に退散して、大部分の『フレキシブル・フェロフルイド』を回収。取れたデータも上々で、個人的には満足である。

 

 俺が介入して実験が終了になるかどうかとかそげぶにとってアレがどう映ったのか、とか、そういうのはあんまり気にならないので、翌日の今日、意気揚々と外出。

 赴いた先は。

 

「いらっしゃいませ。こちらは『胤河製薬』、本社になります。失礼ですが、アポイントメントはお取りになられましたでしょうか」

「ああ、はい。営業部の碓井さんって方に呼ばれて。安東という者です」

「安東さまですね。少々お待ちください。……確認が取れました。向かって奥側のエレベータに乗り、B四階へ向かってください」

 

 悪魔の牙城、『胤河製薬』……である。いや別にここに何かされたってことはないんだけど。

 言われた通りの順序を辿り、言われた通りの階層についた。

 エレベータの扉が開けば……そこは、二階、いや三階かな? くらいをぶち抜いた水槽らしきものを上から眺められるようなフロア。

 そして。

 

「ようこそお越しくださいました。あなたが『事業(ビジネス)』の創設者、安東さん、ですね。……改めまして、碓井と申します」

 

 女性研究員。俺が言うのもなんだけど、あんまり特徴の無い女性。

 そして……隣にいる老人が。

 

「初めまして、だねぇ。キミが安東君。『事業(ビジネス)』、そして『神ならぬ身にて天上の快楽に辿り着きしもの(MAYHEM)』の提唱者」

「初めまして。……ええと、あなたは?」

「おっと、これは失礼したねえ。僕は木原(きはら)幻生(げんせい)。ここ、『胤河製薬』の特別顧問をやっているよ」

「ああ、あなたが。碓井さんのメールでお名前を知り、己の無知を恥じて少しばかり調べさせていただいたのですが、何分検索力に優れず……」

「いやいや、こんな老人の情報なんて、ネットにはほとんど載っていないからどうってことないよ。……それより、キミと話をしてみたかったんだ。アレを見ながら、ねぇ」

 

 ぺこりとお辞儀をして一歩引く碓井さん。

 サイボーグお爺さんがアレ、と促す先にあるのは、フロアをぶち抜かれて作られた水槽。

 

 二人に追従してその中身の見えるところまでいけば。

 

「ここは……独房のように見えますね」

「碓井君、説明してあげてくれるかい?」

「はい。当施設の名は、『極楽(エデン)』。思春期の少年少女が抱える、"異性に対してやってみたいと思うこと"をヒアリングして、この『極楽(エデン)』は作られました。中でも最終目標が性交ではなく、性目標倒錯であるものを抽出し、且つ己の能力を絡めることができているものが、これら独房の中で実現されています。彼らの望み通りの世界を作ったのです」

 

 あちらからこちらは見えないのだろう。その上で……その中身を見る。

 

 全裸の女性。その脳に電撃らしきものを流し、覚醒と気絶、痙攣を繰り返させ、その様子に勃起している少年がいた。

 自分よりも小さな少年に下半身を露出させ、まだ精通していないのだろうペニスを能力で引っ張っているらしい少女がいた。

 複数人のスーツを着た男女の前で全裸になり、ブリッジの恰好でオナニーをしている少女がいた。……これは恐らく、透明人間のような能力かな。

 スリープサックのようなものに包まれ、完全に身動きの取れない状態で鑑賞されている少年がいた。あれは……透視か、あるいは操作か。

 他にもたくさんの「性的倒錯」が見える。

 

「ここでは七十種類の性目標倒錯が行われていて、対象者はこの実験のために新しく追加生産した妹達(シスターズ)です」

「あれ……男の子も?」

「はい。ホルモン調整でどうとでもなります」

「それで、能力の安定化、及び向上が見られたのは何人だっけ?」

「五十一人です」

「すごいよねぇ。アレイスター君はこういう方面に疎いのかなぁ、って勘ぐっちゃうくらい、とんでもなく伸びるんだもの」

 

 疎いわけがないけれど。

 ……ここは、あのヒーローのための舞台だからなぁ。わざと嘆かわしい状況にした、としか。

 

「また、あちらの区画では、"いつ如何なる時でも性交を求められたのならば行わなければならない"というルールに沿って、十人の能力者が共同生活をしています。全員強能力者(レベル3)から大能力者(レベル4)であり、安東さんが提唱してくださったCSNの高レベル帯での実験を行っている次第です」

「薬品無しにAIM思念体が作れるかも、なんだっけ? 面白いことを考えるよねえ」

「ありがとうございます。……最後、あちらの端にあるスペースでは、無能力者(レベル0)から大能力者(レベル4)までの男女一名ずつが機械による性的刺激を与えられ続けています。二十四時間休みなく、排泄や食事、疲労回復なども全て機械で行い、彼らの『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』がどう変化するのか、を調べています」

 

 おお……機械姦か。良い趣味してますねぇ、と言いたいところだけど、碓井さんの表情にサディスティックなそれは一切見受けられない。

 本当に実験動物にしか見ていないんだろうな。植物の培養プラントを紹介されている気分だった。

 

「どうかな。MAYHEMの提唱者として、ここ、こうした方が良いんじゃないか、みたいなアドバイスはあったりする?」

「特には。ただ、流石ですね、と。異能力者(レベル2)くらいまでなら掃いて捨てるほどいますけど、3や4を使い潰せるのは資金力の差を感じますよ」

「『才人工房(クローンドリー)』という目的と手段が入れ替わってしまった研究室があってねぇ。そこから無駄な計画に付き合わされる羽目になるはずだった子を何人かかっぱらってきたんだぁ。あとは、暗部から特に利用価値の無い子を、治験が終わったら裏側から出ていける、なんて言って連れてきたり、ねえ。もちろん約束は守るつもりだよ。出る頃にどうなっているかは僕の知るところじゃないけど」

 

 成程、それで……見たことのある顔がいるのか。

 顔面偏差値も軒並み高い。男子生徒はほとんど知らんが、特に女子が。

 

「あと俺から言えることがあるとすれば、この偏光ガラス止めた方が良いですよ、くらいですかね」

「ほう? 僕ら大人の目があると、若い子ははっちゃけることができないんじゃないかと思っての措置だったんだけど……」

「それはその通りですけど、いずれ慣れます。欲望の前に背景なんていちいち気にしていられませんから。そして……性欲の発散と共に、管理者へ深い恨みを抱きます。いつか見返してやる、あるいはこの実験を台無しにしてやろう、と。そういう明確な敵が一人いるだけで、フラストレーションの溜まりが著しく良くなりますし、それらすべてがリビドーに変換されるので、効率も良くなりますよ」

「ははは、凄いな。まるで経験談のように語るね」

「ええ、経験談です。学園都市の外でも似たような(ネスト)を作り上げたことがあるので」

「成程、そういうことね……。うん、検討しよう」

 

 そこから二、三……助言や感想を言い合った。碓井さんは説明を求められたら話すけど、基本は黙っているまま、メモだけ取っていて。

 

「いやぁ、うん。やはり直接会って良かったよぉ。──そんなキミにねぇ、一人、預けてみたいコがいるんだけど、受け取ってくれるかな」

「はぁ。いやまぁ、会ってみてから決めてもいいですか?」

「構わないよぉ。……それじゃあ、碓井君。彼の案は議事録として起こしておいてねぇ。僕は例の部屋に彼を案内してくるから」

「わかりました」

 

 にこにこと……そうしていればただの気のいいだけのお爺ちゃんなのに、みたいな表情で歩きだす彼についていく。

 さっきのエレベータに乗るらしかった。

 そうして、乗って。

 

「危ない橋を渡るのが好きだねえ。アレイスター君の『プラン』に直接介入するとは思ってなかったよ」

「……ああ、やっぱり俺の仕業って割れてましたか、アレ」

「どうやったのか、というところは誰も分かっていないけれど、僕らはキミのところにいる10039号に関するレポートを貰っているから、現場付近にいた10048号にあった痕跡を見て、なんとなく、だけどねぇ」

「どっか雲隠れした方がいいですかね」

「心配には及ばない。こっちでもみ消しておいたから。……アレイスター君は勘付いているかもしれないけれど、まぁ、些細な話だろう?」

「ええ、アレイスター=クロウリーに関してはそこまで問題視していません」

「ふふ、一応統括理事長なんだけどねぇ。……ああ、着いた着いた」

 

 ……特に階層を指定した様子は無かったし、体感……エレベータという箱が水平方向に動いた気がしたけれど。

 ゆっくり開いたドアの先は、真っ黒な廊下。……特殊な合金が使われているらしいそこにサイボーグお爺さんが足を踏み入れると、足元灯がずらりと灯る。

 

 やがて。厳重な厚みを持つ防音扉……防火扉のようにさえ見えるそれが、ずずず、と開かれると。

 

「あぁ……あぁああっ、もう……イきたくな──っ、ッ!! っは……っはぁ、はぁ、……ちょっと、休ませ……っ!!」

 

 嬌声が聞こえてくる。

 というか……この声。

 

「まだ叫ぶ元気があるんだねえ。もう120時間……五日間絶頂しっぱなしだっていうのに」

「だとしたら、罠かもしれませんね」

「……ああ、そういう観点もあるか。でも、まぁ、なんとかなるから大丈夫」

 

 そして……ソレが、見えてくる。

 特殊合金の部屋の奥。マッサージチェアのようなものに座らされているのは、長身痩躯で巨乳の少女。蜂蜜色の長い髪は、汗と油でテカテカと輝いているように見える。

 手足はチェアに完全固定されていて、恥部を隠す手段は無い。

 顔にはヘッドギアのようなもの。その状態で、膣、尿道、見えないが肛門にバイブが入っていて、通常より肥大化しているように見える乳首とクリトリスには電極クリップが付けられている。指を握りしめる形で固定された足には、その足裏をブラシが走っているのが見えるし、太ももの内側には電極パッドが貼られている。

 その他、点滴だろう管がそこかしこに繋がっている。暴れる……まで、いけないんだろうな。手足だけじゃなく、胴も、色んなところが拘束されているから。

 

「やぁ、おはよう食蜂君。喜んでくれるよね。なんせ僕と話をする時だけは、その責めが中断されるんだから」

「っ……何しに来たのかしらこの変態お爺さんは。うら若き乙女のあられもない姿を見て、年甲斐も無く変態力爆発させちゃってるのかしら?」

「いつまでも強気だねえ食蜂君は。僕がこうして」

「──んぁ、ひ、ぃぃいいいいいっ!? い、イ゛っ、い、い、い゛、う゛っっ!!」

「ちょっと装置を操作するだけで、絶頂することしか考えられない人形になっちゃうのに」

 

 機械が動きだした、ということは無いのに、激しくよがって絶頂するリモコン少女。

 これは。

 

「……あのヘッドギアから、音波を出して……脳波に影響を?」

「ほう。凄いねえ、見ただけでそこまで解析できるんだ。そう、このヘッドギアは、御坂君のクローン用にチューニングされていた『生体電位調律制御帯』を元に作り出したものでねえ。食蜂操祈君……超能力者(レベル5)の彼女にも適用できるように、色々用意しなきゃいけないものはたくさんあったし、結局生体電位調律という元のコンセプトからは大きく外れちゃったけど……こうして、食蜂操祈君限定で、彼女の生体事象の全てを操ることができるまで至ったわけだねえ」

 

 サイボーグお爺さんが手元の端末を操作する。

 それにより、ダゾ☆の無限絶頂編は終了した。

 

「ぁ……っは、はぁっ……。……ぜ、……ぜったいに、許さないんだから……」

「さて、さっき言った通りだよ、『事業(ビジネス)』の創設者君。この子をキミに預けたいんだ」

「はぁ……!? 誰か……アナタ以外にも……それに、何を言って……」

「ふむ。預かることは吝かではないんですが、俺に何を求めているんですか? あと、名前は別に呼んでくれて大丈夫ですよ。お気遣いはありがとうございます、ですが」

「あらそう? じゃあ、改めて。とはいえ、安東君に何かを求めるということはないよ。君は君の思うままに彼女で実験をしてくれたら良い。レポートは出してくれると助かるけどねぇ」

 

 ふーむ。

 ……まぁ、特段断る理由は無い。ここまで見せられた後に断って「それじゃあ、キミの人生もここまでね」とかになると怖いし。

 ただ。

 

「安全性はどうなのでしょうか。仮にも超能力者(レベル5)の一人でしょう?」

「とりあえず幾つかの方法で能力は封じてあるよ。使えないと思わせたり、このヘッドギアから発している音波は攪乱の羽やキャパシティダウンによる能力者封じなんかの組み合わせでねぇ。このヘッドギアを外さない限りは安心安全だけど、外したらその限りではないから、覚えておいてねぇ」

「承知しました」

「あと、殺すのはやめてほしいかな。こんな扱いだけど、彼女は重要な人材なんだ。食蜂君で遊び終わったら、僕のもとに返してほしい」

「はい。まぁ、元から傷をつけるつもりはないですよ。俺、流血はあんまり好きじゃないんで」

「『極楽(エデン)』の子たちみたいに鞭で打つとか蝋燭の蝋を垂らす、くらいならいいけどねぇ」

 

 その他、注意事項……ヘッドギアの電力に関する問題などを、端末越しの文面で受け取る。

 成程。そこを狙ってくるだろうから、ね。

 

「こんなところかな。問題なければ、明日頃に君のお店のすぐ近くに、この部屋ごと搬入する予定だけど、どうだろう」

「ええ、お願いします」

「……いいのかしらぁ? 折角手に入れた私という"大元"をぉ、どこの誰とも知れない馬の骨に渡しちゃって……ソイツが私を使ってアナタに反逆を企てるかもしれないじゃなぁい?」

「どこの誰とも知れない馬の骨とは言うけれどね。キミを捕らえて連続絶頂させる、というアイデアの大元は彼の方なんだ。だから、言うなれば保護していた動物を元の飼い主に返すような感覚に近いよね」

 

 ということをサイボーグお爺さんが言った瞬間、見えていないだろうに、明らかな敵意を俺に向け始めるダゾ☆。

 こーれは女の敵認定されましたね。元から? それはそう。

 

「それと、この五日間で取った食蜂君の性感帯や絶頂回数、その他各種パラメータも送っておくから、有効活用してほしい」

「この……あんまり悍ましい会話をしないでほしいわぁ~。変態力高すぎてドン引き──あ、あ、ああっ、ああああっ!?」

「『極楽(エデン)』の方のデータと連携すると、こうやって"精通もしていない少年が興奮した女性にペニスをしゃぶられる感覚"を脳波として送り込み、食蜂君のクリトリス全体にそれを適用させる、なんてこともできる。面白いでしょ?」

「あ、がが、がっ、やめて、焼けるっ、く、クリトリスが、焼ける、……、……づっ!?」

「こんな感じで、減らず口は中々止まないと思うけど、根気強く付き合ってあげてねぇ」

「はい、お預かりしておきます」

 

 こうして。

 一応……念願かなって、なのかな。

 超能力者(レベル5)、食蜂操祈の調教権を手に入れたのだった。

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