溶解する観察者のヴェイル〜電子の檻・澪の転落〜 作:砂城スミ
柏木澪は市内にある温泉旅館で男たちをもてなしていた。
3人のビジネススーツの男たち。彼らはN市にあるR出版の社員で、そろって40代。
この会合は、青藍社の不手際をR出版に”おわび”して今後もよろしくおねがいするための会で、成瀬がセッティングして、相澤が承認していた。
はじめは客室で懐石料理とお酒を楽しむだけだった。
もう料理は下げられている。
同僚たちーー成瀬も、相澤も、もういない。
R出版の要望で「澪だけ残して」延長している。
R出版の男たちの本来の目当てがこれ。
もちろん成瀬はわかっている。
相澤はなにも知らない。
いまや澪だけが、男たちの相手をしている。
少しだけ退室して、
備え付けの小さなシャワー室で身を清めた。
そして、成瀬に指示された服装に着替えた。
ビジネスには到底ふさわしくない姿。
男たちの前に姿を晒すのには勇気が必要だった。
「澪ちゃん、こっち来て」
「はい、失礼しまぁす」
男の呼びかけに、媚びた声ですりよるわたし。
男たちの視線が浴衣の胸元にそそがれているのがすぐにわかる。
「浴衣かわいいね」
「うっわ、いい匂いする」
男たちはそわそわしはじめる。
「お酒、まだ飲みますよね?」
男たちに愛嬌をふりまきながらお酌する。
これはずっと青藍社でやってきた基本業務だから、誰よりも慣れてる。
男が馴れ馴れしく言う。
「澪ちゃんって、本当に事業部の人なの?正直に言って、接待要員でしょ?」
「俺もそう思った!慣れてる感じするよね」
「えっと・・・」男たちの無礼な言葉になにもいえない。「どうでしょうね」曖昧に返事するしかできなかった。
「澪ちゃんも飲んだら?」
「はい、いただきます」
ぐっと日本酒を飲み干す。
飲まないとやっていられない。
わたしは”接待要員”・・・そう思うと惨めな気持ちになる。
これも同僚たちを助けるため。円滑に仕事を回すため。
そう納得している。
自分を奮い立たせる。
「ところでさ、御社の成瀬君がさ、帰り際に、これ、置いていったんだけど」そう言って、1ダース入りのコンドームの箱をしゃかしゃか振る男。「これ、どういうこと?」
もう・・・やるしかない。
わたしは頭を下げた。
「今回の、弊社の不手際のお詫びです。存分にお使いください」
浴衣を解いて、胸をむき出しにする。成瀬によって隙間なくキスマークをつけられた、醜い薄い胸を。
男たちが唾を飲む。
オスのにおいが漂ってくる。
◆
この旅館は和洋室になっていて、和室側は料理が下げられて布団が2組敷かれ、洋室側にはシングルベッドが2台ある。
狭いシングルベッドの上で、男たち3人の相手をした。
アルコールの助けもあって、大胆な気持ちになれる。
男たちをよく観察して、ひとりひとりに違ったサービスをする。
おしりをふりながら、犬のように男たちの股間に顔をうずめて、大きく口を開けて奉仕した。
恥部を自分で大きく広げておねだりをしてみたりもした。
そして、男にまたがって自分から腰を振ってキャンキャンと鳴いた。
雌犬のように。
ーーあは・・・楽しくなってきちゃった
まるでトレッドミルで走り込んでいるときみたいな、ランナーズハイになってる。
うそみたいに体が軽い。酒に酔った男たちを圧倒して、次々に絶頂させていく。
ーーみんなスタミナ無さすぎ
ーーそれに、サイズも、テクニックも・・・
ーー成瀬くんたちが"異常"なんだけど
3人の男たちは、満足して眠りについていった。
◆
深夜、部屋は再び静まり返っていた。
アルコールもさめて、痛み止めの薬効もきれてきた。
お腹の奥がまた痛くなってきた。頭痛もする。
コンドームの箱を開くと、まだいくつか余ってるのがわかって安堵した。
何度も挿入をうけいれたベッドにはひどく乱れていて、白いシーツに茶色い汚れがいくつも。
「アシスタント、痛み止め」
<アシスタント: 本日の規定量に達しました。これ以上は放出できません>
「うそでしょ・・・痛ぁ・・・」
眠りにつきたいところだったけど、
ここに朝までいたらまた相手をしなきゃいけなくなる。
ふらつく身体に鞭打って、タクシーをつかまえて、夜中のうちに家に帰った。
◆
<成瀬: R出版さん喜んでましたよ。今後も取引を継続してもらえることが決まりました。これも澪さんの"おもてなし"のおかげ。しっかり仕事できてえらいですね>
これがわたしの仕事・・・