溶解する観察者のヴェイル〜電子の檻・澪の転落〜 作:砂城スミ
土曜日、柏木澪は約束通り成瀬のマンションを訪問した。
仕事着としても使っているブラウスにロングスカートを来て。ハンドバッグの中には念のためコンドームを忍ばせている。
アイウェアの案内通りにマンションに訪れる。
駅近の高層フロアで、明らかにわたしの部屋よりも家賃が高いはず。給料は安いはずなのに。
玄関で成瀬が出迎えた。
「澪さん、いらっしゃい」
緊張と恐怖でくらくらしながらも、平静な態度を装う。
「来たよ」
「まあ、ゆっくりしていって。奥にどうぞ」
玄関には男ものの靴がたくさんあることに気づく。
ーー誰か来てるの?
動きを止めたつかのま。
強い力で手首を掴まれる。引っ張られる。
「早くきて」
抵抗も虚しく、部屋に引きずりこまれていった。
◆
広いリビングルームでは、3人の男たちがくつろいでいた。
電子タバコの煙。男たちの体臭と湿気が混ざり合った空間。
ーー誰?
理解できない状況に戸惑っていると、成瀬が説明してくれた。
「うちのヤリサーのメンバーです」
ーーヤリサー?
「みんな澪さんと仲良くなりたくて、集まりました」
「チーッス」
「ウェーイ」
まるで知性が感じられない言動の男たち。
こんな人たちと同じ部屋にいるなんて、耐えられない。
成瀬の顔を見上げる。
そこには、にまにまと邪悪な笑みの成瀬の顔。
「あれ、澪さん、覚えていませんか?」
「何が・・・」
「合意のもとで、みんなで熱いセックスしたじゃないですか」
その瞬間、わかってしまった。
体が震える。
この前の、記憶がない夜。
成瀬とその仲間たちだったんだ。
「ひッ・・・」
「おっと、逃げないで」成瀬に羽交い締めされた。
「イヤ・・・」
「だーめです。今日もみんなで楽しく撮影会ですよ」
男のうちひとり、ギークっぽい男が、カメラを三脚に乗せて準備していた。
「言うこと聞いてくれないと、鈴木さんの生活をめちゃくちゃにしますよ」と、成瀬が小声で耳打ち。
もう逃げられない。
やるしかない。
大丈夫。
今日だけ。
男たちみんなを満足させれば良いだけ。
できる。
<アシスタント: ストレス値急上昇>
<アシスタント: 深呼吸してください>
自分に言い聞かせて、成瀬に身を委ねた。男たちもズボンを膨らませながら群がってきた。
◆
大丈夫、と思っていた。
でも、希望は一瞬で砕け散った。
男たちはわたしの身体をすでに熟知していた。
初対面なのに。
恥ずかしがる間もなく剥かれていく。
どこをさわれば、どう反応するのか。外側から内側まで、すっかり知られていた。男たちの愛撫に反射的に悦びの反応をしめす身体。腰がしびれて、立っていられなくなった。男たちに支えられる。
男たちに蹂躙されていく。
会社の後輩に見られながら。
男たちからの責めは止まらない。
「澪さーん。ちゃんと奉仕してくださいよ」
「まって、するから!・・・さわるのやめて!」
「待てませーん」
ーームリ・・・
ーー頭おかしくなる・・・
男たちの容赦ない責め立てに、頭が真っ白になり、何も考えられなくなった。がくがくと痙攣しながら体液を飛び散らせて、されるがままになってしまう。
こんなふうになることはなかった。
今までのカレシとも、鈴木とも。
「澪ちゃん弱すぎ〜」
「がんばって〜」
「うっわ、ソファーびしょびしょだよ」
「はい、次こっち」
望んでいないのに、身体は男を受け入れる準備がもうできている。
抵抗しようにも、男たちに抑えられて、力が入らない。
誰かが侵入してきた。
内臓が押される。
呼吸できない。
だめな場所まで届いちゃってる。
ーー溶ける・・・
汚される体内。
次々に休みなく出入りする侵入者たち。
肢体を投げ出して白目をむいている姿がカメラに収められていく。
もう、何がなんなのかわからない。
ただ男たちに言われたことをやる。言われたとおりの格好になって、言われた通りに動く。
「さすが澪さんは優秀ですね。教えた通りにできてえらいですよ」
成瀬はまるでマーキングするかのように、わたしの身体のいたるところにキスマークを残していった。
大事な何かが壊れていく。