「う・・・」
体が・・・バキバキする。
汗ではりついたユニフォームがきもちわるい。
帰ってきてそのまま寝ちゃったみたい。
試合のために結んだ髪もほどいてない。
お母さんに怒られる前に、シャワーを浴びよう。
そう決めて、
わたしはベッドから立ち上がろうとした。
した、はずだった。
「えっ・・・?」
足が動かない。
っていうか・・・手も動かない。
あおむけでベッドの上から、動けなかった。
どういうこと?
スカートがめくれてスパッツが丸見えになっている。
平泳ぎのポーズでひっくり返ったみたいな。
そのかっこうから、どうしても体が動かせない。
「な、なんで?」
おちつけ、わたし。
だいじょうぶ、まず自分の名前は・・・
美墨なぎさ。
私立ベローネ学院女子中等部2年桜組。
さっき試合のあと、家に直帰して・・・
今日はかつやくして・・・まあ・・・負けちゃったけど・・・
うん、別に記憶がなくなってるとかじゃない。
その時気づいた。
さっきフィールドでわたしが持っていた
ラクロススティック。
その見なれたシャフトが、自分の足の間にある。
「ど、どうして?」
ぎゅっとからだに力を込めたその時。
「おはよう、なぎさ」
わっ!
「ほ、ほのか?!」
いちばんの親友の。
優等生の。
わたしの友達、雪城ほのかが。
笑顔で座っていた。
「おばさんに声をかけて、
上げてもらっちゃった。
疲れてるから、起きるまで待ってていいって」
そう話すほのかの横のテーブルに、
コップの麦茶がふたつ、
びしょびしょでならんでる。
「目が覚めた?のど、乾いたでしょ」
・・・そう言って、
わたしの口にコップをさしだした。
しわひとつないスカート。
ぴっちりとめられた胸元のリボン。
いつもの制服のほのかが。
・・・なんでわたしの部屋に、いるの?
でも、それより・・・のどがからからだ。
んくっんくっ
「あ、ありがとう・・・」
なんか・・・かぜ引いた時のお母さんみたい。
コップには、
まだ半分くらい麦茶がのこってる。
ほのかがそれをくい、とのみほした。
「ど、どうなってる・・・の?
ほのか、何か知ってるの?」
胸の中がザワザワする。
・・・聞いちゃった。
・・・聞かないほうがよかった?
だっていま、ここには
「私がやったの」
さらりとほのかが言った。
いつもの笑顔。
ありえない。
背中が、すごい勢いで冷えていく。
服の下の汗がつめたくてぬるぬるしてきもちわるい。
「な、なんで!?」
ぴたり。
わたしの口にひとさし指をあてて、
『静かに』というてぶり。
「大きい声出すと、ご両親に聞こえるわ・・・」
ささやくように、ほのかが言った。
「もっとね・・・なぎさのことが知りたいの。
だからね、少し付き合ってくれる?」