※この作品はR-18です。

いちばん近くに   作:黒沼むつみ

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第5章:わたしたちは+第6章:いちばん近くに

 

第5章:わたしたちは

 

「大丈夫よ・・・なぎさ」

ほのかが耳元でささやく。

優しい声。

いつもの、一番の、大切な親友の声。

 

すっと手が脚から離れて。

左手をそっと握られる。

暖かい手。

でも力強く。硬く、握りしめる。

 

いつもと、同じ。

2人が変わる時と、同じ強さでー

 

 

「いっ・・・っ!」

・・・亮太のものが入ってくる。

肉壁をこじ開け、

なぎさの大切な、奥の奥まで、

細くて熱い肉が侵入してくる──

 

くちゃっ

 

弟のものが自分の内部に到達した音を、なぎさは確かに聞いた。

 

「いゃああああ!」

歯の根が合わない。

ガクガクと体が震えて止まらない。

「抜いて、抜いてええ・・・!」

 

ぶんぶんと首を振るなぎさを

抱きしめながら、

手を握りながら、ほのかが言う。

「大丈夫よなぎさ・・・

こんなの大したことないわ。

いつだって私たちは、

世界を救ってきたじゃない」

ほおに唇をあてて。

ついばむようなキス。

 

妖艶に微笑むほのかをみて、

亮太の背中にぞくぞくと戦慄が走る。

それが恐怖なのか、快感なのか、

彼には区別がつかない。

「お姉ちゃん・・・」

ぐちゃり。

亮太が腰を動かす。

 

ガキャリ。

ラクロススティックが鳴る。

 

なぎさはまるでベッドに縛られた

生贄(いけにえ)だ。

饗宴(きょうえん)が終わるまで、虐(しいた)げ続けられる。

 

「・・・だ、だれか・・・メップル、ミップルぅ・・・」

なぎさが助けを呼ぶ。

喉から搾り出すような声。

どこにも届かない声。

ぬぐうことのできない涙で瞳がじっとりと光る。

 

ぐちゃり。

ぐちゃり。

亮太の腰の動きは止まらない。

 

「2人ならおやすみしてるわ」

さらりとほのかが言い放つ。

左手を固く握りながら空いた手で

なぎさの胸を弄ぶ。

「ねえ・・・なぎさ。ほんとうに。

ほんとうに助けてほしい?」

 

噛んで含めるように。

念を押すように。ほのかが聞く。

なぎさが、こくりと頷くと。

 

「チャンスを・・・あげる」

ほのかは制服のポケットからコミューン・・・ではない、

なんの変哲もない携帯電話を取り出すと

リダイヤルボタンを押した。

 

どこにかけようというのか。

そんな疑問を持つ間もなく。

「もしもし?雪城です。はい。

藤村くんいます?」

 

・・・藤P先輩の家に、

ほのかが電話をかけている。

わたしの目の前で。

ぱちりと、ウインクをして。

小声で。

「なぎさ。藤村くんいるって。・・・チャンスよ」

 

なんの。なんのチャンスだろう。

 

ぐちゃり。

 

「あぅっ・・・」

亮太の乱暴な腰使いで

なぎさの声は時々乱れてしまう。

結合部はもうどろどろで、どこまでが自分か分からないくらいだ。

 

ほのかが携帯を耳元から外す。

『はい、藤村ですけど』

小さく光る液晶の名前を、電話口が名乗った。

見せつけるようにかざされたそれから、声が聞こえる。

遠くから、何光年もの距離を隔てているような、先輩の声。

 

「もしもし、藤村くん? 夜遅くに ごめんね。私、雪城だけど・・・」

ぐちゃり。

 

ガキャリ。

 

ほのかが話し始める。

プリントを忘れた、とか他愛のない話をしている。

そっと・・・目配せをする。

・・・いま、ここで、助けを呼べば。

なぎさは。

わたしは。解放されるかもしれない。

でも、それは。

なんて、いま、なんて言えば。

 

ぐちゃ、ぐちゃり。

 

「なんの音?うーん聞こえないわよ?」

ほのかがごまかしている。

憧れの先輩に、弟に蹂躙(じゅうりん)されている音を電話越しに聞かれている。

その事実に思い当たった途端、

なぎさの口から悲鳴がほとばしった。

 

あとはもう、止まらなかった。

 

「・・・っ、せん、せんぱい・・・たすけ、て・・・。

ちがうの、ちがうの、わたし、いま、亮太に・・・っ やだ・・・ やだっ・・・!」

 

ぐちゃり。ぐちゃり。

 

ガキャリ。

 

ぷつり。ツーツー。

 

携帯を切り。

電源を切ってほのかが息をつく。

「なぎさは・・・私が思ってるより。

ずっと・・・強いのね」

なぎさの目を見ずに。

虚空に語りかけるように。

 

「だから・・・私がいなくても。大丈夫ね」

 

ぐちゃり。

 

「お、お姉ちゃん、もう・・・ぼく・・・」

 

なぎさがヒッと息をのむ。

弟のものが、中で、じわじわ膨れ上がっているのが分かる。

 

「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・!」

だんだん高くなる弟の声。

ぐちゃ、ぐちゃと水音が響き、

打ちつける腰が早くなる。

 

「や、やだ、抜いて、やだ!絶対、やだ・・・!

ありえない・・・!」

ひきつる声のなぎさをつかまえて。

ほのかが首をすっと握る。

 

けひ、と喉がなる。

開いた唇に、ほのかが舌を差し入れた。

粘膜と粘膜が交わる、溶けるような口付け。

軟体生物の交尾のように、

二人の口の中で舌が交じり合う。

 

・・・ひくひくと腰を震わせて亮太が太ももから手を離す。

 

なぎさの中から、ゆっくりと。

白い粘液が流れ落ちた。

 

「ひっ・・・」

なぎさの目の前が暗く、暗くなる。

どこまでも。黒く、沈んでいく。

 

第6章:いちばん近くに

 

・・・声が聞こえる。

 

親友の声。

いつもわたしに力をくれる。

あの声。

どんな困難だって、二人で乗り越えられる、あの声──。

 

ダンダンダンダン。

 

・・・扉が叩かれている。

 

外から声がする。誰かの声。両親の声。

ここをあけなさい、とか、なんとか。

 

でもとおくて、よく聞こえない。

 

なぎさ、なぎさと

弟が私を呼ぶ声。

また呼び捨てにして。

生意気な、めんどくさくて可愛い弟の声。

 

親友の声。

ねえ、なぎさ。

 

鈴のような、よく通る声で、わたしを呼ぶ。

 

なぎさ、って。

初めて呼んでくれたのはいつだっただろうか。

あの日初めてわたしも、ほのか、って呼んだんだった。

 

ねえ、なぎさ。

 

初めての時、キスしてくれたのは私、だよね。

手を握っていてくれたのも。

私だよね。

ごめんね、なぎさ。いつも、ありがとう。

ずっと友達でいたかったけど。

無理だった。

私のこと、忘れないよね。

 

・・・ほのかの声が遠ざかる。

 

ガチャガチャガチャと・・・扉の開く音がして。

視界が真っ白になって──

 

なぎさの記憶は、ここで途切れている。





読了ありがとうございました。
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関連作品:なぎさと亮太の話
『さよならコブラツイスト』
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