※この作品はR-18です。

FF7ntR   作:夜叉五郎

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第十九章:バカンスを満喫 ♡

[u]-εγλ 0006年8月15日夜。

 

世界バーテンダー大会の熱戦が幕を閉じた後、夜の帳が下りたコスタ・デル・ソルのビーチでは、出場者たちの健闘を讃え合う華やかなレセプションパーティーが開催される。

砂浜にはムーディーな松明やライトが灯され、波音をバックに色鮮やかなカクテルや豪華なバイキング料理が並び、会場は昼以上の大盛り上がりを見せていた。

 

「ティファさん、本当におめでとう。素晴らしいカクテルだったよ」

 

「あの一杯には本当に感動させられた。世界的な名作の誕生だ」

 

準優勝、かつ事実上の頂点である「最優秀カクテル賞」を受賞したティファの元には、大会のスポンサーや審査員、観客たちが次々とグラスを片手に挨拶に訪れていた。

 

(ああ、もうお願いだからその話はしないで……っ!)

 

ティファは笑顔を張り付かせながら、内心では羞恥心と恐ろしいほどの自己嫌悪に身を焼き尽くされそうになっていた。

「世界的な名作」と褒めちぎられるたびに、つい数時間前、世界中へ生中継される中で、自分の豊かな胸から搾り取った生々しい母乳を殿方たちに振る舞い、それを一滴残らず飲み干されてしまったという、取り返しのつかない現実が脳裏をえぐる。

 

――もしこれが、最愛の夫であるハメルに飲まれるのだとしたら、どれほど破廉恥で気恥ずかしくとも、夫婦間の秘めやかな愛の営み、倒錯的な悪戯の一部として、彼女の倫理観はまだギリギリで受け入れることができただろう。

しかし、現実にそれを喉へと流し込み、あからさまな恍惚の表情を浮かべて絶賛したのは、夫以外の、全く見ず知らずの赤の他人の男たちなのだ。

 

自分の肉体から溢れ出た、我が子のための最も純潔で秘められた血肉の雫を、他人の男たちの舌で直に転がされ、味わい尽くされた。

それは貞操を重んじるティファにとって、初めて経験する精神的陵辱であり、取り返しのつかない不貞を働いてしまったかのような凄まじい背徳感となって彼女の心を甘く打ちのめしていた。

 

さらにティファを追い詰めたのは、自身の身体が示す、あまりにも正直な反応だった。

「ティファズミルク」の単語を耳にし、あの破廉恥な一杯を絶賛されるたびに、脳が強烈な羞恥と興奮を感知し、乳腺の活動を狂おしいほどに活発化させていく。

 

水着の布地に包まれたIカップの双丘の奥が、じわじわと熱を持って脈打ち、新たなミルクがみるみると溜まっていくのがはっきりと自覚できた。

昼に搾ったばかりだというのに、他人の男たちの言葉に反応して、まるで身体が次の不貞を促すかのように分泌を始めていく。

その容赦ない張りと重み、そして乳頭をチクチクと刺激するむず痒い感覚が、彼女の皮膚をこれ以上ないほど敏感に粟立てていた。

 

(ハメルに、本当に申し訳ないわ……っ。こんなに私を愛して、信じてくれているのに……)

 

他人の男たちに自分の最もプライベートな部分を「消費」されてしまったという事実。

だからこそティファの胸には、最愛の夫に対する底知れない申し訳なさと、それを埋め合わせたいという健気なまでの切実さが一気に湧き上がっていた。

こんなとんでもない過失を犯してしまった自分を許してもらうためにも、このハネムーンの間、今まで以上にハメルに貞淑に、そして身も心もすべてを解放して彼のためだけに尽くし、奉仕しなければならない。

今回のティファズミルクの一件は、彼女の妻としての心構えを新たにさせるきっかけとなるのだった。

 

そして、今まさに張りを増し、水着の胸元を押し上げているこの淫らなミルクも、周囲の男たちにこれ以上変な妄想をされる前に、夜のコテージでハメルに思いっきり吸い尽くしてもらおう――。

男たちのそれはただの下品な妄想に過ぎないはずだったが、実はそれこそが紛れもない真実なのだから、ティファにとっては一刻の猶予もなかった。

頭の中は、早く二人きりになって最愛の夫にすべてを委ねること、その愛撫でこの狂おしい羞恥の張りを優しく絞っり取ってもらうことばかりで占められていた。

ティファは自らの弱さを隠すように、ハメルの逞しい腕にいっそう強く身体を寄せ、縋るような視線を彼へと向け続けた。

 

 

お祝いの言葉とともに、次々とティファの目の前に差し出される華やかな祝杯のグラス。

しかし、お腹に双子を宿しているティファは当然、一切のアルコールを口にすることができない。

差し出されるお酒を前に彼女が少しだけ困ったような眉を下げる。

 

「ありがとうございます。私はこのとおりなので、主人が代わりにいただきますね」

 

ティファがお腹をそっと抑え、隣に寄り添う最愛の夫を振り返る。

ハメルはスマートな微笑みを浮かべ、彼女に向けられた祝杯のグラスをすべて完璧な所作で引き受け、飲み干していった。

 

ティファと同じく、夜の海辺のレセプションにふさわしい見事な水着姿で現れたハメルもまた、会場で凄まじい衆目を集める存在だった。

180cmの高身長に、余分な脂肪を一切削ぎ落とし、鋼のような密度で引き締められたバキバキの腹筋。

一目で周囲の男たちを圧倒する、隔絶した強者としての説得力がその肉体には満ちていた。

会場の女性たちは、ハメルのその完璧な肉体に視線を奪われ、ため息を漏らしている。

 

並んで立つ二人の、互いを慈しみ合うような親密な空気。

大衆の視線からティファの腰や膨らみ始めた下腹部を優しく庇うように手を添えている様子を見れば、彼女のお腹の中にいる子の父親が誰であるかは一目瞭然だった。

 

「いやあ、ハメルさん。これほど美しく、数々のプロを震撼させる腕を持つ奥さんをもらえたなんて、本当に羨ましい限りだ」

 

口々に向けられる羨望の言葉に、ハメルは少しだけ誇らしげに目を細め、「ええ、俺にはもったいないくらいの自慢の妻です」と穏やかに応じた。

 

(言えない……。あのカクテルのミルクが、本当は私の母乳だったなんて……!)

 

何も知らない夫が自分を誇らしげに思い、身代わりとなって酒を煽ってくれている。

その誠実な横顔を見つめるだけで、ティファの胸の奥は消え去りたいほどの申し訳なさと、激しい羞恥心で破裂しそうだった。

 

そればかりか、現在の尋常ではない興奮と背徳感のせいで、Iカップの双丘の奥がじわじわと熱を持って再び疼き始めてしまう。

周囲に悟られないよう、ティファは必死にお腹に力を入れてその身震いを堪えた。

 

 

そんな中、グラスを片手にしたあのキザな都会派バーテンダーが、不遜な笑みを浮かべながら二人の前に歩み寄ってきた。

神羅カンパニーの威光を背景にした出来レースの恩恵があったとはいえ、彼自身のバーテンダーとしての技量が極めて確かであったのは事実だった。

だからこそ、最優秀カクテル賞の栄誉がティファに贈られたことがよほどプライドに障ったのか、あからさまにティファを貶しにかかる。

 

「おいおい、大層な名前をつけてもらったものだな。所詮は準優勝のくせに、お情けで名前を貰ったくらいで調子に乗るなよ。お前の調合の基礎がまだ一年半程度の浅いものだってことは、同じステージに立てば一目で分かる。どうせ審査員どもも、そのビキニ姿のボテ腹に同情して点数を盛っただけだろ? 本物の洗練された技術も持たない色モノが、ミッドガルのアッパープレートの最高峰である俺の店と並んだ気でいるなよ」

 

その無礼な言葉が放たれた瞬間、ハメルの水色の瞳が冷酷な獣のそれへと変わり、一歩前へ出ようとした。

だが、それよりも早く、周囲から力強い足音が響いた。

 

「おい、そこまでにしときな、兄ちゃん」

 

割って入ったのは、ジュノンの軍港街で長年店を構える職人気質のオッチャンバーテンダーだった。

がっしりとした体躯でキザな男を睨みつける。

 

「お前の技量が確かなのは全員が認めてるさ。だが、出来レースの裏を知りながら、最優秀カクテル賞に選ばれた彼女をそこまで貶すのは男が廃るぞ。あの頑固な審査員たちがあれほど魂を抜かれたような顔をしたんだ。お前さんのカクテルにはない、何か凄まじい奇跡があの一杯にはあったってことさ」

 

(奇跡だなんて、そんな綺麗なものじゃないのよ……!)

 

オッチャンの熱い擁護の言葉すら、今のティファの胸には鋭い楔となって突き刺さる。

審査員たちが魂を抜かれた本当の理由が、自分の胸から出た生搾りの母乳そのものの味にあることを、世界でただ一人、彼女だけは身を以て理解してしまっていた。

 

「そうよ。技術の優劣だけで片付けられない領域があるのを、あんたほどの腕があって分からないの?」

 

大胆な紐ビキニを揺らしながら、ゴールドソーサーの高級ラウンジのお色気お姉さんバーテンダーがティファの前に立ち、キザな男を窘めるように見つめた。

 

「コスタの最高の夜に、あんたのその狭い器は似合わないね。せっかくの優勝トロフィーが泣いてるよ、チャンピオン」

 

地元コスタ・デル・ソルのパリピのイケメンバーテンダーが肩をすくめて苦笑する。

 

さらに、ゴンガガのアマゾネスバーテンダーが小麦色の肌を震わせて「お前の味は洗練されていても、彼女のステージでの気迫には及ばない! 一心不乱にボトルに向き合ったティファにケチをつけるな!」と一喝し、ウータイの褌一丁の仙人バーテンダーもまた「勝ってなお他者を蔑むは、己の心の未熟さの証明。それ以上の言葉は野暮というものぞ」と鋭い眼光を向けた。

 

ステージで共に戦った他の参加者五名が、それぞれの個性を剥き出しにしながら、ティファの誠実な姿勢とあのカクテルが起こした奇跡を全力で擁護し、キザな男の傲慢さを嗜めたのだ。

 

五人の圧倒的な気配に気圧され、キザな男はみるみるうちに表情を強張らせていく。

さらに、その背後から、ハメルがモンスターハンターとしての本物の「殺気」を孕んだ冷徹な眼光を突き刺すと、男はこれ以上の言葉を繋ぐのを諦め、「チッ……どいつもこいつも、この破廉恥女に調子狂わされてやがる」と吐き捨てて這々の体でその場を去っていった。

 

「みなさん、ありがとうございます……」

 

ティファが感激の面持ちで頭を下げると、五人は「気にするな、お前さんは最高のバーテンダーだよ」と笑い、再び賑やかな宴の中へと戻っていった。

戦い合った仲間たちからもプロとして認められたその事実に、ティファの胸は温かな感動で満たされていた。

 

……しかし同時に、彼らが絶賛してくれたあの味の『真の正体』への凄まじい罪悪感と破廉恥さのせいで、彼女の頬の紅潮はいつまでも引くことはなかった。

 

夜が更ける頃、満月の光が海面を銀色に照らす美しいロケーションのなかで、フィナーレを告げる大輪の花火が夜空へと華々しく打ち上がる。

 

常夏の夜空を彩る大輪の光の下、ハメルとティファの二人はしっかりと互いの手を執り合いキスを交わす。

二人の胸の奥にずっと残り続ける、一生消えない思い出の光景となる。

二人は幸せな余韻に包まれながら、宿泊先である高級コテージへと戻っていった。

 

そして夜が更け、灯の消えたコテージから、ハメルに乳を吸われるティファの嫋嫋(じょうじょう)とした喘ぎ声がいつまでも響き続ける。

 

 

[u]-εγλ 0006年8月16日〜21日

 

この旅の最大の目的であったバーテンダー大会が終わり、ここからは誰にも邪魔されない、本当のバカンスの時間が始まる。

 

「ハメル……この旅行の間だけは、ミッドガルのことも、神羅のことも全部忘れて、普通の夫婦になりましょう?」

 

「ああ、今はティファとお腹の子たちのことだけを考えるよ」

 

コテージのテラスで波音を聞きながら、二人はそう語り合った。

 

ニブルヘイムの悲劇から続く悪夢や重い使命は、この瑞々しいリゾートのゆったりとした時間の中へと溶けていく。

 

それからの日々は、新婚の二人っきりの甘い時間に満たされていた。

ハメルはティファの身体やお腹の双子を優しく労わりながらも、朝も昼も夜も、情熱的に彼女を愛し続けた。

 

 

朝。

目覚めの優しいキスとともに、ハメルによる優しい搾乳が始まる。

ここ数日で激変したティファの肉体へのケアだ。

乳腺の活動が活発になったティファの乳房は、毎朝目覚めるたびに張ってしまい、むず痒い熱感を帯びる。

それを解消するための、スキンシップを兼ねた二人の大切なルーティンワークである。

 

ベッドの上で、ハメルは腕輪に嵌まった『かばう』のマテリアを静かに輝かせる。

乳房への刺激が子宮へと伝わり、不要な収縮を起こして胎児に悪影響を与えないよう、その肉体的な刺激や反動をハメルがすべて身代わりとなって引き受けるためだ。

 

「ん……ハメル、お願い……」

 

ティファが少し身をよじると、ハメルは彼女の豊かな双丘をやわらかくマッサージし、張りをほぐしながら、自らの口で溜まったミルクを優しく吸い出していく。

最愛の夫の温かな吸引によって、胸の熱感がみるみるうちに引いていく心地よさに、ティファは甘い吐息を漏らした。

 

一方で、『かばう』の接続効果により、ティファの子宮への刺激の肩代わりで、下半身へとダイレクトに突き刺さる強烈な疼きに、ハメルの逸物は臍までそり返るほどに硬く昂ってしまう。

 

ハメルが声を押し殺して耐えているのを察し、ティファは愛おしそうに手を伸ばした。

ハメルの逞しい逸物をその掌で優しく包み込み、胸を吸われる甘美な感覚のなかで、シュッシュと熱く脈打つそれを上下にしごいて抜いてあげるのだ。

お互いを思いやって慈しみ合うその朝の儀式、授乳手コキは二人の絆をさらに深く結びつける。

 

 

昼。

風光明媚なコスタ・デル・ソルを二人で思いきり満喫する時間となる。

 

ある日は、活気あふれる市場を訪れて南国のローカルグルメを片っ端から食べ歩く。

またある日は、裏通りで見つけた珍しい貝殻細工やエキゾチックな民芸品が並ぶ雑貨屋さんをいくつも巡る。

妊婦であるティファの身体を最優先に考え、波の穏やかな入江での浅瀬クルージングなど、無理のない範囲で日替わりのマリンスポーツに興じる日もあった。

 

そうして連日お出かけする際、ティファはビーチで水着を着用するとき以外、お気に入りのリゾート衣装『グラマラスホエール』を身にまとって街へと繰り出していた。

バーテンダー大会での驚異的な活躍も手伝って、ティファが毎日のように新しい観光地やビーチ、賑やかな通りを歩けば、どこへ行っても皆の視線が一斉に集まり、一躍有名人気分に浸れてしまう。

 

嬉しくもありつつ、露わになった豊かなお腹を凝視されるのはどこかこそばゆく、ティファはそのたびにハメルの腕にそっとしがみついた。

 

「ティファさん! ぜひ君の作ったカクテルを飲ませてくれ!」

 

行く先々で観光客から声をかけられると、ティファは新婚旅行中に磨き上げた営業スマイルを浮かべ、スマートに応じる。

 

「ふふ、ありがとうございます。ミッドガルの『セブンスヘブン』でお待ちしてますね」

 

ただ恥ざかしがるだけだったかつての少女ではなく、不埒な視線をかわしつつ、しっかりと自分の店の宣伝へと繋げるあしらい方にも、この旅を通じてさらなる磨きがかかっていた。

 

 

 

夜。

瀟洒なコテージの中は、情熱的で濃密な夫婦の空間へと様変わりする。

広々としたバスルームに備え付けられたジャグジーに入り、心地よい泡に包まれながら、極上のスキンシップを楽しむ。

 

「ティファ、背中を流すよ」

 

「ふふ、ありがとう。じゃあ、次は私がハメルを洗ってあげる」

 

互いの身体を優しく洗いっこしながら、ハメルは双子を宿して一段と豊満さを増した妻の神々しいほどの肉体美に、ティファは自分を支えてくれる夫の引き締まった逞しい体躯に、何度でも心から見惚れ、愛を確かめ合う。

 

ジャグジーを出た後は、毎日取り替えられる清潔な白いダブルベッドのシーツの上が、二人の愛の舞台となった。

妊娠中のデリケートな身体を最優先にするため、お腹を開圧迫するような体勢は絶対に避け、横向きに重なり合うような優しい角度で肌を合わせる。

 

「苦しくないか、ティファ。……入れるぞっ、ううっ」

 

「……んっ、ふあ……っ。ハメル、すごく……堅いのが入ってくるぅ……♡」

 

深い挿入や激しい運動は控え、乳房への刺激も過度にならないよう、ハメルは細心の注意を払ってティファの身体を愛撫した。

そして、子宮の収縮作用を引き起こす成分をお腹の子たちに近づけないよう、絶頂の瞬間には必ず外へと出すことを徹底する。

 

「あ……っ、は、ハメル……そこ、優しく、撫でて……っ……ふ、ぅん……!」

 

「ああ、ゆっくりいくぞ……。ティファも、お腹の子たちも、みんな愛しているっ」

 

それは、たんなる快感を貪り合う行為ではなかった。

肌の温もりを通じて互いの心が深く繋がり、魂が寄り添い合うような、これまでにないほど満ち足りた充足感に満ちた性愛の形だった。

初めての妊娠を経験しているティファは、激しさだけではない、包み込むような優しさのなかで紡がれる「妊婦としての愛し合い方」に深く心を震わせていた。

ハメルが指先と言葉、経験を通じて教えてくれる性愛の奥深さに、彼女は毎夜、幸福な学びを得ていく。

 

神羅への闘志をひととき眠らせ、ただ互いを愛する男と女として結ばれる常夏の夜は、新婚の二人の心に、永遠に色褪せない温かな記憶を刻み込んでいった。

 

 

[u]-εγλ 0006年8月22日。

 

常夏の強烈な太陽が白砂を焦がすリゾート地、コスタ・デル・ソルでのハネムーンバカンスも、ついに最後の日を迎えている。

 

この日は波打ち際で賑やかな「渚のビーチフェス」が開催されており、リゾート地全体が特別な祭りの熱気と歓声に包まれている。

 

ティファの装いは、すっかりお気に入りとなった白と淡いブルーグレーのセパレート水着『シャインフリッパー』だ。

お腹の双子を抱えて優しく、かつ明確な球面を描く下腹部の丸みは、燦然と輝く太陽の下でこれ以上なく瑞々しい母性を主張し、周囲の有象無象の視線を釘付けにしている。

 

ハメルが冷たい飲み物を買いに少し席を外した、そのわずかな隙だった。華やかな祭りの熱気に乗じて、水着姿のティファの圧倒的な肉体美を邪な目で見つめていた、ガラのお悪い三人組のナンパ小僧たちが、にやけ面を浮かべて一斉に距離を詰めてきた。

 

「ねえねえお姉さん、一人のフリ? 妊婦さんみたいだけど、そんなの関係ないくらいめちゃくちゃエロいよ。俺たちとあっちのVIPテントで楽しく遊ばない?」

 

「あれ、この女、ティファってバーテンダーじゃね? この前のカクテル大会ですっごい胸揺らしてたよな。やべ、実物すげーエロい」

 

「あ、そうじゃーん。俺にもあんたのミルクを飲ませてよ。直に吸わせてくれてもいいぜ。へへっ、超美味そうっ」

 

下卑た視線を交互に交わしながら、豊かな胸元や大きく膨んだお腹を舐めるように見回す男たちに対し、ティファは怯むことなく真っ直ぐに紅い瞳を向けた。背筋をすっと伸ばし、ザンガン流の使い手としての凛としたオーラを纏って毅然と言い放つ。

 

「あなたたちに用はありません。これ以上近づかないでください」

 

しかし、その毅然とした態度がかえって男たちの歪んだ欲情を煽ったのか、一人がしつこく手を伸ばそうとした、その時だった。

 

「――うせろ」

 

冷徹極まりない、地を這うような低い声音が響いた。

両手に冷たいトロピカルジュースのグラスを持ったハメルが、いつの間にかすぐ背後に立っていた。

その水色の魔晄の瞳には、一切の慈悲のない冷たい光が宿っている。

 

ニブルヘイム周辺の凶暴なモンスターを幾度も仕留め、死線を潜り抜けてきた凄腕のハンターとしての圧倒的な凄み――その鋭い殺気を含んだ眼光を向けられた瞬間、三人組の顔からは一気に血の気が引いた。

それだけではない。彼らの視線は、水着姿であるハメルの胸元に刻まれた、見るもおぞましい「凄惨な刀創の痕」へと釘付けになった。常人の身であれば確実に即死しているであろうその致命的な傷跡は、彼が潜り抜けてきた修羅場の凄まじさを何よりも雄弁に物語っており、ナンパ小僧たちに本能的な死の恐怖を叩き込んだ。

 

「ひっ……!? や、やべえって、こいつの目、マジで殺す気だ……! その胸の傷、なんだよ……っ!」

 

「ち、ちがっ、俺たちはただ、道を聞こうとしただけで……!」

 

「す、すんません! 人違いでしたぁぁっ!」

 

ガタガタと膝を震わせ、それぞれが情けない無様な逃げ口上を口にしながら、三人組のナンパ小僧たちは蛇に睨まれた蛙のように顔面を蒼白にさせ、脱兎のごとく退散していった。

 

 

ナンパ小僧どもを追い散らしたハメルとティファの二人は、トロピカルジュースを堪能した後、ビーチの一角で行われているスイカ割りの催しに参加することにする。

目隠しをされたティファが、ハメルの低く落ち着いた声を頼りにして、柔らかな砂浜をゆっくりと進む。

 

「ティファ、そのまま真っ直ぐだ。あと三歩……よし、そこだ。思い切り振り下ろせ」

 

「えいっ!」

 

格闘家としての気合とともに木棒を振り下ろすが、勢い余って足元の砂に足を取られてしまう。

普段ならあり得ない失策だが、身重の体で重心がいつもと違うため、しなやかな肢体はバランスを崩して前へと大きく倒れ込んでしまう。

 

「きゃっ……!」

 

すかさず、近くで見守っていたハメルがその強靭な両腕を伸ばし、正面から彼女の豊かな肉体をしっかりと抱き留める。

ハプニングはその瞬間に起きる。

 

ハメルにしがみついた衝撃の弾みで、ティファのIカップ相当に膨らみきった極上の双丘を包む『シャインフリッパー』のホルターネックの結び目が、するりと解けてしまったのだ。

 

「あ……っ、ごめんなさいハメル!」

 

胸元の可憐な白いフリルが大きくはだけ、押し上げられた豊満な胸の弾力が、ハメルの逞しい胸板へとダイレクトに押し付けられる。

さらには、割れたスイカの甘い果汁が、ティファの露出したお腹の滑らかな肌へと少しだけ飛び散り、太陽の光を浴びて生々しくきらめいている。

 

ハメルは周囲の男たちの垂涎の視線が届く前に、瞬時にティファの身体を自らの大きな体躯で完全に遮蔽し、その広い背中で彼女のすべてを包み隠す。

 

「大丈夫だ。誰も見ていない」

 

ハメルが前髪の隙間から覗く深い水色の瞳を和らげ、手際よく水着の紐を首の後ろで結び直してあげる間、ティファは顔を耳まで真っ赤に染めながら、夫の独占欲に満ちた優しい過保護さに、胸の奥を熱く熱く火照らせている。

 

その日の夜、コテージのテラスで心地よい夜風に当たって涼んでいる時のことだ。

ティファは少しずつ大きくなり始めた下腹部へ、そっと愛おしそうに自身の両手を添え、ふと嬉しそうに紅い瞳を丸くする。

 

「あ……ハメル。今、ほんの少しだけ……」

 

ハメルは彼女の微かな変化に気づき、すぐに隣へと寄り添って腰を下ろす。

 

「動いたのか?」

 

「ええ。ふふ、まだ『蹴る』なんて強いものじゃないけれど……」

 

ティファはハメルの大きな手を引き、自身のお腹の上へとそっと導く。

ハメルの無骨な掌にはまだ何の衝撃も伝わってこないが、ティファはくすぐったそうに、しかし世界で一番幸せな慈愛の笑顔を咲かせる。

 

「お腹の奥のほうでね、小さな泡がぷつぷつと優しく弾けるみたいに……ピクピクって、本当に優しく動いたの。それもね、右と左で順番に。……きっとこの子たちが、お父さんとお母さんに、小さなお手紙を届けてくれたんだわ」

 

ハメルの掌には直接届かない、あまりにも微かで、けれどもしっかりと胎内で息づいている二つの小さな生命の兆し。

かつて知っていた物語の悲劇を自らの肉体と執念でねじ伏せ、ティファとともにこの南国の地にたどり着いたハメルにとって、その静かな泡の音こそが、何よりも確かな「新しい未来」の証明である。

 

ハメルは胸の奥を激しい愛おしさで満たしながら、身重の彼女の腰を優しく引き寄せ、その大きな温もりでそっと包み込むのだった。

 

 

[u]-εγλ 0006年8月23日。

 

雲 一つない青空から心地よい日差しが降り注ぐ午前中、二人はミッドガルで帰りを待つ仲間たちの顔を思い浮かべながら、お土産を買い求めるためにリゾートの賑やかな市場へと繰り出した。

 

「マリンには、この綺麗な貝細工の髪飾りが似合いそう。あ、あっちの甘い南国フルーツのクッキーも絶対に喜んでくれるよね」

 

ティファはお腹を片手でそっと労わりながら、歩調を合わせてくれるハメルの隣で楽しそうに紅い瞳を輝かせる。

 

留守を預かってくれているマーレには上品な色合いの南国織物のショール、バレットにはコスタ・デル・ソル特産の度数の強い銘酒、そしてジェシー、ビッグス、ウェッジたちアバランチの仲間たちにも、店での格好の話題になりそうな賑やかな詰め合わせ菓子を一つずつ丁寧に選んでいく。

 

ハメルはティファが品物を指差して微笑むたびに、先回りしてそれらをすべて受け取り、自らの逞しい腕で抱え込んだ。

 

「ハメル、そんなに急いで全部持たなくても大丈夫よ? 私はまだ軽いものしか持っていないわ」

 

「ティファは自分の身体とお腹の子供たちのことだけを考えていればいい。荷物の運搬はすべて俺の役目だ」

 

前髪の隙間から覗く水色の瞳に、一切の妥協のない過保護な独占欲を滲ませるハメル。

ティファは呆れつつも、その不器用で深い優しさに胸の奥を愛おしさでいっぱいに満たし、夫の逞しい腕にそっと寄り添った。

 

午後一番の便で、二人は思い出の詰まったコスタ・デル・ソルを出航する。

巨大な客船のデッキに並んで立ち、名残惜しそうに遠ざかっていく常夏の楽園を見つめるハメルとティファ。

青い海と本物の太陽の光を浴びたこの二週間は、二人の傷ついた心と体を深く癒やしてくれた。

 

「綺麗で良いところだったね、コスタ・デル・ソル……」

 

ティファが少し寂しげに呟くと、ハメルは彼女の肩を優しく抱き寄せる。

 

「ああ。だが、これで終わりじゃない。お腹の子供たちが無事に産まれて、元気に育ったら、今度は家族四人でまたここへ来よう」

 

「ええ……約束ね、ハメル」

 

二人はしっかりと手を繋ぎ合い、書き換えた運命の先にある、新しい家族の未来への誓いを静かに新たにする。

 

 

[μ]-εγλ 0006年8月24日。

 

要塞都市ジュノンへと到着した二人は、そこから再び最上級クラスへとアップグレードした個室タイプのハイウェイバスに乗り換える。

 

高級感あふれる完全個室のシートは、身重のティファの身体を優しく包み込み、バスは滑るようにハイウェイを走り出した。

しかし、ミッドガルへ向かう荒野の中間地点に差し掛かった頃、ハイウェイを大型装甲車で塞ぐ神羅軍の封鎖線と、緊迫した車内アナウンスが一行の足を止めた。

 

『緊急アナウンス、緊急アナウンス。前方街道にて大量の魔獣が発生したため、神羅軍による大規模な掃討作戦が実施されております。本バスはこれより神羅軍の指示に従い、封鎖ライン手前にて待機いたします。乗客の皆様はそのまま車内でお待ちください』

 

防音性の高い個室越しにも、前方から微かな重苦しい振動と爆音、そして不気味な咆哮が伝わってくる。

その不穏な空気で車体がわずかに揺れ、ティファが眉をひそめて下腹部を庇うように両手を添えた。

ハメルはその様子を見逃さなかった。

 

(神羅の兵どもに街道の防衛を期待するだけ無駄か……)

 

ニブル山で修業を積み、野生のモンスターの脅威を知り尽くしたハンターとしての直感が、ハメルに警鐘を鳴らす。

安定期に入ったばかりのティファと、その胎内にいる双子たちに、これ以上のストレスや肉体的な衝撃を与えるわけにはいかない。

 

「バカンスで少し鈍った体には丁度いい運動だ。ちょっと暴れてくる」

 

「えっ、ハメル……? 気をつけてね」

 

ティファの心配そうな、しかし夫の実力への絶大な信頼がこもった紅い瞳に見送られ、ハメルは個室を飛び出した。

ハメルがバス前方の乗車口へと向かおうとした時、隣の個室から同じようにドアを開けて外の様子を伺っていた初老のマテリア商と視線が交差する。

ハメルのただならぬ猛者としての気配を瞬時に察した商人は、慌てて鞄から一つのマテリアを取り出し、ハメルに押し付けた。

 

「あんた、凄腕だな! ここらで暴れてる大地系の魔獣には、この『ウォタラブロウ』のマテリアが効くはずだ。これを使ってくれ!」

 

ハメルは無言で頷くと、マテリアを愛用の弓の装填穴(マテリア穴)へとはめ込む。

 

「……借りる」

 

バス前方の乗車ドアを開け、荒野の冷たい強風が吹き荒れる外へと降り立つハメル。

前方では神羅兵たちの「うわああああっ! 抑えきれん! 撤退だーっ!」という悲鳴が上がり、防衛線にあたっていた兵たちが見るも無惨に蹴散らされ、吹き飛ばされていた。

神羅の封鎖線を容易く食い破った凶暴な魔獣たちは、そのままハイウェイを直線的に猛進し、停車しているバスを目がけて正面から雪崩れ込んできていた。

 

ハメルはバスを背に立ちはだかり、迫り来る前方の群れへ向けて弓を限界まで引き絞る。

 

ハメルが放った矢は、マテリアの力で清冽な水流に包まれる。

着弾と同時に渦巻く水流が、岩の隙間に浸透し、その膨大な水圧が硬い岩の鎧を内側から崩壊させていく。

吹き荒れる強風と押し寄せる魔獣の圧迫感という悪条件を一切感じさせない超人的な狙撃。

ハメルの放つ一矢一射は、正面から突進してくる強靭な岩塊を容易く粉砕し、肉体を内部から破壊していく。

 

次々と路傍に崩れ落ち、沈黙していく魔獣の群れ。

バスに決定的な衝撃が伝わる前に、ハメルは前方の脅威を完全に排除してみせた。

 

脅威が去り、荒野を吹き抜けた一陣の強風が、足元に転がっていた一枚の湿った紙切れを巻き上げ、ハメルのブーツの裾へとパタパタと絡みつかせた。

 

(……ん?)

 

ハメルは無言でその紙を拾い上げた。

それは、先ほど吹き飛ばされた神羅の封鎖兵が所持していた、最新の『ミッドガル周辺・神羅軍事警戒グリッドマップ』の現物だった。

 

紙面には、ミッドガルを中心に幾重にも区切られた詳細なセクター番号と、軍用の暗号エリアコードが明確に刻まれている。

その中には、ハメルが前世の原作知識として深く記憶に刻んでいた重要座標も、はっきりと印字されていた。

 

(ポイント120にポイント235……。ここが、あの約束の荒野の座標か)

 

いずれ入手しなければと思っていた情報が、奇跡的に戦利品として転がり込んできた。

ハメルは水色の魔晄の瞳を鋭く光らせると、誰にも気づかれぬよう、その紙の地図を静かにコートの胸ポケット深くへと忍ばせた。

 

前方のドアから車内へと戻ると、一部始終を車内モニターなどで見守っていたらしい乗組員や他の乗客たちから、割れんばかりの歓声と熱い感謝の言葉が注がれた。

 

「おかえりなさい! おかげで助かりました!」

 

「信じられない腕前だ、怪我人が一人も出ずに済むなんて……!」

 

差し出される感謝の手や賞賛の声をすべてスマートに受け流し、ハメルが通路を進むと、先ほどの老人が礼を言おうと駆け寄ってくる。

 

「見事だった……! あの岩塊魔獣を一瞬で粉砕するとは、あんた、何者だ!?」

 

「マテリアは返す。助かった」

 

ハメルは無造作にマテリアを老人の掌に返すと、再び何事もなかったかのようにティファの待つ最高級個室へと戻る。

 

「ただいま、ティファ。もう大丈夫だ」

 

「おかえりなさい、ハメル。ふふ、全然体が鈍っているようには見えなかったわよ」

 

ティファは安堵の微笑みで彼を迎え、ハメルはその愛おしい姿と、胸ポケットに収めた新たな手応えを噛み締めながら、彼女の隣へと腰を下ろすのだった。

 

その後、ハメルの活躍によって周囲の危険が去り、神羅の大型装甲車が撤去されて封鎖が解除されると、ハイウェイバスは再び滑らかに滑り出した。

 

夜、重く湿った空気が漂う魔晄都市ミッドガルへと帰着する。

鉄のプレートに遮られた地下スラムの景色は、南国の楽園とはあまりにもかけ離れているが、七番街スラムへと足を踏み入れ、自分たちの城である『セブンスヘブン』の前に立った瞬間、二人の胸には確かな帰還の安堵感が湧き上がるのだった。

 

 

[u]-εγλ 0006年8月25日。

 

明日からの営業再開に向けて、二人は丸一日を掛けてセブンスヘブンの大掃除に専念する。

ハメルが店内の隅々まで埃を払い、テーブルや椅子を完璧に磨き上げる中、ティファもバーカウンターの奥でグラスや器具を丁寧に洗浄していく。

お昼過ぎには、長旅の留守を完璧に預かってくれていたマーレやバレット、そしてマリンが店へと顔を出す。

 

「おかえり、ティファ、ハメル! いい顔して帰ってきたじゃないかい!」

 

マーレが皺だらけの顔を綻ばせれば、バレットも腕を組んで不器用な笑みを浮かべる。

 

「フン、スラムの悪い空気でまた体が鈍らねえように、明日からきっちり働いてもらうからな」

 

「ティファ、ハメル、おかえりなさい!」

 

マリンが嬉しそうにカウンターまで駆け寄ってくる。

ハメルとティファは、コスタ・デル・ソルで買い求めてきた特産のお土産をみんなに配り、賑やかに旅の思い出話に花を咲かせるはずだった――が、一行から上がったのは、予想だにしない熱烈な祝福の声だった。

 

「それにしても大したもんだよ、ティファ! スラムの酒場の中継で大会を皆で観てたんだけどさ、最優秀カクテルに選ばれるなんてね! でかしたティファ。これでセブンスヘブンも安泰だよ!」

 

マーレが我がことのように破顔して手を叩けば、バレットも興奮を抑えきれない様子で身を乗り出し、野太い声を店内に響かせる。

 

「おうよ! 審査員どもの度肝を抜いたあのカクテル、『ティファズミルク』だっけか? さっそくウチの新メニューに加えようぜ! 看板商品間違いなしだ!」

 

「マリンもティファのみるく、のんでみたい!」

 

大人たちの盛り上がりに便乗して、マリンも両手を上げて無邪気に笑う。

 

その微笑ましい光景の真ん中で、ティファは顔が火を噴きそうなほど真っ刻に染まっていくのを止められずにいた。

そもそも、コスタ・デル・ソルという遠く離れた南国の地だからこそ、「旅の恥はかき捨て」という半分破れ被れの精神で、彼女はあの露出度の高い水着姿で大会に臨んだのだ。

まさかその様子が魔晄テレビの中継によって、全世界、それも自分をよく知る七番街スラムの面々にまで、膨らんだボテ腹の柔肌ごと余すことなく曝されてしまうなど、完全に計算外の誤算であった。

 

さらに言えば、あのカクテルが審査員たちの本能を狂わせた「本当の理由」――自身の肉体から分泌された、本物のティファズミルクが混入していたという恐るべき真相を、ハメルにすら告げられず、ただ一人胸の奥に秘めているティファは、脳内で冷や汗を流す。

 

「あ、あはは……。ありがとう、みんな……。でも、あのメニューはちょっと……その、色々と準備が難しくて……っ」

 

これ以上ないほどに困り果てた引き笑いを浮かべ、ティファは助けを求めるようにチラリと夫の方へ視線を送る。

 

すると、ティファの視線に気づいたハメルは、その深い水色の瞳に大人の男としての生真面目な光を宿し、腕を組んでバレットたちの提案に深く頷いた。

 

「ああ、ティファの言う通りだ、バレット。あのカクテルの再現には、現地でしか流通してない新鮮なコスタ産の高級ミルクをベースに使う必要がある。ここミッドガルまでの輸送コストや鮮度の維持を考えると、うちの定番メニューに加えるのはなかなか難しいだろうな」

 

(違うの、ハメル……! そういう問題じゃないの……っ!)

 

夫のどこまでも理路整然とした、しかし的外れなトーンの真面目な回答を聞きながら、ティファは心の中で激しく突っ込みを入れつつ、さらに顔を赤くしてうつむくしかなかった。

 

そんな二人のやり取りを、事情を知らないバレットは「ちぇっ、そりゃ残念だな」と頭を掻き、マーレやマリン、そして後からやってきたジェシーやビッグス、ウェッジたちも交えて、からかいと温かさの混じった笑い声が再び店内に響き渡る。

 

やがて賑やかな時間が過ぎ、みんなを見送った後。

夕闇がセブンスヘブンを静かに包み込む頃、店内の片付けや仕込みもすべて終わりを迎える。

カウンターの奥で明日の仕込みを整えるティファと、フロアの開店準備をスマートに進めるハメル。

南国の楽園での泡沫の夢は終わり、愛おしい日常が再び戻ってくる。

 

だが、二人の絆はお腹の新しい命とともに、これまで以上に強固なものへと結実している。

星の未来を守り、家族の幸せを掴み取るための本当の戦いが、この住み慣れた七番街スラムの灯火の下から、再び力強く動き始めるのである。

 

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