第二十三章:夜営業復帰と決戦前夜 ♡
[μ]-εγλ 0007年7月23日。
光陰矢の如し。
双子のティベリーとガイルが生まれてから、早くも半年が過ぎていた。
その間、ティファの体型はお産のダメージから見事に回復を遂げる。
ザンガン流秘伝の過酷な呼吸法と深層筋の鍛錬、そしてハメルが徹底して管理する栄養面でのサポートが実を結び、彼女のプロポーションは、出産前を超える極致へと至っていた。
トップバスト100センチという圧倒的なボリュームを保ちながらも、ウエストは引き締まった60センチを維持し、骨盤回りは母性あふれるしなやかな88センチへ。
まさに誰もが見惚れる完璧なシルエットである。
もちろん、その胸の張りの強烈さは見た目だけではない。
生後半年を迎えた双子は順調に育ち、少しずつ離乳食を口にするようにもなっていたが、母乳の分泌は衰えるどころか、今なおフル稼働で満ち続けている。
ティファの身体のスペックの高さは、女としてだけでなく、母としても最上位のグレードであった。
「ハメル……、また少し張ってきちゃった。……お願いしてもいい?」
双子が吸いきれない分を処理するのは、夫であるハメルの役割だ。
夜、二人だけの地下のプライベート空間で、ティファは少し頬を染めてハメルを見つめる。
服のフロントを緩め、ずっしりと重みを増した胸元を自らの手で支えるようにして夫へと預けた。
ハメルは水色の魔晄の瞳を優しく細めると、彼女の体を抱き寄せた。
溢れ出るミルクを逃さぬよう丁寧に吸い上げ、熱を帯びた乳房を優しくマッサージしてほぐしていく。
そのたび、静かな地下室には甘く濃密な吐息が静かに落ちていった。
それは単なる体調管理にとどまらず、二人にとって夫婦の絆を深める特別な愛の時間となっていた。
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ハメルが吸い上げる刺激に、ティファの身体は敏感に反応し、背中を小さく反らせてハメルの髪をその指先で強く掻き毟る。
「んあっ……! ハメル、もっと……強く吸って……あっ、んんっ!」
ティファの声が甘く溶けていく。ハメルの舌が乳首の先端を丁寧に転がし、時折歯を立てて軽く甘噛みするたび、びくんびくんと彼女の腰が跳ねる。
溢れ出す乳汁は甘く濃厚で、ハメルの喉を滑り落ちる音さえも卑猥に響く。
左右の乳房のミルクを吸い付くし、恍惚とした表情を浮かべるハメル。
その股間はギンギンだ。
クスリと妖艶に微笑むティファ。
「ありがとう、ハメル。次は私の番ね」
ティファはハメルの逞しく熱を帯びた質量を、自慢のメートル級の爆乳で深く挟み込む。
衣服を完全に脱ぎ去り、滑らかな肌と肌が密着する官能的な摩擦音を響かせながら、重厚な肉のクッションでペニスを包み込み、熱心に上下させていく。
さらに、ハメルを見上げる熱い視線とともに、溢れ出る吐息を孕んだ唇でその先端を深く迎え入れ、舌を絡ませる。
ハメルを喜ばせたいという一心で施される情熱的な奉仕には、以前にも増して深いテクニックと情愛が込められており、ハメルもその甘美な重質量と熱に翻弄され、熱く腰を振るわさずにはいられなかった。
「はあ……っ、ハメル……こんなに熱くて、硬い……」
ティファは自らの豊満なKカップの谷間に夫の屹立を埋め、両手で柔肉を寄せてさらに強く圧迫しながら、ゆっくりと上下に擦り上げていく。
乳房の内側は熱く湿り、残っていた乳汁が滑り油となって卑猥な水音を立てる。
彼女は上目遣いにハメルを見つめながら、舌を長く伸ばして先端の鈴口をチロチロと舐め回し、時折深く咥え込んで喉奥まで迎え入れる。
「んぐっ……じゅるっ、れろれろ……っ。ハメル、気持ちいい……? もっと、もっと私で感じて……」
ハメルの指がティファの黒髪を優しく掴み、彼女の動きに合わせて軽く腰を押しつける。
ティファの舌は執拗に裏筋を這い、尿道口を刺激し、大量の先走りを啜り取る。
爆乳によるパイズリは圧倒的で、柔らかくも弾力のある肉の波がハメルの全てを包み込み、溶かすような快楽を与え続けた。
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もちろん、夫婦の営みはパイズリだけでは終わらない。
ティファの身体は熱を帯びて湿り、秘められた蕾はすでに蜜を湛えて夫を受け入れる準備を整えている。
隣のベビーベッドで、愛しい我が子たちがすやすやと健やかな寝息を立てているのを確認すると、二人は息をひそめながら、より深い愛の交歓へと足を踏み入れた。
産後半年という節目は、夫婦の秘め事にとっても一つの区切りを迎えていた。
ザンガン流の裏奥義、閨房術の「エターナルヘブン」を解禁し、久方ぶりに互いの深部で繋がり合う喜びを分かち合っていく。
けれどハメルは夫として、何よりも愛するティファの身体を最優先に気遣っていた。
間を置かない連続の妊娠が、彼女の肉体にどれほどの負担をかけるかを知っているからこそ、絶対に無理はさせない。
そのため「エターナルヘブン」の更なる上位技の「ウルティメットヘブン」には決して踏み込まず、肉体を重ね合わせて狂おしく交わる際にも徹底して「外出し」を厳守し、確実に避妊を行う姿勢を崩さない。
「ふあ……っ、ん……あなた、いつも、私を大事にしてくれて……ありがとう……」
無骨でありながらも、自分への深い労りと溢れるほどの愛情に満ちた夫の配慮。
それに気づいているティファは、紅い瞳を潤ませながら、この上なく愛おしそうな深い微笑みをハメルに向けた。
守られている安心感と、胸いっぱいに広がる愛の深さ。
その感謝と溢れる情愛に満たされたティファは、自ら愛おしそうにハメルの首に腕を回し、さらなる情熱的な愛の交歓へと夫をいざなっていくのだった。
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[μ]-εγλ 0007年8月1日。
ティファのプロポーションの見事な回復と体調の安定を受け、ハメルとティファ夫妻は一つの決断を下す。
これまで完全に育児へ専念するため店を休んでいたティファだったが、この8月から、夜間営業で時間限定でバーカウンターへの復帰へと踏み切ったのだ。
ティファが接客に立つわずかな間、地下室での双子の相手はマーレとマリンが買って出てくれた。
そして店はハメルとティファの二人で切り盛りし、息の合った手際で夜のセブンスヘブンを回していく。
その夜、セブンスヘブンの扉が開いた瞬間から、店内には狂気的な熱気が渦巻くこととなった。
真夏の夜の熱気をはらんだ店内で、カウンターの中に立つティファが身にまとっていたのは、妊娠前にも着用していたあの大人っぽい蒼いミニドレスだった。
そして、胸元に一本の紐で結婚指輪を吊るしている装いもまた、妊娠前とまったく同じスタイルだった。
バーテンダーとしてグラスを傷つけないよう、師のザンガンからもらった頑丈な紐に通してペンダント代わりに身につけている実用的な配慮もそのままだ。
かつて見慣れていたはずのその衣装と胸元の指輪。
しかしだからこそ、出産を経た現在の体型の劇的な変化が、誰の目にも恐ろしいほどはっきりと浮き彫りになる。
フロントがV字に深く開いたネックラインからは、妊娠前とは比較にならないほど豊潤さを増した胸元の谷間が大胆に覗いている。
胸元をクロスする細いリボンと繊細なレースの装飾が、その圧倒的な肌の白さと柔肉の質量感をさらに際立たせていた。
かつても谷間に収まっていた純銀の指輪は、今や格段に深くなった爆乳の谷間の奥深くへと完全に埋もれるように挟まり、ハメルの妻であるという絶対的な証拠を、男たちの視線の中心でより一層艶やかに際立たせる結果となっていた。
さらに、ドレスの背中は肩甲骨から腰のすぐ上まで大胆に切り開かれており、肌荒れ一つない滑らかな背中のラインが惜しげもなく露わになっている。
ウエストにはパールの飾りがついた細い紫のリボンベルトが結ばれ、驚異的なクビレを強調していた。
裾にあしらわれた軽やかなフリルの下からは、引き締まった健康的な白い太ももが伸び、足元にはドレスと同色の蒼いアンクルストラップ付きのハイヒールが、人妻としての洗練された大人の色香を完成させている。
「お待たせしました。特製カクテルです」
ティファが微笑み、シェイカーを両手で包み込んでリズミカルに振り動かす。
その動作に合わせて、深く開いた胸元が瑞々しく重厚に揺れ動いた。
かつて同じ衣装を着ていた時を遥かに凌ぐ胸の圧倒的なボリューム感、二人の子を産んだとは思えぬほど極限までシェイプされたウエスト、そしてより艶やかさを増したヒップライン。
かつての可憐さを完全に超越したその人妻としての肉体美は、店内を一瞬で支配した。
「おい、見ろよ……あのドレスも胸元の指輪も、妊娠前と同じなのに……!」
「ああ、谷間の深さも肉体のメリハリも全然別物だ……! 埋もれた指輪が眩しすぎて、酒を飲む手が震えちまう!」
かつての姿を知る常連客ほど、同じ装いだからこそ際立つ溢れんばかりの色香と肉体の変化に理性を奪われ、感嘆の溜息を漏らしながら、次々と注文を重ねていく。
ハメルは隣でスマートに注文を捌きつつ、愛妻の鮮やかな復活劇を温かな眼差しで見守っていた。
フロアの床下からは、ときおり地下室でマーレとマリンにあやされ、健やかに眠る双子の気配が伝わってくる。
信頼できる家族のサポートに守られ、最高の肉体と色香を取り戻したティファは、愛するハメルとともに、限定された時間のカウンターに立ち続ける。
新生セブンスヘブンは、その熱気とともに、空前絶後の大繁盛の夜を突き進んでいくのだった。
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[μ]-εγλ 0007年9月1日。
セブンスヘブンは今日も大繁盛だ。
だが、この圧倒的な繁盛の理由はティファの復帰だけではない。
最近のセブンスヘブンには、お馴染みのスラムの常連客だけでなく、見慣れない「初顔の来客」が明らかに増え始めている。
その顔ぶれの中には、単に噂を聞きつけてやってきた一般の客に混ざって、酒を飲むふりをしながら店内の様子や客同士の会話を注意深く盗み聞きしようとする、アバランチの動向を探る「密偵のような影」がチラホラと見え隠れしていた。
神羅の治安維持部門、あるいはそれに連なる情報屋の手先に違いなかった。
ハメルはフロアを仕切りながら、冷徹な魔晄の瞳で、それらの不穏な動きを目ざとく見つけ出す。
「そこの客の注文は俺が運ぶ。ティファはカウンターから出るな」
「あ、うん。わかったわ」
ハメルはハンターとしての鋭敏な観察力と判断力で、状況を完全にコントロールしていく。
ティファが初対面の客と親しく話し込んで余計な情報を口走らないよう先回りし、さらにバレットやジェシーたちアバランチのメンバーがその密偵たちと不用意にかち合わないよう、自然な動線を作って客席を誘導する。
実のところ、アバランチの七番街スラム支部は今、大きな転換期を迎えていた。
バレットやジェシーたちは、思想的なズレや方針の甘さが目立つアバランチ本部に完全に見切りを付け、独自の路線へと舵を切り始めていたのだ。
現状、バレットたちが展開しているのは、「魔晄エネルギーはこの星の血液であり、すべての生命の精神エネルギーが還っていく場所そのものだ。
故に、星を削る魔晄炉は廃止すべきだ」というメッセージを盛り込んだポスターを、スラム街の各所に貼りまくる啓発作戦だった。
本部の急進的なやり方に比べれば、まだ直接的な武力行使には踏み切っておらず、言論と露出による抵抗活動に留まっている。
この作戦を支えていたのが、ハメルがもたらした潤沢な資金だ。
ハメルが前世の知識を活かして仕掛けた「JSフィルター」の販促活動は爆発的なヒットを記録し、その利益がジェシーを経由して七番街支部に流れていたのだ。
豊富になった活動資金を使い、支部は闇ルートから高性能な印刷機械を手に入れることに成功していた。
本来、神羅カンパニーはプロパガンダの影響力を深く知っているため、印刷機器の流通に関しても軍の兵器と同様に厳重な許可制を敷いて情報統制を行っている。
そのため、スラムのあちこちに反神羅のポスターが増え始めた事態は、裏に高度な調達網が存在することを示しており、神羅情報部としても無視できない問題となっていた。神羅の諜報部員が本格的に七番街スラムへ姿を見せ始めたのは、これが原因だった。
ハメルは、ポスター作戦が決行される直前のやり取りを思い出す。
印刷機を手に入れて勢いづくバレットたち四人を前に、ハメルは冷徹な眼差しで厳しい警告を与えていたのだ。
『一度貼ったポスターは、どんなに汚れても剥がれかけても、二度と触れるな。周りに誰もいないと思ってもだ。どこで誰が見ているかわからない』
貼る時自体は、見張り役を立てて警戒すれば足取りを消せる。
だが、一番危険なのは作戦の後だ。一人で街を歩いている時に、自分が貼ったポスターを気にしてチラチラ見たり、触って直そうとする——その無意識の仕草こそが、張り込んでいる諜報員に「関係者」だと見破られる決定的な証拠になる。
プロの追及を甘く見るなという徹底した指導だった。
『ハッ! なんだそりゃ! 一度貼ったもんを後からベタベタ触るようなバカがどこにいるんだよ!』
バレットは鼻で笑って大声を出したが、隣のジェシーが呆れ顔でからかうように言葉を挟んだ。
『あーあ、バレット。ハメルに言われてなかったら、絶対「俺たちのポスター破れてねえか?」って一人で見に行こうとしてたでしょ? そこまで考えてなかったくせに』
『なっ……! じ、ジェシー、お前っ!』
図星を突かれて言葉を詰まらせるバレットの横で、ビッグスは感心したように頷いていた。
『なるほどな。神羅の諜報部はポスターそのものじゃなく、それを気にしている人間を監視するわけか』
『うう、恐ろしいっす……! 街を歩く時はポスターなんて目に入ってないフリをするっす! 真面目に気をつけるっす、ハメルさん!』
ウェッジが青い顔で誓ったように、ハメルの提示した冷徹なリスク管理は、アバランチの面々に深い警戒心を植え付けていた。
全員がその教えを固く守っているからこそ、現在の立ち回りにもボロを出さずに済んでいるのだ。
神羅諜報部がまだセブンスヘブンとアバランチの明確な繋がりを捉えきれていないのも、まさにハメルの情報統制のおかげだった。
彼らにとってこの店は、あくまで「スラムで一番流行っているパブ」であり、集まる雑多な客の中に潜んでいるかもしれない構成員を探るために出入りしている段階に過ぎない。
その追及を完璧に交わせているのは、ハメルの緻密な隠蔽工作の賜物だ。
アバランチのメンバーと怪しい客の接触を遮断し、店内の会話や客の顔ぶれをすべて頭の中で把握・管理する。出納の計算も含め、「ただの大繁盛している酒場」としてのカモフラージュは完璧だった。
おかげで神羅の密偵たちも何ひとつ証拠を掴めず、ただ酒代を払って退散するしかなかった。
ハメルとティファは、アバランチの組織そのものには所属していない。
立ち位置はあくまで協力者だったが、もし資金の流出経路や裏の関わりが暴かれれば、神羅の目には自分こそがアバランチ七番街支部を操る最大のスポンサーであり、真の黒幕と映るだろう。ハメルはそのリスクを重々承知していた。
ハメル自身やバレットたちアバランチの面々は、肌で感じ取っていた。
自分たちの活動はすでに引き返せない領域へ足を踏み入れており、神羅カンパニーにとっても見過ごせない脅威になりつつある。
表面上は賑やかなセブンスヘブンの熱気の中で、神羅との避けられない全面対決が、刻一刻と近づいている予感を彼らは静かに噛みしめていた。
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[μ]-εγλ 0007年9月末。
ティファが復帰してから二ヶ月が経過し、夜の『セブンスヘブン』は、以前を遥かに凌ぐ大繁盛となっている。
熱気に満ちた喧騒の中心で、カウンターに立つティファが身にまとっているのは、異国風の情緒が漂う艶やかな和服ドレスだ。
漆黒を基調とした着物風のミニ丈ドレスは、深めに合わされた朱色の重ね衿を外側へと押し広げるほど、規格外なKカップの豊満な双丘によって破裂しそうなほど張り詰めている。
キュッと細く引き締まった腰元を豪華な結び飾りの帯で締め上げているぶん、上半身の圧倒的な質量が一層際立ち、胸元からは溢れんばかりのたわわな谷間が大胆に覗いていた。
ゆったりと広がる優美な袖を揺らし、シェイカーを振るたびに、帯の上に乗った重量級の胸元がズシリと重厚に揺れ動く。
さらにミニ丈の裾から伸びる健康的な太ももと、黒のニーハイソックスが描く絶対領域、黒髪に挿した華やかな赤い花飾り。
可憐な装いを完全に凌駕する圧倒的な肉感と大人の色香に、スラムの男たちは今夜も熱狂していた。
「なぁティファあ! 俺はどうしたらいいんだよぉ! エアリスさんに振り向いてもらうには、やっぱりこのジョニー様のワイルドな魅力をだな……!」
カウンターの端では、完全に出来上がったジョニーが頭を抱えてくだを巻いている。
ティファからエアリスへ電撃的に鞍替えしたものの、手応えは皆無らしく、未練混じりにティファに情けない顔で絡みついていた。
ティファは困ったように眉を下げ、「うーん、まずは落ち着いてお酒を控えたら?」と苦笑いを返していた。
その日の閉店間際。
客の数も疎らになった頃、ハメルはカウンターの端でグラスを拭きながら、店内全体の動きへ自然に視線を走らせていた。
大繁盛のピークを過ぎたとはいえ、神羅の密偵や不審な客が残っていないか、その瞳は最後まで怠りなく周囲の動向を把握している。
その酒場の重い扉が静かに開き、一人の男が足を踏み入れた。
「……よぉ、ティファ。久しぶりだな」
現れたのは、ニブルヘイム時代からの幼馴染であり、現在は神羅軍の整備兵としてミッドガルに勤務しているレスターだった。久しぶりに顔を見せた彼の表情は酷く陰り、肌のツヤも悪かった。
疲れ切った様子のレスターの目には、店内の片付けをするハメルの姿すら最初から視界に入っていない。
追い詰められたような独特の暗い気配を纏う彼は、ただ無意識のうちに温かく受け入れてくれそうなティファの姿へ引き寄せられるように、まっすぐカウンターへと向かっていった。
「レスター! 久しぶりね……って、どうしたの?」
カウンターの中で客を出迎えていたティファは、久々の再会に一瞬表情を明るくさせたものの、すぐに彼の異様な暗さと顔色の悪さを目ざとく察知し、心配そうに眉を寄せた。
レスターは少しだけ口元を歪め、空いている席に力無く腰を下ろした。
「いや……別に、なんでもないよ。……そうだ、風の噂で子供が産まれたって聞いたよ。男の子の双子なんだってな。おめでとう、ハメル、ティファ」
レスターはグラスの手入れの手を止めることなく、さりげなくこちらを伺っていたハメルにも視線を向け、どこか引きつった笑みを浮かべながら二人への祝いの言葉を口にした。
「……ありがとう。でもレスター、顔色がすごく悪いわ。本当に何かあったんじゃないの?」
ティファはカウンター越しに身を乗り出し、お祝いの言葉を受け止めつつも、彼の定まらない視線や手元の微かな震えを見逃さず声を潜めた。
彼がまとっている空気は、あまりにも重く沈んでいる。
「……ちょっと仕事が立て込んでてさ。疲れが出ただけだよ。強い酒をくれないか。一番きついやつだ」
ティファは心配そうに視線を送りながらも、無言で頷き、炎のような深紅の色彩を持つ強いカクテル『コスモキャニオン』を静かに差し出した。
レスターはそれを一口、また一口と、喉を鳴らして煽っていく。
強いアルコールが身体に回るにつれて、彼の張り詰めていた緊張が少しずつ解けていったが、それと同時に、彼の胸の内では激しい葛藤が渦巻き始めていた。
ハメルは手元で静かに作業を続けながらも、レスターがグラスを煽る手元の震えや、尋常ではない焦燥感を冷徹に観察していた。
神羅の軍属である彼がこれほど追い詰められている理由——それがただの労働の疲れではないことは、誰の目からも明らかだ。
神羅の機密を外部に漏らせば、軍法会議にかけられて即座に抹殺される。
それは整備兵であるレスター自身が一番よく分かっている。
だが、彼を内側から苛む底知れない恐怖が、その理性をじわじわと削り取っていく。
五年前のあのニブルヘイム事件。
神羅の人間としてあちこちを転々としている間に、故郷は消え、知らぬ間に家族をすべて失った。
それでも生きるために神羅兵として生計を立て、なんとかミッドガルでしがみついて生きてきたのだ。
(もし俺が死んだら……あのニブルヘイムという故郷を、そこに生きた俺の家族を知っている人間が、世界からまた一人消えることになる……)
ミッドガルに来てからそれなりに年月が経ち、こちらで新しく出来た友達も多い。
だが、彼らにその話を打ち明けたところで、誰もあの故郷の空気を知らない。
だからこそレスターは、同じ故郷の痛みを共有するハメルとティファがいるこの店に、吸い寄せられるようにやってきたのかもしれなかった。
何度もグラスを見つめ、迷いに迷った末、レスターはついに堰を切ったようにぶっちゃけた。
「……クソ、もうどうにでもなれだ!ハメル、 ティファ、誰にも言わないでくれよ。明日なんだ……明日、俺は死ぬかもしれない作戦に動員される」
「え……?」
「神羅の実験室から逃げたっていう、『実験体二体』の掃討作戦なんだよ……! ミッドガル郊外の荒野全域を遮断して、大型機動兵器まで投入する大規模な包囲網だ。俺はその作戦に随伴する整備兵として出撃が決まっちまったんだよ……!」
レスターの口から漏れ出た惨状の告白に、ティファは驚きつつも素朴な疑問を口にした。
「でもレスター……そんなにたくさんの兵隊さんが動員されて、大きな兵器まで出るなら、逆に安全なんじゃないの……? 一人で戦うわけじゃないんでしょ?」
「逆だよ、ティファ!」
レスターは叫ぶように遮ると、強く握りしめたグラスをカウンターに叩きつけた。
「たった二人の実験体を追い詰めるためだけに、一連隊規模の戦力と機動兵器まで担ぎ出されるんだぞ!? それだけの重装備をぶち込まなきゃ抹殺できないような、イカれたバケモノたちが相手だってことなんだよ……! まきぞえで吹き飛ばされるのは、俺たちみたいな下っ端の兵隊なんだよ……!」
悲鳴に近いレスターの言葉。
バーカウンターの端で黒服に身を包んでいたハメルは、鋭い眼差しで彼を見つめる。
(実験体二体の抹殺作戦――大量の人員を投入した荒野での大規模な包囲網――)
ハメルの脳内で、これまで蓄積してきた情報と前世の記憶が急速に繋がり、一本の線へと収束していく。
ニブルヘイムのあの忌まわしき事件。
宝条の地下研究施設にサンプルとして幽閉されていた者たち。
この時期、この状況、そしてレスターの語る常軌を逸した包囲作戦の規模。
すべてが合致する。
(間違いない。神羅がなりふり構わず全力を注ぎ込む理由――ザックスとクラウドの捕捉・抹殺だ。歴史の歯車が噛み合い、あの『約束の荒野』の刻が来たんだ――)
世界の運命の引き金が引かれる瞬間が、ついに目の前に到来した。
ハメルは冷徹に状況を把握し、これからのアクションに向けて静かに闘志を燃やす。
「……レスター」
ハメルは静かに歩み寄り、バーカウンターに突っ伏す整備兵の肩に手を置いた。
「ハメル……お前はいいよな! 昔から故郷の憧れだったティファを妻にして、子供まで作って、こんな立派で繁盛してる店まで構えてさ……! 俺が明日死ぬかもって怯えてるのに、お前は満ち足りた顔して……俺みたいな底辺の惨めさなんて分かりっこないだろ……!」
レスターは、突っ伏したまま叫ぶように感情をぶちまけた。
故郷を失い、死の恐怖に怯えながら神羅の最下層で泥を啜るように生きてきた自分と、憧れの存在を手に入れて幸福な人生を築いている幼馴染。
余裕の無さからくる嫉妬と情けなさが、恐怖とともに溢れ出す。
「作戦が始まったら、機動兵器の後方に居ろ。何があっても、絶対に前に出るな」
ハメルはレスターの嫉妬交じりの反発を感情的にならず冷静に受け止め、拒絶を許さない明確なトーンで告げた。
「お前の役目は機械を直すもので、肉の壁になるためのものではないはずだ。……死ぬな」
ハメルの冷徹だが筋の通った生存のアドバイス。
その言葉の静かな重みに気圧され、レスターはハッとしたように顔を上げた。
ハメルはレスターが固く握り締めたままだった空のグラスを静かに回収すると、カウンターの中のティファへと視線を向ける。
「ティファ、レスターにもう一杯作ってやってくれ。店からの奢りだ。……無事に帰ってこられるよう、勇気が出るやつをな」
「了解!」
ティファは弾んだ声で応えると、レスターの目の前に立ち、手際よくシェイカーを振り始めた。
和服風ミニドレスの胸元を押し広げるような規格外のKカップ爆乳が、シェイカーの軽快なリズムに合わせてダイナミックに揺れ動く。
あでやかな朱色の重ね衿から溢れんばかりの圧倒的な肉感と、優美な袖が舞うたびに漂う華やかな色香に目を奪われ、レスターは先ほどまで自分を苛んでいた死の恐怖すら一瞬忘れて見惚れていた。
やがて注ぎ分けられたのは、まろやかな白い色彩をまとった甘く優しい香りのカクテルだ。
ティファは出来上がったグラスを差し出すと、恐怖と情けなさでまだ体を強張らせているレスターの手を優しく取り、カクテルグラスを包み込ませるように握らせた。
さらに、グラスを握るレスターの無骨な手を、自身の温かい両手できゅっと包み込む。
「レスター……大丈夫よ」
ティファは包み込んだ手に少しだけ力を込め、まっすぐ彼の目を見つめた。
「これはね、私が世界バーテンダー大会で特別賞を獲った幸運のカクテル……『ティファズミルク』。これを飲んだ人はみんな、奇跡みたいに運が良くなるの。だからハメルの言う通り、絶対に無理はしないで……そして作戦が終わったら、またこの店に無事を知らせに来て。私、美味しいおつまみを準備して待ってるから」
ティファの温もりが手を通じて伝わると、レスターの指先の激しい震えが、嘘のようにゆっくりと治まっていった。
それを見届けたティファは、愛おしむようにそっと手を離し、優しく微笑んだ。
「どうぞ、召し上がれ」
ハメルの冷静な生の指針と、ティファの温かい手と笑顔が差し出す幸運の加護。
ふたつの想いを受け取ったレスターは、自分の小ささを恥じるように目を伏せながらも、『ティファズミルク』を持ち上げ、ゆっくりと喉へ流し込んだ。
まろやかな甘みが喉を通ると同時に、凍りついていた身体の奥から、じんわりと温かい勇気が湧き上がってくるのを感じた。
「……ああ。……ああ、そうだな! 俺は絶対に生きて帰ってくるよ!」
グラスを空にしたレスターの瞳からは、先ほどまでの荒んだ陰りが消えていた。
彼は二人に向かって力強く頷くと、今度はしっかりと前を向いて店を後にし、決意を胸に夜のミッドガルへと駆け出していった。
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その日の夜更け過ぎ。
セブンスヘブンの閉店作業を終えた後、ハメルとティファは地下のプライベート空間へと降りていた。
「ティファ。明日からしばらく、店を空ける。しばらく帰れないかもしれない」
ハメルが漆黒の上着を脱ぎながら告げると、ティファの動きが一瞬だけ止まる。
だが、その紅い瞳に驚きや動揺の色はなかった。
ジャンク屋に通いつめて何かを仕込み、夜陰に乗じて複合弓の修練に没頭していた夫の姿。日に日に過激さを増すアバランチの動向と、先ほどレスターが残していった大規模な掃討作戦の影。
それら水面下で噛み合っていく違和感のピースから、ティファは察していたのだ。ハメルが人知れず、世界を揺るがすような重大な戦いの渦中へ足を踏み入れようとしていることを。
「……理由は、聞かないわ」
ティファは静かに歩み寄ると、ハメルの手をそっと両手で包み込むように握りしめる。
それから、彼のシャツの襟元を愛おしそうに丁寧に整え、自分の胸元で揺れる結婚指輪に指先でそっと触れた。
ハメルから贈られたその大切な指輪を、ティファはこれまで夜の営業中、ずっとペンダント代わりにして胸元に吊るしていた。
この店の先代であり亡きモンティ老人から受けた「バーテンダーたるもの、大切なグラスを傷つけてはならない」という最初の教えを、忠実に守り続けてきたからだ。
だがティファは迷うことなく首から紐を外すと、純銀の指輪をそこから解き放つ。
そして、愛する夫の目の前で、自らの左手の薬指へと静かにはめ直した。
職人としての矜持よりも、今は何よりもハメルの妻であるという証を、彼との絆を肌で感じていたかった。
「この指輪、ハメルが無事に帰ってくるまで、はめたままにしておくね」
薬指に収まった指輪を愛おしそうに見つめながら、ティファは静かに、しかし毅然とした声で宣言する。
この日からティファは、たとえ夜の営業中であっても、決して薬指の指輪を外さなくなる。
多くを語らずとも、その決意を秘めた仕草の一つ一つに、これまで二人で幾多の試練を乗り越え、積み上げてきた確固たる信頼が満ち溢れていた。
ティファはそのKカップの豊潤な胸元をハメルの逞しい胸へ惜しげもなく押し付け、その首に腕を絡めて深く抱きしめる。
「あなたを信じてる。だから……絶対に、無事に帰ってきて。私と、子供たちのところに」
「ああ、約束する。必ず戻る」
ハメルは彼女の引き締まった腰を引き寄せて強く抱きしめ返し、その甘い体温をしっかりと確かめ合うのだった。
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翌朝。
東の空がわずかに白み始めた頃、ハメルは旅立ちの身支度を整えていた。
ベッドの中では、生後八ヶ月になる双子の息子――ティベリーとガイルがすやすやと健やかな呼吸音を立てて眠っている。
ハメルはベッドの傍らに膝をつくと、二人の小さな頭を愛おしそうにそっと撫で、その小さな温かい手を自分の指先で静かに握りしめた。
まだ言葉も分からず、世界を知らない無垢な寝顔。
父親としての絶対的な責任感と愛が、胸の奥でかつてないほど強く燃え上がるのを感じていた。
(この子たちの未来を、誰にも脅かさせはしない――)
心の中で固い決意を刻み込み、ハメルが静かに立ち上がると、扉の脇で待っていたティファと視線が交差した。
彼女は毅然とした妻の表情でハメルを見つめている。その左手の薬指には、昨夜固い約束とともに嵌め直された結婚指輪が、朝の微光を受けて静かに輝いていた。
ハメルはゆっくりと歩み寄ると、彼女の引き締まった腰を引き寄せ、その唇を力強く塞いだ。
「ん……っ……」
ティファは小さく吐息を漏らし、すがりつくようにハメルの首に腕を絡めてしがみついてくる。
互いの舌と体温を深々と絡め合わせ、離れがたい愛おしさと切なさを貪るような熱いキス。二人の間で交わされる濃密な吐息が、静かな室内に甘く響き渡る。
やがて名残惜しそうに唇が離れると、ティファの息は少し乱れ、その紅い瞳は湿り気を帯びていた。しかし、そこには夫を送り出す強い覚悟が宿っていた。
「……行ってくる」
ハメルが彼女の頬を優しく撫でながら、低く力強い声で告げる。
「ええ……行ってらっしゃい、ハメル」
ティファは包み込むような笑顔を浮かべ、しっかりとハメルの目を見つめて応えた。
「無事に帰ってきてね。……私と、あの子たちの元へ」
「ああ。必ずだ」
妻の愛と信頼、そして温もりを全身に刻み込んだハメルは、一度も振り返ることなく静かにセブンスヘブンを後にする。
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ハメルはまず、ミッドガルのスラム街に佇むアパート『天望荘』へと赴いた。
敷地に足を踏み入れた途端、朝の静けさを破る怒声と、呆れたようなため息が入り交じる騒がしい声が聞こえてくる。天望荘の大家であるマーレと、二〇一号室に住むバレットが、階段の脇で激しく口論を繰り広げていた。
「おいマーレ! 正気かよ!? あんな正体不明のガタがきているヤツを二〇三号室に置きやがって! うちのマリンに何かあったらどうすんだ!」
大きな身体を揺らし、険しい表情で猛抗議するバレットに対し、マーレは腰に手を当てて一歩も引かない。
「何をバカなこと言ってんだい! 弱ってる人間を見捨てるくらいなら、大家なんてとっくにやめてるよ! あの子はね、ろくに口も利けない状態なんだ。放っておいたら餓死しちまうだろ! あんたも人の親なら、困ってるヤツを見過ごすんじゃないよ!」
生来のお節介さを発揮して衰弱した男の世話を焼き始めたマーレと、愛娘マリンへの影響を本気で懸念して苦情を言い立てるバレット。二人の言い分は平行線をたどり、いまにも掴みかからんばかりの勢いだった。
(二〇三号室……正体不明の衰弱した男――間違いない。宝条の実験から逃れ、追走の刻を待つナンバリング……マルコか)
マーレの口から語られた男の惨状と部屋番号。その一致に、ハメルの背筋を冷たい悪寒が駆け抜けた。
昨夜のレスターの告白に続き、ついにこの天望荘にまで『黒いローブの男』が現れ始めた。歴史の巨大な歯車が噛み合い、原作という名の残酷で避けられぬストーリーが、着々と、そして確実に始まろうとしている現実を肌で感じずにはいられなかった。
(刻一刻と、あの物語の開幕が近づいている――)
ハメルは溢れ出そうになる焦燥を前世の冷静な思考で押し殺すと、静かに二人の間に入った。
「……朝から元気だな、二人とも」
ハメルが声をかけると、二人はハッとして口論を止めた。
「ハメル……! おい、聞いてくれよ! マーレのババアがよ――」
「バレット、落ち着け。マーレさんの言う通り、ろくに口も利けずに餓死しかけているような奴なら、ひとまず暴れる心配はないだろう」
ハメルは静かな、しかし有無を言わせぬトーンで言葉を重ねた。
「それに、マリンは一日のほとんどをセブンスヘブンで過ごしている。夜は夜で、お前が側についていれば済む話だろ。……マーレさんは大家だ。素性も知れないお前を受け入れ、普通の家賃で部屋を貸してくれた恩があるはずだ。ここは文句を言うんじゃなく、お前もマーレさんに協力すべきじゃないのか」
核心を突いたハメルの理路整然とした説得に、バレットはぐうの音も出ず、言葉を詰まらせた。
「ぐっ……う、そりゃあ……マーレには世話になってるがよ……」
不満げに鼻を鳴らしつつも、ハメルの筋の通った言葉にぐうの音も出なくなったバレットは、バツの悪そうな顔で組んでいた腕を解いた。マーレも「ほら見なさい、ハメルだって分かってくれてるよ」と、どこか得意げに息を吐く。
場がひとまず落ち着いたのを見届けると、ハメルは本題を切り出した。
「ところで……バレット、マーレさん。一つ頼みがある。今日からしばらく店を空ける。しばらく帰れないかもしれない」
その場に流れていた雰囲気が一変した。
ハメルの身に纏うただならぬ気配と、絶壁の淵に立つような静かな覚悟を察したバレットは、表情を引き締めると、無骨な義手を胸に当ててハメルの目を真っ直ぐに見返した。
「……そうか。理由も行き先も聞かねえが……おう、任せときな! ティファと双子のガキどもは俺たちが命がけで守ってやる。お前が心配するようなヘマはさせねえ。だから……用が済んだら、さっさと無事に帰ってこい!」
マーレもまた、母親のような温かい眼差しでハメルを見つめ、力強く頷いた。
「安心して行ってきな、あんた。ティファちゃんは強い子だ。でもね、あんたという帰る場所があるからこそ、あの子はもっと強くなれるのさ。あの子と子供たちを信じて、やるべきことをしっかりやり遂げておいで」
スラムで共に暮らし、大切な家族と店を任せられる確固たる仲間たちがいる。
その背中を任せられる温かい絆を胸の奥で実感したハメルは、短く「頼む」と言い残し、静かに踵を返した。
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七番街スラムの片隅にあるジャンク屋の地下ガレージに降り立つハメル。
薄暗い空間の中、魔晄の灯りを受けて鮮やかな蒼穹色の輝きを放つ大型カスタムバイク『ガルム』が、静かに主の到来を待っていた。
ハメルはサイドカーの連結フレームと、積載する複合弓とその矢の状態を最終確認する。
ポケットから取り出したのは、漆黒のフレームを持つ一基のサングラスだった。
かつてニブルヘイムでティファから誕生日プレゼントに贈られ、セフィロスとの壮絶な死闘の中で粉々に失われた思い出の品。それに極めてよく似たデザインのものを、ハメルはこの日のために自らの手で買い求め、大切に忍ばせていたのだ。
それを静かに装着すると、黒いレンズ越しに世界が一変する。
ガレージのシャッターを押し上げると、朝焼けの荒野から、冷たく鋭い風が一直線に流れ込んできた。
ハメルは重装甲の車体に跨り、セルスイッチを押した。
超高出力のツインエンジンが、地響きのような重厚なクランキング音を立てて爆発的に起動する。
ここから数日で、この世界のすべてが変わる。
歴史の濁流を本格的に捻じ曲げるのだという圧倒的な覚悟が、ハメルの腹の底に据わった。
サングラスの奥で水色の魔晄の瞳を鋭く光らせると、ハメルはギヤを力強く叩き込み、ガルムのアクセルを大きく開いた。
朝日に染まる荒野の冷気を切り裂きながら、蒼穹の車体が地響きのような轟音とともに咆哮を上げ、運命の断崖へと向かって力強く発進した。