※この作品はR-18です。

FF7ntR   作:夜叉五郎

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第八章:新米バーテンダー(大人っぽいミニドレス)

[u]-εγλ 0005年2月末。

 

ティファがセブンスヘブンで給仕の仕事を始めてから、早いもので三ヶ月の月日が流れていた。

冬の冷たい風が吹きつける七番街スラムにあって、セブンスヘブンの店内だけは連日、独特の熱気に包まれている。

それは、少女から大人の女性へと脱皮を遂げつつあるティファの、息を呑むほど官能的な姿に目を奪われた男たちが、夜な夜なこの店に殺到しているからだ。

 

ティファの身に纏う鮮烈な紫色と白が基調のディアンドル風ウェイトレス衣装は、彼女のスタイルの良さを露骨に強調していた。

ティファがカウンターの内外を動くたび、下層スラムの荒くれ者たちの視線は釘付けになる。

彼女が静かに微笑んで注文を取り、グラスを運ぶだけで、男たちは言葉を失い、財布の紐は面白いように緩んでいく。

しかし、この想定以上の繁盛が、皮肉にも店に新たな危機をもたらすこととなる。

 

「……ここまで、だな」

 

ある日の開店前、ロングカウンターの奥で、モンティ老人が右の肩と肘を痛そうに押さえ、深く顔を顰めている。

彼は長年の酷使によって肩と肘の関節を完全に壊しており、バーテンダーの一線を退いていた身だ。

昨年の10月末までは信頼できる女バーテンダーにシェイカーを任せ、自身はオーナーとして店を統括していたのだ。

しかし、その女バーテンダーが辞めてからは、老体に鞭を打ち、だましだましカウンターに立ち続けていた。

ここ最近ではティファ目当ての客が激増したことで、カクテルの注文数は全盛期をも遥かに凌駕しており、老紳士の身体はとっくに限界を迎えていたのである。

 

「モンティさん、大丈夫ですか」

 

異変に気づいたティファが歩み寄り、心配そうにその顔を覗き込む。

 

モンティ老人は痛む腕をだらりと落とし、静かに首を振る。

 

「情けない話だが、もう満足に右腕が動かないんだ。……ティファ、心苦しいが、今日限りで夜のバー営業は休止にしようと思っている」

 

「どうしてですか? シェイクが必要じゃないカクテルもいっぱいあるじゃないですか」

 

「シェイカーを振れないバーテンダーは酒を提供すべきじゃない。それが私の信念だ」

 

老紳士は静かに、しかし固い決意を口にする。

だが、その表情の裏には深い焦燥が張り付いている。

夜のバー営業を取りやめれば、店の売り上げはガクンと落ちる。

このセブンスヘブンを建てた際に負った大工の棟梁への月割りの支払いは、数ヶ月もしないうちに行き詰まるのは明白だった。

 

ティファはその冷酷な現実を察する。

彼女にとって、この店はただの職場ではない。

ハメルと営む『何でも屋』の重要な拠点であり、マーレへの恩を返し、スラムに集う温かい人々との交流を維持するための、大切な場所に成りつつあった。

 

ティファは紅い瞳に確かな覚悟を宿し、カウンター越しにモンティ老人を真っ直ぐに見つめる。

 

「モンティさん。……私に、シェイカーの振り方を教えてくれませんか。あなたの代わりに、私がカクテルを作ります」

 

「……ティファ、君がバーテンダーをやるというのか」

 

モンティ老人は静かに目を見張る。

 

「はい。客あしらいなら饅頭屋の頃から経験があります。モンティさんのこだわりは、私が繋ぎます。だから、教えてください」

 

ティファの真剣な眼差しに、老紳士は言葉を失う。

だが、ふと現実的な問題に気づき、困ったように眉を下げる。

 

「しかし、君がカウンターの奥に入るとなると、フロアの給仕役がいなくなってしまう。私一人では、この客足を捌き切れないよ」

 

「その役なら、俺がやりますよ」

 

静かだが、驚くほど芯の通った低い声が店内に響く。

いつの間にか店の入り口に佇んでいたハメルが、無駄のないしなやかな足取りで二人の元へと歩み寄ってくる。

 

「ハメル? でも、何でも屋の仕事は……」

 

ティファが振り返ると、ハメルは彼女の不安を払拭するように優しく微笑む。

 

「夜の依頼は受けないようにすればいい。これからは夜の間だけ、臨時でフロアのサポートに入る」

 

ハメルにとって、この展開は原作知識から見ても、セブンスヘブンの歴史を正しく紡ぎ出すための必然の選択だった。

ティファがバーテンダーとしてセブンスヘブンのカウンターに立つ未来を、ここで確実に手繰り寄せる必要がある。

 

モンティ老人はありがたい申し出に深く感謝しつつも、セブンスヘブンの経営者として再び困惑の表情を浮かべる。

 

「二人とも、そこまで言ってくれるのは本当にありがたい。……だがね、今のうちの財政では、二人分の人件費を出す余裕はないんだよ」

 

ハメルは端正な顔立ちを崩さず、老紳士の懸念を即座に一蹴する。

 

「俺への報酬は不要です。ティファの一人分だけ出していただければ構いません」

 

「それでは、ハメル君にあまりにも申し訳ない」

 

「条件が一つあります」

 

ハメルは視線をモンティ老人の瞳へと固定し、淡々とした、しかし確固たる口調で告げる。

 

「俺への給料の代わりに、ティファにあんたのレシピと技術のすべてを教えてほしい。それが俺に対する報酬です」

 

すべては、最愛のティファの未来の資産にするため。

ハメルのどこまでも合理的で、同時に深い愛情に満ちた提示に、モンティ老人は深く感服し、静かに頷く。

 

「……分かった。私の知っているすべてを、この娘に教えよう」

 

---

 

こうして、ティファの一ヶ月間に渡るバーテンダー修行が始まる。

 

その間、夜のバー営業は完全に休みとなった。

セブンスヘブンの奥からは連夜、モンティ老人の厳しい指導のもとでティファがカクテルのシェイク練習に没頭する音が響くようになる。

金属製のシェイカーを無駄のない軌道で、かつリズミカルに振る技術を身体に叩き込むため、ティファは文字通り練習三昧の日々を送る。

 

ティファのバーテンダーとしての技術は、ある頼もしい常連たちの協力もあって、驚異的なスピードで向上していく。

 

「うん、バッチリ! 前よりずっとアルコールの角が取れて、飲みやすくなってるわ!」

 

営業中断中の静かな店内で、カウンターに置かれた試作品のグラスを干し、満足げに声をあげるのはジェシーだ。

その隣では、ビッグスとウェッジもティファが作ったカクテルを熱心に吟味し、「本当に美味いよ」「これならいくらでも飲めちゃうね」と口々に絶賛の言葉を贈る。

 

修行期間中、表向き自身でお酒を口にできないティファにとって、彼らは格好の味見役であり、良き練習相手だった。

 

実はこの頃、彼らが所属する反神羅組織『アバランチ』の活動は徐々に過激化しつつあった。

しかし、ジェシーは、何でも屋の業務とセブンスヘブンの夜間営業の維持で、ハメルとティファの二人が文字通り心身ともに手一杯であることを、誰よりも鋭く察している。

 

「二人は今、大切な生活の拠点を守るために必死なんだからね。アバランチのややこしいごたごたに巻き込んじゃダメよ」

 

ビックスとウェッジに釘を刺すジェシー。

 

ジェシーのそんな裏での配慮もあり、彼らは時折セブンスヘブンにやってきては、仕事の愚痴をこぼしたりくだを巻いたりする程度に留め、二人の平穏な日常を侵さないよう一線を引いている。

原作知識から彼らの気遣いをすべて見抜いているハメルは、その不器用な優しさに、胸の中で静かに感謝の意を抱いていた。

 

---

 

一方で、ティファの修行期間中のセブンスヘブンの店舗営業は、昼の「ランチ&カフェタイム」のみに限定されることになった。

 

夜の酒場としての営業が閉ざされたスラムの男どもは、ティファに会えない寂しさを埋めるかのように、こぞって昼のランチどきにセブンスヘブンへと押しかける。

お目当ては当然、あの鮮烈な紫と白のディアンドル風ウェイトレス衣装を纏ったティファだ。

 

男たちはカウンターやテーブル席を埋め尽くし、ティファが運んでくるサンドイッチやコーヒーを受け取りながら、口々に不満を垂らす。

 

「おいおいティファちゃん、コーヒーなんてお上品なもんじゃなくて、俺ぁ酒が飲みたいんだよ! 夜の営業はいつ再開するんだ?」

 

「そうだぜ、こんな可愛い格好のティファちゃんを前にして、素面でいろって方が無理な話だろ。ちょっとでいいから酒を出してくれよ!」

 

下心を隠しようともせず、賑やかに文句を言う荒くれ者たち。

しかし、ティファは困るどころか、そんな男たちを前にして、年に似合わない余裕を湛えた笑顔を浮かべ、スマートに彼らを捌いてみせる。

 

「ふふ、ごめんなさいね。今はモンティさんがお休み中だから、お酒はお預け。その代わり、今日の特製ランチはボリューム満点にしてあるから、それで我慢してね?」

 

小悪魔的な魅力を放ちつつ、どこか大人の包容力を感じさせるその見事な客あしらいに、男たちは「ちぇっ、ティファちゃんにそう言われちゃ、大人しく従うしかねえな」と鼻の下を伸ばし、大人しくコーヒーを啜るのだ。

 

この昼の時間帯、ハメルは何でも屋の業務で外回りに出ており、店には不在だ。

だが、ハメルの代わりに天望荘の大家のマーレが何かと店に顔を出し、ティファのサポートに入ってくれている。

 

そんなある日、近所に住む赤髪の青年――ジョニーが、ティファの姿を見るなり気取ってカウンターへと滑り込んできた。

 

「ティファ、夜の営業が休みなんてオレへの焦らしプレイかよ!? 昼間のコーヒーも最高だけどさ、オレのハートはキミの美しさに乾ききって、もう限界寸前だぜ! 頼むからオレだけの特製カクテルになってくれよぉ!」

 

カウンター越しにこれ幸いと身を乗り出し、ティファの手を握ろうと必死に擦り寄るジョニー。

しかし、ティファが対応するより早く、背後から大家のマーレの強烈な一喝が爆音となって炸裂する。

 

「おいコラ、そこの赤髪の色ボケジョニー! 鼻の下伸ばしてティファにベタベタ近付いてんじゃないよ! あんた、毎日毎日コーヒー一杯で何時間粘る気だい! 営業妨害でつまみ出すよ!」

 

「うわっとぉ!? ま、マーレさん! 冗談だって、ただの熱烈なコミュニケーションじゃん! チクショー、今日のところは引き上げるけど、オレの恋の炎は神羅の魔晄炉より熱いんだからなー!」

 

ガミガミと容赦なく繰り出されるマーレの説教と、下層を生き抜いてきたその圧倒的なバイタリティの前に、ジョニーは完全にタジタジとなり、ティファの淹れてくれたコーヒーを一気に飲み干すと、すごすごと退店していく。

 

ティファはそんな二人のやり取りを若干の苦笑いで見守りつつ、首元に革紐で吊るされた銀の指輪の存在をそっと指先で確かめながら、去っていくジョニーにもきちんと声を掛ける。

 

「ふふ、ありがとう、マーレさん。ジョニー、また明日ね?」

 

マーレの心強い援護もあって、昼のセブンスヘブンは健全な活気と秩序を保ち続けている。

昼の営業が終われば、再びティファはシェイカーを握り、驚異的な集中力と見事な身体能力で技術を吸収していく。

 

氷と液体が混ざり合う、躍動感すら感じさせる彼女のシェイキングは、一ヶ月が経つ頃には完全にプロの領域へと達していた。

 

---

 

[u]-εγλ 0005年4月初旬。

 

あっという間に一ヶ月が経ち、迎えた新生セブンスヘブンのリニューアルオープンの夜。

 

「二人とも待たせたね。ティファ、あんたコレを着て、しっかりこの店を支えておくれ」

 

天望荘の大家のマーレが、大きな衣装箱を抱えて店に現れる。

 

蓋が開けられた箱の中に収められていたのは、マーレがこの日のために特注で用意してくれた、鮮烈な蒼色の光沢を帯びた妖艶なミニドレスだ。

フロントは胸元が深くV字にカッティングされ、光沢のあるインナーの質感とともに、着用時には豊かな胸の肉感を官能的に引き立てるであろう大胆なデザイン。

首元にはチョーカー風のネックストラップとシックな黒いリボンが結ばれ、背中側は肩甲骨から腰にかけて遮るものなく大きく開くバックレス仕様となっている。

さらに、ウエスト部分を飾る黒い飾り紐のサイドには、上品な黒いバラのモチーフがあしらわれ、そこから白いパールのタッセルがしなやかに垂れ下がっていた。

ドレスの傍らには、同色のアンクルストラップ付きハイヒール、黒いレースのショートグローブ、そして大ぶりの三日月型のイヤリングといった小物類までが、隙なく美しく揃えられている。

 

同時に、モンティ老人の行きつけの仕立て屋で誂えたという、ハメル用の黒服スーツも届けられる。

 

「実に見事なドレスだね。さて、開店前にお披露目といこうか」

 

二人の衣装が出揃ったのを見届けたモンティ老人が、穏やかで上品な微笑みを浮かべてフロアの奥へと手招きする。

 

「リニューアルオープンに合わせて、君たちに教えておきたい場所があってね。どうぞ、ついておいで」

 

案内されたのは、フロアの隅に設置された一台のピンボールゲーム台の前だった。

モンティ老人が周囲の目を盗むようにして床の隠されたギミックをカチリと動かすと、重苦しい駆動音とともにピンボール台とその周囲の床が、そのまま地下へと降下するエレベーターとなって動き出した。

 

ゆっくりと下りた先に出現したのは、外の世界の喧騒から完全に遮断された、驚くほど広々とした地下室だった。

レンガ調の壁に囲まれた空間には、上質なソファーだけでなく、本格的な化粧台や大きな姿見の鏡が佇み、奥の木扉の向こうには清潔なシャワー室まで完備されている。

さらに壁の飾り棚には、モンティ老人が長年かけて集めてきたのであろう、スラムには不釣り合いなほど品の良いアンティークの調度品や趣味の品々がセンス良く並べられていた。

 

「ここは私の完全な趣味の部屋だよ。誰にも邪魔されない空間だからね。ここでならゆっくり着替えとメイクが出来る。私は一足先に一階へ戻り、開店の準備をしておくよ」

 

そう言い残すと、モンティ老人は二人を地下室に残し、一人でエレベーターに乗り込んで地上へと戻っていった。

 

---

 

地下室に残された二人は顔を見合わせて頷き合い、それぞれの衣装へと着替え始める。

ティファはマーレから渡された蒼色のドレスを、ハメルは黒服のスーツを身に纏っていく。

 

やがて着替えを終え、大きな姿見の鏡の前に立ったティファは、そこに映る自分の姿を見て思わず息を呑んだ。

これまでに穿いたことのない極端なミニ丈の裾、深くV字に開いた胸元、そして大胆に露出した白皙の背中。

あまりにも色気全開な大人のドレスに、ティファは急激な気恥ずかしさと不安に襲われ、少し肩をすくめてハメルを振り返る。

 

「……あの、ハメル。これ、ちょっと大人っぽ過ぎないかな……?」

 

心配そうに上目遣いで問いかけるティファ。

だが、それに対するハメルの反応は、彼女の予想を遥かに超えるものだった。

いつも冷静沈着で表情を崩さないハメルが、言葉を失ったまま、ただ純粋に圧倒されて彼女の姿に見惚れていたのだ。

ティファへ熱い視線を注ぎながら、ハメルは静かに、しかし心の底からの実感を込めて呟いた。

 

「……凄いな。よく似合ってる、ティファ」

 

普段は見せない彼の率直な見惚れ顔と、直球すぎる言葉。

それを間近で真っ正面から受け止めたティファの胸は激しく高鳴り、途端に気恥ずかしさは吹き飛んで、まんざらでもない嬉しい気持ちがむくむくと湧き上がってくる。

最愛の男にここまで深く求められているという事実が、彼女に一歩踏み出すための甘い勇気を与えていた。

 

ティファは心の中に芽生えた大人の悪戯心に身を任せ、ハイヒールを小さく鳴らしてハメルへと一歩近づくと、そのしなやかな腕を彼の首筋へとそっと絡めた。

 

衣服越しに豊かな胸の弾力をハメルの胸板へと容赦なく押し付け、潤んだ紅い瞳でじっと見つめながら、熱い吐息とともに扇情的な言葉を次々と紡ぎ出す。

 

「お客様……、ちょっと見惚れすぎじゃありませんか?♡」

 

ハメルの耳元へ届くように、わざとらしく小悪魔的な声音で囁くティファ。

 

「そんなに熱い目で見つめられたら……私、お酒を作る手が震えちゃいそう。……それとも、カクテルの前に、私を先に味わってみたい……ですか?♡」

 

普段の健気な彼女からは想像もつかないほど大胆に、挑発的なセリフでハメルを翻弄するティファ。

彼女は悪戯っぽくクスりと微笑むと、小さく首を傾げながら、目を瞑って愛らしく唇を突き出す「キス顔」のポーズで、彼を試すように至近距離まで迫ってみせた。

 

しかし、ハメルはその愛しすぎる挑発をただ見過ごすような男ではなかった。

今のティファの破壊的な色香を前に、ハメルは容易くその誘いに乗ってみせる。

 

彼は引き締まった腕でティファの細い腰を強引に引き寄せると、そのまま逃がさないように彼女の唇へと深く、情熱的に自らの唇を重ねた。

 

「ん……っ……」

 

予想以上の勢いで抱きしめられ、激しく交わされる熱い接吻。

ドレスとスーツの生地が擦れ合う微かな音と、互いの高まる体温だけが地下室に響く。

 

深く、お互いの存在を確かめ合うような長いキスの後、名残惜しそうに唇を離すと、ティファの頬はすっかり上気していた。

彼女は少し照れくさそうに微笑みながら化粧台の前へと歩み寄り、鏡に映る自分の顔を見つめながら、少し乱れてしまったルージュを丁寧に塗り直していく。

 

ハメルに真っ直ぐに見つめられ、深く愛されたことで、彼女の胸の内にあった不安や怖気は完全に消え去っていた。

鏡の中の自分をもう一度見つめ、ティファは強く拳を握りしめる。

 

このドレスは、ただ店を飾るための衣装じゃない。

ハメルと共に生きるこの七番街スラムで、自分たちの居場所を守り抜くための、新たな戦場での戦闘服なのだ――。

 

一人の高潔な武道家としての、それでおいてハメルの最愛の相棒としての確固たる覚悟が、彼女の紅い瞳に宿る。

 

「よし、行こう、ハメル」

 

凛とした笑顔でハメルの差し出した手をしっかりと握り締めると、二人は新生セブンスヘブンのお披露目の舞台へ臨むため、再びエレベーターへと乗り込み、上昇のスイッチを押した。

 

---

 

重苦しい駆動音とともにエレベーターが上昇し、ピンボール台がガタリと一階の床へと収まる。

そこには、開店前の最終チェックをしていたモンティとマーレ、そしてリニューアルのお祝いに駆けつけていた自警団のジェシー、ビッグス、ウェッジの三人が待っていた。

 

二人が姿を現した瞬間、フロアの時間が止まったかのように静まり返る。

 

「ちょっと……ひゅーっ! ティファ、これ反則じゃない!?」

 

最初に沈黙を破ったのはジェシーだった。

彼女は文字通り飛び上がらんばかりに驚き、目を輝かせてティファの元へと駆け寄る。

 

「何これ、最高にセクシーで綺麗! 完全にスラムの女神様じゃん! ――って、ちょっと待って、ハメルもズルい! 何その完璧な黒服スーツ姿、カッコよすぎでしょ!」

 

「ティ、ティファちゃん……すごいっす……大人の色気が爆発してるっす……」

 

ウェッジは食べていた肉まんを本当に落としそうになりながら鼻の下を伸ばし、ビッグスも圧倒されたように呆然と立ち尽くした後、苦笑混じりにハメルの肩を叩いた。

 

「ハメル、お前これ、毎夜の営業中に他の男たちからティファを守るのが本気で大変になるぞ。同情するよ」

 

身内の絶賛と賑やかな囃し立てに、ティファは顔を赤らめながらも、ハメルの隣でどこか誇らしげに微笑む。

 

「ふん、思った通りだねぇ」

 

衣装を用意したマーレが、満足げに鼻を鳴らして目を細める。

 

「このくらい華がなきゃ、新生セブンスヘブンの看板は張れないさ。あんたの極上の肉体を、一番美しく引き立てる仕立てにしたからね」

 

「ありがとうございます、マーレさん。大切に着させていただきます」

 

ティファが武道家としての美しい所作のまま深く一礼すると、その凛とした佇まいにモンティ老人も深く感服したように頷いた。

 

「素晴らしい。これほど見事にドレスを着こなしてくれるとは。ハメル、君の引き締まった黒服姿もよく決まってる。二人並ぶと、まるで一枚の絵画のような完璧な調和っぷりじゃないか。これなら、自信を持ってお客様を迎えられるよ」

 

身内へのお披露目は大成功だった。

彼らの心からの賞賛とエールを受け、二人の胸には確かな高揚感と、これから始まる新たな夜への覚悟が満ちていく。

そしていよいよ、リニューアルオープンの時間が訪れ、セブンスヘブンの重厚な扉が静かに開け放たれた。

 

---

 

扉が開いた瞬間、誰よりも早く、文字通り突撃するような勢いで店内に飛び込んできた男がいた。

ティファに一方的な熱視線を送り続けている、七番街スラムのトラブルメーカーことジョニーだ。

 

「ティファーーーー! 新生セブンスヘブンの一発目、ティファの作る一番最初のカクテルは、この俺、ジョニー様が頂くぜぇええ!」

 

いつもの凄まじいハイテンションで叫びながら入ってきた彼を見て、フロアに立つハメルは、ティファのあまりの変貌ぶりに我を忘れて大騒ぎを起こすのではないかと、一瞬身構えて警戒を強めた。

しかし、ハメルのその懸念は完全に拍子抜けに終わることになる。

 

カウンターの奥に佇む、蒼いミニドレス姿のティファが視界に入った瞬間、ジョニーは「あ……」と間の抜けた声を漏らしたまま、その場で完全にフリーズしてしまったのだ。

深くカッティングされた胸元、大胆に露出した背中、そしてしなやかに伸びる美しい脚のライン。

今のティファは、スラムのどんな荒くれ者をも一瞬で黙らせるほど、あまりにも眩い女神そのものだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ジョニーは最初のカクテルを求めることさえ忘れ、口を半開きにしたまま、ただただぽーっと立ち尽くすことしかできない。

 

「いらっしゃい、ジョニー。リニューアル第一号のお客様ね」

 

ティファがクスリと親しげに微笑み、彼のために手際よくカクテルをシェイクして差し出す。

夢遊病者のようにフラフラとカウンターの椅子に腰掛けたジョニーは、ティファから手渡されたグラスを、魂を奪われたような目で数杯ほど貪るように飲み干した。

 

だが、大人の色香を全開にしたティファが目の前で微笑み、カクテルを注いでくれるという強烈すぎる刺激に、ついに彼のキャパシティは限界を迎えてしまったらしい。

たらり、とジョニーの鼻から鮮血が垂れ落ちた。

 

「えっ!? ちょっとジョニー、大丈夫!? ティッシュ使う?」

 

目の前で鼻血を垂らしたジョニーを見て、ティファが本気で心配そうに顔を覗き込む。

しかし、その至近距離の美貌と甘い芳香がさらにトドメとなった。

ジョニーは鼻血を片手で押さえながら、天を仰いで恍惚とした至福の笑みを浮かべ、「お、俺……もういつ死んでもいいや……」とブツブツと狂おしげに呟きながら、夢見心地のままフラフラと店を後にしていった。

 

嵐のようにやってきて、呆気なく撃沈して去っていったジョニーの背中を見送りながら、ハメルは小さく息を吐いて苦笑する。

 

---

 

彼が去った直後、待ちかねていた一般の客たちがフロアへとドッと押し寄せてくると、店内の空気は一気に熱を帯びて一変した。

 

ロングカウンターの奥に立つティファは、その艶やかな黒いロングヘアを背後へとしなやかに流し、蒼のドレスを完璧に着こなしていた。

大胆に露出した白皙の背中や、ひらりとしたミニ丈の裾から伸びるラインは、十七歳とは思えないほどの凛とした艶やかさと、堂々たる存在感を放っている。

その手元で鈍い銀色の輝きを放つシェイカーを構える姿はあまりにも美しく、店内の視線を釘付けだ。

 

外のフロアを滑るように動くハメルは、無駄なく引き締まった長身の体躯を上質なブラックスーツに包み、軽やかな身のこなしで、芸術的なほどスマートに客の手元へグラスを滑らせていく。

衣服の上からでも分かる、限界まで鍛え上げられた肉体のシルエットは、それだけで店内の荒くれ者たちに対する無言の抑止力となっている。

 

ジュークボックスから流れるブルースに混じって、カラン、とティファの振るシェイカーの軽快な音が店内に心地よく響き渡る。

 

大人っぽいドレスで年頃の女の子の甘いフェロモンを振り撒きながら、完璧な技術で極上のカクテルを注ぐ看板バーテンダーのティファと、底知れない強者の気配を湛えつつ、完璧な連携でフロアを支配する臨時の黒服給仕、ハメル。

 

ネオンの光とランプの仄暗い灯りに照らされながら、阿吽で呼吸を合わせて店を切り盛りする二人の姿は、スラムの誰もが羨む、どこからどう見ても最高のカップルそのものであった。

 

---

 

[u]-εγλ 0005年5月3日。

 

ティファが十八歳の誕生日を迎える。

 

この日の夜、セブンスヘブンは常連客を大勢集め、彼女の成人を祝う盛大な誕生パーティを開催する。

店内は溢れんばかりの人熱と歓声に包まれていた。

ティファは皆に人気ないつもの蒼色のミニドレスに身を包み、軽快にシェイカーを振っては、極上のカクテルを次々と常連たちの元へと注いでいく。

 

その大盛況の様子を、カウンターの端の特等席から、嬉しげに目を細めて見守る老紳士の姿がある。

右腕を壊し、完全に一線を退いたモンティ老人だ。

 

「ティファ、素晴らしいな……。私がこのセブンスヘブンを作ろうと思ったときにね、いつか実現したいと夢見ていたのは、まさにこの温かくて、誰もが笑顔になれる光景なんだよ」

 

「モンティさん......」

 

老紳士の感慨深い言葉に、ティファは胸を熱くし、それまでの大人びた態度は引っ込め、年相応の純粋な笑顔を咲かせた。

 

---

 

お祝いの熱気が最高潮に達すると、ティファに恋焦がれる常連の荒くれ者たちが、誕生日の余興を兼ねたプロポーズ合戦を始め、店内は一気にお祭り騒ぎのノリへと突入していく。

 

「ティファちゃん、俺のこの溢れる愛を受け取ってくれ!」

 

「いや、俺の指輪の方が高級だぞ! 頼む、これで結婚してくれ!」

 

男たちが次々とプレゼントや指輪を突き出すたびに、周囲の野次馬たちからは容赦のない爆笑と無責任な野次が飛び交った。

 

「ハハハ! 無理に決まってるだろ!」

 

「おいおい、鏡見てから言え! 自分の分際を知れってんだよ!」

 

「おいそこの、自分の年を考えろ年を!」

 

好意は本物でも、男たち自身が半分はノリだと分かっているからこそ、場は無責任な野次とガハハという笑い声でこれ以上ないほど盛り上がっていく。

そこへ、赤髪のジョニーが野郎どもの間を強引に割って入り、目を血走らせながら真っ赤なケースを掲げた。

彼だけは周りの余興のノリとは違い、完全に大真面目だった。

 

「どきやがれ、この有象無象ども! ティファ! オレの魂の叫びを聞いてくれ! この指輪を受け取って、オレの生涯のワイフになってくれ! キミのいない人生なんて、曲の流れない壊れたジュークボックスと同じさ!」

 

胸元にハメルとの絆である銀の指輪を吊るしているティファは、困ったように微笑みながらも、毅然とした態度で優しく首を振る。

 

「みんな、お祝いしてくれる気持ちはとっても嬉しいわ。でも、指輪は受け取れないよ。ごめんなさい」

 

ティファに綺麗に断られても、常連の荒くれ者たちは深刻になる風もなく、「お約束」のイベントを終えたかのように笑い飛ばす。

 

「あちゃー、やっぱりダメか! そりゃそうだよな!」

 

「ギャハハ! だから言ったろ、身の程を知れって!」

 

パーティの場は陽気な熱気を保ったままで、「よーし、振られたからには今夜は飲むぞ!」と、男たちは早くも浴びるように酒を注文し始めた。

 

……だが、唯一ひとりだけ、本気で挑んでいたジョニーだけは笑い話に切り替えることもできず、「オレの……オレの幸せ家族計画が……」と魂が抜けたような顔でカウンターの隅へ崩れ落ち、真面目に激しく落ち込んでいた。

 

周りの奴らも「おい、ジョニーの野郎、マジだったのかよ!」「ガチすぎて引くわ!」とさらに笑い転げ、野次は一層大きくなる。

 

そんな男たちの賑やかな様子を苦笑混じりに見ていたマーレが、ハメルの脇腹を軽く肘で突き、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「それで、ハメル。あんたはティファちゃんに何かプレゼントはやらないのかい? まさか何にも用意してないなんて言わせないよ」

 

ハメルは端正な顔立ちを崩さず、ロングカウンターの裏から、あらかじめ隠しておいた一つの包みを取り出す。

 

「これを受け取ってくれ」

 

ハメルが手渡すのは、瑞々しく可憐な大輪を咲かせた、美しい黄色い花束だ。

それは、五番街の古い教会にひっそりと咲く特有の花である。

 

運命の流れを完璧に把握しているハメルは、エアリスが教会にいない時間帯を正確に見計らって静かに忍び込み、その花を摘ませてもらったのだ。

もちろん、ただ盗むような真真似はせず、「花の代金として。勝手に摘んでしまい申し訳ない」との丁寧な置き手紙と、十分すぎるほどのギルをその場に残してきている。

 

その花がどれほど特別な意味を持つか、その由来は言わずとも、ハメルが自分のためにあらゆる危険と労力を冒して用意してくれたという事実だけで、ティファの胸は激しく震える。

彼女はその美しい花束を愛おしそうに強く抱きしめ、世界中のどんな女神よりも眩しい、最高に満面の笑みを浮かべた。

 

「ありがとう、ハメル……! 私、本当に幸せよ!」

 

その二人の、誰も入り込めない完璧な空気感を見せつけられた店内の野郎どもは、「うわああ! やっぱりあの二人には敵わねえ!」「悔しいけどお似合いだちくしょー!」と、さらに盛大な「失恋酒」の宴で大いに陽気に盛り上がる。

そんな中、ただ一人カウンターの隅で完全に真っ白に燃え尽きているジョニーの悲壮な後ろ姿が、パーティの愉快なオチとして常連たちの笑いを誘うのだった。

 

---

 

パーティは最高の熱気の中で大盛況のまま幕を閉じる。

店内の片付けをすべて終え、セブンスヘブンの鍵を閉めると、夜の帳が下りたスラムの街路へと二人は歩み進める。

 

天望荘へと続く薄暗い帰り道、ティファはミッドガルに足を踏い入れて以来、最も上機嫌な様子でハメルの隣を歩いていた。

その手元には、ハメルから贈られた瑞々しい黄色い花束が大切に抱えられている。

 

「本当に、夢みたいな夜だったわ」

 

ティファは左手で愛おしそうに花束を抱きしめながら、空いた右手をハメルの左手へと滑らせ、指を深く絡める「恋人繋ぎ」でその手を強く握った。

 

「喜んでくれて良かった。モンティの爺さんも、心から満足そうな顔をしていたからな」

 

「うん。みんなにお祝いしてもらえて、ハメルからこんなに素敵な花までもらえて……私、なんだか欲張りになっちゃいそう」

 

プレートの隙間から覗くわずかな星空を見上げながら、ティファはハメルの肩にそっと頭を預ける。

かつてすべてを失った二人だが、結んだ手の温もりと夜風に揺れる花の香りに包まれている今だけは、肌で感じる無上の幸福を静かに噛み締めていた。

 

天望荘の自分たちの部屋に戻り、鍵を閉めると、そこからは外の世界を完全に遮断した二人だけの特別な時間が始まる。

ハメルはティファのしなやかな腰を引き寄せ、耳元で低く囁いた。

 

「ここからが、俺からの本当の誕生日プレゼントだ」

 

「……っ、ハメル……」

 

ティファの頬が一気に熱く染まる。

さっきまで誕生パーティの主役として、大勢の男たちから羨望の視線を一身に浴びていたセブンスヘブンの看板娘も、ハメルの前では、お店での顔をすっかり忘れて一人の恋する女の子に戻っていた。

 

ティファは生来、どこまでも素直で清潔感のある女の子だ。

それでも毎夜、セブンスヘブンに集まった大勢の男たちからチヤホヤされるのは、恥ずかしくはあるが決して悪い気はしない。

そして、女としての価値を極限まで高められた「最高の状態の自分」を、唯一の最愛であるハメルへと捧げられることに、彼女は無意識のうちにこの上ない甘美な悦びを感じていた。

 

どちらからともなく互いの身体を求め合うようにして、二人は脱衣所へとなだれ込む。

狭い浴室で一緒に浴びる温かいシャワーは、互いの肌を滑る水滴とともに、高まった体温をさらに引き上げていった。

濡れた黒髪をかき上げ、水も滴る美しさを見せるティファの肢体を、ハメルはその逞しい両腕で強く抱き寄せる。

 

「ハメル……今夜の私、どうだった? ちゃんと、綺麗にできてた……?」

 

普段なら気恥ずかしさで口にしないような言葉が、特別な夜の熱気のせいか、自然とティファの唇から零れ落ちる。

ハメルは彼女の濡れた顎をそっと持ち上げ、深く、貪るような口づけを交わした。

 

「ああ、ティファ以上に『佳い女』なんて世界中のどこにもいない。……だから、誰にも渡したくない」

 

「ふふ、嬉しい……。私も、ハメルにだけ見てほしいの……」

 

完全に火照った身体をタオルで包み寝室へと移動すると、部屋の空気はハメルが摘んできた花束の濃密で甘い香りで満たされていた。

 

十八歳になり、ティファの体は少女の面影を完全に脱ぎ捨てて、さらなる成熟度を増している。

豊満極まる胸の質量と、限界まで引き締まった細い腰の対比が、薄暗い部屋の中で息を呑むほどに完璧な曲線を描き出す。

 

ベッドに横たわったティファのしなやかに腰を抱き寄せ、ハメルは熟知した絶対的な快感のスイッチを正確に押し込んでいく。

ハメルの執拗な日々の愛撫により、原作より胸周りが増強された94/59/88という驚異のスリーサイズを誇るティファの官能的なプロポーションが、シーツの上で艶やかに波打つ。

 

「ん……っ、あ……ハメル……」

 

ティファは溢れ出そうになる熱い吐息を堪えるように、自ら枕へと口元を押し当てた。

アパートの薄い壁を意識した艶やかな工夫も、今や二人の濃密な交歓をさらに引き立てるスパイスとなっていた。

枕に遮られたかすかな艶声と、シーツを固く握りしめる指先が、彼女の受けている無尽蔵の快感の深度を物語っている。

 

これまでの同棲生活における濃密な日々の積み重ねによって、二人の閨での愛の交歓の深さはとっくに極致へと達している。

自分の指先や唇がどこに触れ、どう動けば、相手の身体がどのように歓びの喘ぎ声を上げるのか。

互いが互いの肉体の反応を隅々まで完璧に知り尽くしていた。

 

新しく性感帯を開拓する段階はとうに過ぎ、今の二人に残されているのは、極限まで高められたその至高の快楽をどこまでも純粋に貪り、楽しむことだけだ。

 

幸いにも、明日はセブンスヘブンの店休日であり、何でも屋としての業務もすべて臨時休業に設定してある。

誰に邪魔されることも、時間を気にする必要もない。

明け方の光が部屋のカーテンを白く染め始める頃になっても、大人になったティファとの熱く濃密な夜は、いつ果てるともわからず、本能の赴くままにどこまでも深く続いていった。

 

 

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