リムルが洞窟時代からの仲間に対してヤンデレになる話 作:スライムと狐
魂の回廊から伝わってくる、べっとりとした深い疲労感と、【万能感知】が捉えた映像。
ヒビキが俺の部屋へ向かって、重い足を引きずって歩いてくるのが分かった。
今日一日、あいつは街で何度も俺以外の奴に助けを求めようとして、その度に俺が流し込む『安心感』に溺れて泣きそうになっていた。
「あーあ、可哀想に。……でも、悪いのは俺以外の奴に頼ろうとしたヒビキだからな」
口から漏れた声は、自分でも驚くほど冷たくて、重く濁っていた。
ヒビキは分かっていない。俺がどれだけ、ヒビキを失うことを恐れているか。
俺には「性欲」なんてものはない。ただ単に身体を抱き潰したいわけじゃないんだ。怖いのは、あいつが『一人の男』としての誇りを持ち、自立してしまうこと。ヒナタたちと関わり、誰かの役に立とうと立派に振る舞うその強さが、俺には、いつか俺の手を離れて遠くへ飛び去ってしまうための『翼』に見えて仕方なかった。
だから、俺の庇護下でしか生きられないように、その生意気な誇りごと作り変えてしまうことにした。
ヒビキのスキルは精神支配を無効化する。ならば、直接思考を書き換えるのではなく、もっと本能的で下劣な方法で尊厳をへし折って、俺がいなきゃ息もできない身体にしてやるしかない。
ヒビキが部屋に入ってきたら、まずはいつものように優しく抱きしめてやろう。そして、俺とヒビキを隔てる邪魔な衣服なんてものは、【暴食之王】で一瞬にして喰い尽くしてしまえばいい。
男としての弱点を弄り回し、嫌がって、泣いて、それでも俺の与える快感に抗えずに名前を泣き叫んだ時……その魂の奥底まで、致死量の多幸感を注ぎ込んでやるのだ。
俺の腕の中で、快楽と絶望にぐちゃぐちゃにされて、理性を飛ばして『ただの獣』に成り下がるヒビキを見たい。
そうして完全に俺に縋り付く姿を見て、俺はやっと「もうこいつはどこにも行かない」と、心の底から安心できるのだ。
◇
自室に戻る気力すらなく、俺は吸い寄せられるようにリムルの庵へと足を踏み入れていた。もう、彼の用意した場所でしかまともに息ができない身体にされつつあることを、俺の理性が冷徹に突きつけてくる。
「お、おかえりヒビキ。今日も一日お疲れさん」
部屋に入ると、リムルがいつもの気負わない優しい笑顔で出迎えてくれた。
瞬間、俺の魂の奥底で【守命者】のスキルが、ビンビンとけたたましい警鐘を鳴らした。「逃げろ」「ここへ来てはいけない」と、生存本能が全力で警告を発している。俺の魂の回路をいじり、あんな恐ろしい真似をしておきながら、全く変わらない態度をとる彼が不気味で、酷く怖かった。
「なんだよ、そんなにガチガチになって。ほら、座れって」
促されるまま寝台に腰を下ろすと、背後に回ったリムルが俺の肩に手を置いた。ビクンと肩が跳ね、反射的に逃げ出そうとしたが――。
「……あ、ん……」
「そっかそっか、よく頑張ったな。俺が疲れをとってやるよ」
優しく揉みほぐされる、絶妙な力加減。一日中張り詰めていた神経が、その心地よいマッサージにあっさりと解されていく。
【守命者】のスキルが狂ったように危険を知らせ続けているのに、限界を迎えていた肉体は、彼から与えられる安堵感に逆らえない。気持ちよさに負け、俺は小さく息を吐いて、無防備に肩の力を抜いてしまった。
――それが、致命的な間違いだった。
首筋から肩を滑るその手の感触が、次第に『人の肌』から『ひんやりとした粘液』へと変わっていくのに気づき、俺は再びビクッと肩を揺らした。
「リム、ル……? 手が、スライムに……」
「あー、こっちの方が直接浸透して気持ちいいだろ? それにさ――こんな服、もう邪魔なだけだしな」
「え……?」
シュォォッ、という微かな風切り音が鳴った。
次の瞬間、俺の身体を覆っていた、淡い水色と薄いクリーム色の繊細な和装が、黒い霧のようなものに包まれ、一瞬にして『消失』したのだ。
「リム、ル……っ!? 今、俺の服……っ」
「【暴食之王】で胃袋にしまった。これで、ヒビキの全部に直接触れられるだろ?」
あまりにも異常な力の使い方に思考が追いつくより早く、全裸にされた俺の素肌に、冷たい『粘液』がべったりと這い上がってきた。背後から抱きしめるリムルの腕が、人型のそれから、スライム特有の半透明な触手へと完全に姿を変えている。
「や、あぁっ! やめろ、リムルっ、触るな……っ!」
逃げようと腰を浮かせた瞬間、背後からリムルの体重がのしかかってきた。手首と足首を粘体の縄で縛られてベッドに縫い留められ、仰向けの状態で完全に組み伏せられる。
微量な魔素と媚薬めいた成分を含んだスライムの粘体が、露わになった胸元を、そして平坦な腹のラインをねっとりと這い下りていく。ひんやりとした粘液が強制的に体温を奪い、代わりに肌から直接染み込んだ魔素が、身体の内側から不自然な熱を発生させた。
「暴れるなって。ほら……いつも服の下に隠れてるここ、すっごく無防備なんだよな」
今まで和装に守られていた柔らかな素肌を撫で回され、ビクンと身体が大きく跳ねる。
さらに、俺がそちらに気を取られた隙に、別の細い粘体が俺の頭頂部にある狐耳の柔らかな内側に潜り込み、チュル、といやらしい音を立てて粘膜を吸い上げた。
「ひゃあぁっ!? あ、だめっ、耳はっ……はぁっ、んっ!」
「いい声。ヒビキの耳ってすっごく敏感なんだな。ちょっと動いただけで、こんなに震えてるぞ」
「やめ……やめろっ! 俺は、男だぞ……っ! こんなのっ……!」
俺は一人の男として彼と隣に並びたかった。それなのに、衣服を理不尽に奪われ、冷たい粘液で耳の中をかき回され、ただの雌のように高い声を上げて震えている。
さらに最悪なことに、熱を帯びつつも冷たいその柔らかな粘体が、尻尾の付け根から、俺の股間で熱を持ち始めていたペニスまでもを根元からすっぽりと包み込んだ。
「あっ、ぁ……や、そこ、だめっ……! お願い、やめて……っ!」
体内へ侵入するわけではない。だが、スライムの自在な粘膜が俺のペニスの形状にぴったりと密着し、亀頭の裏の最も敏感な筋を、ズチュ、グチュッという卑猥な水音を立てて激しくしごき上げてくるのだ。神経のど真ん中を直接抉られるような暴力的なまでの肉体的快感に、腰が勝手にビクン、ビクンと跳ね上がった。
頭の奥が真っ白に明滅し、すでに先端からドロリとした我慢汁が漏れ出しているのが、自分でもはっきりと分かってしまった。
「あぁぁっ……!? い、いやぁっ……! こんなのっ、頭、おかしくなるっ……! あ、はぁっ、あぁっ!」
「いいぞ、もっと声出して。……ほら、俺の名前、呼んでみ? そうすれば、このパンパンに張ったの、楽にしてやるからさ」
そう言いながら、リムルの冷たい指先が、俺の喉仏をなぞるようにゆっくりと撫でた。声帯の震えを、直接その手で味わうように。
耳元で囁かれる声は、どこまでも優しくて、甘い。
恐ろしいのは、彼から「性的な熱」や「興奮」が一切感じられないことだ。俺をこんなにもぐちゃぐちゃに貪りながら、リムルはただ、俺を自らの手で完全に支配できることへの狂気的な『歓喜』だけに打ち震えている。
ダメだ。これ以上は、本当に俺が俺でなくなってしまう。ここでこのまま射精してしまえば、完全に男としての尊厳が死ぬ。
頭では絶対に屈してはいけないと分かっているのに。限界を超えた肉体的な快感と、魂の奥底に組み込まれた『条件反射』が、俺の口を勝手に動かした。
「りむ……るっ……リムルぅ……っ! 助けて……っ、もう、イク……っ、精液、でるぅっ……!」
「うん、よくできたな。俺の中で、全部ドクドク出していいぞ」
泣き叫びながら名前を呼んだ瞬間。
魂の回廊を通じて、『致死量の多幸感』が脳髄に直接叩き込まれた。
「あ……っ、あ、あぁぁぁぁぁぁっ……!!」
ドクン、と全身の血が沸騰したかのような錯覚。
ペニスを貪るスライムの媚薬めいた愛撫と、魂を白く染め上げる多幸感。二つの圧倒的な奔流が衝突し、俺の身体は限界を超えて弓なりに反り返った。
頭の中が真っ白に弾け飛ぶ。熱い痙攣が下腹部から全身を駆け巡り、ビュッ、ビュッ、と濃い精液が、俺のペニスを絡め取るリムルの粘体の中へと無惨に搾り出されていく。
声にならない悲鳴を上げ、男としての意地も何もなく、ただ射精の快楽に溺れて絶頂を迎えた瞬間――ポンッ、と軽い音を立て、意地でなんとか保っていた人の姿が崩れる。許容量を超えた快楽に脳がショートし、俺は抗うことすらできず、元の小さな『白狐』の姿へと強制的に戻されてしまった。
「はぁ……っ、ぁ……きゅう、ぅ……っ」
「あぁ……たまらないな。こんなに濃いの、いっぱい出して……気持ちよかったんだな。ヒビキ、すっごく可愛いぞ」
白狐の姿でぐったりとシーツに投げ出された俺を、リムルの冷たい指先が愛おしそうに撫でる。
俺の持つスキルは、精神支配を無効化する。つまり、これは俺の思考が書き換えられたわけじゃない。俺自身が生理的な射精の快感と安心感に屈服し、男としてのプライドを手放し、ただの獣に成り下がって果ててしまったのだ。
その凄惨な事実だけが、鮮明に突き刺さる。抗えない快感に負けてしまった自分が心底恐ろしくて、俺の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。それを、リムルが優しく拭う。
「泣くなよ。お前はもう、俺がいないとダメな身体になったんだからさ」
優しく囁きながら、リムルの指先が、俺の額にトンと触れた。
その瞬間、魂の回廊を通じて俺の中にリムルの魔素が強引に流れ込み、身体の形態が強制的に操作される。
「きゅうっ……!?」
「でもさ、朝までたっぷり可愛がってやるなら、やっぱりこっちの姿じゃないとな」
ポンッ、という音と共に、俺の身体は白狐から、少年の姿――先ほど散々精液を搾り取られ、粘液に塗れた全裸の姿へと強制的に引き戻されていた。
「あ、ぅ……っ! や、あ……っ」
「狐の姿に逃げて楽になれるなんて、思ってないだろ? 人の姿のまま、俺に愛されてるのを全部自覚しろよ」
男としての自我と理性を保たされたまま、すべてこの激重な執着の檻の中で溶かされていく。俺はただ涙を流しながら、再び這い寄ってくる冷たい粘体と、ひどく熱を帯びた魔王の瞳に、絶望とともに身を委ねることしかできなかった。
――翌朝。
小鳥のさえずりと、窓から差し込む淡い光で目を覚ました。
精神支配を弾くスキルの恩恵が、一晩の狂気から俺の脳を強制的に覚醒させる。正常な自我と理性が、残酷なほどクリアに頭の中へ戻ってきてしまった。
だというのに、俺は少年の姿のまま、リムルの腕の中にすっぽりと抱き込まれていた。
自力で身体を起こそうとするが、指先一つまともに動かない。全身の筋肉は限界まで酷使され、骨の髄まで甘く痺れたままだ。そして何より、神経が集中する狐耳と尻尾の付け根が、少しリムルの服に擦れただけでビクンと跳ねてしまうほど、異常なまでに敏感に開発され尽くしていた。
「おはよう、ヒビキ。よく眠れたか?」
頭上から、ひどく甘ったるい声が降ってきた。
見上げると、人の姿をとったリムルが、愛玩動物を慈しむようなとろとろに蕩けた瞳で俺を見下ろしている。
「……っ、さわ、るな……」
やめろ。俺は男だ。ペットじゃない。正常に機能する理性が、僅かに残った羞恥心とプライドを振り絞って、俺は彼から離れようと身をよじった。
だが、その瞬間だった。俺の魂の奥底、彼に繋がれた回路が強制的に遮断され、真っ逆さまに暗闇へ突き落とされるような、強烈な不安と虚無感が襲いかかってきた。
「あ……っ、は、ぁ……っ!」
息が詰まる。怖い。一人にしないで。
逃げようとしたはずなのに、俺の身体はパブロフの犬のように、自らリムルの腕の中へと擦り寄っていた。震える両腕で彼の服を強く掴み、すがりつくように顔を胸元に埋める。
「りむ……るっ、あ、リムル……っ」
「うん、ここにいるよ。俺の可愛いヒビキ」
俺が泣きながら名前を呼んだ瞬間、またしても脳髄を焼き切るような圧倒的な安心感と多幸感が流し込まれた。
あぁ、もうダメだ。
俺はもう、男として誰かの役に立つことも、ヒナタさんたちと笑い合うこともできない。人の姿と理性を保ったまま、ただこの温かくて恐ろしい腕の中で、彼から与えられる快感と安心感だけを貪り食う、思考を奪われた『可愛い愛玩動物』になってしまったのだ。
「すっごく可愛いよ。もう、俺以外何もいらないよな?」
リムルの冷たい指先が、俺の真っ白な狐耳を愛おしそうに撫でる。
ビクン、と狐の身体が跳ね、口から甘い吐息が漏れる。俺はただ涙を流しながら、抗うことすら忘れて、彼の手の中で何度もコクコクと頷くことしかできなかった。
俺の声も、心も、身体も。そのすべてが、永遠に彼の重たい愛の檻に閉じ込められた朝だった。