※この作品はR-18です。

鬼畜聖杯英雄王ランス   作:おっぱいだああああああああ

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第十五話 英霊四巴

夜の帳が完全に下りた衛宮邸。

昼間の二大英雄王との連戦、そして言峰教会への強行軍を経て、広間に集まった一同の間には、いつになく重苦しい空気が流れていた。

 

……はずだった。

 

「がははは! これだ、これだ! この『すきやき』というやつ、甘辛いタレと肉の脂が絶妙に絡み合って、箸が止まらんぞ! おい少年、肉の追加だ!」

「だからそれは、俺がスーパーのタイムセールで必死に死守した特選和牛……! 一瞬で全部さらうなよ!」

 

そこには、昼間の金ピカとの死闘など最初からなかったかのように、座卓の鍋から肉を文字通り「強奪」しているランスの姿があった。その横では、セイバーが非常に洗練された、しかしランスに負けず劣らずの神速の箸さばきで、残された豆腐とネギを確実に自身の小皿へと回収している。

 

「緑の騎士。貴殿のそのあさましい食欲は、王としての品格を疑わざるを得ません。……ですが、この『たまご』にくぐらせて食べる肉というものは、確かに見事な文化ですね。マスター、私も追加の肉を所望します」

「セイバーまでそんな綺麗な顔で恐ろしいスピードで食べないでくれ……! 予算が、俺の今月のバイト代が消し飛ぶ……!」

 

士郎が財布を握りしめて涙目になる中、凛はビールをあおりたい衝動を必死に堪えながら、烏龍茶のグラスを叩きつけるように座卓に置いた。

 

「ちょっと、二人ともいい加減にしなさい! 今は作戦会議の真っ最中よ!」

凛の怒声に、ランスは「モグモグ……あァ? 作戦など、あの成金野郎(ギルガメッシュ)が現れたら、俺様が正面から叩き潰す。それで終わりだろ?」と、ちっとも悪びれずに肉を咀嚼している。

 

「それが簡単にいかないから頭を抱えてるんでしょ!」

凛はこめかみを押さえた。「あの金ピカ……間違いないわ。十年前の第四次聖杯戦争を勝ち残った、あるいは何らかの方法で現界し続けている『アーチャー』の英霊よ。あいつの持つ『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』は、あらゆる宝具の原典を無限に射出する、一対多における最悪の相性を持つ宝具よ。ランス、アンタはさっき力技で弾き飛ばしたけど、あれが数百、数千の規模で同時に降ってきたら、生身のアンタの肉体だってタダじゃ済まないわ!」

 

「フン、数が増えたところで、当たらなければどうということはない。心の友よ、そうだろう?」

ランスが腰のカオスを叩くと、カオスが『おうさ! だが心の友よ、あの成金男の蔵には、儂ら異界の存在のルールすら歪めるような、とんでもない神代の武器が眠っている気配がした。油断は禁物だぞ』と珍しく真面目なトーンで告げた。

 

「……喋る魔剣の言う通りだ、お嬢さん」

キッチンの片隅で、残った食材で手際よく追加のうどんを茹でていたアーチャーが、静かに会話に加わった。

「あの英雄王が本気になれば、この冬木の街ごと一瞬で焦土と化す。先ほどは言峰の制止があったから引いたものの、次に出会った時は、こちらの出札をすべて切る覚悟で挑まねば全滅する」

 

「言峰、綺礼……」

士郎がその名を口にし、眉をひそめた。「あいつ、俺の親父のことを知ってた。それに、あの金ピカを隠してたってことは、やっぱりあの教会は中立なんかじゃないんだな」

 

「ええ。監督役が裏で最強のサーヴァントを飼い慣らしていた、なんて、魔術協会への完全な反逆よ。アインツベルンのバーサーカー、そして言峰陣営のギルガメッシュ……。この二大巨頭を同時に相手にするなんて、普通の聖杯戦争ならその時点で詰んでるわ」

凛はそう言って、チラリとランスを見た。

「……でも、私たちの陣営には、そのすべての前提をひっくり返す、この『歩くバグ』がいる。これが唯一の勝機よ」

 

「がははは! やっと俺様の偉大さが分かったか、凛! よし、褒美として今夜は俺様のベッドに潜り込む権利を――」

「「「(お仕置き用魔力弾 / 風王結界の風圧 / 強化中華包丁の投擲)」」」

 

次の瞬間、居間の障子が一枚、ランスの吹き飛んだ衝撃で派手に破れた。

 

「痛ってぇぇぇ! お前ら、人が真面目にハーレム計画を語っているときに一斉に暴力を振るうな! むかむか!」

庭に転がったランスがブツブツ文句を言う中、士郎は破れた障子を見つめて「明日、直さなきゃな……」と深くため息をついた。

 

「うう、また障子が……。遠坂、これ修理代は同盟の経費で落としてくれよな……」

 

士郎が庭に向かってボヤきながら、散らばった障子紙を拾い集める。

庭の芝生の上でひっくり返っていたランスは、「ふんっ!」と自慢の気力で泥を吹き飛ばしながら、何事もなかったかのように居間へと這い戻ってきた。

 

「がははは! これしきの衝撃、俺様の頑強な肉体には蚊に刺されたようなものだ! それより凛、さっき『歩くバグ』とは失礼な。俺様は戦場においては常に主役、勝利の女神(と世界中の美女)に愛された男なのだぞ!」

 

「はいはい、その無駄なポジティブさだけは認めざるを得ないわね」

凛は呆れ果てて額を押さえながらも、座卓の上の冬木市の地図へ視線を落とした。

「……笑い事じゃないわ。アインツベルンのバーサーカーに、言峰の金ピカ。どちらもまともに正面からぶつかれば、こちらのサーヴァントが何体いても足りない。だからこそ、次の動きが重要になる」

 

「お嬢さんの言う通りだ」

アーチャーが、出汁がしっかりと染みた「締めの下茹でうどん」を鍋に投入しながら、冷徹な目を光らせる。

「バーサーカーはマスターが幼い少女(イリヤスフィール)だ。力は圧倒的だが、精神的な隙はある。一方で、あの英雄王(ギルガメッシュ)は言峰のバックアップがある以上、どこからでもこちらの隙を突いてくるだろう。まずは戦力を分散させず、相手の出方を見るのが上策だ」

 

「……いや、私は異議があります」

セイバーが、うどんの入った器を静かに置き、緑の瞳に強い決意を宿して立ち上がった。

「あの英雄王は、十年前の戦い(第四次聖杯戦争)でこの街に大きな災厄をもたらした元凶。あ奴を放置すれば、再び罪なき民が巻き込まれます。マスター(士郎)、私は剣を預かる身として、邪悪の芽は早急に摘むべきだと考えます」

 

「セイバー……」

士郎はセイバーの真っ直ぐな言葉に、自身の「誰も傷つけたくない」という理想が共鳴するのを感じた。しかし、同時に昼間のあの圧倒的な宝具の嵐、そしてバーサーカーの狂気を思い出し、慎重に言葉を選ぶ。

 

「気持ちは分かるよ、セイバー。俺だって、あんな奴らが街で暴れるのは絶対に止めたい。……だけど、今の俺は魔術師としても半人前以下だ。お前に無理をさせて、もしものことがあったら……」

 

「がははは! なんだ少年、そんなにシ気化けたツラをするな!」

ランスが士郎の背中を、骨が折れんばかりの強さでバシバシと叩いた。

「要するに、あの金ピカも、デカブツも、まとめて俺様がカオスでブチのめせば万事解決なのだ! そのためにはな……おい、凛! この世界には、俺様のレベルをさらに爆発的に上げる『レベル屋』や、武器を鍛える『鍛冶屋』はないのか!?」

 

「あるわけないでしょ、そんなゲームみたいな施設!!」

凛が即座にツッコミを入れる。

 

『おいおい、心の友よ。この世界の魔力(マナ)はリーザスやJAPANとは随分と流れが違う。儂の呪いを最大出力で解放するには、この土地の『霊脈』とやらを少し弄くって、儂に直接魔力を注ぎ込ませるのが一番手っ取り早いぞ』

魔法ボックスの中からカオスが、まるで悪魔の囁きのように狡猾な提案を口にした。

 

「霊脈を弄る……!? 喋る魔剣の分際で、なんて大魔術の領域の話をしてるのよ……!」

凛が驚愕の声を上げる。

 

その時だった。

 

衛宮邸の周囲を覆っていた、士郎が張ったお粗末な、しかし凛の魔術によって幾重にも強化されていたはずの「警戒の結界」が、パリン、とガラスが割れるような乾いた音を立てて完全に破壊された。

 

「――っ!? 敵襲!!」

アーチャーが即座に叫び、干将・莫邪を両手に投影する。

 

「この禍々しい気配……魔術師(キャスター)のサーヴァントか!?」

セイバーが士郎の前に躍り出、居間の障子を風圧で吹き飛ばしながら庭を見据えた。

 

漆黒の夜空の下、衛宮邸の瓦屋根の上に、夜の闇に溶け込むような不気味な紫のローブを纏った女性――キャスターが、空間に浮遊しながら、愉悦に満ちた冷たい笑い声を響かせていた。

 

「うふふふ……。随分と賑やかなお仲間が集まっているのね、遠坂の娘。そして、見慣れぬ異界の王様(ランス)……。貴方たちのその奇妙な『繋がり』、私がすべて、この『ルールブレイカー』で手中に収めてあげましょう」

 

キャスターの手には、歪にうねった、不気味な輝きを放つ短刀が握られていた。

あらゆる魔術契約を無効化し、サーヴァントの所有権すら奪い取る裏切りの宝具。

 

「がははは! 今度は紫の怪しいねーちゃんか! フードの奥の顔はなかなか良さそうではないか! よし、俺様がそのローブを力ずくで剥ぎ取ってやる!」

 

「――あらゆる魔術を破却する、裏切りの魔女。まさか、自ら前線に出てくるとはな」

アーチャーが干将・莫邪を逆手に構え、屋根の上のキャスターを鋭く睨みつける。

 

「うふふ、そう警戒しないで頂戴。私はただ、そこの『おかしな王様』に興味があってね。英霊でもないのに、その身に宿る莫大な気力と、その手にある不浄な魔剣……。私のコレクションに加えるには、これ以上ない極上の素材だわ」

キャスターは骨張った指を妖しく蠢かせ、空中に無数の紫色の神代魔術光弾を展開した。

 

「がははは! 俺様をコレクションだと? 面白い、逆だ逆! その怪しいフードを剥ぎ取って、俺様のハーレムの128番目くらいに加えてやるわ!」

ランスは魔剣カオスを肩に担ぎ、凶悪な笑みを浮かべて一歩前に出る。

 

「ランス、突っ込んじゃダメ! あいつの手にある短刀――あれ、ただの武器じゃないわ! サーヴァントの契約を強制的に解除して、自分のものにする宝具よ!」

凛が地図を放り出し、指先からガンド撃ちの魔力を込めて叫んだ。

 

『おいおい心の友よ、あの女の持つナイフ、妙な術式の匂いがするぞ。儂とお前の固い絆(というかお前の鬼畜な魂)は引き裂けんだろうが、あの小娘(セイバー)や白髪(アーチャー)がアレに刺されたら一発で寝取られるぞ!』

カオスが珍しく危機感を募らせてカタカタと震える。

 

「な、寝取られるだとぉっ!? 俺様の目の前で、美少女が他の奴に寝取られるなど、この俺様が絶対に許さーーーん!!!」

「寝取られる」という単語に異常なまでの過剰反応を示したランスの黄金の気力が、爆発的に膨れ上がった。その出力は、昼間にギルガメッシュと対峙した時をも上回っている。

 

「いくぞデカブツども! あの怪しい女をひっ捕らえて、身ぐるみ剥いでやる!」

「誰がデカブツですか!」「少年、あの男のブースターの基準が狂いすぎていて頭が痛くなってきた」

 

「――狂え、神代の光弾(フラグメンツ)」

キャスターが冷酷に手を振り下ろすと、空中から数条の、一発一発が対軍魔術クラスの威力を秘めた紫のレーザーが衛宮邸の庭へと降り注いだ。

 

ドゴォォォン!!!

 

「ハァッ!!」

セイバーが風王結界の暴風を吹き荒れさせ、士郎の前に着弾する魔術光弾を強引に切り裂いて相殺する。

アーチャーもまた、目にも留まらぬ速さで干将・莫邪を投擲し、キャスターの死角へと迫るが、キャスターは空間転移の魔術で音もなく別の瓦屋根へと移動した。

 

「がははは! 遅い遅い! そんなヘロヘロの光、俺様には通用せんわ!」

ランスは爆煙を正面から突き破り、驚異的な跳躍力でキャスターのいる屋根へと飛び上がった。そのカオスの刀身が、どす黒い呪いのオーラを纏って激しく唸りを上げる。

 

「超スーパー鬼畜アターーック!!!」

 

ドガァァァァァン!!!

 

「――なっ!?」

キャスターの防壁魔術が、カオスの「あらゆる防御概念を無効化する呪い」によって、まるで薄いガラスのように粉々に砕け散った。屋根の瓦が凄まじい勢いで吹き飛び、キャスターは間一髪で空間転移を繰り返して空中へと逃れる。

 

「バカな……!? 神代の魔術による多重防壁を、ただの物理斬撃で文字通り『透過』してきたというの……!?」

空中へ浮遊したキャスターの顔(フードの奥)が、初めて驚愕と焦燥に染まる。

 

「がははは! 俺様のカオスに斬れないものは無いのだ! さあ観念しろ、怪しいねーちゃん!」

着地したランスが、再び地を蹴ろうとしたその瞬間。

 

衛宮邸の門の前に、もう一つの巨大な、そして昼間よりもさらに深く、重い「足音」が響き渡った。

 

ドシン、ドシン、ドシン……。

 

「――嘘、でしょ……」

凛の声が引きつる。

 

門を破壊しながら現れたのは、漆黒の巨躯。狂気によって理性を完全に失い、ただ破壊の衝動だけを撒き散らす狂戦士。

 

「―――グルァァァァァッ!!!」

 

バーサーカー(ヘラクレス)が、その巨大な斧剣を携え、月光の下で咆哮を上げた。

さらにその肩の上には、銀色の髪をなびかせた少女――イリヤスフィールが、冷酷な笑みを浮かべて座っている。

 

「見つけたわ、お兄ちゃん。それに、そこの生意気な緑のサーヴァント(?)も。……キャスター、私の獲物に手を出そうなんて、いい度胸じゃない」

 

「バーサーカーまで……! ちょっと、なんでどいつもこいつも一晩で私の処理限界を超えた襲撃を仕掛けてくるのよ!」

凛は髪を掻きむしりながら、指先に集めたガンドの魔力を限界まで高めた。

 

「うふふ……アインツベルンの怪物までお出ましね。流石にこの包囲網は分が悪いかしら」

上空に浮かぶキャスターは、不快そうにフードの奥の目を細めながらも、その手に持つ『ルールブレイカー』の刃を、虎視眈々とマスターたちの首元へと狙い定めている。

 

「グルァァァァァッ!!!」

地響きと共にバーサーカーが突進する。標的は、昼間に自身の肉体を二度も殺した男――ランスだ。神速を超える速度で振り下ろされる巨大な斧剣が、大気を爆裂させる。

 

「がははは! また来たかデカブツ! 俺様をストーカーするとは、お前ホモか! ホモは頑固一徹の奴らだけで十分だ、この俺様を戦い(と夜のベッド)で満足させられるのはピチピチの美女だけなのだよ!」

ランスはむかむかと怒りを燃やしながらも、野生の勘で斧剣の軌道を見切り、カオスを斜めに滑らせてその一撃を受け流した。

 

ギィィィィィン!!!

 

火花が夜の庭を真っ赤に染め上げる。受け流したとはいえ、バーサーカーの規格外の怪力は、ランスの足元の地面を一瞬でクレーターへと変えていた。

 

「セイバー、ランスの援護に回れ! アーチャーは上空のキャスターを狙撃しろ! 衛宮くんは私の後ろから離れないで!」

凛が瞬時に的確な指示を飛ばす。

 

「了解した、お嬢さん。――『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』、空間ごと捻じ切れ」

アーチャーが弓を引き絞り、光を放つ螺旋の矢を放つ。それは空間を歪めながら、空中を転移しようとしたキャスターの死角へと一直線に襲いかかった。

 

「チッ……小癪な弓兵が!」

キャスターは防壁を展開するが、爆風によってそのローブが大きく破られ、空中での姿勢を崩す。

 

「はあぁぁぁっ!!」

一方、セイバーは風王結界の暴風を纏い、バーサーカーの側頭部へと猛烈な一撃を叩き込んでいた。不可視の刃が肉を裂き、バーサーカーの巨躯がわずかに傾く。

 

「今だ、心の友よ! あの幼女(イリヤ)ごと、まとめて俺様の『超スーパー鬼畜スラッシュ』で――」

ランスがカオスを引き抜き、イリヤスフィールに向けて最悪の凶刃を振るおうとしたその瞬間。

 

『待て、心の友よ!!』

魔法ボックスの中からカオスが、これまでにない大音量で叫んだ。

 

「あァ!? なんだカオス、邪魔をするな!」

 

『違うわ馬鹿者! お前の後ろだ! 上空から、あの『金ピカの成金野郎』の気配が急接近しておるぞ!!』

 

「――何!?」

ランスが反射的に空を見上げた瞬間、夜空の雲が黄金の光によって一気に引き裂かれた。

 

「――全く。雑種どもが分をわきまえずつるんでおると思えば、これほど醜悪な泥仕合を我が庭で繰り広げるとはな」

 

冷酷にして絶対的な、傲岸不遜な声。

衛宮邸の上空、満月の光を遮るようにして、黄金の輝きを放つヴィマーナ(天の舟)に腰掛けたギルガメッシュが、すべての者を見下ろしていた。

彼の背後には、昼間の比ではない――数百、いや『千』を超える『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の光が、夜空を埋め尽くすように展開されている。

 

「ギル、ガメッシュ……!?」

凛の声が、完全な絶望に震えた。

 

「アインツベルンの人形も、異界の鬼畜も、裏切りの魔女も……まとめて我が財宝の塵となるがいい。――無価値な雑種どもめ、消え失せろ」

 

ギルガメッシュが冷酷に腕を振り下ろす。

刹那、夜空を完全に埋め尽くした千の宝具の雨が、衛宮邸という狭い空間に向けて、世界を崩壊させるほどの質量となって一斉に降り注いだ。

 

「がははは! 上等だ金ピカァァァッ!! 全員まとめて俺様の後ろに隠れていろ!!」

ランスはカオスを逆手に構え、全身の黄金のオーラを最大出力で爆発させた。

 

キャスターの神代魔術、バーサーカーの狂気、ギルガメッシュの絶対的な財宝、そして鬼畜王の理不尽な突破力。

 

千の宝具が夜空を埋め尽くし、流星群のごとく降り注ぐ。その一発一発が地表を抉る神話の再現。衛宮邸の敷地全体が、眩い黄金の絶望に呑み込まれようとしていた。

 

「総員、最大防御――っ!!」

アーチャーの叫びと同時に、彼の前に巨大な光の花弁が出現する。

「――『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」

 

「シロウ、私の後ろに!!」

セイバーもまた、不可視の風を限界まで吹き荒らせて士郎の盾となる。空間転移で逃れようとしたキャスターも、予期せぬ最古の王の乱入に顔を歪め、神代の防御魔術を幾重にも展開した。

 

だが、その防壁のさらに前――。

誰よりも早く、光の豪雨の真っ只中へと肉薄する「緑の閃光」があった。

 

「がははは! 派手な花火を打ち上げやがって! だがな金ピカ、数が多いだけの飛び道具など、この俺様の『勘』と『カオス』の前にはただの的だァァァッ!!」

 

全身から噴出する黄金の気力塊(オーラ)が、夜闇を強烈に押し返す。

ランスは、常人であれば視認することすら不可能な音速の雨の中を、野性の直感だけで「紙一重」で縫うようにステップを踏んだ。どうしても避けきれない軌道の宝具の原典は、魔剣カオスがその不浄な呪いで叩き斬り、霧散させていく。

 

『おいおいおい心の友よ! 流石に密度が狂っておるぞ! 儂の刀身が摩擦で燃えそうだわい!』

 

「黙ってろカオス! 俺様が美少女たち(とついでに少年)の前で不細工に逃げ回れるかよ! おらぁぁぁッ!!」

 

突き進むランスの背後で、アーチャーの『ロー・アイアス』が三枚、四枚と爆音を立てて砕け散り、キャスターの防壁が弾け飛ぶ。バーサーカーもまた、その巨躯で宝具の雨を受け止めながら怒号を上げていた。まさに地獄絵図。

 

しかし、その地獄を力ずくで突破したランスは、上空のヴィマーナに君臨するギルガメッシュの直下――衛宮邸の瓦屋根の頂点へと到達した。

 

「はァァァッ!! そこをどきやがれ、成金野郎ーーー!!」

屋根を文字通り粉砕するほどの踏み込みから、ランスの身体が天空へと跳ね上がる。そのカオスの刀身には、ただでさえ規格外の気力が、さらに高密度に圧縮されていた。

 

「これでも喰らいやがれ! 『超スーパー鬼畜・武烈斬(ぶれつざん)』!!!」

 

ドォォォォォン!!!

 

天空で、黄金の光弾とどす黒い呪いの斬撃が激突し、凄まじい衝撃波が冬木の夜空に広がった。ギルガメッシュの乗るヴィマーナが、その暴風に煽られて大きく傾く。

 

「……チッ、またしてもこの我が財宝の雨を抜けて、ここまで届くか……!」

ギルガメッシュの紅い瞳に、明確な不快感と、そして「侮れぬ異物」に対する苛立ちが宿る。

 

爆煙の中、重力に従って地面へと着地したランスは、肩を大きく揺らしながらも、ニヤリと凶悪に笑ってみせた。衣服は流石に裂け、あちこちから血が滲んでいるが、その闘志は全く衰えていない。

 

「がははは! どうだ金ピカ、少しは肝が冷えたか!」

 

「おのれ……雑種の分際で……」

ギルガメッシュが真の手を『王の財宝』の奥へと伸ばそうとした、その時だった。

 

「お兄ちゃん、もう止めよ。これ以上は、冬木の霊脈そのものが持たないわ」

バーサーカーの肩の上で、イリヤスフィールが冷静に周囲の状況を観察し、鈴を転がすような声で告げた。

 

見れば、衛宮邸の庭は完全にクレーターと化し、立ち上る魔力の残滓で大気が異常なほどに歪んでいる。これ以上の激突は、聖杯戦争の舞台そのものを崩壊させかねない。

 

「……うふふ、アインツベルンの人形の言う通りね。今日のところは、この異界の王様の『データ』が取れただけでも収穫だわ」

キャスターが、ボロボロになったローブを翻しながら、空間の裂け目へと身を隠していく。

 

ギルガメッシュは、忌々しげにランス、そしてセイバーを一瞥すると、ふっとヴィマーナの機首を反転させた。

「ふん……興が削がれた。綺礼の言う通り、このネズミの庭は少々手狭すぎるな。緑の雑種よ、その首、次の舞台まで繋ぎ止めておくがいい」

 

黄金の光が夜空に消え去り、バーサーカー陣営もまた、地響きを立てて闇の中へと撤退していった。

 

静寂が戻った衛宮邸(の、かつて庭だった場所)。

 

「ハァ……ハァ……もう、本当に……何なのよこれ……」

凛がその場にへたり込み、完全に燃え尽きたような声を出す。アーチャーも投影を解き、疲弊した様子で眉間を押さえていた。

 

「マスター、無事ですか……!」

セイバーが士郎の無事を確認し、ホッと胸を撫で下ろす。そして全員の視線が、満身創痍のはずのランスへと集まった。

 

ランスはカオスを魔法ボックスへと戻すと、何事もなかったかのように腰に手を当て、士郎を振り返った。

 

「がははは! 大物どもを一気に退散させてやったぞ! どうだ少年、俺様のこの圧倒的な強さは! さあ、約束通り、今すぐ俺様に極上の牛肉と、あと凛と鎧のちゃんねーを夜のベッドへ――」

 

「「「(魔力強化正拳突き / 風王結界パンチ / 無言の裏拳)」」」

 

ドガァァァン!!!

 

三方向から同時に炸裂したお仕置きの衝撃で、ランスは今度こそ、完全に崩壊した衛宮邸の塀の向こうへと吹っ飛んでいった。

 

「……明日から、どこで寝ればいいんだ、これ……」

士郎は、完全に更地と化した我が家(元・邸宅)を見つめながら、ぽつりと呟くのだった。

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