※この作品はR-18です。

満員電車で私を触っていたのはカレシのはずだったのに   作:かめのこたろう

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 数日後。

 朝の通学途中の電車の中。

 

 その日の混み具合は何時もの比ではなかった

 夏の半袖セーラー服がもみくちゃにされてできる皺なんていちいち気にしてる余裕なんて全く無い。

 ヘアセットとメイクももう諦めて学校で直そうって思うほど。

 完全に人の壁に挟まれてつり革とバックをそれぞれ持った腕を動かす余裕なんてまったくない。

 

 再びあの感触が襲ってきたのはその時。

 

 

 さわぁ……。

 

 

 最初からはっきりと掌を押し当ててくる感触。

 これまでのやられ方とは違う。

 まずは手の甲とか腕の一部を何気なく押し当ててくるような小細工をしていたのに。

 だから前回と同一犯なんじゃないかという考えがすぐに想い浮かぶ。

 

 ぴったりと片手をお尻の形にそって押し当てている。

 勿論、スカートと下着越しではあるけど。

 重力に引かれて少し弛んだ私のお尻の肉を心持、指先で持ち上げるような感じで動かさない。

 

 ぞわっと沸き立つ怖気、嫌悪感に苛立ち。

 その大胆になった触り方に、馴れ馴れしさや気安さのようなものを感じて怒りはいや増していく。

 

 それでもやっぱり私はそのまま放っておく。

 こっちは全く身動きがとれない状態なのに、よくもまぁ器用なもんだと呆れたような感心もしながら。

 

 あなたがそのままでいるんならとりあえずは騒がない。

 でも決して許してるわけじゃない。

 今この瞬間も激しい怒りと軽蔑でいっぱいなんだ。

 この程度でいちいち騒いで時間が取られるのがあまりにも勿体無いだけ。

 ただそれだけの理由で泳がせているだけ。

 もし少しでもエスカレートしたら、その時は問答無用。

 大声で叫んで突き出してやる。

 こうも満員なんだから逃げられなんかしない。

 間違いなく約束された勝利がある。

 

 所詮、痴漢の命運は自分が握っているんだという考えが落ち着きを与えてくれる。

 

 そう、結局これ以上のことはできやしない、したら最後、すぐにでも対応はできる。

 

 痴漢に私のその想いが伝わったわけでもないのだろうけど。

 今日も掌を押し当ててくるだけで、動かしたりもんだり、ましてやスカートの中に入れて直接下着越しに触ってくるようなことは無かった。

 

 そうしてじっとしているうちに段々とお尻の感覚も気にならなくなってくる。

 そこ以外も体中を人と人に取り囲まれていて強制的な接触に晒されているんだから、動きさえなければその他の圧迫とさほど変わらない感覚になる。

 

 もう目的地の駅までもう少しというところまできたころには、痴漢に遭っていることすら忘れかけていた。

 

 そして今、駅のホームに電車が入っていき人々の波が動き出す前兆を言葉にならないどよめきで示したとき。

 私自身、ドアが開いた瞬間に脚を踏み出してさっさと降りようと意識したその瞬間。

 

 むにゅぅぅっ……。

 

(っ!)

 

 ゆっくりと何気なく、でも確かな強さで片方のお尻を握られる感触が襲ってきた。

 もうすでに感覚が麻痺していて触られていることも忘れていた場所にいきなり起こった刺激。

 

 そしてその瞬間すっかり油断していた私が感じたのは確かな快感だった。

 

 普段は人の手が触れることなんてほとんどない、唯一あるとしたらカレに触られて気持ちよくなるだけの場所。

 あまりに意識から外していて、無防備な心の空白でいきなり起こった感覚を一番慣れ親しんだ信号として読み取ってしまった。

 

 脳裏を駆け巡る甘美な記憶。

 

 彼の部屋に入ってすぐに立ったまま抱き合う。

 セーラー服は着たまま、スクールバックはその場で床に下ろして。

 お互いの身体の形を確認するように抱き合ったままキスをしたら。

 間も無く始まるお尻への愛撫。

 ちょっと小ぶりだけど形には自信がある、立ったときには少し弛んで柔らかそうな感じになるところが我ながらいやらしいと思っている私のお尻。

 胸や首筋への刺激でスイッチを入れられてからやさしく撫でられる。

 最初はスカート越しにゆっくりと形を確かめるようになでてから、やがて直接下着越しに触れてきて。

 両サイドから入れられた手の形にスカートの襞が盛り上がって蠢いている様が見えるかのように脳内にイメージされる。

 

 薄布一枚を隔てながら行われる、やさしくていやらしい刺激。

 自分のお尻の肌がその感覚を受け入れて確かな性感に変えていき。

 

 やがてそれにも慣れ始めて、もどかしく物足りなくなってくる。

 気持ちいいけど、まだまだ遥か先、その向こう側にある快楽の終着点に行き着くためにもっと強い刺激が欲しくなり始める。

 

 そんな私のようすをたっぷりと時間をかけて確認するカレ。

 私が我慢できなくなりはじめたのを理解しつつもしばらくそのまま続ける。

 

 ズルイ。

 意地悪。

 焦らすなんて。

 

 ……でも気持ちいい。

 

 これから始まる行為の予感に益々自分が発情し始めるのがわかる。

 思わずお尻を撫でられながらしているディープキス、その舌の動きを激しくしてしまう。

 

 ねぇ、わかってるんでしょ?

 こんな自分からしてほしいって言ってるのと同じことをさせるなんてひどいよ。

 恥ずかしいよ。

 それでも私からもっともっとって言わせたいの?

 悔しくて恥ずかしいけどエッチなことをしてほしくなっちゃう私の様子を楽しみたいの?

 

 口内の粘膜をやわらかく蹂躙される刺激と、お尻から伝わるゆっくりとやさしい刺激が脊椎を上下して互いに伝播しあう。

 そのたびにぴくっぴくっと私は制御できない身体の反応を示してしまう。

 

 頬が火照ってるのがわかる。

 お腹の奥が熱い。

 

 そうしてはっきりと自分が潤い始めたのを自覚し始めたころ。

 なんの前触れもなくそれまでのやさしい動きをかなぐり捨てて。

 

 ぐにゅぅぅぅぅ……っ!

 

 思い切りお尻を握られる。

 はっきりと形が変形するのがわかる、握られた指の間から自分の肉がはみ出ているのを感じるほど。

 

 散々焦らされてから齎されたその強い刺激は、すっかり敏感になっていたお尻の神経をすべて一つの感覚に変換し。

 私はそれまでよりも大きく反応する。

 

 「んっ!」と呻いて、びくっと大きく震える。

 

 じわり。

 

 とうとう染み出した快感の徴(しるし)がショーツに広がっていくのを否応もなく認識させられてしまう。

 

 

 ……そんな風に触られた記憶しかないから、今痴漢に握られて咄嗟に快感を覚えてしまったのはむしろ当然だったと思う。

 他の感じ方なんてなにも経験したことが無い場所なんだ。

 だからやられた瞬間にはなんの感情の葛藤もなく、その感覚を受け入れてしまっていた。

 

 しかしそれもほんの一瞬。

 

 今の状況が蘇ってきて自分の意識が再構築された次の瞬間には、怒りと苛立ち、嫌悪感が一気に溢れ出てくる。

 思わず気持ち良い感覚を受けてしまった事実が余計にその思いに拍車をかける。

 

 このっ!

 

 これまで我慢してきた分も含めて、大声を挙げて思いっきりこの卑怯で破廉恥な犯罪者を突き出してやろうとしたその瞬間。

 

 電車のドアが開いて私は荒々しく逆らいようが無い人波が生み出す力に流されていた。

 声を挙げることもできないまま、私の激情は通勤ラッシュの雑踏に掻き消えてしまっていた。

 

 

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