※この作品はR-18です。

肛悦のメイソンと秘密の地下室   作:たちばなさとし

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被験者シンについての記録

 スマホの画面を見つめながら、彼は一つ息を吐いた。

 見知らぬアカウントからフォローされ、ダイレクトメールが届くようになったのは、ちょうど一年前のことだ。

 

 最初はただのスパムか悪質なイタズラの類だと思っていた。メッセージには一切の文章がなく、ただ一つの動画リンクだけが貼り付けられていたからだ。しかし、ふとした好奇心からそのリンクを開いてしまったことが、彼の日常を少しずつ、しかし確実に狂わせていく始まりとなった。

 

 動画の背景はいつも同じだった。窓の無い、狭く薄暗いコンクリート打ちっぱなしの部屋。その中央に置かれた無機質な台の上で、一人の男が目を覆いたくなるような異様な処置を施されている。浣腸をはじめとする、およそ日常では考えられない排泄を伴う行為の数々。最初は嫌悪感からすぐに画面を閉じた。だが、一週間後、再び送られてきたリンクを彼は開いてしまった。

 

 毎週欠かさず送られてくるその動画の中で、台の上に拘束された男は極度の羞恥と苦痛に顔を歪めていた。しかし、その苦悶の表情の奥底に、時折、言葉では言い表せないほどの快楽に溺れたような、恍惚とした色が混じるのを見逃すことはできなかった。苦しいはずなのに、どうしてあんなにも気持ちよさそうな顔をするのか。その疑問はいつしか強い執着へと変わり、彼は毎週のダイレクトメールを心待ちにするようになっていた。動画の中の男が味わっている感覚への抗いがたい興味が彼を支配していた。

 

 そして一年が経過した今日。いつものように届いたダイレクトメールには動画のリンクはなかった。代わりに短い一文だけが画面に表示されていた。

 

『君を待っている』

 

 その文字を見た瞬間、彼の心臓は早鐘のように打ち鳴らされた。

 得体の知れない恐怖に全身から冷たい汗が噴き出すのがわかった。

 危険かもしれないという理性が警鐘を鳴らす。けれど、それ以上に、一年間ずっと画面越しに見つめ続けてきたあの男の表情――苦痛と快楽が融け合うあの場所へ行けば、自分もあの感覚を知ることができるのではないかという異常な欲求に、彼はどうしても抗うことができなかった。

 

 次のダイレクトメールに記された指定の場所は市街地から少し離れた、人気のない古い雑居ビルだった。

 錆びついた鉄扉の前に辿り着くと、そこには一人の初老に差し掛かった中年男性が静かに佇んでいた。仕立ての良さそうなスーツを着こなしたその男は彼を見るなり、全てを見透かしたような穏やかな笑みを浮かべた。

 

「中へどうぞ」

 

 低く、静かな誘いの言葉。引き返そうと思えばまだ引き返せたはずのその瞬間、彼はまるで糸を引かれる操り人形のように、うなずくことしかできず、建物の中へと足を踏み入れた。

 

 案内されたのは動画で何度も見たあのコンクリートの部屋だった。

 薬品とアルコールの入り交じった、冷たく無機質な匂いが鼻腔を突く。部屋の中央には黒いレザーが張られた検診台のようなものが鎮座していた。

 

「服を脱いで、そちらへ」

 

 中年男性の静かな指示に従い、彼は震える手で自身の衣服を一つ一つ剥ぎ取っていく。肌寒い空気の中、一糸まとわぬ姿となった彼は冷たい台の上に仰向けに寝かされた。天井の白熱灯が容赦なく彼の全裸を照らし出す。

 

「それでは始めましょう」

 

 中年男性はそう告げると、医療用のゴム手袋をはめた。

 ゴムが弾ける鈍い音が部屋に響く。これから何をされるのか、彼はたまらず質問しようと口を開きかけた。しかし、極度の緊張と恐怖、そして未知への期待で喉が完全に干からびており、声帯は震えるだけで言葉にならなかった。ただ、微かに呻(うめ)くことしかできない。

 

 中年男性はそんな彼を一瞥すると、無言のまま傍らの暗がりに控えていた助手の男に視線で合図を送った。助手は一切の表情を変えずに静かにうなずき、手際よくガラス製の浣腸器を準備し始める。

 

 カチャカチャという金属とガラスの触れ合う冷たい音が響き渡り、やがて、グリセリンを含んだ水がたっぷりと満たされた巨大なシリンジが彼の視界の端に映った。

 助手が彼の両脚を大きく持ち上げ、無防備に晒された入り口に冷たいノズルがあてがわれる。恐怖で身体を強張らせたものの、潤滑剤が塗布されたそれは不思議なほど抵抗感なく、彼の身体はすんなりと異物の侵入を受け入れてしまった。

 

 ピストンが押し込まれ、冷たい浣腸液が腸内へと一気に注ぎ込まれていく。下腹部を満たしていく異質な重みと冷感。それと同時に急激に腸壁が刺激され、経験したことのないような便意が彼を襲った。

 

「あっ……うぅ……」

 

 どうしていいか分からず、彼は台の上で身を捩った。

 誰も言葉を発しない。冷徹な静寂の中、ただ彼の荒い呼吸だけが響く。腹部の膨張感は限界に達し、括約筋を締め付けようとする彼の意志をいとも容易く打ち砕いた。ついに我慢の限界を超え、激しい音と共に排便が始まる。

 

 他人の目の前で排泄させられるという究極の羞恥に、彼は両手で顔を覆い、ガタガタと激しく身体を震わせた。情けなさと屈辱で涙が滲む。ようやく腸内が空になり、腹痛が収まったと安堵の息を漏らしたその直後だった。

 

 不意に先ほどのノズルとは違う、細く柔らかな管のようなものが滑り込むように挿入される。中年男性の手によるカテーテルの挿入だった。

 奥深くへと進んでいく異物感に息を呑む暇もなく、管の先から一リットルもの冷たい水が絶え間なく注ぎ込まれていく。

 

「ひっ……! あ、あぁっ!」

 

 体内を直接氷水で満たされるような冷感と、先ほどよりもさらに暴力的な便意が波のように押し寄せる。彼は全身に強烈な鳥肌を立て、台の端を力強く握りしめて震えた。管が引き抜かれた途端、堰を切ったように水と残便が噴き出す。

 出し切ったと虚脱状態に陥るのも束の間、カテーテルは何度も無慈悲に挿入され、幾度となく浣腸が繰り返された。次第に彼の思考は白濁し、ただ腹部の感覚だけに意識が支配されていく。

 

 続いて彼にあてがわれたのは人間の腕ほどの太さはあろうかという、黒く無骨なディルドだった。その異常な大きさに彼は目を見開くが、度重なる浣腸によってすっかり感覚が麻痺し、緩みきった彼の入り口は、その太い異物を拒むことなくゆっくりと飲み込んでいく。

 

 腸壁を押し広げながら奥深くまで侵入してくる、内臓を直接掻き回されるような感覚にぞくりと背筋が凍る。しかし、中年男性の冷徹な手つきによって一定のリズムで出し入れされるそれを、もはや押し返す力は彼には残されていなかった。

 

 さらにそのディルドには内部で不規則に振動したり、微弱な電流が走ったりする特殊な仕掛けが施されていた。

 

「ああっ! やっ、ぁあっ!」

 

 スイッチが入れられ、電流と振動が直接腸壁を打つ度、彼は背中を反らせて激しく身もだえし、動物のように大きく呻(うめ)く。

 頭の中では「やめてほしい」と叫んでいるはずなのに、ディルドが引き抜かれそうになると、空っぽになった腸がそれを惜しむように収縮し、再び深く埋め込んでほしいと渇望してしまう。相反する奇妙で不可解な感情が、彼の理性をドロドロに溶かし始めていた。

 

 ディルドが抜かれてしばらく、荒い息を繰り返す彼を見下ろし、中年男性が静かにつぶやくのが聞こえた。

 

「マヨネーズを」

 

 その言葉の意味を理解する前に助手によって用意された巨大なチューブの先端が押し当てられた。冷たく、ねっとりとした油分を含んだ物質が、ゆっくりと、しかし確実に彼の中へと大量に注入されていく。

 腸壁にへばりつくような奇妙な感触。腹部に広がるしくしくとした化学的な刺激は彼の中に言い知れぬ不安と、そして異常な期待をかき混ぜながら、やがて強烈で異質な便意へと変わっていった。

 

 出すところをすべて、まじまじと見下ろされている。その強烈な羞恥の視線に晒される中、体温で温められ液状と化したマヨネーズは、もはや留めておくことができず勢いよく噴き出した。

 

 ビチャビチャと激しい水音を立てて撒き散らされるそれからは、マヨネーズ特有の酸っぱい匂いが部屋中に充満し、彼の自尊心を徹底的に打ち砕いていく。

 

 休む間もなく、冷酷な声が続く。

 

「ポテサラ」

 

 耳を疑うような単語と共に、今度は注射器のような特殊な器具を使って、ごわごわとした固形物が無慈悲に腹の中へと充填されていく。ジャガイモの塊の感触が直接腸壁を擦り、腹が風船のように異常なまでに張り詰める。

 

 今すぐにでも排泄したい、物理的な圧迫感による強い欲求に駆られるが、水分が少ないため、いくら息んでもじわじわとしか出口へ向かってこない。極度の便秘のような、腸が破裂しそうな苦しさに彼は台の上で悶え苦しむ。

 

「うぅ……っ、んんっ……!」

 

 一刻も早くこの苦痛から逃れたい一心で、顔を真っ赤にして腹に全力を込める。無理やり捻り出すようにして重たい塊の排泄を終えると、彼は全身汗だくになりながら、ようやく深い安堵の息を漏らした。

 

「玉こんにゃく」

 

 休むことを許さない中年男性の命を受け、助手が彼の両脚の膝裏に腕を回し、恥部を完全に曝け出すように大きく左右に開かせる。丸く弾力のある六つの玉こんにゃくが、潤滑液と共に一つ、また一つと吸い込まれるように奥へと押し込まれていく。

 

 すべてのこんにゃくが腸内に収まった時、ゴロゴロとした異物感と、強烈な膨満感が彼を襲った。すぐに出そうと反射的に息むが、中年男性が厚い手のひらで入り口を塞いでおり、少しも出すことができない。

 

「あっ、だめっ、出、出ます……っ!」

 

 出したいのに出せない。押し出そうとする腸の動きを物理的に阻まれる拷問のような状況に、彼は泣きそうな顔で困惑しきっていた。限界まで高まった圧力を抑え込んでいた男の手が、不意にパッと退けられる。

 

 弾かれたように玉こんにゃくが勢いよく飛び出し、床にびちゃり、びちゃりと落下して濡れた音を立てた。腹のつかえが取れ、劇的に楽になったことに安堵し、彼はひゅーひゅーと荒い呼吸を整えた。

 

 しかし、一連の処置はまだ終わろうとはしない。中年男性の手にはグリセリンの原液がたっぷりと塗りたくられた先ほどのディルドが握られていた。それが、再びゆっくりと、蹂躙するように出し入れされ始める。

 

 すでに緩みきった入り口に、もはや太さによる裂けるような痛みはない。だが、腸壁に直接触れる高濃度のグリセリンが、焼け付くようなじわじわとした腹痛を誘発する。

 尻の穴の神経が完全に麻痺していくような感覚。自分の意志で括約筋を動かすことができず、大きく開きっぱなしになったそこから、常に自分の排泄物がだらだらと漏れ出し続けているような、恐ろしい錯覚に陥っていく。

 

「洗っておけ」

 

 中年男性が冷酷にそう告げると、助手の手によって今度は太いホースが直接あてがわれ、蛇口が全開にされた。強い水流で容赦なく水が流し込まれる。動画で見て知っていたシャワー浣腸。しかし、画面越しに見るのと実際に自分の身体で体験するのとでは天と地ほどの差があった。

 

 腹部がはち切れんばかりに膨張する強烈な感覚と、絶え間なく湧き上がる排泄欲求。たまらず水を出そうと息むが、出しても出しても、ホースからは凄まじい勢いで水が注ぎ込まれ続ける。出すことと入れられることが同時に行われる、終わりのない残酷な行為。

 

 ようやくホースによる注水が止められると、締まりを失いぽっかりと開いたままの入り口から、じょろじょろと大量の水がこぼれ落ちていった。透明な水に交じって、時折、腸の奥底から剥がれ落ちた茶色い汚れもとめどなく流れ出している。

 

 全ての洗浄が終わると、助手の手によって最後に巨大なゴム製の栓がはめ込まれる。便失禁を防ぐためなのだろうか、内部に挿入された後、ポンプで空気を送られて大きく膨らませられたそのプラグが、不自然で持続的な便意を彼の脳に錯覚させ続ける。

 

 数時間にも及ぶ苛烈な処置により、極度の疲労で全身の力はすっかり抜けきり、指一本動かすことすらままならない。それなのに、ふと見下ろした自身の身体の中心で、彼の男性器は痛いほど固く勃起したまま天井を向いて屹立していた。

 

 こうして、秘密の地下室における、彼の一日目が終わりを告げた。

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