※この作品はR-18です。

怪物   作:つるみ鎌太朗

12 / 15
12、

 

 プリンプリンがひとりで悶々としているとまぶたを閉じていたボンボンの眉間にシワが寄った。

 自分と同じく眠れないのかと思ったとたん、太もものあたりに何か違和感を覚える。

 硬いモノが当たっていた。

 ア、と声を漏らすとボンボンが目をゆっくりと開けた。

 

「ごめん、変なの当てちゃって……」

 

 恥ずかしそうに言うのでプリンプリンは慌ててなぐさめる。

 

「い、いいえ! 変じゃないわ……さっきまで、あんなに……あんなに」

「あんなに触れたの初めてだった……」

 

 ボンボンの碧の瞳にはまだ残り火がちらついている。

 

「プリンプリンの体……どこもかしこも柔らかくて、すべすべしていて、触ったところから壊れてしまいそうで怖かった。

真っ白だから汚してしまうんじゃないかとも」

 

 ボンボンがぽつりぽつりと語る自身にプリンプリンは『言いすぎだ』と思った。

 ハダカなんて、うんと幼かったころ以外に他人に見せたことがない。

 もちろん女の子の嗜みとして気を遣ってはいたが、いつか誰かに見せるためにせっせとケアしていたワケでもなかった。

 それをまるでさも芸術かのように言われては気恥ずかしい。

 照れるプリンプリンに気づいていないのかボンボンはまだぶつくさ言っていた。

 

「ずっと願っていた。こうやって、きみと寝る日を。

でもいざ前にすると……予習とか全部アタマから吹き飛んで、モタモタしちまって、挙句きみを泣かせた。

おれ、ケンカした手前ちゃんとリードしようとしたのに全然ダメだ……」

 

 完全に自信を喪失した様子のボンボン。

 しょぼくれた表情が普段いじけた時と変わりなくて、プリンプリンは反対に愛おしくなる。

 うーうー唸っている彼の頬に口を寄せ、柔らかい髪を手で梳かした。

 

「いいの。ボンボンが大事にしてくれているの、わかっていたわ。

――あんなところを見ても、何も言わないでいてくれたし……」

 

 プリンプリンがか細い声で言うと、ボンボンに焦った声で被せられる。

 

「ア、あの、おれ……気の利いたコトバが浮かばなくてごめん!

えっと、あ、あんまりキレイだったから……ビックリしちゃって…………」

 

 その言葉にプリンプリンはむず痒さを覚えた。

 

「何を言ってるの。あんなところ、キレイなワケないじゃない」

「!? そんなことない、プリンプリンはどこもキレイだよ!」

 

 ボンボンはとっさに口に出たようだった。

 つまり本音がポロリと洩れたようなもので……それに彼は嘘が下手だから。

 胸につかえていた不安があっさり薄れていくのをプリンプリンは感じた。

 

「ボンボン、ありがとう」

 

 素直にあふれてきた言葉だったがボンボンからしたら理解できなかったらしく、

 

「? 何が?」

 

 とはにかんでいた。

 わかっていない顔がおかしくてプリンプリンはクスリと笑ってしまう。

 もっとそばにいたいな。

 気づいたら身を寄せ、彼の腕の中へ潜り込んでいた。

 ……太ももには相変わらず彼の分身が当たっている。

 

「プリンプリン……?」

「ボンボン。わたし、眠れない」

 

 脚を少し動かしただけで彼が反応するのがわかる。

 赤面するボンボンに告げた。

 

「……続き、できると思う……」

 

 ノドの鳴る音。

 遠慮がちに伸びてくる手。

 

「ほ、ホントに? 無理してない?」

 

 腕の中にすっぽりと収まりながら、プリンプリンは首を横に振った。

 

「無理なら最初からしてる。

……でも、あなただから。あなた受け入れてくれるなら。

わたしも、今は無理をしたい」

 

 プリンプリンは彼の胸に突っ伏して、震える手で抱き締め返す。

 

「……ごめん」

 

 声の震えが、鼓動が直に届く距離。

 ボンボンの不安も肌に感じられる。

 

「勝手に焦ってごめん。もっとちゃんと時間をかけて聞くべきだった……」

「わたしたち、こんなことばっかりね」

「おれ、昔から早とちりしやすいから……」

 

 ふふ、とプリンプリンは小さく笑った。

 緊張しすぎて言葉が少なくなり、すれ違っていたけれど話してみるといつものボンボンだ。

 体をすり寄せたらボンボンが、

 

「……リベンジしよう!」

 

 むくりと上体を起こし、分身さんが元気な様子も見える。

 プリンプリンが呆気に取られているとボンボンも恥ずかしそうに縮こまった。

 ただ、たった今お互いに真正面から向き合ったばかり。

 

「さっきはプリンプリンだけ脱がせて悪かったから、おれも脱ぐ!」

 

 色気も素っ気もない宣言をして、再びTシャツに手をかけるボンボン。

 プリンプリンは苦笑して、潔く彼が服をベッド脇に投げるのを見守っていた。

 最後の一枚を脱ぎ去ろうとした直前にいったん声をかける。

 

「待って。これじゃさっきと逆になっただけじゃない。

突っ走りすぎだわ」

「えー、でもこういうのは一気に終わらせたほうが恥ずかしくないって言うし」

「極端ねぇ……。ちょっと、あっち向いてて」

 

 早く脱ぎたそうなボンボンをくるりと一回転させ、プリンプリンはその背中を見つめた。

 かつて旅の中、幾度となくかばってくれた背中。

 あんなに不可思議な国々を渡り歩いたというのに大きな傷も残らないで本当によかった。

 プリンプリンが細い指先で直線を引くようになぞると、ボンボンがくすぐったそうに肩を震わせる。

 

「何だよ、もう振り向いてもいいかい?」

 

 ちょっとした抗議も声が明るいから全然こわくない。

 ボンボンがふしぎがっているあいだに、プリンプリンはネグリジェをあっさりと脱いだ。

 

「プリンプリン? ちょっとどういう……」

 

 そのまま抱きついて静かにさせる。

 ボンボンが息を呑むのが裸の胸に伝わってきた。

 

「あ、あの、ナンだか生っぽくて、とっても柔らか〜いものを押し当てられているよーな気がするんだけど……?」

「そうね。何だと思う?」

「……いじわる……」

 

 顔は見えないのにボンボンが唇を尖らせているのが目に浮かぶ。

 プリンプリンは彼の肩を叩き、『もう振り向いていいわ』とささやいた。

 半分だけ振り返ったボンボンの顔は真っ赤だった。

 

「反則だよ、ソレは」

「さっきも触ってたわ」

「おれはキチンと前もって聞きました。

それなのにきみときたら、男心を弄んで……とんでもないことになっちゃってる!」

 

 完全に振り返ったボンボンは、それはそれは一点が窮屈そうだった。

 男性の生理現象なんて初めて見たので、原因をつくったプリンプリンも思わず口を覆ってしまう。

 

「そ、そんなに……反ってしまうものなの?」

「ウン。もうちょっとやそっとじゃ収まらない」

「……脱ぐ?」

 

 先ほどボンボン本人が口にしていた問いを、今度はプリンプリンが投げかける。

 ボンボンはちょっとだけ躊躇うようにしたが、持ち前の度胸を発揮して一息で下着を取り去った。

 ポイ、とベッドから落ちていくトランクス。

 

 プリンプリンは物凄く幼いころに仲のいい四人組で水浴びした時のことを思い出した。

 男女の境もなく、お風呂ではだかんぼうたちをシャワーでまとめて洗ってくれた養父。

 すでに高齢だったから萎びていたし、またボンボンたちも子どもだったから記憶にないほど目立たなかった。

 

 それが時を経て、こうなるんだ。

 熱い頬を手で抑えつつプリンプリンは人体の神秘を前に畏怖すら覚えた。

 

 ボンボンはというと、プリンプリンのものを先に見たからか隠そうにも隠せないようだった。

 

「えっと、あんまり見ていいモンじゃないよ」

 

 言われてプリンプリンは顔をあげる。

 

「……はっ⁉︎ ご、ごめんなさい」

「いやいいけど。……普段はもう少し落ち着いてるからね?

これは、不可抗力だから。きみにあんなことされたせい」

「辛そう」

「まったくだ」

 

 ボンボンは白い髪をかきあげると、盛大にため息をついた。

 異性の分身を目の当たりにしてオロオロしていたら抱き寄せられる。

 まだプリンプリンはショーツを履いているものの、ほぼほぼ裸で抱き合うなんて覚悟できたはずなのに緊張する。

 言葉に詰まる彼女の背に手を添えて、ボンボンは優しくなだめてくれた。

 

「……しょうがないなぁ。変なところで大胆で、でも奥手で。

昔からドキドキさせられっぱなし」

 

 子どものころから知っているのに、この人の体がこんなに熱いだなんて初めて知った。

 あんまり温かいからプリンプリンはつい離れがたくなる。

 だからこそ不安がよぎった。

 

「ボンボン。あなたもすぐにどこかへ出かけてしまうから、わたし、いつもハラハラさせられるの」

「でも必ず帰ってくるじゃない」

「これからもそうだって、約束してくれる?」

 

 問いかけにボンボンは碧い目を瞬かせる。

 だがプリンプリンが何かに怯えているとわかると、すぐに真剣なまなざしで、

 

「誓うよ」

 

 と力強く答えてくれた。

 式を挙げた日と同じく唇を重ねる。

 ゆっくりとシーツへ倒れ込み、互いの身を確かめ合う。

 くすぶっていた火が再び燃え上がるのに時間はかからなかった。

 ボンボンの手によってプリンプリンの聖域を覆っていたショーツもスルリと脱がされる。

 

「プリンプリン。ちょっと下がるよ」

 

 ボンボンが顔を上げた。

 すでにトロンとした目つきのプリンプリンは、彼の濡れた口が動くのを見上げる。

 

「あの、絶対にキズつけたくないから。

……おれ、見ないと変なトコ引っかいちゃっそうで」

 

 プリンプリンはコクリと静かに了承した。

 そんなに大事に扱おうとしてくれているなら、とわずかに脚を開ける。

 ボンボンがお腹のあたりにキスをして、そっと蜜口を覗いた。

 

「大丈夫。キレイだよ。

……触るよ?」

 

 いいわ、とだけプリンプリンは言った。

 ボンボンの手が自分の最も繊細な箇所に伸ばされるのを肌で感じる。

 粘ついた水音で、これまで大事に大事に溶かされていったのだと改めてわかった。

 

「プリンプリン、おれ、女の子のこういうところを触るの初めてだから。

……痛くない?」

 

 プリンプリンはン、と甘い声まじりに答える。 

 

「わたしも、初めてだからわからない……。でも、痛くない」

「そっか。――ちょっと、ココ、触るよ?」

 

 指先で何かをツンと突かれ、そこからお腹までくすぐったさがせりあがってきた。

 

「……っ!?」

「大丈夫そう?」

「え、ええっと……ナンだかゾワっときちゃった……」

「そういうところだ、って。無理そうならやめるけど」

 

 まだ腰のあたりに違和感があったが不快なものではない。

 両脚の間から心配そうに窺いをたてるボンボンへ、プリンプリンは言う。

 

「もう少し頑張ってみる」

「ありがとう」

 

 そのまま体を彼へ預け、初めての感覚に身を委ねた。

 強く擦られているワケでもないのに一点がカッと熱くなり、窮屈さを覚える。

 堪えられない声が小刻みに漏れて恥ずかしかった。

 

「……ちょっと、痛かったらすぐに言ってくれ」

 

 ボンボンの声がわずかに低くなり、震えている。

 強めに引っ張られて、熱を帯びた箇所が外気へ直に触れた。

 空気の流れすら刺激になりうる。感覚が鋭敏になり、腰が引けた。

 くすぐられるような手つきが妙にじれったい。

 

「ン、ん……ぅ」

 

 じわり、と甘い匂いがひろがる。

 目の奥がチカチカする。

 ちょっとだけ強くピン、と弾かれると糸を通したようにお腹が持ち上がった。

 勝手に腹筋が波打ち、脚のあいだで生温かい感触が伝うのがわかる。

 

「……リン、プリンプリン?」

 

 何度か呼びかけられても気づかないほど、頭から一直線にビリビリと痺れが走っていた。

 

「……ん、なに?」

 

 尋ねる声も枯れている。

 ボンボンが『ああ……』とプリンプリンの惚けた顔を覗き込んできた。

 

「今の、嫌ではなかった?」

 

 心なしか嬉しそうなのは何でだろう。

 プリンプリンが首肯で返すと気恥ずかしそうに笑われた。

 

「凄く濡れてるし、これならもう大丈夫かな?」

 

 生理的な反応を口にされると、プリンプリンもさすがに両肩をきゅうと寄せ合うしかない。

 

「何が……?」

「えーと。……指、入るかなァ、って……」

 

 それを聞いてプリンプリンはお腹にキュッと力が入った。

 最終的に何が挿入るかは知っている。

 先に経験した女の子たちの話を聞いていたから、大体の手順や、先ほど頭が真っ白になってしまった意味も。

 早熟な娘から失敗談も聞いたから、ボンボンが焦らしているのかというほど慣らしてくれているのもわかる。

 普段はあんなにせっかちなのに。

 プリンプリンは同じく赤面しているボンボンに言った。

 

「……うん。大丈夫」

「ほんと?」

「本当に無理だと思ったら、あなたのことつねるわね」

「そうしてくれると助かる」

 

 ボンボンがキリッとした顔で言うから、プリンプリンは反対に緊張が抜ける。

 一つ一つ優しくされるたびに、

 

 この人はわたしを傷つけないんだな。

 それでも、この人はわたしを求めているんだな。

 この人は……わたしを愛しているんだな。

 

 と実感できるから。

 そして自分の中でも、

 

 この人でよかった。

 この人が好き。

 

 という気持ちが大きくなっていく。

 

 昔はこういうことをする大人は、不潔だななんて思っていたこともある。

 マイホームやワットが熱いのは微笑ましいけど、子どもの前で控えないのかな? と感じたことも。

 でも口づけたり触れ合ったりするのは自然なんだと今ならわかる。

 ただ人前であんな大っぴらにキスしあうのは無理かなあ……とプリンプリンは例の二人を思い浮かべた。

 

 体のナカに何か細いものが挿入ってくる。

 細いと言っても、自分の指よりは筋張った指。

 入り口付近で擦られてビクンと背を震わせた。

 

「……苦しい?」

 

 プリンプリンの様子を碧の瞳がじっとりと見つめている。

 

「チョットだけ」

「もう少し奥まで行くよ」

 

 ズ、と濡れた音とともにお腹の圧迫感が強まる。

 ぎゅうとシーツを握り締め、息を深く吸った。

 ゆっくりと出し入れされるたび、内側から燻られる感覚に汗がにじむ。

 熱い蜜が肌を伝うのがわかった。

 

「ァ、指……増やしてもいい?」

 

 もう一本の指が綴じめのフチをなぞっている。

 そのわずかな動きですら水音を立てるのがプリンプリンは恥ずかしくて一瞬だけ無言になった。

 だが胸を押さえながらうなずき、迎え入れる。

 蜜口が引っ張られるように感じられた。

 

「ちょっと、まだキツい、な」

 

 入り口付近でじわじわと慣らされ、わずかに指を開いたりされると自分のナカに人の手が挿入っている実感が湧く。

 見下ろした先のボンボンの表情が真剣そのものだからまだ頑張れる。

 やがて指二本がずるりと奥まで挿入るほど慣らされ、圧迫感だけでなく背に甘い痺れも感じられるほどになった時。

 

「――挿入るかな?」

 

 とボンボンが聞いてきた。何が、とは言わなかったが勘づいた。

 本当に、結ばれたいと。繋がりたいと。

 ボンボンに視線を落とすと、まっすぐにこちらを見てくれている。

 熱く潤んだ瞳でプリンプリンは見つめ返した。

 

「こういうことについてはわからない、けれど。

あなたが優しく時間をかけてくれたのは、わかっているわ。今夜もことだけでなくて、これまでも。

本当はせっかちなのに、待ってくれたんだと知っているから……」

 

 不規則な息の中、それでもハッキリと言う。

 

「あなたを、愛している。

あなたと一つになりたい」

 

 ボンボンが泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔でうなずいた。

 それから、ベッドのそばに落ちているズボンからゴソゴソと何かを取り出している。

 

「あった。……いつそうなってもいいように、持っていただけだからね?」

 

 気まずそうな笑みで見せてきたのはゴム。

 プリンプリンも少し起き上がって、ベッド脇のポーチに手を伸ばす。

 照れながら差し出した。

 

「お母さんが『持っていけ』って……」

 

 プリンプリンが同じものを持っていたことにボンボンの目が点になる。

 

「予備があったほうが心強いよ、なっ……あと、あとは…………」

 

 ボンボンはさらに室内をさまようと、シャワールームからタオルを持ってきた。

 

「敷いとこう……初めてだと出血するかも、って。

アッ、でもさァッ、絶対じゃないんだって! だから念のため」

「ボンボン、たくさん勉強したのねえ」

「……それ、褒めてる?」

「もちろんよ」

 

 プリンプリンは汗で頬に張りついた髪を耳にかける。

 その指先をボンボンが目で追ったと思えば、体を傾け、しっとりとした薔薇色の頬へキスをしてきた。

 そのまま唇へ、首筋へ、鎖骨……心の臓。

 再度ベッドへ沈むとボンボンがゴムの袋を破る。

 わりと慣れた手つきで分身に装着したので、プリンプリンは『あら』と口に出てしまった。

 

「ボンボン、使ったことあるの?」

 

 尋ねたらボンボンが赤い顔で、

 

「処理のたんびに掃除するの、大変だろ……」

 

 と教えてくれた。

 疑うワケではないが、他の女性の影がないとわかるとプリンプリンはホッとしてしまう。

 プリンプリンが落ち着くのを見計らってからボンボンがそうっと手で蜜口に触れてきた。

 

「プリンプリン、ちょっと、大丈夫か指でもう少し見るよ」

「はい」

 

 ずちゅ、と濡れた綴じめはすんなり彼の指を招き入れる。

 今度は先ほどよりもナカで蠢くから、思わず声が漏れる。

 

「あ、ぅン、ア……」

 

 普段とは違う鼻にかかった声が、自分ではないみたいだ。

 すこしナカを押し上げるようにされると、ビリ、と一際つよい疼きを覚えた。

 

「あ、ココ触るとキュウって……濡れてきた」

 

 ボンボンがそんなことを言うので、プリンプリンはつい彼の髪を一房つかんで引っ張ってしまう。

 

「⁉︎ なに?」

「イヤらしいこと言うのはやめて」

「え、さっきのはただの感想……」

「いいから。……続けて……」

 

 プリンプリンがボンボンの頭を撫でると『へへ』と小さく笑われた。

 彼はよいしょ、と背を伸ばし、碧の瞳で見下ろしてくる。

 暗闇の中でもキラキラと輝く濡れた瞳。これから大人のやりとりをするなんて、信じられないほど澄んでいる。

 ボンボンはプリンプリンの頬に手を添え、顔を近づけてきた。

 

「ね、プリンプリン。……挿れるよ……」

 

 乾いた声。

 背がゾクリと粟立つとともに、蜜口に分身があてがわれる。

 指とは比べものにならない質量が入口を押し広げてゆく。

 

「……いッ……」

 

 胎内を刺し貫かれるような痛み。

 ふう、ふう、と短く息をするとすぐそばでボンボンが心配そうなまなざしを向けてくる。

 

「ゆっくりなら……まだ……」

 

 息も絶え絶えに伝えればボンボンにうなずかれた。

 ノロノロと膣内を進む分身が内壁を引っ張り上げ、プリンプリンの腹を圧迫する。

 

「プリンプリン、あとすこし。

――いったん止める?」

 

 ボンボンも四方から締めつけられ、苦しそうにしていた。

 揺れるまなざしを受けてプリンプリンはその頬に触れる。汗ですべっても、何度も。

  

「いいえ。……もうちょっとだから……」

 

 しわがれた声で促すと唇を重ねられた。

 息が上手くできないが、そのぶん痛みも鈍くなる。熱い舌。

 銀の糸を引いて唇を離されたら、息を吸い込んだ時のお腹へズンと太い杭を打たれたような衝撃を覚える。

 

「……ン。ぜんぶ、はいった」

 

 ボンボンが肩で息をしていた。

 その背に腕を回し、再び呼吸に集中する。お腹で彼のモノがドクドクと脈打つのが伝わってきた。

 肉体で結ばれるとは、もっとロマンチックなことだと思っていた。

 でも実際はどうしようもなく生々しい肉体同士を文字どおり縫いつけあうような感覚だった。

 

「……ァ」

 

 やっと声を絞り出せば振動が全身に響く。

 しばらくボンボンはプリンプリンを抱きしめ、頬や額にキスを送るばかりだった。

 足の間を、何かが伝っている。蜜とも白濁とした精とも違うもの。

 

「痛い……?」

 

 ボンボンにはおそらく鮮血が見えているのだろう。

 おそるおそる問いかけられて、プリンプリンは一言だけ。

 

「とっても」

「……ごめん」

 

 申し訳なさそうにしながら、濡れた碧い瞳には別の色が混じっている。

 プリンプリンは彼の濡れた髪をそっとかきあげて、その表情をじっと見た。荒い息が交差する。

 

「……プリンプリン……おれ、ひどいこと言うようだけど……」

 

 甘えた口調だが声はいつもより枯れて低い。

 触れるくらい近く唇を耳もとへ寄せられた。

 

「……動いても、いい……?」

 

 体じゅうが震えている。

 相手の仕草だけでなく声すら振動となって身も心も共鳴するように。

 答える代わりに背に回した両腕に力を込めると、繋がった箇所がまたジリジリと熱を持つ。

 ボンボンは決して、力任せにうがつような真似はしなかった。だが故に腹を火かき棒でぐるぐる回されているような灼熱を感じる。

 

 ほぼ悲鳴に近い声が喉から引っきりなしにこぼれた。

 プリンプリンに快感はまだない。だが、にじんだ視界の中でボンボンが掠れた声をあげながら、こちらを見つめていた。

 うわごとのように、すきだ、あいしてる、と繰り返している。

 涙が彼の頬にひとすじ流れるのを見て、痛みのただ中ですらプリンプリンはどこか歓喜を覚えた。

 

 こんな無防備なボンボンを知っているのは、世界で自分だけなんだ、と。

 

 やがて彼の背がひときわ震え上がって、繋がった箇所がけいれんした時にフ、とその身が倒れ込んできた。

 プリンプリンの柔らかい胸の上、ボンボンは瞳だけでこちらを見ている。

 

 そして自分ひとりだけで果てたとわかり、バツが悪そうに笑った。

 

 昔から柔らかで綿毛のような髪が胸元をくすぐっている。プリンプリンはボンボンをぎゅうと抱き締めると、しばらく彼を離さなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。