甘やかな褒賞(トレント)
─────:
サディア帝国母港。
地中海の平穏を守り続ける為に日夜、指揮官とKAN-SENたちが尽力している─────のだが、
「疲れた」
指揮官の執務室のドアが静かに開き、トレントが顔を覗かせた。彼女の手には湯気の立つマグカップが二つ、危なっかしいバランスで載ったトレイを持っている。
「お疲れ様です、指揮官。コーヒーをお持ちしましたよ〜」
デスクの上にカップを置こうとした瞬間、つま先がコードに引っかかりトレイが傾く。咄嗟に片手で押さえたものの、もう片方のカップから中身が数滴、書類の端に落ちた。
「あっ……ごめんなさい、大丈夫ですか?お仕事の邪魔をしちゃいましたね」
慌ててハンカチを取り出し、こぼれた跡をぽんぽんと拭きながら、困ったように眉を下げて笑う。それから、ふと指揮官の顔をまじまじと見つめた。
「……あら。目の下にクマができてますよ?ちゃんと寝てますか?」
椅子の横にしゃがみ込み、下から指揮官を見上げる。ミニスカートの裾が太ももの上で際どく揺れ、サディア仕込みの豊満な胸が軍服のボタンを軋ませているが、本人はまるで気にしていない様子だった。
「今日はもうお仕事切り上げて、少し休んだほうがいいんじゃないかしら。トレントが膝枕してあげましょうか?」
「トレント……」
自分の名前が呼ばれた途端に、ぱあっと表情が明るくなった。青紫の髪がさらりと揺れて、右目を隠す前髪の隙間から嬉しそうな瞳が覗く。
「はい、なんですか?指揮官」
しゃがんだまま小首を傾げる。その拍子に、カップを支える手が危うく滑りかけたが、なんとか堪えた。トレント本人はまるで気づいていない。
なぜ、カップを置かないのだろうか。
「そんな切なそうな声で呼ぶなんて、よっぽどお疲れなんですね。甘えたい気分ですか?」
ふふ、と柔らかく笑って、ようやくカップを置いて空いた手をそっと指揮官へ伸ばす。指先が頬に触れるか触れないかの距離で止まり、撫でるようにゆっくりと輪郭をなぞっていく。
「いいんですよ、私には遠慮しなくて。あなたの奥さんなんですから」
そう言って立ち上がると、カップの一つを指揮官に手渡しながら、自分はデスクに軽く腰を預けた。スカートの布地が張り詰め、太もものラインがくっきりと浮かび上がる。
「ね、今日はもう少しだけ頑張って、終わったら一緒にお茶にしませんか?トレント、指揮官の好きなもの作って待ってますから」
「ありがとう、トレント。……はぁ、最近任務詰めでまともに休めてないんだよ」
コーヒーを飲みながら、指揮官はため息をこぼす。そんな指揮官をじっと見つめながら、トレントの眉がだんだん下がっていく。唇がへの字に曲がり、いかにも心配そうな顔だ。
「やっぱり……そうですよね。最近、朝から晩までお部屋にこもりっきりですもの」
ため息を一つつきデスクから腰を上げると、ぽすんと指揮官の背後に回り込んだ。両手が肩に乗り、ぎこちない手つきで揉み始める。
「んっ……こう、ですか?ザラに聞いたことがあるんですけど、肩をほぐすと楽になるって……」
力加減がまるで分かっていないのか、やたら強く押したり妙に優しくさすったりを繰り返している。
指揮官が振り向こうとすると、背中にトレントの柔らかな体が密着しているのが否応なく伝わってくる。ハイソックスに包まれた脚が視界の端でちらつき、甘い香りが鼻先をくすぐった。
「あの、もし良かったら……今日のお仕事、残りは私が代わりにやっておきましょうか?指揮官の判断が必要なところだけ後で確認してもらえれば」
指揮官の耳元に顔を寄せ、囁くように言う。吐息が首筋をかすめる。
「たまには指揮官も、何も考えずにぼーっとする時間があっていいと思うんです。ね?」
「……いや、気持ちだけでも充分だよ、トレント」
普段であれば、トレントしかり、他のKAN-SENしかり、結婚している彼女らがこうして密着すればサディアの人間となって数年経った指揮官であれば、あれよあれよ、と食事の誘いかそのまま仮眠室にでも誘うものだが。
今日の指揮官は疲れた表情で、トレントの労りを受け止めていた。
いつもと違う反応に、トレントは一瞬きょとんとした。背中から伝わる指揮官の体温は確かにそこにあるのに、どこか遠い。
しばらくそうしていた、と思えば指揮官の肩から手を離し、ゆっくりと前に回り込んで正面から指揮官の顔を見つめた。疲労の色が濃い目元、少し痩せただろう頬の輪郭。結婚してから何度も見てきた顔なのに、今日はどこか違って見えた。
「……指揮官」
指揮官を呼ぶだけで、それ以外は何も言わず、そっと指揮官の頭を両腕で包み込むように抱き寄せる。トレントの胸元に指揮官の顔が埋まり、軍服越しに心臓の鼓動が伝わった。
「頑張り屋さんなところも大好きですけど……無理しすぎて壊れちゃったら、私、泣いちゃいますよ?」
髪を梳くように、ゆっくりと指を通す。母港の遠くから波の音がかすかに聞こえていた。
「今日はもう、ペンを置いてください。残りは明日でも大丈夫。私が隣にいますから、安心して休んでくださいね」
トレントの声は普段の甘やかすような調子ではなく、静かで、けれど芯のある響きを帯びていた。窓から差し込む午後の陽光が、抱き合う二人の影を長く床に伸ばしている。
「……そう、だな。明日、ヴェネトとかに頼んで手伝ってもらうか。トレントも良いか?」
その言葉に、ほっとしたようにトレントの肩の力が抜けた。
「もちろんです。ヴェネト様にも私からお願いしておきますね」
少し間を置いて、いたずらっぽく微笑んだ。
「でも、その代わり……今日はもう完全にお休みの日、ですからね? ご飯もちゃんと食べてもらいますし、お風呂にも入ってもらいますし」
指揮官の手からペンをそっと抜き取ってデスクに置くと、その手を両手で包むように握った。体温を確かめるみたいに、きゅっと力を込める。
トレントの指先は少しひんやりとしていたが、握られた掌の内側には確かな温もりがあった。壁掛け時計の針は午後三時を少し過ぎたところを指しており、今日という日の残り時間をたっぷりと示していた。
「んん……っ。身体もガチガチだ……」
背と肩を伸ばしつつ、ゴリゴリと音がするのに苦笑する。そんな音に目を丸くした後、心底痛ましそうにトレントはその優しげな顔をしかめた。
「そんな音がするなんて……もう限界じゃないですか」
繋いだ手はそのままに、くるりと指揮官の正面に回り込む。そして両手を肩に置くと、今度はさっきよりも丁寧に、円を描くように揉みほぐしていく。
「ここ、ですか? ん……すごく硬い。ずっと同じ姿勢で座ってたんですね」
ぐっと親指を首の付け根に押し込むと、自分でも驚くほど凝り固まった筋肉にぶつかったらしく、小さく息を呑んだ。
さて、そんな風に真剣な顔で肩をほぐすトレントだったが、前屈みになるたびに軍服の隙間から谷間が惜しげもなく覗いている。本人にその自覚はまるでない。
「……よし、決めました。今日は私が指揮官をお世話する日にします。ご飯も作るし、お風呂も沸かすし、寝るまでずっとそばにいます」
ぱん、と両手を打って宣言する。
「指揮官はなーんにもしなくていい日です。たまには甘えてくださいね?」
「じゃあ、今日は久しぶりにトレントに甘えちゃおうか。マッサージとかしてもらってもいいか?」
「甘える」という言葉に、花が咲いたように顔がほころんだ。けれどすぐに、ふるふると首を横に振った。
「マッサージだけじゃ足りません。全部やります」
そう宣言したと思えば、トレントはてきぱきとデスクの書類を片付けていき、指揮官の背を押して執務室に隣接する仮眠室へと押し込んでいった。
指揮官を押し込みながら仮眠室へと入って早々に、トレントは上着を脱いでブラウスの袖をまくり上げていく。腕まくりの動作で、むちりとした二の腕が露わになる。
「まずはベッドにうつ伏せで寝てもらって……背中からほぐしていきますね。脚もパンパンでしょうし、足の裏もやりますよ」
仮眠用のベッドのシーツを手早く整えながら振り返った。
「あ、でもその前に。お腹空いてませんか?何か軽く食べてからのほうが効きがいいって聞きますし」
トレントは甲斐甲斐しく動き回りながらも、ちらちらと指揮官の方を窺っていた。頼ってもらえたことが余程嬉しいのか、口元がずっと緩んでいる。
「そうか?なら、クッキーとかなかったか?執務室の棚にあるはずだ」
ぱっと目を輝かせて、執務室へ小走りで戻っていった。
数分後、クッキーの缶と水差しを抱えて戻ってきたトレント。しかし片足をドア枠にぶつけたらしく、缶を危うく落としかけていた。何事もなかったかのようにベッド脇のサイドテーブルに並べていく。
「ありましたよ〜、棚の一番上。ふふ、ちゃんとストックしてあるんですね」
缶の蓋を開けて数枚取り出すと、一枚を指揮官の口元へ差し出した。
「はい、あーん」
仮眠用のベッドの縁に膝をつき、自然と指揮官に覆いかぶさるような姿勢になっている。ブラウスの襟元がたわみ、ブラジャーの刺繍がうっすら透けて見えていた。
トレント自身はクッキーに気を取られており、自分の格好など眼中にない。その無防備さが、かえって生々しい色気を漂わせている。
「……ん、ありがとう」
クッキーを食べながら、指揮官の視線は当たり前のようにトレントの胸元へと向けられたここ最近は激務と書類仕事ばかり愛する妻たちとは、ここ1週間はご無沙汰。と、なればこうしてトレントに言われて今日は完全に休みとなれば……。
クッキーを食べる指揮官の視線がどこに向いているか、まるで気付いていない。もう一枚取って差し出そうと身を乗り出した拍子に、胸の谷間が指揮官の目の前でたぷんと揺れた。
「もう少し食べますか?まだ残ってますよ」
1週間。
1週間である。サディアのKAN-SENたち、愛する妻たちを、前世どころか今世でも1人と付き合うの誰しもに羨ましがられるだろう美女、美少女である彼女らを、自分だけ味わえる妻たちを、1週間も味わっていない。
そんな中で仮眠室という密室、二人きり、しかも「今日は全部お世話します」と宣言した妻が目の前にいる。疲労で鈍っていたはずの下腹に、じわりと熱が戻り始めても無理はなかった。
ふと、指揮官の目つきが変わったことに気づいたのか、小首をかしげた。
「……? どうしました? 顔、赤くないですか?」
トレントのひんやりした手のひらが、ぺたりと指揮官の額に当てられた。前屈みの姿勢のまま、無自覚に胸を指揮官の顔へと近づけている。
「血行が良くなってきたんじゃないか?こうして横になって、甘味を摂る。それだけでもここ1週間のどの時間よりも上等だろうし」
額に当てた手をそのまま滑らせて、こめかみを指の腹でくるくると撫でた。
「1週間……そうですよね、ずっと働き詰めでしたもの」
少し考え込むような顔をして、それからふわりと笑った。
「じゃあ今日は、血行を良くするマッサージにしましょうか。背中だけじゃなくて、全身やったほうがいいですし」
「全身」という単語が、この密室においてどれほどの意味を帯びるか。トレントにその自覚はない。ブラウスの袖をさらに肘までまくり上げてやる気満々のその姿は、どう見てもこれから施術を始めようとする女のそれでしかなかった。
「じゃあ、服を脱いでもらえますか?上半身からほぐしていきますね」
サイドテーブルからオイルの小瓶を取ってきたらしく、手のひらにとろりと垂らしている。準備がいいのか悪いのか。
「力加減、言ってくださいね。強すぎたり弱すぎたりしたら教えてください」
ベッド脇に正座して、両手をこすり合わせてオイルを温めながら、にこにこと指揮官を見上げた。
「ああ、よろしく頼むよ」
そう言って、指揮官は上着とシャツを脱いでいく。脱いだモノを雑にもう片方の仮眠用ベッドへと放る指揮官のしっかりと鍛えられた身体が露わになれば、それを見ていたトレントは僅かに目を細め唇を舐めた本人は無意識なのだろう。
指揮官が1週間もKAN-SENたちとまともに触れ合えていない、ということはつまりKAN-SENたち側も触れ合えないことへのフラストレーションが溜まっているのだから。
オイルで濡れた手のひらを膝の上で一度握り、開き、深呼吸をひとつ。それから指揮官の背後に回った。
「じゃあ、失礼しますね」
温めたオイルを肩甲骨の間に垂らす。とろりとした液体が肌を伝い落ちる感触。そして、掌全体を使ってゆっくりと背筋を上から下へ撫で下ろす。
トレントの手は小さいが柔らかく、オイルの滑りも相まって指揮官の強張った筋肉の上をするすると滑っていく。だが問題は手ではなく、施術する側の体勢だった。背後から手を回せば、自然と胸が指揮官の背に押し付けられる。ブラウス越しとはいえ、その柔さは十分すぎるほど伝わっていた。
「んっ……ここも硬いですね。肩から腰にかけて全部繋がっちゃってます」
力を入れるために体重をかけると、むにゅ、と背中で潰れる感触がはっきりとした。
トレントは施術に集中しているのか、背中の密着具合に無頓着だった。腰のあたりまで手が降りてくると、脇腹を掌で包むようにしてほぐしにかかる。指先が肋骨の下をなぞるたび、くすぐったさとも別の何かともつかない刺激が走った。
指揮官はぐつぐつ、と欲求が鎌首をもたげ始めていたが今はマッサージを堪能する為に気にせずトレントに身を委ねていく。腰から脇腹へ、そして背骨に沿って指を這わせていく。オイルが体温で温まり、ぬるぬるとした感触が背中全体に広がっていた。
「だいぶほぐれてきましたね……最初は石みたいだったのに」
ふふ、と吐息混じりに笑いながら、今度は肩を重点的に揉みほぐす。親指が首の付け根のツボをぐっと押し込んだ。
施術は確かに上手かった。妹に叩き込まれたのか、それとも独学か、力の入れどころを心得ている。だからこそ指揮官の身体は正直に反応し、強張っていた筋がゆるゆるとほどけていくのだが、それと同時に背後で押し潰される胸の柔さもまた、ゆるゆると指揮官の理性をほどきにかかっていた。
「はい、背中はこんなものですかね。次は腕と、脚もやりますね」
オイルを足しながら、ふと指揮官の肩越しに顔を出した。目が合う。
「……気持ちいいですか?」
少し上気した頬で、はにかむように聞いた。前髪が乱れて、普段隠れている右目がほんの少しだけ見えている。
「身体がほぐれてくよトレント」
その一言に、目尻がとろんと下がった。
「よかったぁ……嬉しい」
ご褒美をもらった子供のような顔で、いそいそと指揮官の左腕を取る。オイルを追加して、肘から手首にかけて掌で包みながらゆっくりと揉み上げた。
「指揮官の手、こんなに大きかったんですね」
ぽつりとこぼした言葉には、1週間ぶりに触れた夫の体への実感が滲んでいた。揉みながら指の一本一本を確かめるように、親指で指の間をなぞっていく。
「はい、左腕おしまい。右腕もやりますね……ちょっと体の向き変えてもらっていいですか?」
指揮官が仰向けになるよう促すと、今度は正面から跨るような形で腕に手を伸ばした。重力に従ってブラウスの中身がたゆんと垂れ下がり、ベッドに横たわる指揮官の顔のすぐ上で揺れている。跨った太ももが腕の両脇にあり、ミニスカートの中の白い肌が惜しげもなく晒されていた。
本人はオイルを馴染ませることに集中しており、自分がどんな体勢でいるかまるで気にしていない。
「力抜いてくださいねー……」
「……ああ、頼むよ」
右腕を持ち上げ、肘の内側から指先に向かって丁寧に揉み上げていく。手首まで辿り着くと、そのまま掌を上にして指を一本ずつ包み込んでいく。
「ここ、凝ってますね……ペンの持ちすぎかしら」
ぐ、と少し強めに押しながら、小首を傾げる。垂れた青紫の髪が指揮官の鎖骨あたりにさらりとかかった。
オイルで滑る指が指の間を絡め取るように揉むその動作は、マッサージというよりも手を愛撫しているようだった。跨った太ももの体温が腕を挟む形でじかに伝わり、見上げれば揺れる胸と上気した顔。1週間溜まった欲求はとっくに臨界点に近いが、トレントはあくまで「お世話」のつもりで指を動かしている。
「はい、右腕もおしまい」
ふぅ、と一息ついて、次は脚ですね、と言いかけたところで。ふと指揮官の顔を間近で見下ろす形になり、動きが止まった。互いの吐息が届くほどの距離。
潤んだ目で指揮官を見つめたまま、数秒、瞬きすら忘れている。
「……指揮官」
名前を呼んだきり、続きの言葉が出てこない。唇がわずかに開いたまま、オイルの匂いとトレント自身の甘い香りが混じって指揮官を包んでいた。
「ん?どうしたトレント」
指揮官の声で、ようやく我に返ったように瞬きした。けれど、離れない。そのまま指揮官の胸に手をついた姿勢で、唇を舐めてから。
「……脚のマッサージ、なんですけど」
視線が指揮官の目から、ゆっくりと下へ降りていく。首筋、胸、腹筋。1週間ぶりに間近で見る夫の身体を、確かめるように。
「このまま、続けていいですか」
声が半音低くなっていた。いつもの包容力あるお姉さんの声ではなく、熱を孕んだ、少し掠れた響き。問いかけの形をしているが、その手はすでに指揮官の太ももへと伸びている。オイルの残った掌が内腿に触れた瞬間、びくりと指が跳ねたのは、どちらの側だったか。
「1週間、ずっと我慢してたの……私だけじゃない、ですよね?」
跨ったまま、スカートの裾が乱れて太ももの奥まで露わになっていることにも、もう構わない。トレントは指揮官の答えを待つように、けれど手だけは止めないまま、太ももの外側をじわりと揉み始めた。
「ズボンもそのままだから、脱がなきゃできないぞ……?」
そう、あくまで脱いだのは上だけ。ズボンはまだ履いたままである。
一瞬、きょとんとした顔をした。それから、あ、と小さく声を漏らして。
「そう、ですよね。ズボン、脱がなきゃ……」
なぜかそこで動きを止めた。自分で脱がすべきか、それとも指揮官に任せるべきか。判断がつかないらしく、太ももに置いた手がそのまま固まっている。
普段は包容力の塊のような女が、こういう場面になると途端に初々しさを見せる。結婚しているのだから今更だろうに、1週間のご無沙汰が彼女の中の何かをリセットしてしまったらしい指揮官は彼女を後押しするようにうつ伏せから、仰向けへと向きを変える。
もじもじと視線を泳がせてから、意を決したように指揮官のベルトに手をかけた。が、手が滑ってバックルの金具をカチャカチャと空振りした。
「え、えっと……ちょっと、待ってくださいね」
三度目の挑戦でようやくベルトを外し、ズボンのホックに指をかける。顔を真っ赤にしながら、それでも手は止めなかった。
「マッサージ、ですから。脚も、ちゃんとほぐさないと……」
自分に言い聞かせるような呟きと共に、ジッパーを下ろす音が仮眠室に響いた。
そうして脱がせば下着姿となれば、張り詰めてテントを張った指揮官の下着が出てきてトレントは途端に息が荒くなり始めた。
息を呑む音が、静かな仮眠室にはっきりと響いた。
「……っ」
下着の布地を押し上げるその形を凝視したまま、喉がこくりと鳴る。オイルで光る指先が宙で止まり、それからゆっくりと太ももの内側に降りた。
「こ、ここも……ほぐさなきゃ、ですよね……」
もはやマッサージという建前は崩壊しかけていた。トレント自身もそれを分かっているのか、言い訳がましい呟きは尻すぼみに消えていく。内腿を揉む指が徐々に上へ這い上がり、下着の際で止まる。
潤んだ瞳で指揮官を見下ろしながら、唇を震わせた。
「……触っても、いいですか」
1週間。この1週間、ずっと我慢していた。
それを埋め合わせるような、切実な声だった。オイルと汗で湿った掌が、返事を待つように指揮官の下着の端で小さく震えている。
「トレント、キミに任せるよ」
許しを得た瞬間、震えていた指が動いた。下着の縁に指をかけて、ゆっくりと引き下ろす。
解放されたそれを見た途端、息が詰まった。1週間ぶりに目にする夫の雄の象徴は、先端にうっすらと雫を滲ませて脈打っている。
「こんなに……なってたんですね」
独り言のように呟いて、両手で包むように触れた。オイルの残りと先走りが混ざり、ぬちゅ、と淫らな音を立てる。
トレントは跨った姿勢のまま、片手で根元を支え、もう片方の掌で先端をゆっくりと撫で回した。溢れる先走りを指に絡め、裏筋を伝わせて塗り広げていく。その手つきはぎこちないが、1週間分の渇望が指に宿っていた。
指揮官のモノは、腕と見間違う程に張り詰め怒張していた。
ゆっくりと手を上下させ始めると、溜まっていた先走りがとろりと糸を引く。根元から先端まで、片手では足りず両手で交互に扱き上げた。ぎこちなさはあるが、その分ひとつひとつの動作に力がこもっている。
「1週間……ずっと、こうだったんですか?」
問いかける声は掠れ、頬は紅潮しきっていた。答えを聞く前に、顔をゆっくりと下へ沈めていく。
青紫の長い髪がさらりと垂れ、ブラウスに包まれた豊満な胸が指揮官の視界で揺れた。トレントは跨っていた姿勢から腰をずらし、ベッドの端へと降りて指揮官の股間の前に顔を寄せる形になった。スカートは太ももの半ばまで捲れ上がったまま、直す気配もない。
鼻先が触れるほど近くで、熱い吐息を当てながら
「お口でも……ほぐしてあげますね」
そう言って、舌先をちろりと伸ばし、先端の雫を掬い取った。
「くっ……すまない……本当にこの一週間誰ともしてなくて……」
先端に舌を這わせたまま、上目遣いで指揮官を見た。
「謝らないでください。私も……同じだったんですから」
ちゅぷ、と音を立てて先端を口に含んだ。1週間分の飢えがそうさせたのか、遠慮のない深さまで一息に咥え込む。
温かく湿った口腔が怒張した先端を包み、舌が裏筋をねっとりと舐め上げていた。
「ん……んむ……」
頬を窪ませて吸い上げながら、ゆっくりと頭を上下させ始めた。ブラウスのボタンが胸元の圧力でぱつぱつに張り詰め、その隙間から白い谷間が覗いている。長い髪を片手でかき上げる仕草が、ひどく艶めかしかった。
じゅる、じゅぷ、と卑猥な水音が仮眠室を満たす。トレントは懸命に奉仕しながらも、時折口を離しては根元に舌を這わせ、また先端へ戻るという焦らすような動きも混ぜていた。その間も指揮官の太ももに添えた手は離さず、まるで逃がさないとでも言うように口を離すと、唾液の糸が唇と先端の間に伸びた。荒い息をつきながら、手で扱き続ける。
「もう……我慢しなくていいんですよ」
そう言ったトレントの瞳は完全に蕩けていた。奉仕する側のはずが、自分自身のスカートの中に手を差し入れ、もぞもぞと動いているのが見える。太ももを伝う光る筋が、彼女の状態を雄弁に物語っていた。
名残惜しそうにもう一度先端に口づけてから、身体を起こした。ブラウスの前を自ら開き、ブラジャーのホックを外す。たわわな胸が零れ落ち、薄桃色の先端がすでに硬く尖っている。
ブラウスを肩から落とし、ブラジャーも外してベッドの下に放り投げた。零れ出た胸は仰向けでも形を保ち、桜色の先端が天井を向いて震えている。
「私も……もう、限界なんです」
跨り直して、スカートの奥、下着をずらした。糸を引くほどに濡れた秘所が指揮官の怒張の上にぴたりと触れる。
「入れても……いいですか?」
腰をわずかに揺すりながら、先端を割れ目で挟むように擦りつけた。ぬちゅ、と溢れた蜜がオイルと混ざる音。懇願するような瞳が指揮官を真っ直ぐに見つめている。
仮眠室の狭いベッドの上で、二人の体液が混じり合い、オイルの光沢と愛液の湿りが互いの肌をてらてらと光らせていた。1週間という空白が、もはや言葉では埋められないところまで二人を追い詰めている。
トレントの内腿が小刻みに震え、今にも自分から腰を落としてしまいそうな衝動を、かろうじて指揮官の返事ひとつで堪えている状態だった。
「すっかりトレントもやる気満々じゃないか……これだと、明日も大変になりそうだ……せっかく我慢してたのに」
「明日も大変」という言葉に、恥ずかしさで顔を真っ赤にする。
「そ、それは……指揮官が1週間も放っておくから……」
ぷいっと視線を逸らしかけたが、すぐにまた指揮官の顔を見つめ直した。もう誤魔化す余裕などない。
「もう……我慢なんて、しなくていいって言ったのは指揮官ですよ」
返事を待ちきれず、トレントは腰をゆっくりと沈め始めた。先端が濡れそぼった入口を押し広げ、ずぶ、と音がするほどの深さまで一気に飲み込んでいく。
「あっ……ん、ぁ……っ」
背中が弓なりに反り、長い髪がふわりと宙に舞った。内壁がぎゅうぎゅうと締め付け、1週間ぶりの侵入を歓迎するように脈動している。根元まで収まると、がくがくと膝を震わせながら指揮官の胸に両手をついた。
「おっき……い……久しぶり、すぎて……」
涙の滲んだ目で見下ろしながら、それでも腰を動かそうと懸命に力を込めている。
「俺のせいに、されても、な」
1週間ぶりの女体に、指揮官の怒張がびくびくと歓喜に打ち震え、指揮官自体も思わず言葉が途切れる。
指揮官が言葉を途切れさせたのを見て、嬉しそうに唇の端を持ち上げた。
「あは……指揮官も、きもひ、いいんですね」
ゆっくりと腰を持ち上げ、再び沈める。ずちゅ、と結合部から淫靡な音が響き、引き抜かれる際に内壁が名残惜しげに吸い付いた。一度、二度、三度と繰り返すうちにリズムを掴んだのか、腰の動きが徐々に滑らかになっていく。
「んっ……あっ、ん……奥、当たって……」
自分の声に驚いたように口を手で塞ごうとしたが、すぐにやめた。代わりに指揮官の手を掴み、自分の腰へと導いていく。
「もっと……触って、ください。私のこと……」
導かれた指揮官の指がトレントの腰に触れた瞬間、びくんと身体が跳ねた。汗ばんだ肌は熱く、腰を振るたびに胸が上下に激しく揺れている。軍服のスカートは腰まで捲れ上がり、ハイソックスに包まれた脚が指揮官の身体の両脇で震えていた。仮眠室の安いベッドが軋む音と、二人の息遣いと水音だけが、夕暮れの執務室の向こうまで漏れ出しそうなほどに部屋を満たしている。
空いている指揮官の手は、激しく揺れる胸を掴む。
柔らかく張りがある。こうして掴み触れてるだけでも、指揮官の理性がごりごりと削られていくのを感じながら、腰を突き上げていく。
「ひゃっ……あっ!」
突き上げと同時に胸を掴まれ、甲高い声が上がった。腰の動きと指揮官の突き上げが噛み合い、奥の一番深いところを叩く。
「そこっ……だめ、奥、そんな……っ」
だめと言いながら、トレントの腰は逃げるどころか指揮官の動きに合わせて自分から打ちつけている。ぐちゅ、ぐちゅと結合部から溢れた蜜が二人の下腹部を濡らし、突き上げるたびにトレントの中がきゅうと締まった。胸を揉む指の間から柔肉が溢れ、汗ばんだ肌が指に吸い付く。
がくんと肘が折れ、指揮官の胸に倒れ込んだ。耳元で荒い吐息が漏れる。
「指揮官……もう、私……っ」
腰が小刻みに痙攣し始めていた。限界が近いのだと、その震えが伝えている。しがみつくように指揮官の首に腕を回し、唇が耳朶に触れた。
「トレント、しまる……」
それは指揮官も同じことだった。1週間ぶりの交合で指揮官の腰が震える。
その言葉を聞いて、嬉しさと快感が同時に込み上げたらしい。ぎゅっとしがみつく腕に力が入った。
「一緒に……一緒がいいです……っ」
トレントが腰を深く沈めた瞬間、内壁がうねるように絞り上げてきた。1週間分の飢餓が爆発するように、子宮口が指揮官の先端を吸い込もうとしている。ぐちゅぐちゅと響く水音はもはや止めようがなく、ベッドの軋みと重なって仮眠室を揺らしていた。
「あっ、あっ……もう、らめ……っ!」
首に回した腕が引き寄せ、唇を重ねてきた。舌が絡み、互いの喘ぎが口の中で溶け合う。腰が限界まで震えたかと思うと、びくびくと大きく跳ねて、そのまま動きが止まった。絶頂が全身を貫いている。
締め上げる内壁の痙攣が、容赦なく指揮官を追い立てていた。重ねた唇の奥で、トレントのくぐもった悲鳴が途切れなく震え続けている。
「っ、トレント……!射精す、射精るぞ……!」
絶頂の余韻で震える身体のまま、唇を離して叫んだ。
「にゃかに……中にくださいっ……!」
どくん、と脈打つように指揮官の怒張が限界を迎えた。一週間分の精が堰を切ったように噴き出し、トレントの最奥を白く灼いていく。
びゅる、びゅると何度も吐き出される熱に、絶頂直後の内壁が貪るように収縮を繰り返した。
「あっ……あぁ……あちゅい……いっぱい、れてる……」
びくん、びくんと小さな痙攣が断続的にトレントを襲い、注がれる精を一滴も逃すまいとするように腰を密着させたまま動かない。目尻から涙が零れ、半開きの唇から甘い喘ぎがこぼれ続けている。
やがて、最後の一滴が注ぎ終わる頃。トレントは糸の切れた人形のように指揮官の胸の上に崩れ落ちた。二人の荒い呼吸だけが仮眠室に残っている。
「はぁ、はぁ……」
しばらくの間、二人とも動けなかった。仮眠室の天井を見上げる指揮官の胸の上で、トレントは心臓の音に耳を澄ませるようにじっとしている。汗と体液でぐちゃぐちゃになったシーツの感触が、事の激しさを物語っていた。
ようやく顔を上げ、指揮官の頬に張り付いた髪をそっと指で払った。
「……ふふ、お疲れ様です、指揮官」
いつもの穏やかな笑みが戻りかけているが、まだ目元が赤く、声も少し掠れたままだった。
繋がったままの下半身から、とろりと白いものが溢れ出している。トレントはそれを気にする素振りもなく、指揮官の首元に顔を埋めた。
「……ねぇ、このまま少しだけこうしていてもいいですか。シャワー、あとでいいですよね」
甘えるような声。重巡洋艦の威厳など、とうにどこかへ消え去っている。ただの、夫に甘えたい女がそこにいた。
「……トレント」
だが、そんな事は知らないと言わんばかりに。指揮官の怒張は萎えることを知らず、トレントの中で跳ねた。
「悪いが、このまま付き合ってもらうぞ」
びくん、と中で跳ねた感触に、目を丸くする。
「え……うそ、まだ……?」
信じられないという顔で指揮官を見下ろしたが、すぐにその表情が蕩けた笑みに変わった。
「ふふ……知ってました。指揮官、一回じゃ終わらないですもんね」
萎えるどころかさらに硬さを増したそれを、トレントの中は敏感に感じ取っている。さっき注がれたばかりの精がぐちゅりと音を立て、結合部から泡立って溢れた。
指揮官の胸に手をついて、まだ震える脚に力を入れ直す。
「じゃあ……今度は、指揮官の番ですよ。好きにしてください」
挑発するように腰をくいっと回した。
「トレント……いけないな、そんな挑発の仕方、誰に教わったんだ?」
ぱちゅん、そんな音をたてて指揮官の腰が跳ねるぱちゅんと跳ね上げられた衝撃に、声が裏返った。
「ひあっ……!」
それでも指揮官の挑発には、精一杯の余裕を装って。
「誰にって……指揮官に決まってるじゃないですか……んぅっ」
言い返す間もなく二度目の突き上げが来た。さっきの交合で敏感になりきった身体は、もう抵抗する術を持たない。ぱん、ぱんと肉がぶつかる音に合わせて、中に残った精がかき混ぜられる水音が重なった。
「あ、あっ……さっきより、深……っ」
両腕で指揮官の肩にしがみつき、首を仰け反らせた。長い髪が汗で張り付き、喉元の白い肌が晒される。そこに指揮官が噛みつくように唇を寄せれば、ひっと息を呑んで身体が強張った。
身体の芯を貫かれるたび、トレントの中がきゅうきゅうと絡みついてくる。一回目で注がれた精が潤滑剤となって、さっきよりも深く、激しい律動が可能になっていた。ベッドのヘッドボードが壁を叩く音まで加わり、仮眠室はもはや獣の巣窟と化している。
明日のこととかを気にするつもりもなく、指揮官はトレントの喉元や首筋にこの仮眠室での痕を次々と残していく。
「やっ……痕、残っちゃ……んんっ!」
抗議しようとした口が喘ぎに飲まれた。吸い付かれる首筋から鎖骨にかけて、赤い痕が次々と咲いていく。明日、妹に見られたら言い訳のしようがない。だが、それが余計に身体を火照らせているのも事実だった。
ちゅう、と音を立てて吸い上げる指揮官に、トレントは首を竦めながらも逃げようとしない。むしろ無意識に首を差し出すように傾けている。腰を打ちつける律動は止まらず、ぱんっぱんっと肉のぶつかる音が途切れない。シーツはとうに剥がれ落ち、マットレスのスプリングが悲鳴じみた軋みを上げて、
涙目で指揮官を見下ろした。
「そんなにぃ……つけたら、明日……トリエステに……」
そこで言葉が切れた。奥を突かれたからだ。がくんと頭が落ち、舌足らずな声だけが残る。
「あ……トリエステに、なんて……言えば……」
「きっと怒られそうだな。でも、たまには一緒に怒られようか、トレント」
くすっと笑った。泣きそうな顔のまま笑うものだから、頬に涙の筋が残ったまま。
「一緒に怒られる……ふふ、それ、素敵ですね」
その笑みが合図だったかのように、トレントの中がまたきゅっと締まった。二回目で慣れた身体が、むしろ貪欲に指揮官を求め始めている。打ち付ける腰に合わせて自分からも迎えにいき、ぱんっぱんっと響く音はさらに激しさを増した。
「でも……んっ、怒られるの、嫌いじゃないの……困った、お姉さんですよね、私……あっ」
自嘲気味に笑いながら、指揮官の頬を両手で挟んで引き寄せ、額をこつんと合わせた。
至近距離で見つめ合う瞳が潤んで揺れている。
「ねぇ……もう一回、中に出して……全部、欲しいの」
おっとりした慈愛の姉の仮面はとうに剥がれ落ち、そこにいるのは夫の精をねだる一匹の雌だった。窓の外では午後の陽射しが傾き始め、仮眠室を薄らと茜色に染め上げ始めている。この部屋から出られるのは当分先のことになりそうだった。
「もう一回か……一回でいいのか?」
そう言いながら、指揮官はトレントの揺れる胸元へと吸い付いていく。
胸に吸い付かれ、声にならない悲鳴が喉の奥で詰まった。
「ひぅっ……!い、一回でいいのひゃって……」
揺れる胸の片方を口で塞がれたまま、もう片方が指揮官の顔を押し返すようにたぷんと弾む。吸われる乳首が唾液で光り、ぷっくりと充血して立ち上がっていた。
腰を動かしながら胸まで吸われて、トレントの思考はもうぐちゃぐちゃだった。何を聞かれていたのかすら一瞬飛びかけている。
ぽろぽろ涙を零しながらも必死に言葉を紡いでいく。
「何ひゃいでも……何回でも、くだしゃい……っ。ひきひゃんが満足するまで、全部……あっ、噛んじゃ……だめぇ……!」
だめと言いながら指揮官の頭を胸に抱き抱え込んでいる。矛盾だらけの身体が、ただひとつ正直に語っているのは、この逢瀬を終わらせたくないということだけだった。
「っ、トレント……!」
彼女の胸の中で指揮官が吠えるそれだけで張り詰めたモノが震え、乱暴に壊れた玩具のように腰を何度も突き上げていく。
乱暴な突き上げがベッドを跳ねさせ、ヘッドボードが壁にがんがんと打ちつけられた。トレントの身体がまるで木の葉のように上下に弾み、豊満な胸が波打つ。
「あっ、あっ、あああっ……!すご、ぉぐっ、奥……きょ、われ……っ!」
がくんがくんと頭が揺れ、右目を隠していた前髪が乱れて露わになった。普段は決して見せない、隠された瞳までもが涙で濡れ光っている。
両目が晒されたトレントは、普段の穏やかなお姉さんの面影が消え失せ、ただ快楽に溺れる女の顔をしていた。口は半開きで涎が顎を伝い、焦点の合わない目で指揮官だけを見つめている。
「だめ……両目、みりゃいで……恥ずかひ……あぁっ!」
見られていることを意識した瞬間、さらに内壁がきつく絞まった。恥ずかしいのに見られたい、その矛盾がトレントをさらに追い詰めていく。
「ひき、ひゃんっ……もう、まひゃ……またイっちゃ……っ!」
実際のところ、後頭部から胸に押し付けられている指揮官からはトレントの両目など見えていない。だがトレント自身はそのことに気づく余裕もなく、ただ乱れるままに叫んでいた。
もう見られているかもしれないことなど頭から飛び、両目を見開いたまま指揮官の髪を掻き抱いた。
「イく……イきます……一緒にっ……!」
ぎゅうっと締まった内壁に引きずられるように、指揮官の腰が最奥へと押し込まれた。二度目の射精が子宮を直撃し、既に一度目で満たされていた中をさらに熱く塗り潰していく。
びゅるる、びゅると脈打つたびにトレントの腹がわずかに膨らむほどの量だった。
「あ、あああぁぁっ……!!」
全身が弦のように張り詰め、びくびくと何度も跳ねた。やがて力が抜けて、ふっと意識が遠のくように指揮官の背中に頬を預けた。
胸の間で指揮官の呼吸を感じながら、小さく呟く。
「……だいすき、です」
仮眠室に静寂が戻った。二人分の汗と体液で湿ったベッドの上、窓から差し込む午後の陽は気づけば夕陽へと変わっていた。
────だが、忘れてはいけない1週間ぶりの逢瀬、それを待たされていたのはトレントだけではないのだ、と。
逢瀬の余韻に浸る二人の耳に、複数の足音が届いた。一人ではない。二人、三人、いやそれ以上。軍靴の硬い音が廊下の床を鳴らしながら近づいてくる。
ぴくりと耳を動かし、まだ蕩けた表情のまま扉の方を見た
「あら……?誰か来たみたい……」
がちゃり、とドアノブが回る音。そうして扉は開かれて─────舌なめずりをする、愛する妻たちが笑みを浮かべていた。思わず、トレントと指揮官は顔を合わせてしまった。
:─────