『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
プロローグ
世界大会の決勝は、拍子抜けするほど静かに終わった。
相手の女は、最後の一手を出した後、カードを手元に揃えて、静かに一礼した。
「ありがとうございました」
それだけだった。
場内から歓声が上がった。名前を呼ぶ声があった。ただ——それは俺の名前ではなかった。
俺はテーブルを見つめていた。手札はまだ手の中にあった。もう返せる手はない、と分かった瞬間に、試合は終わっていた。
相手のことは——今でもよく思い出せない。背が高くも低くもなく、声が目立つわけでもなく、符闘中に一度も表情を変えなかった女だった。慢心でも余裕でもなく、ただ静かだった。盤面を見て、手を出して、また盤面を見る。それだけの動作で、俺は負けた。
最後の一手が来た時、返しがなかった。
審判が席を立った。
その一秒が——今でも夢に出る。
——
机の上に、額をのせていた。
モニターはスリープに落ちている。キーボードの端に頬が触れていた。
周りを確認した。
誰も、こちらを向いていなかった。
隣の先輩は電話中だ。向かいの同僚はモニターを睨んで何かを打ち込んでいる。
誰も気づいていない。
安堵の息が、情けなさとほぼ同時に出た。
何年も前のことを——まだ夢に見ている。
親父が死んだのは、俺が三十歳の夏だった。
急性心筋梗塞。救急車が来た時には、もう息がなかった。
そのこと自体は、正直、ある程度覚悟していた。酒と煙草で身体をボロボロにしてきた男だ。いつかこうなると、俺も分かっていた。
分かっていなかったのは——借金の方だ。
父の死後、整理を始めると、次々と督促状が出てきた。消費者金融への滞納、知人からの借り入れ、カード会社の未払い。合計すると数百万を超えていた。法定相続を放棄すれば逃げられたはずだが、連帯保証人として俺の名前が入っていたものがいくつかあり、どう転んでも無関係ではいられなかった。
加えて、大学でかき集めた奨学金の残債。
母は俺が高校を出た翌年に、がんで逝っていた。
兄弟はいない。一人っ子だ。
だから俺の背後には、守るべき人間も、心配してくれる人間も、何一つなかった。
親父の遺した借金と、大学時代の奨学金と。その二つの重荷だけを背負って、俺は社会に放り出された。
大学は出た。成績は悪くなかった。しかし就職活動の時期に不況が直撃し、名前も知らないような中小の商社にようやく滑り込んだ。
以来、三年。
残業が当たり前で、有給を取ると嫌みを言われる職場だった。月に三十時間の残業は当然で、繁忙期には六十時間を超えても手当は出ない。上司の機嫌次第で仕事が割り振られ、深夜に帰宅して床に座ったまま眠ってしまうこともあった。「みんなそうだから」の一言で、それを三年間飲み込んできた。
身体だけじゃない。精神も、少しずつすり減っていた。
小さなミスを大声で詰められる朝。昼飯を食べる暇もない日。週末に翌週のことを考えながら目が覚めて、また同じ朝が来る恐怖。
気づけば、何かを楽しんだ記憶が思い出せなくなっていた。
この先に何があるのかと考えると、何もないと分かるので——それ以上考えないようにしていた。
ただ息をするためだけに生きているような、うだつの上がらない三十三歳の男。
それが俺、式世一だった。
そんな灰色の日常の中で、奇跡的に定時で上がれたある夜のことだった。
何かの手続きミスで担当案件が一つ消えたのか、上司の機嫌が珍しくよかったのか、理由は今でも分からない。いずれにせよ俺は終業チャイムと同時に会社を出ることができた。
外に出ると、夜の八時だというのに、空がまだ薄く明るかった。夏の終わりだった。
このまま帰るのが惜しくて——いや、あの薄暗い六畳に帰りたくなかっただけかもしれない——俺はいつもと違う道で駅へ向かった。
ふと足が向いたのは、商店街の外れにある、うらぶれたカードショップだった。
「CARD STAGE アルカナ」
色褪せたネオン管の看板が、夕暮れの路地に橙色の光をにじませていた。
ガラスドアを開けると、独特の紙とスリーブの匂いが鼻をくすぐる。
一歩入った瞬間、俺の目が止まった。
テーブルを囲む、小学生くらいの子供たちが六人ほど。カードを広げ、何か話しながら笑い合っている。
「俺の守護陣、まだ崩れてないんだけど!」
「いや、これ読んで! 属性変換の効果が——」
「え、それ今ここで使えるやつじゃん!」
声を上げながら、目が輝いている。テーブルを挟んで向かい合った子供たちの顔は、全員、本気だった。
神符大戦だ。
かつて俺が十代の頃に全力で打ち込んでいたカードゲーム——そのカードが、今、目の前の子供たちの手の上にある。
棚の前に立ったまま、俺はしばらくその光景を眺めていた。
あの頃の俺も、あんな顔をしていたんだろうか。
週末ごとに大会に通い、デッキを研究して、カードの引き方を練習した。勝った時の興奮と、負けた時の悔しさが、全部、一枚のカードを握る手に宿っていた。
あの頃の俺には、続きがあった。
次の大会がある。来週の練習がある。いつかもっと強くなれるという感触がある。
——今は。
月曜日の朝イチで送らなければならないメールがある。来月の家賃がある。いつ払い終わるか分からない返済額がある。
テーブルで歓声が上がった。
「やった! 山札、切れた!」
「うそ! そんな読んでたの!?」
勝った子供が、両腕を突き上げて喜んでいた。
その顔が、眩しかった。
あの子たちには未来がある——と思った瞬間に、今の俺には何があるかを考えた。
何もなかった。
俺は棚に目を向けた。
そこに——『神符大戦』のパックが並んでいた。
懐かしいデザインの金色の枠線。今や四大カードゲームの一角として世界中で盛り上がっているが、社会人になってからはすっかり遠ざかっていた。パックの裏に小さく印刷された文字が目に入った。「GATE KEEPER INC.」。販売元の社名だ。当時から変わっていない。
「懐かしいな……」
財布には千円札が三枚残っていた。
今月の残り日数は六日。計算しかけて——やめた。
俺は三パックを手に取り、レジへ向かった。
子供たちの声が、後ろから聞こえていた。
「もう一戦! 今度は俺が先攻もらうから!」
「いいよ! 今度こそ守護陣、崩してみせる!」
俺はそっと店を出た。
夜風が、少し冷たくなっていた。
薄暗いアパートの六畳間。
ドアを開ける瞬間、毎回、少しの抵抗感がある。
三年間使い続けた安い木目調の床と、灰色の壁が出迎える。窓際に積み上がった書類のファイル。端に追いやられた去年のカレンダー。最小限の家具だけが置かれた、生活感のない空間。
コンビニの袋から弁当を出した。値引きのシールが貼られた幕ノ内弁当。電子レンジで温めた食品の匂いが鼻をつく。
テレビはつけなかった。つけると、どこかの家族がバラエティで笑っている映像が流れるから。
黙って食べた。
食べ終わってから、ローテーブルの上にカードのパックを置いた。
三パック。指先でその感触を確かめる——あの頃と変わらない、つるつるした銀色のシーリング。
一枚目のパックを引き裂く。
並の使役符が七枚。SR(スーパーレア)が一枚。悪くはないが、目ぼしいものはない。
二枚目。同じようなものだった。
三枚目。
一枚ずつ、ゆっくり滑らせていく。
その最後の一枚が——眩い黄金の光を放ったように見えた。
息が止まる。
描かれていたのは、美しく輝く黄金の鎖に囚われ、悲しげに微笑む金髪の天使。
――幻のURカード、『"黄金鎖の天使"ルクシエル』。
かつての俺がどれだけ欲しても手に入らなかった、世界大会でも一度として見たことのない、最高峰のレアカードだった。
「本当に、入ってたんだな……」
胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じながら、俺は引き出しから昔のストレージボックスを引っ張り出した。
三年以上触れていなかったカードたち。デッキを組んでいた頃の記憶が、指先から蘇る。
久しぶりにデッキを組み上げた。ルクシエルを軸にした陽属性デッキ。かつては手が届かなかったからこそ、何年も夢想し続けていた構成だ。
ルクシエルのイラストを、もう一度だけ眺めた。
カードの中の天使は、哀しげに、しかし穏やかに微笑んでいる。黄金の鎖が全身を縛っており、その表情には慈愛と、深い孤独が同居していた。
こんな可愛い子が、本当に目の前にいてくれたらな。
そんな寂しい独り言を呟きながら、俺は電気を消して泥のように眠りに就いた。
深い暗闇の夢を見た。
どこまでも黒い空間の中に、黄金の光が揺れていた。
近づくと、それはカードの絵から抜け出したような存在だった——金糸のボブカットが暗闇の中で輝き、白のドレスアーマーが微かな光を纏っている。大きな天使の翼が、力を失ったように垂れていた。
全身を黄金の鎖で縛られた、ルクシエルがそこにいた。
鎖は手首、足首、肩、腰——あらゆる箇所を雁字搦めに縛り付け、身動きを奪っていた。しかし彼女の表情には、怒りも憎しみもなかった。ただ、静かな哀しみだけがある。
俺に気づいた天使の碧眼が、静かに揺れた。
『……どうか、私を助けてください……我が主よ……』
透き通った声だった。
夢の中なのに、その声だけがやけにリアルで——胸を締め付けるような哀愁が、俺の中に流れ込んでくるようだった。
夢の中のことだ。
俺は少しの迷いと、それより大きな同情とで、彼女を縛り付ける黄金の鎖へ手を伸ばした。
鎖は思ったより重くなかった。握った瞬間にするりと解けて——カラン、と夢の中で静かな音が響いた。
解放されたルクシエルは、力が抜けたように俺の胸へと倒れ込んできた。
「……あたたかい」
夢の中のルクシエルが、俺の胸に顔をうずめながら言った。
「ずっと待っていました。ずっと——」
その後の言葉を俺は聞けなかった。
夢が、淡く溶けた。
朝。
カーテン越しに差し込む安っぽい光線で目を覚ました。
身体が重い。いつも通りだ。六時間も眠れたかどうか——と目を閉じたまま考えかけて、顔に何かが触れている温かさに気づいた。
「……ん……?」
何かが、俺の頬に触れている。
柔らかくて、温かくて——指、か。
目を開けた。
そこには、あり得ない光景が広がっていた。
金糸のボブカットが朝の光を浴びてきらめいている。透き通るような碧眼が、すぐ目の前で俺を見つめている。白を基調とした、まばゆいドレスアーマー。そして、その背中からは、微かに淡い光を放つ大きな天使の翼が羽ばたいていた。
「お目覚めですか、世一様」
ほんわかとした、優しく甘い声。
「ルク……シエル……?」
「はい」
天使は微笑んだ。
「私はあなたのデッキの使役、ルクシエルです。あなたが夢の中で私を縛っていた因果の鎖を解いてくださったおかげで、こうして現界することができました」
俺は声が出なかった。
しばらくして、自分の頬を軽く叩いた。痛い。
目の前の天使は——消えなかった。
「……お前は、本当に、カードの中のルクシエルか」
「はい」
「夢じゃないのか」
「夢ではありません」
「……じゃあ、これは現実か」
「はい」
ルクシエルは両手を胸の前で組み、俺を真っ直ぐ見た。
「我が身のすべては、世一様のもの。これからはあなたの忠実な僕として、すべてを捧げます」
俺は数秒、ただそれを眺めていた。
混乱した。しかし混乱の奥底に、もう一つ別の感覚があることに気づいた。
怖くない、という感覚だ。
俺には失うものが何もなかった。守るべき家族も、捨てきれない夢も、今さら惜しいと思える何かも。あの六畳間で返済計画を眺めながら深夜に目を覚ます日々が続くよりは——何がどう転んでも、今よりひどくはなるまい。
「……お前、本当に俺のものになるのか」
「はい」
「なんで俺みたいな男に」
ルクシエルは少し首を傾けた。
「因果の鎖を解いてくださったのは、世一様です。縛られていた私を選んで、助けてくださった」
「あれは夢の中の気まぐれだぞ」
「気まぐれでも、あなたは手を伸ばしてくれました」
俺は天使の碧眼を見た。揺れていない。嘘をついているように見えない。
「俺には何もないぞ」
「はい」
「金も、地位も、将来の展望も。返すだけの借金と、潰れそうな身体だけがある」
「はい」
「それでも、か」
「世一様が世一様であることが、私には全てです」
俺はしばらく何も言えなかった。
こんなことを面と向かって言われたのは、生まれて初めてだった。
「……都合のいい話だな」
「はい♡」
ルクシエルは嬉しそうに微笑んだ。
「都合のいい話です。世一様にとっても、私にとっても」
俺の中の何かが、ゆっくりと決まった。
「……分かった」
混乱した頭でルクシエルの肩を掴み、そのまま安アパートの薄い布団へと押し倒した。
「世一様……?」
ルクシエルは碧眼を丸くし、戸惑いの声を漏らした。しかし、抵抗する様子は微塵もなかった。
「夢なら何してもいいだろうと思っていた」
俺は彼女の上に覆いかぶさりながら言った。
「夢じゃないなら——もっとしていいはずだ」
「……はい♡」
ルクシエルは小さく、しかし迷いのない声で答えた。
俺は彼女の純白のドレスアーマーに手をかけた。
背中側に細い金細工の止め金が並んでいる。一つずつ外していくと、ドレスアーマーがゆっくりと緩んでいく。
「ご自分でお外しになりますか?」
「いい。俺がやる」
「……はい♡」
最後の留め金を外すと、白いドレスアーマーが肩から滑り落ちた。
露わになったのは——息が詰まるほど白く、形の整った肌だった。首筋から胸元に至る曲線が、朝の光の中で滑らかに浮かび上がる。
胸は、大きかった。
ドレスアーマーの下に隠されていた形の良い巨乳が、重力に従って揺れた。ピンク色に染まった可愛らしい先端が、空気に触れてわずかに硬くなっていく。
「ひぁっ……♡ 世一様の、目が……」
ルクシエルが頬を染めた。
「見るな、という方が無理だろう」
俺はその胸に手を当てた。
吸い付くようなきめ細かい肌の柔らかさ——指が沈む、本物の感触。
「んっ……♡ 世一様の手が……温かいです……♡」
女性と肌を合わせた経験の少ない俺の指先は、不慣れなりに、彼女の感触を確かめることに集中した。
「ひぁっ……んっ……♡ 揉まれるの……はじめてで……♡ でも、嫌じゃないです……♡♡」
俺は片手で彼女の胸を揉みながら、もう片方の手でドレスアーマーの残りの裾を押し上げた。
太ももをなぞると、ルクシエルの身体が小さく震えた。
「こちらは……?」
「……世一様のものです。好きにしてください……っ♡」
太ももを割り、彼女の秘所へと手を伸ばした。
そこはまだ誰も触れたことがないはずなのに——すでに熱く、蕩けるほど濡れていた。
「世一様の夢を……朝まで見ていたので……」
ルクシエルは恥ずかしそうに目を逸らした。
「夢の中でも待っていたのか」
「……はい♡ ずっと、こうしてほしいと思っていました……っ♡」
俺の指が動くたびに、ルクシエルは小さく声を上げた。
「んっ……♡ くっ……♡ そこ……そこ、触られると……世一様の指が、なかに……引き込まれそうで……っ♡」
「これだけ濡れていれば、入るな」
「……はい……っ♡ 世一様……私は、あなたのものです。どうか、繋がってください……っ♡」
俺はルクシエルの上に覆いかぶさったまま、一瞬だけ我に返った。
「……避妊、どうする……」
「世一様?」
「手元に何もないが……」
ルクシエルはしばらく俺を見てから、静かに微笑んだ。
「それは、必要ありません」
「でも——」
「世一様と直接、肌を重ねたいのです……♡ ゴムがあると……気持ちよくなれないですし……それに」
少し間を置いた。
「……私は世一様のお子なら、いくらでも身ごもりたいのです♡ 赤ちゃんができちゃうかもしれないけれど……それが私の、一番の願いですから……♡」
俺は少しの間だけ、天使の言葉を飲み込もうとした。
——天使が本当に孕むかどうかなど、俺には判断できない。しかしこの嘘のつけないような顔で、頬を赤らめながらそう言っているルクシエルを前に——俺は深く考えるのをやめた。
この世界への未練もなく、失うものも何もない俺が、今さら何を躊躇う。
この世で最も甘い顔をした存在が、顔を真っ赤に染めながら、切なげに生での交わりを求めてくる。
その一事が、俺の中の最後の理性を焼き切った。
「わかった……生でいくぞ、ルクシエル」
「はい……っ♡ どうぞ、世一様のすべてを、私の中に注ぎ込んでください……♡」
割れ目に俺の熱塊を押し当て、ゆっくりと体重をかける。
ずぷり……と、何者も受け入れたことのない狭い肉の壁が、俺の侵入を拒むように締め付けてくる。
「くふっ……! あ……っ! つう……っ♡♡♡」
ルクシエルは痛みに碧眼を潤ませ、俺の背中に爪を立てた。しかし、その顔には苦痛と同時に、強烈な悦びが浮かんでいる。
「大丈夫か」
「……はい……っ♡ 世一様のが……おっきくて……でも、嬉しいです……っ♡」
ゆっくりと深く進む。
薄い膜が破れる確かな感触と共に、俺の先端が彼女の最奥へと到達した。
「はぁっ……♡ はいり……ました……世一様の……奥まで……っ♡♡♡」
処女を散らした彼女のなかは、言葉を失うほどに熱く、ぐちゅぐちゅと濡れそぼっていた。
「……お前のなか、すごいな」
「……世一様のことを、ずっと待っていたから……っ♡ 身体が……覚えていたのかもしれません……っ♡」
俺は腰を動かし始めた。
ぐちゅっ……くちゅくちゅ……!
「んっ……あ……っ♡ 世一様、すごいの……動くたびに、なかが、あつくて……良くなっちゃいます……っ♡♡♡」
「ルクシエル、お前、すごく締まるな……!」
「世一様を……逃がしたくなくて……身体が勝手に……うごめいちゃいます……っ♡♡♡ ぬちょ……ぬちょって、おとがして……恥ずかしいですけど……すごく、うれしい……っ♡♡♡」
本物の女の、それも極上の天使のナカの感触が、俺の脳を快楽で焼き尽くす。
ピストンを速めるたびに、ルクシエルの可変の翼がパタパタと小刻みに震え、甘い香りが部屋に充満する。
「あぁ……っ……♡♡♡ ん……っ……♡♡♡ もう……だめっ……♡♡♡ おかしくなっちゃいます……っ♡♡♡」
「俺も……出る……っ!」
「なかに……! 私のなかに、世一様の全てを……たっぷり出してくださいぃっ……♡♡♡」
激しく腰を叩きつけ、俺は彼女の最奥に向けて、白濁した精液をごぷっごぷっと勢いよく注ぎ込んだ。
「ん……くぅっ……♡♡♡♡」
ルクシエルは全身を激しくヒクつかせながら、処女の蜜壺の奥底で俺の精を全て吸い上げるようにして絶頂した。
何度もビクビクと締め付ける彼女のなかで、俺は出し尽くし、抱き合ったまま息を整えた。
肌に伝わる確かな熱さと、シーツに広がる処女の血。
「……本物だ」
俺は天井を見ながら言った。
「はい」とルクシエルが答えた。
「夢じゃない」
「夢ではありません」
「……そうか」
俺は腕の中のルクシエルを引き寄せた。
彼女の体温が——本物の体温が、俺の腕に伝わってくる。
「世一様」
「何だ」
「……お疲れでしたね。毎日」
俺は少しの間、黙っていた。
ルクシエルは俺の胸に頬をつけたまま、続けた。
「私には分かります。世一様がどれだけ、すり減っていたか」
「……お前に何が分かる」
「あなたが私の鎖を解いてくれた時——夢の中で——あなたの手が、少しだけ震えていました」
俺は答えなかった。
「疲れた手でした。でも、手を伸ばしてくれました」
「……大げさだ」
「いいえ」
ルクシエルが俺の胸元を見上げた。碧の眼が、朝の光を受けて揺れている。
「世一様。この先、何があっても——私だけは、ずっとここにいます」
俺はしばらく黙っていた。天井の、染みのついた白い壁を見ながら。
「……そうか」
それだけ言った。
そこでようやく、俺はこれが夢ではなく、紛れもない現実であるという事実に鳥肌が立つのを感じていた。