『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
ある日、英稟が当主としての務めで別邸を空けた午後。
部屋の扉を、雪がノックした。
「……失礼します」
「入れ」
学院の制服のまま、雪が入ってきた。直立して俺を見た。その目にはまだ火がある。完全には消えていない。
「何の用だ」
「身体が……おかしいんです」
はっきり言った。雪らしかった。
「夜、一人でいると——世一様のことを考えてしまって。身体が疼いて、仕方がなくて」
「陽気支配の進行だ。そういうものだ」
「分かっています。分かっていても——だから来ました」
「英稟に相談したか」
「はい。そうしたら『世一様に言いなさい』と言われました」
「そうか」
「……英稟様が、そういうことをはっきり言う方だとは思っていませんでした」
「慣れた、ということだ」
雪は少し黙り、それから言った。
「英稟様は……変わりましたか」
「変わっていない。元からそういう人間だ」
「……そうかも、しれません」
俺は雪の前に立ち、手を差し出した。
「手を出せ」
雪が手を差し出した。その手の甲に、軽く陽気を流した。
「ぁ……っ♡」
雪の目が変わった。
「これが欲しかったのか」
「……っ」
「正直に言え」
雪は一瞬唇を噛んだ。
「……はい」
俺は雪の顎を持ち上げた。
「んっ……っ♡」
「英稟と違って、顔に出る」
「……英稟様と比べないでください」
「比べていない。どちらが正直かを言っている」
「……それは……っ♡ 複雑です……っ♡ 英稟様はずっと憧れていた方で……っ♡♡」
「その英稟と同じ場所にいる」
「そういう意味では……複雑で……っ♡ でも……っ♡ 世一様……もっと……」
言いかけて、雪は口を押さえた。
「言いたいことを言え」
「……自分で、また言ってしまった……」
「正直で何が悪い」
「……悪くは、ないんですが……」
陽気をさらに流した。雪の背筋が伸びた。
「はっ……♡ あっ……英稟様がいないのに……こんな……っ♡♡」
「英稟は関係ない」
「関係あります……っ♡ 英稟様に見られていたら……もっと恥ずかしくて……でも……っ♡♡♡」
水の精気を持つ雪の魔力回路は、陽気との接触を重ねるたびに素直に応えるようになっていた。最初の夜に比べて、反応が深く、早い。
雪は自分の変化に気づいていた。気づいていながら止められない。
「世一様……っ♡ なんで……あなたのことが……っ♡♡♡」
「意志じゃない、回路だ」
「分かってます……っ♡ でも……分かっていても……っ♡♡」
英稟は言葉で感情を包む。雪は感情がそのまま言葉になる。
どちらにも良さがある、と俺は思った。
その後——
「はっ……♡♡ あっ……なか……世一様……っ♡♡♡ 英稟様がいないのに……世一様が……っ♡♡♡」
「英稟のことを口にするな」
「でも……っ♡ 英稟様のことを考えると……もっと……っ♡♡ なんで……っ♡♡♡」
ストロークを速めると、雪の声がさらに大きくなった。英稟と二人になる時間を作ったのは英稟への配慮だが——雪の反応の素直さも、それはそれで別の意味で面白かった。
「い、いきそう……っ♡ また……世一様に……っ♡♡♡ いきますっ……!♡♡♡」
雪は精を放った後、しばらく俺の腕の中で息を整えていた。
「……英稟様に、言いますか」
「何を」
「今日のことを」
「どうする気だ」
雪はしばらく黙った。
「……言いたい気もするし、したくない気もして」
「英稟が聞きたいと言えば言え。聞かなければ言わなくていい」
「……世一様って、そういうことに案外淡泊ですよね」
「余計なことを考えるな」
「……はい」
雪は少しだけ笑った。
こういう笑い方をする子が来たか、と俺は思った。
英稟の実直さとは違う、直情的な明るさ。使いやすい種類の笑い方だった。
———
きっかけは、ルクシエルの些細な一言だった。
主室の掃除をしながら、ルクシエルが言った。
「世一様は、この世界の女性を孕ませることができると思いますか?」
「……なんだ、急に」
「陽気支配は魔力回路を書き換えますが——肉体的な交合の産物まで、この世界の霊理が変えるかどうかは、まだ分かりません」ルクシエルは首を傾けた。「私は天使ですので、その問いの答えを持っていないのです」
俺はしばらく黙って考えた。
確かに——知らない。
異世界から召喚された俺の体は、外見上は何も変わっていない。しかしこの世界の霊理が俺の陽気を特別に機能させている以上——肉体そのものも、何らかの形でこの世界の理に組み込まれている可能性はある。
「試してみる価値はあるか」
一瞬だけ、何かが引っかかった。
雪はまだ若い符士だ。それを実験と称して——
「世一様♡」
ルクシエルが振り向いた。
その微笑みを見た瞬間、引っかかりが消えた。
「やっていいのか」という問いが、形になる前に消えた。
天使が提案している。神位の存在が、俺の行動を正しいと言っている。彼女の微笑みは、どんな躊躇いよりも先に来る。元の世界の倫理などという鎖は、ルクシエルの一言の前では煙のように消えていく。
その確信が、胸の中で静かに固まった。
「それが一番早いかと思います♡」
ルクシエルはにっこり笑った。
しばらく羽根をはたいてから、ルクシエルは続けた。
「世一様は、この世界の理から外れた方です。血も、魂も、この霊理の外からいらした」
「……知っている。異世界転移だ」
「はい。だからこそ——世一様が触れたものは、この世界の理では測れない結果を生むかもしれません」ルクシエルは首を傾けた。「私はそれを、確かめてみたいのです」
「それと雪の妊娠がどう関係する」
「関係があります♡ 世一様が根を下ろすたびに、この世界は少しずつ、あなたの色に変わっていきます。血で。種で。触れた者すべてで」
「……」
「地に満ちてください、世一様♡ 英稟様も、苑子様も、雪様も——手を伸ばした先の全部が、あなたのものになっていく。それを見届けるのが、天使としての私の喜びです」
俺はしばらく黙った。
(地に満ちろ、か)
天使が、俺に言っている。神の使いが——この世界をお前のもので満たせ、と言っている。
元の世界の倫理など、その言葉の前では煙のように消えていく。
ルクシエルはそれだけ言って、また掃除の手を動かした。
それからしばらく手を動かしながら、付け加えた。
「世一様は、雪様のことが少しお好きなのではないですか」
「実験だと言った」
「はい♡ そう仰るだろうとは思っておりました」ルクシエルは羽根を軽くはたいた。「世一様がそういう理由付けをされる時は、大抵、言いたくない別の理由がある時です」
「……余計なことを言うな」
「はい♡ でも——世一様が孕ませたいなら、孕ませてしまうといいと思います。この世界の霊理が許すかどうかとは、別の話として」
「それは俺が決める」
「はい♡ そうですね」
ルクシエルは何事もなかったように掃除を続けた。
翌日、俺は雪を学院の空き教室に呼んだ。
———
「……どんな用ですか」
空き教室の扉を閉め、鍵をかけた。雪は状況を察して少し身構えた。
「実験だ」
「じっけん?」
「俺の精がこの世界の女を孕ませられるか、確認する」
しばらく沈黙があった。
「……私で、するんですか」
「来やすい」
「……そういう理由ですか」
「不満か」
雪は少し考えてから言った。
「……不満というより——なんか、世一様らしいな、と思って」
「座れ」
「はい」
机の上に雪を座らせ、制服の中へ手を入れた。
「んっ……!♡ 学院の中で……っ♡」
「声を殺せ。廊下に人がいる」
「分かってます……っ♡ でも……っ♡」
雪は口を押さえた。英稟と違って、最初から声を殺すのが苦手だ。しかし意志は強い。我慢しようとする。
「こんな場所で……っ♡ 漏れたら……っ♡」
「漏らすな」
「っ……はい……っ♡」
一気に押し込んだ。雪の背中が机の縁に当たり、身体が揺れた。
「んぐっ……!♡♡ 深い……っ♡ 学院の中で……こんな……っ♡♡」
「中に出す。受け取れ」
「えっ……! あっ……はい……っ♡ でも……実験って……本当に孕むんですか……っ♡」
「それを確かめている」
「……っ♡ それを確かめるために……私を……っ♡♡」
「文句があるか」
「ない……っ♡ ないですけど……もうちょっと……言い方……っ♡♡♡」
ストロークを深くした。雪が机の縁を握り締めた。
「あっ……あっ……声が……っ♡ 出ちゃ……っ♡♡」
「歯を噛め」
「んぅ……っ♡♡ 噛んで……ても……世一様が動くたびに……っ♡♡♡」
精を放った。
「はっ……!♡ な、なか……っ♡♡♡ 世一様の……あったか……い……っ♡♡♡」
雪は息を詰めたまま、小さく身体を震わせた。
「……これが、一回目ですか」
「ああ」
「……何回するんですか」
「確率の問題だ。何度かやる」
「……はい」
しばらくして、雪は言った。
「世一様って——こういうことを、ちゃんと考えてやってるんですね」
「当たり前だ」
「英稟様に聞いたら、『世一様は色々と考えている』と言ってました。……こういう意味だったんですね」
「余計なことを言うな」
「……はい」
———
それから数日、俺は雪を学院の中で何度も呼んだ。
空き教室、体育倉庫の奥、校舎裏の誰も来ない踊り場。
「また……っ♡ また、なか……に……っ♡」
「変化はないか」
「今のところは……っ♡ でも……世一様のが……何度もなかに……っ♡♡」
「何か感じるものがあるか」
「……っ♡ 孕むかもしれないって……思ったら……なんか……っ♡♡♡」
「何だ」
「……すごく……良くなる……っ♡ 変ですか……?」
「変じゃない」
「……っ♡ 世一様が、そう言うと……っ♡ もっと……っ♡♡♡」
ストロークを深くするたびに、雪の声が大きくなりかけて、自分で口を押さえた。学院の外を取り巻きたちが歩いている。その声を聞きながら中出しを繰り返した。
実験を重ねるうちに、雪の身体は俺の精気の受け取り方が上手くなっていた。陽気支配の浸透が深まっている。
いつからか、実験という名目が薄れていた。
呼べば来る。受け取る。それだけのことが、何となく続いた。
———
ある日の事後、雪は自分の腹を見下ろした。
「……なんか、最近」
「何だ」
「身体が、変な気がして」
元々、雪の身体は符士らしくスレンダーで筋肉質だった。どこにも余分のない、均整のとれた肢体。しかし最近、その線が少しずつ柔らかくなってきている。腰に、胸に、わずかに丸みが増してきた。英稟も苑子も時間とともに艶が増している。陽の精気が、そういう変化を促すのだ。
「陽の精気だ」
「世一様のせいですか」
「そうだ」
雪はしばらく自分の身体を見ていた。
「……別に、嫌じゃないです」
「そうか」
「ただ——英稟様みたいになったら、どうしようと思って」
「心配するほど似ない」
「……そうですか」
「ただ——変わる」
雪はそれを聞いてしばらく考えてから言った。
「……世一様の子を孕むとしたら、身体がもっと変わりますよね」
「そうだ」
「……いいです」
「何がいい」
「孕んでも——いいです。世一様のことが好きとか、そういうわけじゃないですけど」
雪は正直だった。愛情がないことを、はっきり言った。
「英稟様のことが好きで、今でも好きで——でも世一様の子なら、産んでもいいという気がします。なんか変な話ですけど」
「変じゃない」
「……また、そう言う」
雪は少しだけ笑った。
———
英稟が、ある夜俺に話しかけた。
「世一様」
「何だ」
「雪は……最近、よく学院で席を外しているようです」
「そうか」
英稟はしばらく黙っていた。
「……世一様が呼んでいるのですか」
「実験だ」
「……実験」
英稟は俺の答えを繰り返した。その声は静かだったが、何かが混じっていた。
「英稟様は今、どんなお気持ちですか」とルクシエルが横から言った。
「……別に、何も」
「でも顔が、いつもと少し違いますね♡」
英稟は少し間を置いた。
「……雪は、昔から私のことが好きでした。それは分かっていました。その雪が——世一様の下で、変わっていくのを見るのが」
英稟が言い切れなかった言葉を、俺が続けた。
「複雑か」
「……複雑です」
英稟は素直に認めた。
「雪が心配ですか」
「心配とは……少し違います。ただ——雪が私ではなく世一様の方を向く瞬間を見ると、自分でも分からない気持ちが出てきます」
ルクシエルが何かを言いかけて——英稟が「何も言わなくていいです」と先に言った。
「……世一様は、雪のことが好きですか」
英稟が俺に聞いた。珍しい問い方だった。
「実験だと言った」
英稟はしばらく黙り、それから静かに言った。
「……世一様が、そう仰るなら」
その夜、英稟は何も言わなかった。ただ——いつもより少しだけ遅く、俺の隣に来た。
———
ある夜、事が終わった後に、雪が小さく独り言を言った。
「……英稟様のことを考えながら……世一様の子を孕もうとしている自分が……変なのかも」
俺には聞こえていたが、何も言わなかった。
孕んでいるかどうかの結果は、まだ出ていない。
雪は毎日呼んでも従い、放した後に少しだけ笑う。
結果が出る前に、雪の回路はすでに十分に書き換わっていた。それで今は十分だ、と俺は思うことにした。
———
数週間が経った頃、俺は雪に話した。
「別邸で寝泊まりしろ」
「……学院と掛け持ちで、ですか」
「学院から通える距離だ。英稟と一緒に登院して、夜に戻る。奉公の形を取れ」
雪はしばらく考えて言った。
「……英稟様は、ご存知ですか」
「言った」
「英稟様は何と?」
「『好きにしていい』と言った」
雪の顔が少し複雑になった。
「……英稟様が、そう仰るなら」
それが答えだった。
以来、別邸に雪の部屋ができた。英稟の部屋より小さく、北向きの質素な部屋。しかし雪は文句を言わなかった。掃除し、英稟の着替えを手伝い、ルクシエルの指示を受けて動いた。
奉公の形を取っていたが——実質は、俺の手の届く場所に置くための措置だった。雪もそれは分かっているはずだった。分かっていて、従っている。
———
ある朝。屋上に洗い物を干しに出た雪の背後に、俺は立った。
「——っ」
振り返りかけた雪の腰を掴んだ。
「世一様、まだ朝……っ」
「急がない」
「っ……でも」
「今日は朝から学院だろう。その前にする」
「そんな理由……っ♡」
朝の空気は冷たかった。雪の着ている薄い寝間着が、風に揺れた。
「ん……っ♡ 外は……っ♡」
「誰も来ない」
「来なくても……っ♡ 空が広くて……っ♡ 丸見えな気がして……っ♡」
スレンダーな腰を両手で掴む。以前より確かに丸みが増している。陽の精気がここ数週間で確実に作用していた。
「ん……っ♡ 世一様のが……朝から……っ♡♡」
「声を抑えろ」
「抑えてます……っ♡ 朝の屋上で、抑えられると思いますか……っ♡」
「抑えろ」
「っ……はいっ……♡」
物干し竿を雪が握り締めた。背後からゆっくりとストロークする。白んだ空、乾いた洗い物が風に揺れている。
「あ……っ♡ 朝から……こんなに深く……っ♡♡」
「受け取れ」
「っ……はい……っ♡♡」
精を放つと、雪はうつむいて長く息を吐いた。
「……毎朝、こうするんですか」
「気が向いたら」
「……はい」
雪は少し間を置いて言った。
「世一様、洗い物を手伝ってください」
「なぜ」
「足が震えているので」
俺は少し黙ってから、干し竿を一本取った。
———
昼休み。学院の体育倉庫に雪を呼んだ。
「体操着のままで来い」
そう伝えていた。
雪は体操着のまま来た。ブルマーから伸びる脚が、符士らしく鍛えた筋肉の線を見せている。しかしその肢体には、以前より確かに女らしい曲線が滲んでいた。腰の丸み、胸の張り。体操着の生地がそれを隠しきれていない。
「……体操の授業が終わった直後なんですが」
「それでいい」
「汗をかいていますけど」
「関係ない」
「……そうですか」
俺は雪の正面に立ち、腰を引き寄せた。
「脚を絡めろ」
「……こうですか」
雪の両脚が俺の腰に絡まった。体操着のままの体躯を正面から抱え上げ、そのまま押し込んだ。
「んぅっ……!♡ こ、この体勢……っ♡」
「動くな」
「動けない……っ♡ 世一様に支えてもらってるから……でも……深い……っ♡♡」
体操着越しに雪の身体の熱が伝わってくる。授業後の汗ばんだ肢体が、俺の動きのたびに素直に反応した。
「体操着のまま……こんな……っ♡ 下が全部、世一様の……っ♡♡♡」
「声を殺せ」
「っ……んぐ……っ♡♡ 外に人……っ♡ 聞こえ……っ♡♡♡」
昼休みの生徒の話し声が扉の隙間から漏れてきた。その声の中で雪の口を掌で塞いだ。
「んっ……んっ……っ♡♡♡ 塞がれると……もっと……っ♡♡♡」
「受け取れ」
「っ……なか……に……!♡♡♡ 体操着のまま……世一様の……っ♡♡♡ いっ……!♡♡」
精を放った。雪の足から力が抜けかけて、しかし脚を絡めたまま俺に体重を預けた。
外の声が少し遠くなった頃、雪が言った。
「……体操着、汚れました」
「着替えがあるだろう」
「……はい。でも……中に入ったのが、午後の授業中もずっと……っ」
「問題があるか」
「……問題ではないですけど」
雪は少し赤い顔のまま、体操着の裾を整えた。
「ちゃんと着替えて、午後の授業に出ます」
「そうしろ」
「……世一様は、お昼は食べましたか」
「まだだ」
「……私の分を、取ってきてあります。良ければ」
俺は少し雪を見た。
「世一様が来ると思っていたので」と、雪は淡々と言った。
———
夜。別邸の主室に雪を呼んだ。
英稟は隣の部屋にいる。
「来ました」
「横になれ」
雪は横になった。
挿入したまま、動きを止めた。
「っ……世一様?」
「そのままだ」
「……そのまま、というのは」
「動かない」
雪はしばらく黙っていた。
「……どのくらい、そのままですか」
「俺が動くまで」
「……はい」
五分経った。
「っ……世一様……」
「動くな」
「……動いていません……でも……っ♡ 挿入されたままで何もされないのが……こんなに……っ♡」
「何だ」
「つ、辛い……っ♡ 世一様が動かないのに……身体だけが……っ♡♡」
「辛いか」
「辛い……っ♡ もっと……して……ほしい……っ♡」
「何をしてほしい」
「……動いて……っ♡ ほしい……っ♡」
「もっとはっきり言え」
「っ……深く……して……ほしいです……っ♡」
「それだけか」
「……っ♡ 中に……深く……っ♡♡」
「まだ足りない」
「っ……っ♡♡ 世一様……っ♡ お願い……っ♡ 動いてください……っ♡♡」
俺は少しだけ腰を動かした。
「ひぅっ……!♡ 動いた……っ♡ 世一様が……っ♡♡」
しかしまたすぐに止めた。
「っ——!♡ なんで……っ♡」
「何が欲しいか言え」
「……世一様の……精が……ほしいです……っ♡」
「何のために」
「……っ」
「言え」
「……孕む……ために……っ♡」
「もっとはっきり」
「っ……!♡ 孕ませて……ください……っ♡ 世一様に……孕ませて……っ♡♡」
「英稟より先にか」
「……っ♡♡ そんな……っ♡ でも……でも……っ♡ 孕みたい……っ♡ 世一様の……っ♡♡♡」
「分かった」
ストロークを始めた。
「ひぁっ……!♡♡ やっと……っ♡ 世一様……世一様……っ♡♡♡」
「絶頂はまだだ」
「えっ……っ♡」
「出し終わるまで待て」
「っ……そ、そんな……っ♡ 世一様が動くと……もう……っ♡♡ 待てない……っ♡♡♡」
「待て」
「っ……ん……っ……ぁ……っ♡♡ 待ちます……でも……っ♡♡♡ 限界……っ♡♡♡」
「まだだ」
「ん……んっ……っ♡♡♡ 世一様の……で……なかが……っ♡♡♡ もう……もう……っ♡♡♡」
精を放った。
「はっ……!♡♡ なか……に……っ♡♡♡ これで……いっても……っ♡」
「いっていい」
「ひぅっ……!!♡♡♡ いく……っ♡♡♡ 世一様の……で……いく……っ♡♡♡ 孕む……孕みたい……っ♡♡♡」
雪は長く震えた。
しばらくして、静かになった。
「……英稟様のことを、考えていました」
雪が言った。
「……孕みたいと言いながら、英稟様のことを考えていました」
「それで構わない」
「……世一様は、変なことを言いますね」
「何がおかしい」
「英稟様のことを考えながら世一様の子を孕もうとしている女に——構わないと言う人が、どこにいますか」
「ここにいる」
雪はしばらく黙った。
「……はい」
それだけ言って、雪は目を閉じた。
英稟の部屋から、物音はしなかった。英稟は何も言わなかった。聞こえているかどうかは——分からない。
———
その夜が終わる頃、雪はすでに眠っていた。
隣室で、英稟の気配も静かになっている。物音一つ立てず、何も言わず、それでも起きていることは分かった。
別邸全体が、息を潜めるように静まり返っていた。
俺は窓辺に寄りかかり、遠見市の灯りを見下ろした。
(雪は英稟に憧れて、英稟のために動いていた女だ)
それが今は、俺の子を孕みたいと口にする。英稟への想いを抱えたまま、それでも身体は俺を求める。矛盾したまま、雪は矛盾を選んだ。
英稟のような真っ直ぐな服従とも、苑子のような理を通した服従とも違う——引き裂かれたまま差し出される忠誠。
(これはこれで、悪くない)
割り切れないものを割り切れないまま抱え込む女がいる。そのことに、妙な満足があった。征服したという実感とは、少し違う手触りだった。
「ルクシエル」
呼ぶと、白金の光が音もなく凝った。
「はい、世一様」
「今夜は、疲れた顔をしているな」
「あら」ルクシエルは目を細めた。「世一様にそう言われるのは、珍しいですね♡」
「珍しく気づいただけだ」
「では——甘えさせていただいても?」
答える代わりに、彼女の手を引いた。
翼が広がり、部屋の空気が変わる。外の音が、少しずつ遠くなっていった。
「今日も一人、増えましたね」
ルクシエルが囁いた。咎める色は、どこにもなかった。
「増えるたびに、どう思う」
「嬉しいです。あなたが満たされていくのが、私の喜びですから」
その言葉に、いつものような重さはなかった。ただ、静かな肯定だけがあった。
俺は何も言わず、翼の中に身を沈めた。
雪の複雑な忠誠も、英稟の眠れない夜も、今はまだ答えの出ない問いのままでいい。
そう思えるだけの余裕が、今の俺にはあった。
翼の内側で、白金の光がゆっくりと満ちていった。