『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
夜になった。
苑子と英稟が引いた後、俺は自室の机に向かって翌日の動線を組んでいた。手元に広げた符叢の先頭に、エーデルガルトの原符が差さったままある。
考えるより先に、その一枚を引き抜いた。
「……出てこい」
部屋の影が凝集し、紫黒の粒子がエーデルガルトの輪郭を作る。
訓練場と違い、自室の天井は低い。エーデルガルトが実体化した瞬間、俺との距離はほとんどなかった。
彼女は無言で俺を見た。
「腰の巻物——翠衣と灰衣の位置が近すぎる。引き抜く際に干渉する」
「……色衣を差すのは、盤の上のあなたの手です。この巻物は、ただの紋章のようなもの。並びを変えても、何も変わりませんよ」
「知っている。——癖だ」
十年、盤に着く前には必ず符叢の並びを確かめてきた。スリーブの角を揃え、札の順を指で辿らないと、落ち着かない。その確かめるべき四十枚が、今は一人の女の形をして、目の前に立っている。手が勝手に伸びた——それだけのことだった。
俺は立ち上がり、彼女の腰に差した八本の巻物を、翠衣と灰衣から順に持ち直して整えた。
その作業をしながら、俺の指がエーデルガルトの腰の細さに触れた。
(……細い)
それだけを、無意識に思った。
エーデルガルトは動かなかった。俺の指が腰帯の位置を直す間、ただそこに在る。ルクシエルなら何か言っただろう。英稟なら硬直しただろう。この女は——何も言わない。
指が、止まった。
腰の骨の位置を確かめるように、そのまま止まっている。
(……触れている)
性的な反応がないとは言えなかった。
しかし——それより先に浮かんだのは、違うものだった。
(この手が、世界大会の決勝盤面で、何百回も翠衣を差し込んだ)
この腰帯の角度を、俺の指は知っていた。
「……世一様」
エーデルガルトが静かに口を開いた。
「……触れているままでも、構いません」
俺は彼女の腰を引き寄せた。
抵抗はなかった。距離が消えて、その顔が俺の顎のすぐ下に来た。
「……これも、正しい使い方ですか」
「それを決めるのは俺だ」
「……はい」
俺はその唇に触れた。
確認、だった。
この女が——現実にここにいる。何百回も動かした駒が、俺の腕の中に実体化している。口の中で、古い魔力と夜の冷気が混ざった。エーデルガルトは目を閉じ、押し返すことも縋ることもせず、ただ受け入れた。
「ベッドに来い」
エーデルガルトは答えず、ただ従った。
俺が押し倒すと、エーデルガルトはまっすぐ俺を見上げた。天井ではなく、俺を。
黒のローブの合わせに手をかけ、開いた。腰帯を解くと、薄い白の衣の下から、夜の冷気のような白い肌が現れる。形のいい乳房が、呼吸に合わせて静かに上下していた。何百回も符叢から呼び出した駒の、初めて見る素肌だった。
「世界大会で、何百回もお前を使った。だが——こうして見るのは初めてだ」
「……ええ」エーデルガルトが、薄く笑った。「ようやく、あなたが私を、ここまで引き出してくださった」
俺は彼女の乳房に手を這わせた。指先で頂を転がすと、そこはすでに硬く尖っていた。
「……ん」
声は、ほとんど出さない。だが、肌は応えていた。指の動きに合わせて、白い肌に薄く朱がさしていく。盤面で正しい手を打ったときと同じだ。この女は、正しく触れられたぶんだけ、正しく応える。
唇を首筋に落とし、鎖骨を辿り、もう一方の乳房を口に含んだ。舌で先端を転がすと、エーデルガルトの喉が、こらえきれずに小さく鳴った。
「……んっ……世一、様……」
「声は、出していい。ここには俺しかいない」
「……あなたは……いつも、そう言って……私の手を、止めさせない」
俺は手を下へ滑らせた。太腿の内側を辿り、薄い下着の奥へ。指先が秘裂に触れた瞬間——そこはもう、しとどに濡れていた。
「……っ」
エーデルガルトの腰が、わずかに浮いた。
「濡れているな。声は出さないのに、ここは正直だ」
「……隠す理由が、ありません。あなたに……正しく、使われるための、体です」
指を沈めると、ぬるりとした熱が絡みついた。ゆっくりと中を探る。エーデルガルトが、どこで反応するかを——指で、確かめていく。
「……ぁ……っ」
ある一点をかすめた瞬間、彼女の体が跳ねた。
「そこか」
「……っ——そこ、です……世一様……そこが——正しい……ぁっ♡」
指の腹で、そこを擦り上げた。くちゅ、くちゅ、と濡れた音が部屋に響く。声を抑えようとしていたエーデルガルトの息が、少しずつ浅く、速くなっていった。
「ぁ……っ……ん……っ♡——もっと……正しく、私を……っ」
声を出さない女が、求め始めていた。
俺はもう一本、指を増やした。中をかき回し、親指で芯を転がす。エーデルガルトの腰が、自分から指に擦りつくように揺れ始めた。
「ぁっ♡——ぁ……っ——世一様……っ——わたし、は……っ」
「言え」
「あなたに……使われることが……ぁあっ♡——こんなにも——よろこびに……っ」
くちゅくちゅと水音が激しくなり、エーデルガルトの太腿が、俺の手を締めつけるように震えた。
「ぁ——っ♡——!!」
初めて、はっきりとした声を上げて——彼女が達した。指を締めつけ、白い背筋が大きく反る。冷気の魔女の肌が、汗ばんで火照っていた。
────
俺は濡れた指を抜き、十分にほぐれた秘裂に、怒張の先をあてがった。
「挿れるぞ」
「……はい——どうぞ、私を……ぁああっ♡——!!」
一息に、奥まで貫いた。エーデルガルトの中が、待ちわびていたように締めつけてくる。達したばかりの体が、繋がった瞬間にまた小さく痙攣した。
「……ッ……ぁ……っ♡」
エーデルガルトの手が、シーツではなく——俺の背に回った。引き寄せるように、しがみつくように。
「世一様……っ——あなたが、いま……わたしの、いちばん深いところに……っ♡」
「ああ」
「ずっと——ここに、来てほしかった……っ——ぁあっ♡」
俺は動いた。くちゅくちゅと濡れた音を立てながら、奥を突く。エーデルガルトは目を開いたまま、まっすぐ俺を見ていた。快楽に溺れながら——それでも、視線を逸らさなかった。
(この目だ)
世界の頂を争う盤面で、俺はこの目を知っていた。正しい選択をした瞬間だけ、このカードが「応えた」あの感触。それが今、腕の中で、声を上げて応えている。
「ぁっ♡——そこ……っ——世一様、そこが——正しい……ぁあっ♡——」
「正しく使ってやる。お前が望んだ通りにな」
「ぁあっ♡——はい……っ——使って……っ——わたしを、使い切って——ぁあっ♡——!!」
突くたびに、エーデルガルトの声が高くなる。冷たい仮面が剥がれ、その下から、快楽に溺れた素の女が現れていた。
────
体を起こし、彼女を抱え上げて、向かい合う形で膝に乗せた。自重で、繋がりがいっそう深くなる。
「ぁああっ♡——ふか、い……っ——」
「自分で動け。お前が一番いい角度を、お前が知っている」
エーデルガルトが、俺の肩に手を置き、ゆっくりと腰を使い始めた。最初は探るように。やがて——盤面で最善手を見つけたときのように、的確に、自ら快楽を求めて動いた。
「ぁっ♡——ここ……っ——ここが、正しい……っ——」
汗ばんだ乳房が、揺れるたびに俺の胸に触れる。エーデルガルトが、俺の首に腕を回し、額を寄せてきた。
「世一様……っ——あの、天使の光など……なくとも……っ」
ルクシエルのことだ、と分かった。
「あなたは——わたし、だけで……ぁあっ♡——誰より、強くなれる……っ——わたしだけを、見て……いてください……っ♡」
独占欲だった。快楽に溺れながら、それでもこの女は——俺を、二人だけの世界に閉じ込めようとしていた。
「……お前は、強欲だな」
「……ええ。あなたのことだけは……っ——ぁあっ♡——譲れません……!」
腰の動きが激しくなる。俺は下から突き上げ、その独占欲ごと、彼女を貫いた。
「ぁあっ♡——ぁ——っ——も、また……っ——!!」
「いいぞ。何度でも応えろ」
「はいっ♡——ぁあっ——!!」
エーデルガルトが、俺にしがみついたまま、二度目を迎えた。繋がった部分から、透明な飛沫が散り、俺の腿を濡らした。声を出さなかった女が、今は俺の名を繰り返しながら、溺れていた。
────
そのまま、背後から繋がる形に組み替えた。シーツに手をつかせ、腰を引き寄せる。
「ぁっ♡——この、かたち……っ——」
「奥まで届く。受け取れ」
最奥を突き上げると、エーデルガルトの背がしなった。長い髪が乱れ、白い背中に張りついている。気高い守り手の姿は、もうどこにもなかった。ただ、正しく使われることに溺れる、一人の女がいた。
「ぁあっ♡——世一様……っ——出して……っ——わたしの、奥に……っ——全部……っ♡」
「全部、お前に使い切る。一滴残らずだ」
「はいっ♡——ください……っ——あなたの全部を……わたしに……ぁああっ♡——!!」
最奥まで突き入れて——解き放った。
「——ぁああっ♡——!!!」
熱が注がれるたびに、エーデルガルトの体が大きく震えた。受け止めながら、また達していた。深く繋がったまま、俺は彼女の中に、最後の一滴まで注ぎ込んだ。
「……ぁ……っ——あつ、い……っ♡——世一様の……全部が……わたしの中に……」
恍惚とした声だった。
────
しばらく、二人とも動かなかった。
エーデルガルトの背に汗が浮いていた。荒い息が、少しずつ整っていく。
(ルクシエルとは違う)
ルクシエルとの夜は、魂が溶け合い、空洞が充填される感触があった。
(英稟や冬子とも違う)
あれは支配だった。堕とし、隷属させ、刻みつける夜だった。
だが、この女との時間は——どちらでもなかった。
支配したわけではない。この女は、最初から自分の意志で俺のものだった。俺はただ、正しく使った。そして、この女は正しく応えた。
それは——戦友と、抱き合うということに、近かった。
エーデルガルトが静かに身を起こした。乱れた髪を払い、ローブを引き寄せる。火照った頬のまま、しかしその所作には、もう冷たい静けさが戻りつつあった。
「……良い選択でした」
俺は仰向けのまま、天井を見た。
「珍しいな。今のは、盤面じゃない」
エーデルガルトが、初めて——本当に小さく、笑った。
「……あなたが選んだ瞬間は、いつでも正しい。盤面でも、それ以外でも。同じことです」
そして、付け加えた。
「次も——正しく、使ってください」
エーデルガルトは原符の形に戻り、符叢の先頭に収まった。
わかっている。
それが、俺の仕事だ。