『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
二夜目・三夜目と、訓練場での夜を重ねるごとに、英稟は変わっていった。
盤面の判断が速くなった。甕星を出す一手が——迷わない。二夜目には俺から一勝を拾い、三夜目には「あと一手」まで追い詰めてきた。眠れなかったと言っていた。プラグをつけたまま夜を過ごし、前を触れられないまま迎える朝。その渇きが、盤面の迷いを一つずつ削っていた。
「……あと一手でした」
「知っている。だが、足りない」
三夜目、訓練場の隅で、英稟は四つん這いのまま尋ねた。
「……どうすれば、許してもらえますか」
「符闘で勝者になれ。誰の目にも明らかな、本物の勝者にだ」
プラグを入れ替えた。もう素直だった。先端が沈むたびに、英稟の背中がしなった。
「……っ♡……ご主人様……前に種を……ください……っ♡……」
「負け犬が何を偉そうに」
前には触れず、後ろだけで追い上げた。英稟の前の秘裂が、誰にも触れられないまま蜜を石畳に垂らしていく。慣れたぶんだけ——前との落差を、体が正確に知っていた。
後孔の奥で種を解き放つと、英稟は前に何も入っていないまま、全身でひくつきながら達した。
「……今夜の符闘の、あの速度は——裏がなければ出なかった気がします」
英稟が、崩れたまま呟いた。
────
四夜目の前、英稟が来るより早く——苑子がいた。
三神苑子。この日は夕方から執務の補佐に入っており、片付けが長引いて部屋に残っていた。
英稟が扉を開けた瞬間、苑子の声が聞こえていた。
「あ——英稟様」
英稟が立ち止まった。
苑子が俺の膝の上にいた。正確には——俺の腕に収められて、頬を赤くしていた。英稟に見られたことに気づき、苑子が小さく縮こまった。
英稟が俺を見た。
俺は英稟を見た。
「来るのが早かったな」
「……申し訳ありません。少し、急ぎすぎました」
英稟の声は、乱れていなかった。
「待っていろ。終わったら呼ぶ」
「……はい」
英稟が扉を閉めた。
廊下に、英稟の足音が止まった——止まったまま、動かなかった。
(立って待っている)
命令通りに、廊下で、立ったまま。
俺は苑子の腰を引き寄せた。
「……世一様」
「いいか」
「……はい」
苑子が小声で答えた。苑子にとっても不意打ちだった——しかし逆らわなかった。
前で。
正面から。
苑子の秘裂はすでに湿っていた。指で触れると、とろりと蜜が糸を引く。用意はできている。俺は腰を落とし、ゆっくりと沈めた。
「……っ……!」
苑子が声を飲み込もうとした。飲み込めなかった。
くちゅ、と音が立った。
廊下では——英稟が立っている。
扉一枚隔てて。
くちゅくちゅ、と音が続いた。動くたびに、成熟した苑子の内壁が俺を締め上げてくる。苑子が唇を噛んだ——しかし声が漏れていく。
「……っ……世一、様……っ♡……」
扉の向こうで、英稟が聞いている。
くちゅ、ぬちゃ、と繋がった部分から音が響く。苑子の息が乱れ、抑えようとするほど漏れる声が、扉を通り抜けていく。
「……っ♡……世一様……奥……っ♡……奥に、ください……っ♡……」
俺は最奥で解き放った。苑子の内壁が波打ち、白い蜜と混ざって溢れてくる。
廊下の足音がかすかに動いた——しかし、どこにも行かなかった。
英稟は、廊下で待ち続けた。
「入れ」
しばらくして呼んだ。
英稟が入ってきた。
苑子はすでに部屋の隅で衣を直していた。英稟と目が合うと、苑子が小さく頭を下げた。英稟も小さく頭を下げた。二人の間に、何も言葉がなかった。
苑子が退室した。
英稟が俺を見た。表情が——整いすぎていた。
(無理して整えている)
「待たせた」
「……いいえ」
声が少し、低かった。
「何か言いたいか」
英稟が少し間を置いた。
「……いいえ」
「正直に言え」
英稟が俺を見た。
「……前で——苑子に、していたんですか」
「そうだ」
「……」
英稟が黙った。長い沈黙だった。
「前に種を欲しがるなら、まず勝者になってみせろ」
「……わかっています」
「わかっているなら、四つん這いになれ」
英稟が——従った。
声は出さなかった。しかし従った。従うことを、自分で選んだ顔だった。廊下で立ち尽くしていた間、逃げる時間はいくらでもあったはずだ。それでも、英稟は入ってきた。
プラグを抜いた。苑子の蜜と声を扉越しに浴びながら、英稟の後孔はすでに——熱く、軟らかく、俺を受け入れる準備ができていた。
ぬ……っ、と沈めると、英稟が低く声を漏らした。
「あ……っ♡……っ……前の……音が……聞こえた……っ♡……苑子の……っ♡……あの音が……っ♡」
「聞こえていたか」
「……っ♡……ずっと……っ♡……聞こえて……た……っ♡……前が……前が欲しくて……っ♡♡……」
ぬちゅぬちゅ、と動くたびに音が立つ。英稟の体が、今夜は抵抗せずに俺の動きに合わせて腰を揺らしていた。
「……っ♡……苑子みたいに……っ♡……前で……っ♡……前で欲しい……っ♡♡……ください……っ♡……」
「まだだ」
「……っ♡♡!」
「お前が前で種を受けるのは——お前が本物の勝者になってからだ」
英稟が喉の奥で何か言いかけて——詰まった。
ぬちゅ、ぬちゅ、と音が続いた。英稟の前の秘裂から蜜が垂れていた。見えている。届かない場所で、蜜が溢れていた。
「……っ♡……い、今日……っ♡……今日だって一勝……っ♡……」
「三戦中一勝で、勝者とは言わない」
「……っ♡♡!……っ……前が……前がっ……っ♡♡……欲しい……のに……っ♡♡♡……っ」
後孔が限界まで締まり、英稟の全身がひくひくと震えた。
英稟が奥で達した。
しばらく経って、起き上がった英稟は——唇をかみしめていた。
「……勝ちます」
「聞こえなかった」
「勝ちます」
「符闘で、か」
「……符闘で、勝ちます。世一様に」
声に、初めて刃の感触があった。
(それだ)
前への渇きが、牙に変わっている。
「今夜はそれでいい」
「……帰れ、ということですか」
「明日の朝また来い。つけたまま来い」
英稟が立ち上がった。プラグを後ろに収めて、軍服を着直した。
「……はい、ご主人様」
扉が閉まった。
廊下に足音が遠ざかった。
今度は——足音が、昨日より少し速かった。
(急いでいる)
急いで眠って、早く朝にして、訓練場に行きたいのだろう。
命じられたからではなく、自分から急いでいる足音だった。求めていたものが——少しずつ、形になってきた。
────
五夜目は、訓練場に呼ばなかった。
部屋に呼んだ。
英稟が入ってきた。チョーカーが首にある。プラグが後ろにある。正装の軍服。それが今や、英稟の日常になっていた。
「脱げ」
「……軍服を、ですか」
「全部」
英稟が少し間を置いた。
「……はい」
軍服が床に落ちた。下着が落ちた。白い肌が出た。チョーカーだけが首に残っている。プラグの鎖が尾のように垂れている。
「四つん這いになれ」
「……はい」
英稟が床に手をついた。膝をついた。尾の鎖が揺れた。
俺は椅子に座ったまま、英稟を見下ろした。
「こっちに来い」
英稟が——ほんの一瞬、躊躇した。
「来い」
「……っ……はい」
英稟が四つん這いのまま、俺の足元まで来た。
床を這う星宮当主の姿が、そこにあった。
俺は英稟の頭に手を乗せた。髪を、ゆっくりと撫でた。
何も言わなかった。英稟も何も言わなかった。
「お座り」「伏せ」「お手」
一つずつ、命じるたびに英稟が従った。矜持の残骸を背筋に残したまま、撫でられるたびに肩から力が抜けていく。差し出した手を、英稟が思わず握り返した。
「犬は握らない」
「……すみません」
俺はもう一度、英稟の手を取った。今度は、俺が握る側で。
「……訓練場で三回全敗した夜より、今夜の方が——頭が、ぼうっとします」
(そういうことか)
叱責より愛撫の方が、英稟の頭を溶かす。
「前を触れてやろうか」
英稟の体が、ぴくっと動いた。
「……まだ、駄目なんですよね」
「手で触れるのは別の話だ」
英稟が少し考えた。
「……お願いします」
俺は英稟の後ろから指を秘裂に沿わせた。
ぬちゅ、と音が立った。
「……っ♡……!」
「四日間貯めたな」
「……貯まって、います……っ♡……毎晩……後ろだけだったので……っ♡……前が……っ♡……ずっと……っ♡」
「欲しかったか」
「……欲しかった……っ♡……でも、我慢して……っ♡……」
「我慢できていたか」
「……っ♡……できて、いません……っ♡……毎朝、朝礼の前に……っ♡……部屋で一人で……っ♡♡」
「触っていたのか」
「……っ♡……触っていました……っ♡……でも……っ♡……世一様の指じゃないから……っ♡……全然……っ♡……足りなくて……っ♡♡……」
「それは罰が必要だな」
「……っ♡!」
俺は指を止めた。
「伏せたまま待て」
「……っ……はい」
俺は英稟の後ろに回った。プラグを抜いた。
「交尾するぞ」
英稟が——小さく息を飲んだ。
「……後ろ、ですか」
「後ろだ」
「……はい、ご主人様」
後孔に先端をあてがった。ゆっくりと押し込む。もう五夜目だ。英稟の体が、抵抗なく俺を迎え入れた。
「今夜は前も触れてやる」
後ろに収めたまま、前の秘裂に指を沿わせた。
「……っ♡♡!!……前と後ろが……っ♡……同時に……っ♡……!!」
「前は指だけだ。種は後ろに入る」
ぐちゅ、ぬちゅ、と二つの音が重なった。後ろで俺が動くたびに、前の指が押し込まれる。英稟の腰が震えながら、どちらにも応えようとしていた。
「……っ♡♡……前も……後ろも……っ♡♡……でも……っ♡……前に種が……っ♡♡……」
「まだだ」
英稟の体が波打った。前と後ろ、両方で同時に達した。内壁と後孔が同時に締まり、英稟が長く声を上げた。
俺は後孔の奥に種を解き放った。
「……っ♡♡……!!……また後ろに……っ♡……でも……っ♡♡……今夜は……前も……っ♡……触れてもらえたから……っ♡……」
英稟が床に崩れた。
しばらくして、英稟が顔を上げた。
頬が赤かった。目が潤んでいた。
「……世一様」
「何だ」
「……かわいがってもらえる日は、また来ますか」
俺は英稟の頭を、もう一度撫でた。
「符闘で俺を追い詰め続けろ」
「……はい」
英稟が目を閉じた。
撫でられながら、英稟は静かにしていた。
星宮の当主が、床で、尾をつけたまま、撫でられて——落ち着いていた。
(完全に飼われている)
────
六夜目は、符叢を開かせたが——符闘ではなかった。
「今夜は俺の言う通りに打て。一手残らずだ」
「……世一様の、言う通りに」
「そうだ。お前の手札も開いて見せろ。俺が両方の側を読む。お前は、俺の命令だけを実行しろ」
英稟が怪訝な顔をした。それでも、手札を開いて示した。
奇妙な符闘が始まった。俺は自分の手を打ち、それから英稟の手も指示する。甕星はまだ出すな。陰符を伏せろ。七耀陣は今だ。その受けは捨てろ——。
英稟は正確だった。命令を聞き、命令通りに打つ。躊躇がない。判断を手放すことに、この五夜で慣れきっている。
三戦。俺の指示通りに打った英稟は、三戦とも俺を追い詰めた。
「……不思議です」と英稟が言った。「自分で考えていないのに、盤面が見えます」
「考えていないからだ。今のお前には、迷いの入る隙間がない」
「……このまま世一様の指示で打ち続ければ、私は強くなるんでしょうか」
「ならない」
英稟が顔を上げた。
「それは俺が強いだけだ。今のお前は俺の手の延長にすぎない。——今夜はここまでだ。明日、仕上げをする」
────
七夜目。
「昨夜と同じだ。俺の言う通りに打て」
「はい」
盤面が進んだ。中盤、英稟の側が優勢に立った。甕星が場に降り、七耀陣が二枚とも起動している。俺のエーデルガルトは色衣を二枚失い、手札が薄い。
誰が見ても、英稟の勝勢だった。
「甕星を霊体化しろ」
英稟の手が、止まった。
「……霊体化、ですか」
「そうだ」
この盤面で甕星を退かせれば、七耀陣の圧が消える。次の俺の手番で緋衣が通り、盤面は裏返る。数手先まで読むまでもない。明白な悪手だった。
英稟が俺を見た。俺は何も言わなかった。
英稟の指が、甕星の原符に触れた。
——触れたまま、動かなかった。
「どうした。命令だ」
「……」
「聞こえなかったか。甕星を霊体化しろ」
長い沈黙があった。
英稟が、ゆっくりと顔を上げた。
「——その命令には、従えません」
「ほう」
「この盤面で甕星を退かせる理由が、私には読み切れません。私の読みでは、これは悪手です。世一様に深慮がおありなら、教えてください。……なければ」
英稟が、甕星の原符から指を離した。代わりに、手札から一枚を抜いた。
「なければ——私は、私の手を打ちます」
陰符が走った。甕星が動いた。七耀陣の重圧の下で俺の残った色衣が剥がされ——三手後、俺の符叢が尽きた。
俺は符叢を置いた。
「……俺の負けだ」
英稟が、長く息を吐いた。手が小さく震えていた。命令に逆らった手だ。震えない方がおかしい。
「……申し訳ありません。命令に——」
「謝るな」
俺は盤面を見たまま言った。
「今の一手を打たせるために、五夜かけた」
英稟が止まった。
「命令を聞くだけの犬は、俺の手の延長だ。命令を疑って、読み比べて、間違った命令には噛みつく——俺が飼いたいのは、そういう犬だ」
「……最初から、そのおつもりで」
「言わなかっただけだ。俺が『噛め』と言う前に、自分の判断で噛めるようになった時が——この稽古の終わりだ」
英稟が黙った。それから——笑った。泣くのと同じ顔で。
「……ひどい、ご主人様ですね」
「今頃気づいたのか」
英稟が、ちらりと目を伏せた。言いたいことは、聞かなくてもわかった。
「今のは勝ちに数えない」
「……っ。どうしてですか」
「九割まで俺が作った盤面だ。お前の手は最後の三手だけ——それで俺の全部を獲れると思うな」
「……明日、ですね」
「明日だ」
趣向は、もう決めてあった。盤面の上の迷いは消えた。残る仕上げは、盤面の外だ——当主の顔でも犬の顔でもない場所で、同じことができるかどうか。
────
その三日間、俺は執務室にほとんど顔を出さなかった。
夜は英稟の調教に潰し、昼は寝ていた。誰かに任せなければ、二領の政は止まる。任せられる相手は、揃っていた。
「浅葱からの報告です」
冬子が文書の束を机に置いた。
「雲嶺領の年貢改定、滞りなく進んでいます。それと——ヴァンダリアの商隊が、例年より多く星見領を通過しているとの由。倉橋の記録にも動きが」
「規模は」
「まだ、警戒するほどではありません。ですが——数は、確かに増えています」
俺は文書を一枚だけ確認して、冬子に返した。
「見ておけ。何か動きがあれば知らせろ」
「承知しました」
冬子が一礼して下がった。
────
苑子は苑子で、邸の中を回していた。
「英稟様のお部屋の掃除は、当面私が。他の者には触れさせません」
チョーカーの痕やプラグの類が、誰の目にも触れないようにという配慮だった。誰に指示したわけでもない。
「律也は」
「浅葱様の代わりに、東境の見回りに出ています。……最近、少し顔つきが変わりました」
「どう変わった」
「符侯の家臣としての顔に、なってきています」
苑子はそれだけ言って、下がった。
────
律也は律也で、忙しくしていた。
東境の見回りから戻った日の夕方、報告に来た。
「符侯様。東境で、ヴァンダリアの旗を掲げた馬車を見ました。街道を通っただけで、こちらには何も」
「目的は」
「わかりません。ただ——地図を持っていたようです。遠海領の」
俺は少しだけ、意識を英稟から逸らした。
(測量か、下見か)
ヴァンダリアが遠海領の地図を欲しがる理由は、いくつも考えられる。悪いものも、悪くないものも。
「引き続き見ておけ」
「はい」
律也が出ていった。
三人が、それぞれの持ち場を守っていた。俺が英稟だけに時間を注ぎ込んでいる間も、盤面は止まらずに動いていた。
(悪くない布陣だ)
冬子の目、苑子の手、律也の足。三つが噛み合って、俺の不在を埋めていた。
七日目——英稟の完成を待って、俺はまた執務室に戻るつもりだった。